一宮君と幽霊ちゃん

へたまろ

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よっぱらいと幽霊ちゃん

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 部屋の隅に目をやる。
 体育座りの幽霊ちゃん。

 うん、めっちや拗ねてる。

 事の発端は、俺の午前様。
 前期が終わって、ゼミの打ち上げ。
 帰宅は深夜3時。

 俺いま絶賛独り暮らし中だよね?
 門限とか無い生活なんだけど?

 ただまあ、頭いたいので放置して布団に。

 シクシク……

 うーん、すぐ寝られそう。

 シクシク……

 ちょっとずつ近付いてる。

「あー、ごめん飲みすぎて頭痛いから少し静かにしてもらえるかな?」

 めっちゃ、びっくりした顔してた。
 なんで?

 俺が悪いのこれ?

 バチン!

 そしてラップ音。
 怒ってる合図だ。

 ただ、頭に響くからやめて欲しい。
 ただでさえガンガンしてるのに。

 頭を押さえて、身体を丸める。

 バチン!

 おかわり来た。
 やめて、マジで。

 布団に潜り込む。

 バチン!

 さらに追加が。

 布団を少し捲って、隙間から幽霊ちゃんを睨む。
 うわぁ……
 凄い嬉しそう。

 ノリノリで指ならしてる。
 指から音なってないけど、部屋のあちらこちらからバチンっバチンて音が。
 ラップ音って、そういう仕組みなの?

「痛いの?」 

「辛いの?」

 そして、耳元で囁かれる。
 うぜー!
 久しぶりにうざい幽霊ちゃん来た。

 布団を頭から被って……暑い。
 エアコン強くしないと……

「なんで、そんなになるまで飲んじゃうかなー」

 うるさいなー。
 再度幽霊ちゃんを睨む。
 ……

 その表情は反則だろ!
 眉を寄せて、眉尾を下げて。
 悲しそうな、心配そうな表情でベッドの横に座って見上げてこられたら。

 何も言えない。

「なかなか帰って来ないから、心配したんだよ?」

 はい、ごめんなさい。

 バチン!

 痛い! 痛い!

「反省してるの?」

 何を反省しろと?
 いやまあ、心配掛けたことは悪いと思うけど。

「お酒って、そんなに楽しいのかな?」

 そして寂しそうな表情。
 そういえば、幽霊ちゃんは何にも食べてないし、飲んでない。
 もう、食べたり飲んだり出来ないのかな?

「いっつも、美味しそうにビール飲んでるよね? いいなって思うこともあるんだー」

 やめて。
 その自分の心境をここで吐露されても。
 心が痛い!
 頭も痛い!

「でも、一人で飲んでる次郎くん見てるの、好きかも」

 あー、やられたー。

 起き上がって、台所に。

「怒った? うるさかった?」

 そんな心配そうな顔しないでよ。
 俺が悪かったから。

 水を飲んで、ちょっとだけスッキリ。

 そのまま、部屋に。
 幽霊ちゃんが不安そうについてくる。

 そして、部屋の真ん中で土下座。

「心配させてごめんなさい」

 はは、なにその顔。
 ちょっと、流石に悪いとは思ってるから。
 素直にごめんなさい。

「分かれば宜しい!」

 そのあと、一晩中おでこを撫でられ続けた。
 空気がひんやりしてて、気持ちいい。
 心は暖かくなったけど。


 
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