俺の番は噛み跡を消す

夢野みすぐ

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ありがとう

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そこから4日は目が冷めなかった・・・

合間合間に見に行き、夜も治癒室で寝た

途中父上がやってきて思いきり頰を殴られた



「理由はどうであれ、お前のしたことは殺人未遂だぞ!しかもこんなにか弱い人間を!」

「分かってる・・・・・」



そこから無言で見詰められたが、すぐに去っていった・・・



この件は一生ついて回る・・・・・



それでも傍に居たい・・・・・すまないユイ



✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼



そこから手当たり次第に手合わせしている時に、「目を覚まされました!!」

一瞬躊躇したが、それでも会いたくて治癒室に駆ける



「ユイ!!!!!」

「ありぇ」



少し枯れた声で答えてくれる



「すまなかった、すまなかったユイ・・・」

「ありぇ」



あまりにもなんの感情も読み取れなくて怖くなる

でも、何も変わっていないユイに安堵した

そのままゆっくりと抱きしめる

「ユイ」

「ありぇ」

っっっっっ~~~~~!!!



「早く話がしたいな・・・そういえば言ってなかったな」







「愛してる」









その後2日間は食べては寝ての繰り返しだ



「ユイ、腹は満ちたか?」

「ありぇ」



本当に食が細い・・・それにますます細くなった

「失礼しますよ」

母上が入ってきた

「ユイさんが回復に向かっていると聞いたのでお見舞いに来たのだけれど・・・」

「ああ、1人で座れるようになった」

「挨拶しても?」

「・・・ああ」

「はじめまして、獣人国獣王妃でありアレハンドの母親です」



じっとユイが顔を見つめる、ただそれだけだ



「言語を聞いてみたいのだけれど」



そう言いながら話せるかというジェスチャーをする



「・・・・・✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼」

「!!!本当に知らない言語だわ・・・」

「ああ」

「念の為あとで学者にも聞かせたいのだけれど」

「・・・・・分かった」



「それと、言葉を覚えなければ意思の疎通も出来ないでしょう?絵本を持ってきたの」



そう言いながら従者に合図すれば、絵本が出てきた

その時髪の毛を切りたいという意思表示以来の反応をした

目が輝いて欲しいと、本が読みたいと教えてくれる



「まぁ・・・・・」

「チッ・・・・・」



俺がその顔を引き出したかった



「ふふ、これはアレハンドも読んでいたのよ?気に入ってくれたかしら?」



そう言いながら絵本を差し出す

ユイはそのまま頭を下げて「✼✼✼✼✼」言葉を吐く



「どういう意味か分かる?」

「お礼だと思う」

「まぁ!こんなに小さいのに偉いわ」

「匂いは大人だ」

「お前の匂いが酷くて分からないわ」



・・・・・・嫌味か



ユイはそのままぺらぺらと絵本を捲っていく

夢中になっているようだ



「それにしても本当に音が訓練のソレね」

「ぁあ、抱いてる時もそんな感じだった」

「本当に?なにも?」

「嫌悪も憎悪もなんにもだ・・・無だよ」

「本当にこの子から誘ったの?」

「ああ・・・理由がわからねぇ、それにあんなに抱き潰したのにも関わらず起きてからも変化がない」

「まぁ・・・この子どんな生き方をしてきたの???」

「分からない、けどこれからは俺が居る」

「ぇえ、そうね・・・私も居ますし」

「おい」

「なによ」

「父上も母上も構いすぎだ」 

「あら、だって仕方ないじゃない小さくて可愛いモノには目がない2人だもの」

「っっっユイはモノじゃねぇ!!!」 

「あら、娘って言っていいのかしら」

「チッ!!!」

「・・・・・それにしても騒いでも、威嚇が漏れてもなんにも反応しないのね」

「ああ、よく訓練されてる・・・逃げ出すタイミングを作らねぇようこっちも警戒が解けねぇ」

「本当にねぇ、でも次期獣王妃にはぴったりだわ」

「ぴったりじゃなくても反対させねぇよ」

「くすくす」

「ありぇ」

「!!!今のは名前を呼んだの?」

「ぁあ、名前だけ教えた」

「可愛いわ」

「・・・ユイ、どうした」



本の一部分を指差し頭を下げる、そして指でマルを作る

文字の文は「ありがとう」だ

なるほど、合ってるかでマルか・・・



「ぁあ、ありがとうだ」

「あーあちょぐ??」

「可愛すぎるわね」

「うるせぇ」

「うぇ?」

「あーいや、違う」

「ありがとう」

「あちょーう?」

「ありがとう」

「あーと」

「あ」

「あ」

「り」

「りぇ」

「が」

「っっぐ」

「と」

「とっ」

「う」

「う」

「あ、り、が、と、う」

「ありぇとっう」

「ぁあ、上手いな」

頭を撫でてやる

「それじゃなくてマルを作った方が分かりやすいんじゃない?」

・・・・・・・・・・・



「ありぇとっう」

「ありがとう」

「ありぇ、ありぇとっう」

っっっ~~~~

「まぁ・・・」

「出てけ」

「失礼するわ、ユイさんまたね」



そのまま抱きしめる・・・抱きしめてる間も辿々しくも俺に“ありがとう”と伝えてくる

なんでお前が感謝するんだよ、違うだろ

お前が誘ったとしてもこんなになるまで責め立てたのは俺なんだよ

下手したら死んでたんだぞ



ありがとうは、俺のセリフだ・・・・・







ありがとう
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