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聖典

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「じゃあ私は今からご飯を作りますんで、シャニラはゆっくりしていて下さい。」

「その……あれだぞ?俺でも野菜の皮剥き程度なら手伝えるからな?」

 ミルがそうは言うものの、流石にそれは申し訳ないのでそう申し出たのだが……

「あっその……お芋を蒸したりするだけなので大丈夫です。」

 途端に申し訳なさそうな顔をしてそう言うのだった。
 多分食材にロクな物が無いことを申し訳無く思ってるんだろうが……

「あんまり気にするな……ってか、俺はもう客人じゃないんだ。だからそんなに申し訳無さそうにするな」

「……うん、分かりました。ありがとうございますシャニラ。」

 そんな無理強いと言うか、あまり誉められた物でもない頼みに笑顔で返してくれたミルだったのだが……もう少し、無理強いさせてくれ。

「じゃあその理論に基づいて敬語も無しな。」

「えっ?」

「だから……ここで目覚めた時からずっと敬語だったろ?ミルが名前をつけてくれたお陰で多少距離は近づいた気はするが敬語があるせいでまだ少し遠い。だったら。その敬語も無くすしか無いだろ?」

 そう言うと、ミルは少しポカンとしたような顔をした後、クスッと笑うと……

「分かった……うん。分かったよ、シャニラ。これからもよろしく」

「こちらこそ、だ。改めてよろしく」

 そう言いつつ、手を差しのべてくれたのだった。



 そうして手を取り合った後。
 改めて手伝いは要るか聞いても、要らないとのことだったので俺はその間に借りた聖典を読むことにしたのだが……やっぱり聖典なだけあって、バカ程分厚い。
 こんなものをあんな去り際におまけ感覚で借りて良かったのかと不安は出てくるが……借りちまった物はしょうがない。
 なるべく早く読んでさっさと返すとしよう。

 んで、肝心の本の内容だが……お?初手に目次なんか有るのか、前の世界でも有ったのかは疑問だが何故か聖典に目次なんて無さそうなイメージだけは有っただけに意外だな。

 目次の内容的には……ツヴァル、ダカール、ドリニア……なんだこれは人名か?……と思ったらシャニラも有るじゃん。
 英雄簿みたいな感じかね?
 この世界だと聖典=お伽噺なのだろうか。
 っと、今はゆっくり出来ないんだった。
 多分ご飯も直ぐに出来るだろうし善と悪だけでも先に見ておくとしよう。
 んで、肝心の善と悪だが……有った。
 目次も「善と悪」なのか。
 分かりやすくて良いな。

 はてさて、内容的には……
 えー、なになに?
 昔、一柱の神が居たと。
 その神はひどく怠け者で、この世界を管理することすら面倒に思っていました。

 えぇ……何これは。
 神様特有の掴みにくさと言うか神秘性が全く無いんだけど。
 前世の神話は覚えてないが、もう少し理解に苦しむような内容だった気はするぞ。

 ……まぁいいや、続きだ。
 え~、そこで神様は人間の意思でこの世界を管理することにしました。
 具体的に言えば、権能を多くの人間に善と定められた人間に与え、悪意有る人間には人間の悪性と、この星の悪意を司る権能を与えたのです。
 そうすることで善と悪は互いに削り合い、いつか「侵星者」が来る頃には立派な戦士が育っていると言う寸法です。
 我ながら大した作戦ですね……ってちょっと待て。
 色々頑張って無視してきたがちょっと待て。
 もしかしなくてもこれ……

 そう内心頭を抑えつつもまさかと思い、改めて表紙を向けると……

「……うっそだろオイ」

 そこには『著者:唯一神ア』の文字……って待てやコラ!
 何で自分の神話をそこの主神が書いてんだよ!
 それになんだよ「ア」って!
 ものぐさにしても限度が有るだろ!
 もうちょい頑張れよ!

 続きは……もうないのか。
 つ、疲れた……ってか神話だけ短過ぎだろ。
 こうしてパラパラ捲るだけでも英雄簿の方が長いんだけど……もういいや。
 これ以上読んでるだけでもツッコミ疲れしそうだよ……
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