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ランドン・ウォーカー1
しおりを挟む聖女が召喚された
召喚の儀に立ち会った者は皆見惚れた
小さくか弱さを感じる四肢
溢れるほど広がる黒髪の艶やかさ
くりくりとしたタレ目
透き通った白い肌
誰もが憧れ羨望し、崇めてしまうような美しさ
美醜など、関係ない
必要なのは本人の能力だと言っていたけれど
彼女を目にした後そんな事が言えるのか
彼女がただそこにいる。それだけで充分なのではと錯覚してしまう
いや、錯覚ではなく事実だ
現にここに居る誰も彼もが動けず
彼女の全てを余すことなく焼き付けようと必死になっている
私もその1人だ…見惚れていると聖女の足が目に入った
裸足に素肌を晒している
寒々しさを感じるほどの透明感に、やっと動くということが出来た。
聖女は裸足に小さな体だった為騎士の1人が抱きあげて移動させたが
今にも倒れてしまいそうな程顔を真っ赤にしていたな
応接間のソファに座らせると
ソファに埋もれてしまうのではないかと思うほどに小さく儚げだ…
そんな可愛さをも持ち合わせている聖女に身悶えしているのはここに居る全ての者達だろう
聖女の口数は多くはなかった
だが、美しい者特有の傲慢さや侮蔑などは見られなかった
鈴の音のように可憐な声音だが、しっかりと芯が通っている王者とも思えるような声で聖女の意思を伝えていく
瞳もそうだ
なにも映していないような透き通った浮世離れしているようで、慈愛に満ち溢れ真っ直ぐに見られている
そんな不思議な感覚が付き纏っている
「まって」
聖女の声が心にも響いてくる
「現在も、淀みが拡がっている」
「そんな中で私の護衛に人材を割くのは正しいと思えない」
「今すぐに淀みをなくすことは出来ない」
「お前たちの助けが必要」
「………側仕えも必要に感じない」
「…………………せめて1人ずつ」
「…………………」「…………………」
「…………………」「…………………」
「…………………」「…………………2人まで……………」
「聖女だというだけで、価値があるのにこんなにも可憐で美しい女性を守らないというのは出来かねる」
「…………………」「…………………」
「だが、聖女にも訳があるのだろう。人数についてはなるべく少なくしよう」
「…………………」「…………………」
「…………………」「…………………」
「んんっ、だが側仕えは必要だ。何をするにも分からないことや足らないことがあるだろう」
「教えてくれれば、出来る」
「…………………」「…………………」
聖女は己の体の小ささが分かっていないのか?
小さいと言われる私でさえ聖女の30㌢は大きいぞ………
今から聖女の為に家具を作らせても時間がかかる……
いや、小さくして見えなくしたらどこに居るのか分からなくなるのではないか?
それだと尚の事危険だ
「…………………せめて3人だ」
「…………………」「…………………」
「これ以上は危険すぎる!」
こてっ
ぁあっそのキョトンとした顔に傾げた際にさらさらと落ちていく髪
危険だ。危ないぞ
これはきっとなにをさせても危ない
きっと元居た世界でも周りがバレないようにそっと支えてあげていたのだろう
そんな安全な場所から奪ってしまった私に出来ることはなんだっ!
「…………………はっ!」
???
父親のように思ってもらえばいいのか
それに、私の娘だとなれば少しは危険から遠ざけられる事もあるだろう
こんな娘が居たら夜も眠れないのでないか…?
心配だ
いやいや、もう心配なのだ
いっその事王宮に「分かった」
「…………………ぁあっ!そうか、分かってくれたか感謝する」
こくっ
「また、そんなっ!」
???
「とりあえず、召喚の成功と話し合いがあるのでそのあとに淀みについて聞こう」
こくっ
「数日はゆっくりしてくれ、神殿内も見て回ると良い」
こくっ
「それと………いや、今度にしよう」
「その菓子が気に入ったのなら部屋に届けさせよう」
「こくっ…ありがとう……」
「う、うむ…無事に送り届けろ」
「「「「「「「「はっ」」」」」」」」
ガチャッ
……………
「可愛すぎだろうあれは………」
「「「「同感です………」」」」
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