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【アルバート】
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昨日は色々あった
俺に番が出来てきっと一緒に住む事になった
寝室のベッドに着いて横になったら流石に心が疲れてたのか一瞬で眠った
そして、今俺はこいつの腕の中に居る
まだ朝方だ、多分暑くて目が覚めたんだと思う
水を取りに腕から抜け出そうとするが逆に抱きしめられる
・・・こいつは昨日から俺のして欲しい事と真逆の事をする傾向にある
まぁ、どうしても水が飲みたい訳でも起きたい訳でもないからもう少しこいつの腕の中で眠ろう
次に目を覚ました時はあいつは居なかった
リビングに降りたら書き置きがある
“今日から仕事だ、帰りは夕方頃になる、飯を作ったから口に合うか分からないが食べて欲しい、それと夜も俺が作るから嫌いな味じゃなければ一緒に食べよう。ジェイクより”
・・・あいつの名前はジェイクって言うのか
ダイニングテーブルを見ればメネメンとピタパンが置いてある
この家を出る前は毎朝母さんが作ってくれた料理に懐かしくなる
いつも行く弁当屋にもメネメンがあるがあの店のメネメンには玉ねぎが入っていない
俺は玉ねぎ入りが好きだ、だから久しく食べてない
家に食材なんてない
あいつ改めジェイクは朝から市に行って食材と調味料を買ってわざわざ朝飯を作ったのか
あの見た目とは違って器用なんだな
俺とは正反対だ、俺は繊細に見えてがさつでズボラだ、料理だって出来はするが面倒でやりたくない
いい匂いのするダイニングテーブルに座れば家に置いてあった保温魔具が底に敷いてありずっと暖かいままになってる
飯を手に取り口に運んでいく・・・・・玉ねぎが入ってる
食べ終わって食器を洗う為キッチンに立つが、昨日までなかった調味料が大量に置いてある
にしても、ジェイクは番休暇は取らなかったのか
移動してすぐ番休暇は流石に気まずいのか、俺の同意がまだないと思ったのか、それとも男同士のやり方を知らないのか・・・
番を見つけた場合、人間にも獣人にも番休暇というものが存在する
番休暇はヤり続ける為に存在するらしいが、ナニしてんのかまでは知らない
必要な事らしいが、ジェイクには必要ないのか
煙草の仕入れもある、帰って来たら聞くか
今日も支度して昨日と変わらない時間に店を開ける
「アルバート」
「もう買い足しにくる日だったか?」
常連に声をあけられた
「違うよ、番が出来たと聞いたんだ」
「なんだ、ゴシップか」
「そんなとこだ、てっきり休暇を取るもんだと思ってたんだが拒絶したのか?」
「いや、住むことになったんじゃないか?今日は起きたら飯があった」
「なんだあやふやだな、きちんと話してやってないのか」
「聞かれたら答えるよ」
「相変わらず面倒臭がりだな」
「番が出来て変わるもんでもないだろ、人間だぞ」
「それもそうか」
それから何人かに同じ事を聞かれたが同じように返した
少し日が落ちてきた頃、目の前に影が差してチェス盤が暗くなる
顔を上げれば息を切らしたジェイクがいた
肉屋に寄ったのか肉の塊を顔に似つかない籠に入れている
「飯、手伝った方がいいか?」
「いや、問題ない」
お言葉に甘えてすぐにチェス盤に顔を落とす
扉を開けて家に入って行ったジェイクは言ったように警ら隊の制服を着ていた
「出来たぞ」
「ああ、閉める」
飯のいい匂いを嗅ぎながらチェスを指してたら声がかかる
粗方閉め作業は終わっていたからあとは鍵を閉めるだけだ
鍵を閉めて部屋に体を向けるとあの黒い目で俺を見るジェイクが突っ立っていた
「邪魔だ」
「あ、ああ、すまない」
そう言いながらでかい図体を縮めて俺の歩く道を空ける
・・・ジェイクが先を歩けばいいだろう
いい匂いのするリビングは明るくてこんなにも暖色の多い場所だったかと思う
椅子に座れば横に座ってくるジェイクに狭さを感じながらフォークを手に取る
「朝も美味かった、ありがとう」
「ああ、いや、大したことはない」
「そうか」
飯を黙々と食う俺の横で俺の5倍はありそうな量を食うジェイクに警らの仕事はそんなにも体力を使うのかと密かに思う
食べ終われば食器を洗いに席を立つ
ジェイクは俺が移動する度にびくびくと探っている事に気付いた
逃げ出されるか怖いのか?いやでもここが俺ん家だ
洗い物が終わればジェイクも食べ終わる
その皿も取って洗い出す、そういえばと思い聞く
「番休暇は必要ないのか?」
「なんっ!?」
「必要だと聞いたが、ジェイクには必要ないのか?」
「名前・・・」
なんでか名前を呼んだだけで噛みしめ出したジェイクを放って食器を洗う
「その、名前を教えて欲しい」
今更な事を今更な時に聞かれる
「アルバートだ」
「俺はジェイクだ」
「知ってる」
昨日とは違ってテンポ良く会話をしていくジェイクにまともな獣人だったんだなとお門違いな事を考えた
「聞きたい事がある、いいか?」
なんて真剣な顔で聞かれる
「構わない」
食器を洗ってリビングのソファに座る、水と煙草は俺の欠かせない物だ
「昨日本を借りてアルバートが落ち着いていた理由はわかった、分かったがアルバートは俺が好きではないだろう?」
「俺は人間だからな、ジェイクは昨日会った獣人だ」
「そうだよな、今日警ら隊に居た人間にも聞いたがこの街の人間は慣れていると、慣れすぎていると聞いた」
「ああ」
「だが、その、受け入れるかどうかはまた別だ・・・そのいいのか?」
「なにがだ?」
「俺は、その、男だ」
「ああ、その事なら俺は同性愛者だ」
「そ、そうなのか」
「ああ」
「傍に居てもいいのか・・・?」
「ああ」
「・・・でも、まだ好きではないだろう?」
「ジェイクみたいに番っていうのは分からないからな」
「俺は人間が番だったら拒絶されるのが当たり前だと思っていた」
「そうか」
「だが、拒絶される事なく帰る家まで与えてくれる」
「ああ」
「好いた相手は居ないのか」
「恋人なら5年は居ないな」
「過去に恋人が居たのは今度ゆっくり聞きたいと思う」
「好きにしろ」
「俺は、分かっているとは思うが手放さない、手放したくない、拒絶するなら今の内でないと、後から拒絶されても離す事は出来ない」
「そうか」
「ああ」
「別にいい」
「え?」
「番っていうのはそういうものなんだろ?」
「ああ」
「なら、いい」
「え?」
「話は終わりか?」
「え、あ、ああ」
「なら風呂に入ってくる」
「あ、ああ」
風呂場に向かいながら考えた、今ならジェイクは簡単に手放せるんだな
今日もゆっくり風呂に浸かれば明日の朝の仕込みか弁当か分からないが下ごしらえをしてた
俺が風呂から出た事に気付いていたのか水を取り出し俺に向かって歩いてくる
「水で良かったか?」
「ああ、助かる」
獣人は皆甲斐甲斐しいのか?もしそうなら獣人同士だとどうなるんだ?
「ああ、そうだジェイク」
「どうした?」
「男同士のやり方を知ってるか?」
絶句というのはこういう顔の事を言うんだな
でも俺にとっても大事な事だ、ジェイクが女としか関係がなかったとしても俺としか出来ないんだ
それに俺だってもうジェイクとしか出来ないんだ
快感を得るのが不得手だといってもやはり抱き着いたりはしたいもんだ
「俺はもうジェイク以外と出来ないだろ?」
「あ、ああ」
「俺にも欲があるし溜まったらヤりたいんだが、やり方は知ってるか?」
「ちゃ、ちゃんとした知識は入ってない、その、学ぶから少し待ってくれ」
「なら、本がある、見たらいい」
「わ、分かった」
「先に寝る」
「ま、待ってくれ!」
「なんだ?」
「その、・・・手を出していいのか?」
「手を出されなきゃ他で発散するしかないな」
「駄目だ!!!」
「だろうな、だから手を出してくれ」
「っっっ、だ、だが好きでもない相手に手を出すのは」
「性処理でもすると考えたらどうだ?」
「せい・・・」
「ちなみに俺はどちらでも構わない」
「どちらでも?」
「抱いても抱かれても問題ないって事だ」
「んなっっ!?」
「まぁ、学んだら決めておいてくれ」
「分かった・・・それと、番休暇はもう少し後にする、その、もう少し俺の事を知って欲しいんだ」
「分かった」
話は終わった気がしたから寝室まで上がる
仕事の合間に買ってきた刺繍糸を取り出す、久しぶりの刺繍の出来に期待はしていない
それにゆっくり編めばいいだろう
編んでる間にジェイクが寝室に来た
恐らくあの部屋から取り出した男同士のやり方が書いてある本だろう
「アルバートは編み物をするのか」
「昔、母さんに習った事がある」
「そうか・・・」
会話が途切れ少しするとペラペラと本を捲る音がする
俺の糸を刺す音がする
「アルバート」
いつの間にか本から顔を上げて俺の見ていた
「なんだ」
「その、足の間に座らせてもいいか?」
邪魔じゃないのか?と思ったけれど、そういうものかと納得してジェイクが座っている足の上に座る
端に寄せた刺繍を手繰り寄せまた縫い始める
スンスンスンスン
気付いたら頭を嗅がれてる
そういえば腹にも手が巻きつかれてがっしりと後ろから抱え込まれてる
大分刺繍に夢中になっていたみたいだ
まぁ、いいか
気にせずまた手を動かしていたらウトウトしていたみたいでジェイクに刺繍を取り上げられた
「もう寝よう」
それに返事をしたか分からないからきっとしていないな
そして起きるとまた書き置きがあり店を開ける、そしてジェイクが帰ってきて飯を食って一緒に寝る
そんな日々が10日間は続いてた
「アルバート」
俺は今飯を食べさせられてる
ジェイクが家に来て3日目の事『新しい椅子を買ってもいいか?』と聞かれ、もうこの家はジェイクの物でもあるから好きにしたらいいと伝えた
そうして次の日には椅子を買って家に帰ってきた
馬鹿でかい椅子だが、俺はそれを知っている・・・というより有名だ
番は給餌きゅうじをさせたがる
そのため1つの椅子に自分の膝に乗せて食べさせると、その為の椅子だとすぐに理解した
だから飯が出来たと呼ばれ椅子の前に立ちジェイクが座るのを待っていたら俺を抱えて座り出した
そして初めから1人分のカトラリーしかないセットを見て口を開ける
満足気に俺の口にせっせと食事を運ぶジェイクはとても楽しそうだった
そしてその2日後に大量の荷物が届いた
本当は宿舎に寝泊まりする筈だったジェイクの荷物が俺たちの家に届いただけだ
聞いてはいたので驚きはしなかったが、あまりにも多いのでその日は店を閉めてゆっくり荷物を開けて選別した
ジェイクは店が閉まっている事に驚いたのか馬鹿でかい足音を立てて俺の居る部屋に入ってきたが、俺がジェイクの服に囲まれてるところを見たら悶絶して30分はそこから動かなかった
ジェイクの荷物を部屋に片づけていくのは意外と楽しかった
けど、ジェイクが帰って来たら面倒になったので後は投げた
「アルバート?」
少し思い出してたら返事を忘れていた
「どうした?」
「その、今日・・・抱いてもいいか?」
「構わない」
分かってはいたけど、やっぱりジェイクが抱く方なのか
まぁ、俺が抱く方になったら俺はどうやって体位を変えようか考えていたから面倒が減っていいなと思った
多分10日もかかったのは洗浄魔法を覚える為だと思う
どうしたって排泄する場所を綺麗にするには人の手では完璧にはいかない
だから、男同士する場合はどちらも洗浄魔法を習得しておく必要がある、まぁマナーだな
中を潤す魔法もあるが、あれは出来る奴の方が少ない、俺も覚えようと思ってやってみたが無理だった
飯を食い終わり風呂に入る
ジェイクは一緒に入るとは言わないし、入るところを見た事がないからきっと風呂が嫌いなんだろう
ああ、そうだ、そういえば種族は熊らしい
尻尾もあるみたいで見せて欲しいと頼んだんだが、まだ早いと言われ拒否された
いつになったら早くなくなるものなんだ?
風呂を上がると水を渡してくれるジェイクはいつも俺を抱き上げようとするが、俺が風呂上りは嫌だと伝えてからは抱き上げなくなった
今日は刺繍が出来ないかもな、なんて思いながら一緒に寝室に上がる
俺に番が出来てきっと一緒に住む事になった
寝室のベッドに着いて横になったら流石に心が疲れてたのか一瞬で眠った
そして、今俺はこいつの腕の中に居る
まだ朝方だ、多分暑くて目が覚めたんだと思う
水を取りに腕から抜け出そうとするが逆に抱きしめられる
・・・こいつは昨日から俺のして欲しい事と真逆の事をする傾向にある
まぁ、どうしても水が飲みたい訳でも起きたい訳でもないからもう少しこいつの腕の中で眠ろう
次に目を覚ました時はあいつは居なかった
リビングに降りたら書き置きがある
“今日から仕事だ、帰りは夕方頃になる、飯を作ったから口に合うか分からないが食べて欲しい、それと夜も俺が作るから嫌いな味じゃなければ一緒に食べよう。ジェイクより”
・・・あいつの名前はジェイクって言うのか
ダイニングテーブルを見ればメネメンとピタパンが置いてある
この家を出る前は毎朝母さんが作ってくれた料理に懐かしくなる
いつも行く弁当屋にもメネメンがあるがあの店のメネメンには玉ねぎが入っていない
俺は玉ねぎ入りが好きだ、だから久しく食べてない
家に食材なんてない
あいつ改めジェイクは朝から市に行って食材と調味料を買ってわざわざ朝飯を作ったのか
あの見た目とは違って器用なんだな
俺とは正反対だ、俺は繊細に見えてがさつでズボラだ、料理だって出来はするが面倒でやりたくない
いい匂いのするダイニングテーブルに座れば家に置いてあった保温魔具が底に敷いてありずっと暖かいままになってる
飯を手に取り口に運んでいく・・・・・玉ねぎが入ってる
食べ終わって食器を洗う為キッチンに立つが、昨日までなかった調味料が大量に置いてある
にしても、ジェイクは番休暇は取らなかったのか
移動してすぐ番休暇は流石に気まずいのか、俺の同意がまだないと思ったのか、それとも男同士のやり方を知らないのか・・・
番を見つけた場合、人間にも獣人にも番休暇というものが存在する
番休暇はヤり続ける為に存在するらしいが、ナニしてんのかまでは知らない
必要な事らしいが、ジェイクには必要ないのか
煙草の仕入れもある、帰って来たら聞くか
今日も支度して昨日と変わらない時間に店を開ける
「アルバート」
「もう買い足しにくる日だったか?」
常連に声をあけられた
「違うよ、番が出来たと聞いたんだ」
「なんだ、ゴシップか」
「そんなとこだ、てっきり休暇を取るもんだと思ってたんだが拒絶したのか?」
「いや、住むことになったんじゃないか?今日は起きたら飯があった」
「なんだあやふやだな、きちんと話してやってないのか」
「聞かれたら答えるよ」
「相変わらず面倒臭がりだな」
「番が出来て変わるもんでもないだろ、人間だぞ」
「それもそうか」
それから何人かに同じ事を聞かれたが同じように返した
少し日が落ちてきた頃、目の前に影が差してチェス盤が暗くなる
顔を上げれば息を切らしたジェイクがいた
肉屋に寄ったのか肉の塊を顔に似つかない籠に入れている
「飯、手伝った方がいいか?」
「いや、問題ない」
お言葉に甘えてすぐにチェス盤に顔を落とす
扉を開けて家に入って行ったジェイクは言ったように警ら隊の制服を着ていた
「出来たぞ」
「ああ、閉める」
飯のいい匂いを嗅ぎながらチェスを指してたら声がかかる
粗方閉め作業は終わっていたからあとは鍵を閉めるだけだ
鍵を閉めて部屋に体を向けるとあの黒い目で俺を見るジェイクが突っ立っていた
「邪魔だ」
「あ、ああ、すまない」
そう言いながらでかい図体を縮めて俺の歩く道を空ける
・・・ジェイクが先を歩けばいいだろう
いい匂いのするリビングは明るくてこんなにも暖色の多い場所だったかと思う
椅子に座れば横に座ってくるジェイクに狭さを感じながらフォークを手に取る
「朝も美味かった、ありがとう」
「ああ、いや、大したことはない」
「そうか」
飯を黙々と食う俺の横で俺の5倍はありそうな量を食うジェイクに警らの仕事はそんなにも体力を使うのかと密かに思う
食べ終われば食器を洗いに席を立つ
ジェイクは俺が移動する度にびくびくと探っている事に気付いた
逃げ出されるか怖いのか?いやでもここが俺ん家だ
洗い物が終わればジェイクも食べ終わる
その皿も取って洗い出す、そういえばと思い聞く
「番休暇は必要ないのか?」
「なんっ!?」
「必要だと聞いたが、ジェイクには必要ないのか?」
「名前・・・」
なんでか名前を呼んだだけで噛みしめ出したジェイクを放って食器を洗う
「その、名前を教えて欲しい」
今更な事を今更な時に聞かれる
「アルバートだ」
「俺はジェイクだ」
「知ってる」
昨日とは違ってテンポ良く会話をしていくジェイクにまともな獣人だったんだなとお門違いな事を考えた
「聞きたい事がある、いいか?」
なんて真剣な顔で聞かれる
「構わない」
食器を洗ってリビングのソファに座る、水と煙草は俺の欠かせない物だ
「昨日本を借りてアルバートが落ち着いていた理由はわかった、分かったがアルバートは俺が好きではないだろう?」
「俺は人間だからな、ジェイクは昨日会った獣人だ」
「そうだよな、今日警ら隊に居た人間にも聞いたがこの街の人間は慣れていると、慣れすぎていると聞いた」
「ああ」
「だが、その、受け入れるかどうかはまた別だ・・・そのいいのか?」
「なにがだ?」
「俺は、その、男だ」
「ああ、その事なら俺は同性愛者だ」
「そ、そうなのか」
「ああ」
「傍に居てもいいのか・・・?」
「ああ」
「・・・でも、まだ好きではないだろう?」
「ジェイクみたいに番っていうのは分からないからな」
「俺は人間が番だったら拒絶されるのが当たり前だと思っていた」
「そうか」
「だが、拒絶される事なく帰る家まで与えてくれる」
「ああ」
「好いた相手は居ないのか」
「恋人なら5年は居ないな」
「過去に恋人が居たのは今度ゆっくり聞きたいと思う」
「好きにしろ」
「俺は、分かっているとは思うが手放さない、手放したくない、拒絶するなら今の内でないと、後から拒絶されても離す事は出来ない」
「そうか」
「ああ」
「別にいい」
「え?」
「番っていうのはそういうものなんだろ?」
「ああ」
「なら、いい」
「え?」
「話は終わりか?」
「え、あ、ああ」
「なら風呂に入ってくる」
「あ、ああ」
風呂場に向かいながら考えた、今ならジェイクは簡単に手放せるんだな
今日もゆっくり風呂に浸かれば明日の朝の仕込みか弁当か分からないが下ごしらえをしてた
俺が風呂から出た事に気付いていたのか水を取り出し俺に向かって歩いてくる
「水で良かったか?」
「ああ、助かる」
獣人は皆甲斐甲斐しいのか?もしそうなら獣人同士だとどうなるんだ?
「ああ、そうだジェイク」
「どうした?」
「男同士のやり方を知ってるか?」
絶句というのはこういう顔の事を言うんだな
でも俺にとっても大事な事だ、ジェイクが女としか関係がなかったとしても俺としか出来ないんだ
それに俺だってもうジェイクとしか出来ないんだ
快感を得るのが不得手だといってもやはり抱き着いたりはしたいもんだ
「俺はもうジェイク以外と出来ないだろ?」
「あ、ああ」
「俺にも欲があるし溜まったらヤりたいんだが、やり方は知ってるか?」
「ちゃ、ちゃんとした知識は入ってない、その、学ぶから少し待ってくれ」
「なら、本がある、見たらいい」
「わ、分かった」
「先に寝る」
「ま、待ってくれ!」
「なんだ?」
「その、・・・手を出していいのか?」
「手を出されなきゃ他で発散するしかないな」
「駄目だ!!!」
「だろうな、だから手を出してくれ」
「っっっ、だ、だが好きでもない相手に手を出すのは」
「性処理でもすると考えたらどうだ?」
「せい・・・」
「ちなみに俺はどちらでも構わない」
「どちらでも?」
「抱いても抱かれても問題ないって事だ」
「んなっっ!?」
「まぁ、学んだら決めておいてくれ」
「分かった・・・それと、番休暇はもう少し後にする、その、もう少し俺の事を知って欲しいんだ」
「分かった」
話は終わった気がしたから寝室まで上がる
仕事の合間に買ってきた刺繍糸を取り出す、久しぶりの刺繍の出来に期待はしていない
それにゆっくり編めばいいだろう
編んでる間にジェイクが寝室に来た
恐らくあの部屋から取り出した男同士のやり方が書いてある本だろう
「アルバートは編み物をするのか」
「昔、母さんに習った事がある」
「そうか・・・」
会話が途切れ少しするとペラペラと本を捲る音がする
俺の糸を刺す音がする
「アルバート」
いつの間にか本から顔を上げて俺の見ていた
「なんだ」
「その、足の間に座らせてもいいか?」
邪魔じゃないのか?と思ったけれど、そういうものかと納得してジェイクが座っている足の上に座る
端に寄せた刺繍を手繰り寄せまた縫い始める
スンスンスンスン
気付いたら頭を嗅がれてる
そういえば腹にも手が巻きつかれてがっしりと後ろから抱え込まれてる
大分刺繍に夢中になっていたみたいだ
まぁ、いいか
気にせずまた手を動かしていたらウトウトしていたみたいでジェイクに刺繍を取り上げられた
「もう寝よう」
それに返事をしたか分からないからきっとしていないな
そして起きるとまた書き置きがあり店を開ける、そしてジェイクが帰ってきて飯を食って一緒に寝る
そんな日々が10日間は続いてた
「アルバート」
俺は今飯を食べさせられてる
ジェイクが家に来て3日目の事『新しい椅子を買ってもいいか?』と聞かれ、もうこの家はジェイクの物でもあるから好きにしたらいいと伝えた
そうして次の日には椅子を買って家に帰ってきた
馬鹿でかい椅子だが、俺はそれを知っている・・・というより有名だ
番は給餌きゅうじをさせたがる
そのため1つの椅子に自分の膝に乗せて食べさせると、その為の椅子だとすぐに理解した
だから飯が出来たと呼ばれ椅子の前に立ちジェイクが座るのを待っていたら俺を抱えて座り出した
そして初めから1人分のカトラリーしかないセットを見て口を開ける
満足気に俺の口にせっせと食事を運ぶジェイクはとても楽しそうだった
そしてその2日後に大量の荷物が届いた
本当は宿舎に寝泊まりする筈だったジェイクの荷物が俺たちの家に届いただけだ
聞いてはいたので驚きはしなかったが、あまりにも多いのでその日は店を閉めてゆっくり荷物を開けて選別した
ジェイクは店が閉まっている事に驚いたのか馬鹿でかい足音を立てて俺の居る部屋に入ってきたが、俺がジェイクの服に囲まれてるところを見たら悶絶して30分はそこから動かなかった
ジェイクの荷物を部屋に片づけていくのは意外と楽しかった
けど、ジェイクが帰って来たら面倒になったので後は投げた
「アルバート?」
少し思い出してたら返事を忘れていた
「どうした?」
「その、今日・・・抱いてもいいか?」
「構わない」
分かってはいたけど、やっぱりジェイクが抱く方なのか
まぁ、俺が抱く方になったら俺はどうやって体位を変えようか考えていたから面倒が減っていいなと思った
多分10日もかかったのは洗浄魔法を覚える為だと思う
どうしたって排泄する場所を綺麗にするには人の手では完璧にはいかない
だから、男同士する場合はどちらも洗浄魔法を習得しておく必要がある、まぁマナーだな
中を潤す魔法もあるが、あれは出来る奴の方が少ない、俺も覚えようと思ってやってみたが無理だった
飯を食い終わり風呂に入る
ジェイクは一緒に入るとは言わないし、入るところを見た事がないからきっと風呂が嫌いなんだろう
ああ、そうだ、そういえば種族は熊らしい
尻尾もあるみたいで見せて欲しいと頼んだんだが、まだ早いと言われ拒否された
いつになったら早くなくなるものなんだ?
風呂を上がると水を渡してくれるジェイクはいつも俺を抱き上げようとするが、俺が風呂上りは嫌だと伝えてからは抱き上げなくなった
今日は刺繍が出来ないかもな、なんて思いながら一緒に寝室に上がる
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