3 / 8
3
しおりを挟むすーすーと心地の良い寝息が聞こえるのは私からじゃない
横にいる獣人からだ、横というか私の頭を抱えて頭に口をつけるような体勢で寝られている
かれこれ30分は格闘した
起き上がるにも足が片方人質に取られているし尻尾だって巻き付かれてる
腕は苦しくないようにしてくれているのか顔周りは苦しくないけど他は苦しい、苦しいというより暑苦しい
どうしてお互い裸なのか聞きたいような聞きたくないような複雑な気持ちのままかれこれ30分
とりあえず仕事をしたいのに抜け出せない
どうしてこの人はまだここに居るのか
私はなにをされても嫌じゃないのかも分からない
分からないけど、仕事したい…
「あの…」
「ふふ」
寝てるはずの彼から笑い声がした
「起きてたんですか…」
「どうするのかなって、ふふ」
なにを観察されてたのか分からないけど、起きてるなら起きてるって言って欲しい
「おはようございます」
「ちゅ、おはよう」
「………仕事したいので離して下さい」
「えー」
「えー、じゃないです」
「えー」
「とにかく離れて下さい」
「むー」
「………好きにしてていいですから仕事させて下さい」
「わーい!」
どうして寝起きに疲れるんだろう
起き上がるにも服を着たいのでどこかへ行ってもらう
「服を着るので何処かへ」
「僕が着せる」
「…出て行って下さい」
「ぶー」
「お願いですから」
「分かったぁ、ちゅ、」
裸のまま歩かないで下さい
はぁ、と起き上がって適当に服を着る
裏手から水を取りに行こうとして声がかかった
「洗面所にお水置いておいたよー!」
「はぁ、ありがとうございます」
「ご飯食べるでしょー?」
「いえ、結構です」
「美味しく作るねー!」
「…」
洗面所にスタスタ歩いて顔を洗って歯を磨くといい匂いがしてきたから本当に作ってるのかと思う
「ありがとうございます、手伝います」
「リュシー!おはよう!ちゅ、ちゅ、ね?ポーチドエッグ好き?」
「普通です」
「サラダお願いしてもいい?」
「はい」
どうしてかキッチンに並んで料理を作るけどここが彼のキッチンで私がお邪魔してるのかと勘違いしてくるような手際の良さである
お皿の場所もトングの場所も理解してるのか迷う事なく出していく
「リュシー仕事たくさん?」
「そこまで仕事は詰まってませんけどそれなりには」
「なにしてるのー?」
「細工にまじないをかけてます」
「えっ!?凄い!」
「そうでもありませんよ」
「物に魔力を込めれる人なんて滅多に居ないよ」
「まじない程度です」
「それでも凄い!僕の国に来ない?」
一体なんの勧誘なんだろうか
というか彼の国はどこなの
「どこの国ですか?」
「ハレーンスレー」
「2つ先の国ですか」
「うん」
「砂漠の国ですね」
「うん」
「遠慮しておきます」
「えー!僕と一緒に帰ろうよー!」
どうして勧誘から帰るになるんだろうか
出来上がった朝食を机に置くけど椅子は1つしかない
「僕の膝においで?」
「立って食べるのでお気になさらず」
「えー!じゃぁ、僕も立つ」
どうしたらいいのだろう
会話を繋げても会話にならない気がする
気にせず立ちながら食べるけど昨日と同じで彼の作る料理は美味しい
「美味しいですね」
「ありがとう!リュシーのサラダも美味しいよ」
ちぎっただけです
昨日も思ったんだけど彼の作る料理は多い
何度かそんなに食べられませんと伝えても残ったら僕が食べると言われてしまえばなんとも言えない
「どこか宿に泊まってるのでは?」
「大丈夫!リュシーと居られるよ」
正しく答えが返ってくる時が少ない
「もう食べられません」
「え」
「だから言っていますけど」
「どこか悪いの?」
そんなにしょげなくても
「悪くないです、引きこもりなのでそこまで食べないだけです」
「もう一口食べる?」
「無理です」
「分かった」
納得したのかは分からないけど台所の水が少なったので洗い物の前に汲んでこよう
「どこ行くの?」
「水を汲みに」
「僕がやるよ!」
「いえ、気にせず座って食べていて下さい」
あまり構っても彼との会話が長引くだけだと思い水を汲んでキッチンに持っていく
まだ食べていたので洗濯と軽く掃除を終わらせてキッチンに向かう
「洗い物、してくれたんですか」
「おかえり!」
おかえりの距離ではない
「ありがとうございます」
「いいえー、どこ行くの?」
くるっと踵を返すと後ろから声をかけられた
「仕事です」
「むー、寂しいけど待ってるね」
どうして待つんでしょう
仕事部屋に入って依頼途中の物を作っていく
今回は私が作る物ではなく骨董品に入れ込むという作業なので殊更慎重になる
私が作れば製作過程に魔力を込めて作り上げていく事が出来るから持ち込みよりは楽
私は細工ならなんでも手にするけど特別いい出来でもないからこうした依頼も多い
依頼者は家に悪が入ってこないようにとまじないをかけて欲しいと言われたのでそのように込めるけど、私のまじないは気休め程度だ
願掛けのような物だけど、それでもと縋る人達へと一つ一つ作り上げている
何度か立ち上がったり水を飲んだりして作業を進めていく途中で
「リュシー?」
危ない、あと少しで駄目にするところだった
扉を開けて用を聞く
「どうしました?」
「もう寝る時間だよー?」
どうやら1日中作っていたらしい
「すみません、不便はありませんでしたか?」
「ないよ」
「でしたら私はまだ残ってるので先に眠っていて下さい」
「えー」
「それと声をかけられるとまじないが消失してしまうかもしれないので遠慮して頂けますか?」
「………分かった」
「おやすみなさい」
「…おやすみリュシー」
扉を閉めて作業に戻る
「はぁー…」
戻る手が何度も止まる
彼の悲しそうな顔と声が頭に残ってるけどこのまま進めよう
意識を戻して作業を進めて完成したのは朝方だった
お風呂に浸かろうと扉を開けるとブランケットを羽織ってすーすー寝てる彼は甲斐甲斐しい
「こんなところで寝ては風邪を引きますよ」
「ううーん、リュシー?」
「はい、ベッドに行ってください風邪を引きます」
「んー、リュシーは?」
「私はお風呂に」
「一緒に入ろ?」
今まで眠かったんじゃないんですかと尋ねたいくらい目がぱちくりですね
「とりあえず疲れたので好きにして下さい」
「ありがとう!」
「きゃぁっ!も、持ち上げないで下さい!」
「好きにしていいって言われたよー?」
揚げ足を取られた気分だ
お風呂にはすでに湯が張ってあり湯気も立っている
「魔法でしておいたよー?」
「ありがとうございます」
やっぱり余力があるのはいいですね
「服を脱ぐので」
「あのねリュシー」
「はい」
「リュシー疲れてるでしょ?」
「そうですね」
「色々と言いたい事もあるんだろうけど僕に任せて!大丈夫リュシーのお世話する為に僕たくさん勉強したんだよ」
むしろ言いたい事が分かりませんとツッコミたいところですが本当に眠すぎてお願いしました
「ふふ、ばんざーい」
「あふ…」
「ふふ、寝てていいよー」
どうして男の人に服を脱がされて寝る事が出来るんでしょう…
20
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R18】私はお父さんの性処理係
神通百力
恋愛
麗華は寝ていたが、誰かが乳房を揉んでいることに気付き、ゆっくりと目を開けた。父親が鼻息を荒くし、麗華の乳房を揉んでいた。父親は麗華が起きたことに気付くと、ズボンとパンティーを脱がし、オマンコを広げるように命令した。稲凪七衣名義でノクターンノベルズにも投稿しています。
プールの中で幼馴染のイケメン双子に挟まれてえっちな悪戯されるし、プールサイドでクリを溺愛された後に交代で手マンされてお潮いっぱい吹く女の子
ちひろ
恋愛
ひとりえっちのネタとして使える、すぐえっち突入のサクッと読める会話文SSです。
いっぱい恥ずかしい言葉で責められて、イヤイヤしても溺愛されちゃいます。
【R18】絶倫にイかされ逝きました
桜 ちひろ
恋愛
性欲と金銭的に満たされるからという理由で風俗店で働いていた。
いつもと変わらず仕事をこなすだけ。と思っていたが
巨根、絶倫、執着攻め気味なお客さんとのプレイに夢中になり、ぐずぐずにされてしまう。
隣の部屋にいるキャストにも聞こえるくらい喘ぎ、仕事を忘れてイきまくる。
1日貸切でプレイしたのにも関わらず、勤務外にも続きを求めてアフターまでセックスしまくるお話です。
巨根、絶倫、連続絶頂、潮吹き、カーセックス、中出しあり。
友達と思ってた男が実はヤバいやつで、睡眠姦されて無理やり中出しされる女の子
ちひろ
恋愛
ひとりえっちのネタとして使える、すぐえっち突入のサクッと読める会話文SSです。
いっぱい恥ずかしい言葉で責められて、溺愛されちゃいます。
【R18】女性向けレズマッサージを呼んでみた
桜 ちひろ
恋愛
真面目で普通の会社員「春花」
ただ唯一、普通でないことがある。それは性欲だ。
恋愛対象は男性だが、セックスは男女問わず。
強すぎる性欲と好奇心の赴くまま自由に楽しむ女性の物語
仕事終わり、自分へのご褒美にマッサージを選んだ週末
気になっていたレズマッサージからレズプレイをやって、やってヤリまくる!
ガールズラブ レズ マッサージ 潮吹き 連続絶頂 オモチャ
執着系幼馴染に合コン行くって言ったら、男はどういう生き物か身体で分からセックスされる話
ちひろ
恋愛
保育所の頃からずっと一緒にいる幼馴染のアキくんは、モデルみたいな見た目ですごくモテるのに、いつも私と一緒にいてくれる。私に気を使って彼女はいないって言ってるだけかもしれないし、アキくんのためにそろそろ彼氏作ろう!アキくん、私合コン行くね!………え?なんでこんなことするの?なんで?なんで?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる