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第3章:ジュブナイルとチョコのダンジョン攻略
第2話:最速帰還ルート
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カナタとかいう子供を拾った結果、驚くことに3人とも無傷で生還を果たすことが出来た。
それも、恐らく最速最短でだろう。
カナタがそれほどに凄い実力を秘めていた?
いやいや、偶然だな。
ただ、恐ろしく強運を持っているという事だけは分かった。
偶然だ……偶然に決まってる。
たまたまだ……たまたま……たまたま……
――――――
遡る事20分前。
「チョコさん震えてるね。手、握ってあげるよ」
カナタを拾ってから、取りあえず下に進む階段捜しを続行することになったのだが、後ろでそんなやり取りが聞こえる。
本当は自分が怖いんじゃないのか?
そんな事を思って後ろをチラッと見る。
改めてカナタをよく見てみる。
艶のある黒い髪に、黒い瞳……イースタンって奴だな。
珍しい。
子供のイースタンってのは、見た事も聞いた事も無かったが居るとこには居るんだな……ダンジョンだけど。
服はシルクっぽいフリルのついたシャツに、これまた艶のある黒いスラックスってやつか?
ベルトには高価そうな、それでいて控えめなバックルか……
まあ貴族は小さく、控えめでありながらも存在感のあるバックルを好むというからな。
冒険者や一般人は、高価な服を揃えるのは大変だから財布、バックル、アクセサリーに派手なのを選んである程度の財力を示すが。
ハッタリにも使いやすいしな。
貴族の場合全身高額だから、どこを見ても金持ちって分かるもんな。
バックルとかの小物は実用性で地味なものを重視しつつ見る人が見たら分かる高価なものを付けるらしい。
勿論余所行きは全てが豪華絢爛な、派手派手な恰好らしいが。
でその物の価値が分かるか分からないかで、その相手との付き合い方が変わるっつーから恐ろしい世界だ。
そういう点で言や、こいつはどっからどう見ても貴族だな。
イースタンの貴族、居るところには居るんだな……ダンジョンだけど。
「ふふ、ありがとうね坊や」
「ムッ、坊やって呼ばれるほど歳離れてなくない?」
チョコが少し安心したのか、笑顔で礼を言っている。
逆にカナタは子供扱いされたことで頬を膨らましながら、それでもチョコの手を取っている。
うん、子供って無邪気でいいよね。
ちょっと羨ましくない事も無いが、俺とチョコが手を繋いだら親子だな。
それに、俺はそんな歳の離れた相手に懸想するほどの分別無しでも無い。
「おじちゃん、僕がビビってると思った?だったら、こんな頼りない女の子じゃなくておじさんと手を繋ぐよ」
「頼りな……い?」
若干チョコがショックを受けているが、確かに一理ありだ。
というか、流石貴族様のお坊ちゃんってところか?
小さいのに大変なこって。
社交界なんかで、すでに腹の探り合いもどきみたいなのが子供の年齢でも行われてるというのは都市伝説じゃ無かったみたいだな。
ちょっとした表情の変化で、俺の思った事を感じ取ったらしい。
「ふふ、違いないな。で、カナタ坊っちゃんは何歳なんだ?」
「いくつに見える?」
うぜー。
女性にやられても腹立たしいのに、ガキにやられたら余計にイラつくわ。
臨時パーティを組む際に、一応年齢もステータスに多少は関係あるから確認することあるが、中途半端な年齢の女性ほどこれをやらかしやがる。
一番気になるのはお前らだ!
ガキや、中年なら熟練度も測りやすいし、そもそも中年になってまで冒険者をやってる女性は大体俺より強い。
16~28くらいの間が、年齢による熟練度の違いも大きくてパーティの能力を知るのに重要なんだよ。
そりゃ2~3歳くらいならそこまでだけど、やけに成熟した10代や、妙に若作りしたなんつったっけ?イースタン風に言うアラーサーってやつか?だと全然見た目と実力が噛み合わねーんだよ。
作戦を組むのに経験等の推測も……はっ、ついイラつきすぎて余計な事を思い出してしまった。
「こわーい」
「おう、そうか!じゃあ、怖いおじちゃんが怒る前に正直に言いな!」
「山賊みたい」
「やかましいわ!」
絶対このガキ俺の事を嘗めてやがってる。
そんな事を思っていると顎に手を当てて何やら考えている。
「うーん、本当にイースタンがいくつに見られるか知りたかったんだけどなあ。まあいいや、12歳だよ?」
「嘘吐け!どう見ても10歳に届くかってとこじゃねーか!」
「えっ?私と4つしか変わらない」
いけしゃあしゃあと平気で嘘吐きやがる。
まあ、嘗められないように鯖を読むって事もあるだろうが、幾らなんでも読み過ぎだ。
「ほらっ?」
そう言って冒険者証を見せられた。
って、冒険者かよ。
しかもF級……仮冒険者でも怪しい年齢なのに。
ちなみにカナタが出したカードはダミーカードである。
冒険者ギルドが正式発行するものと、違法に出回っているものがあるが前者は所持者のステータス以下であれば好きな数字にギルドで書き換えることが出来る。
また、冒険者ギルドで提示した場合正しい数値がギルド側に伝わるので問題無い。
発行はほぼほぼ稀でそれなりの理由が無いと発行される事は無い。
前回のバジリスク退治の報酬である。
ちなみに一部数値が補正値込みの数字より上になっているが、書き込めてしまった為担当のギルド職員は無かったことにした。
補正値がおかしいと脳が警鐘を鳴らし、深く考えた結果恐ろしい啓示が聞こえたような気がしたため、その担当職員は考える事を放棄したのだった。
「本当だ」
「確かに……イースタンってのは化け物か。まあいい、それと正冒険者になって見せびらかしたいのは分かるが、あまり人に見せるもんじゃねーぞ」
一応釘を刺して置く。
冒険者証ってのは、その本人の実力やある程度の情報が分かるため簡単に見せるもんじゃねー。
新人にありがちなミスだが、こういった事を教えるのが俺達ベテランの役割だ。
にしても凡庸だな。
こんなステータスでよくもまあ、この階層で生きてるもんだ。
ヒシト・カナタ
12歳
レベル4
HP12
MP24
筋力8
魔力40
体力11
敏捷62
スキル
気配探知 レベル255
隠密 レベル51
(他にも色々)
うん、一部子供離れしたステータスだが。
魔力があるのに魔法スキルが無い……勿体ない。
図書館でも教えてやるか?
まあ、ここでも平気で歩いていたのはスキルを見て納得したが。
気配探知レベル255ってなんだよ。
確かスキルレベルって10が最大だよな?
限界突破しても15くらいが関の山だ。
人類最高のスキルレベルは、過去の剣聖シュバルツの剣術レベル42だったはず。
あとはドラゴンや魔王、一部の魔族魔物で齢500歳を超える連中ですら最高で150くらいじゃなかったっけ?
あと隠密レベル51ってどういう状況だ?……レベル10で景色と同化出来るらしいから、レベル30くらいでも目の前に居ても認識できないんじゃね?
それが51……想像も付かんわ。
こわっ!
このガキこわっ!
そりゃ、ここでも普通に歩けるわ。
あとパッと見で気付けなかったけど、すげー小さく他にも色々って書いてあった。
なんじゃそりゃ。
イースタンすげーわ。
「ああ、見せる相手くらい選んでるから」
「ああ、なら良い」
「私よりレベル高い……しかも私と同じF級……こんな子供が……」
隣でチョコがめっちゃ凹んでるが、まあ仕方が無いか。
自分よりというか、子供にレベルで負けるとか。
安心しろ、田舎に行ったら場所によっちゃあレベル10のガキとか普通に居るから。
まあ、そんな場所自体が普通じゃないけどな。
「まあいい、取りあえず慎重に進んでくぞ」
カチッ!
「あっ!」
そう言って歩き始めた途端、ガキが罠を踏みやがった。
「馬鹿野郎!なんでそんな出鱈目なスキル持ってて罠探知持ってねーんだよ!」
慌ててカナタを付き飛ばそうと手を伸ばし、カナタに触れた瞬間……
――――――
「ここは……入り口?」
つい数時間前に体験した光の奔流を再度体験し、あっ、転移の罠だこれと絶望した。
こっからさらに上の階層に飛ばされんのかよ!って色々と覚悟した瞬間に何度も見た事のある景色が広がっていた。
やったら広い通路。
あちこちに掲げられたトーチ。
うん、1階層だし入り口の傍だねここ。
こんなラッキーがあって良いものか?
「ごめんなさい、巻き込んじゃった」
足元でカナタが俺のズボンを掴んで申し訳なさそうに頭を下げているが、なんとなく口元がヒク付いてるのが気になる。
怒られるのが怖いっていうより、笑いを堪えてるような気がするのは気のせいだと思いたい。
「ここ……1階層?」
「いやいや、でかしたぞ坊主!」
チョコが呟き、俺も思わずカナタを抱き上げてしまった。
半ば絶望的な状況から、最短最速で帰還。
まさに救いの神としか思えない。
ちなみに1階層に飛ばされる罠もちょいちょい無い事は無い。
帰り道に踏めば凄く有難い罠ではあるが、先に進んで居る時に踏んだ時のガッカリ感というかゲンナリ感は半端ない。
特に攻略を目指した状態で20階層を越えてこの罠を踏んだ冒険者は、心折れて2~3日は再挑戦を諦める。
大体そういった連中は30階層くらいまで、ドロップ品にも目をくれず食料の節約のためサクサク進んで居るから、究極の経費の無駄遣いにガッツリ凹むらしい。
だが、今回は死と隣合わせの帰還ルートだったため最高のアクシデントだ。
「これは!良い罠です!」
チョコがなにやら言っているが、罠はたいてい悪いものだ。
今回は別だが。
「良かったね」
怒られずにホッとしたのだろう。
カナタがそんな呟きを漏らしているが、ならもうちょっと感情を込めて言おうか?
聞いてる側からすれば奥歯にものが挟まったような、なんとも釈然としない反応だなおい!
元から、そこに入り口に飛ばされる罠があったかのような。
タイミングよくチョコの手を掴んでいたことといい、いやそんなわけは無い。
あってたまるか!
中には踏むタイミングで飛ばされる階層が違ったりする転移の罠もあったりするのに、狙って必要な転移の罠を踏める奴なんか存在する訳が無い!
なんとなく背筋を嫌な汗が伝うが、んっ?って感じで子供っぽく首を傾げられると気のせいだと思いたくなる。
うん、たぶん気のせいだろう。
それも、恐らく最速最短でだろう。
カナタがそれほどに凄い実力を秘めていた?
いやいや、偶然だな。
ただ、恐ろしく強運を持っているという事だけは分かった。
偶然だ……偶然に決まってる。
たまたまだ……たまたま……たまたま……
――――――
遡る事20分前。
「チョコさん震えてるね。手、握ってあげるよ」
カナタを拾ってから、取りあえず下に進む階段捜しを続行することになったのだが、後ろでそんなやり取りが聞こえる。
本当は自分が怖いんじゃないのか?
そんな事を思って後ろをチラッと見る。
改めてカナタをよく見てみる。
艶のある黒い髪に、黒い瞳……イースタンって奴だな。
珍しい。
子供のイースタンってのは、見た事も聞いた事も無かったが居るとこには居るんだな……ダンジョンだけど。
服はシルクっぽいフリルのついたシャツに、これまた艶のある黒いスラックスってやつか?
ベルトには高価そうな、それでいて控えめなバックルか……
まあ貴族は小さく、控えめでありながらも存在感のあるバックルを好むというからな。
冒険者や一般人は、高価な服を揃えるのは大変だから財布、バックル、アクセサリーに派手なのを選んである程度の財力を示すが。
ハッタリにも使いやすいしな。
貴族の場合全身高額だから、どこを見ても金持ちって分かるもんな。
バックルとかの小物は実用性で地味なものを重視しつつ見る人が見たら分かる高価なものを付けるらしい。
勿論余所行きは全てが豪華絢爛な、派手派手な恰好らしいが。
でその物の価値が分かるか分からないかで、その相手との付き合い方が変わるっつーから恐ろしい世界だ。
そういう点で言や、こいつはどっからどう見ても貴族だな。
イースタンの貴族、居るところには居るんだな……ダンジョンだけど。
「ふふ、ありがとうね坊や」
「ムッ、坊やって呼ばれるほど歳離れてなくない?」
チョコが少し安心したのか、笑顔で礼を言っている。
逆にカナタは子供扱いされたことで頬を膨らましながら、それでもチョコの手を取っている。
うん、子供って無邪気でいいよね。
ちょっと羨ましくない事も無いが、俺とチョコが手を繋いだら親子だな。
それに、俺はそんな歳の離れた相手に懸想するほどの分別無しでも無い。
「おじちゃん、僕がビビってると思った?だったら、こんな頼りない女の子じゃなくておじさんと手を繋ぐよ」
「頼りな……い?」
若干チョコがショックを受けているが、確かに一理ありだ。
というか、流石貴族様のお坊ちゃんってところか?
小さいのに大変なこって。
社交界なんかで、すでに腹の探り合いもどきみたいなのが子供の年齢でも行われてるというのは都市伝説じゃ無かったみたいだな。
ちょっとした表情の変化で、俺の思った事を感じ取ったらしい。
「ふふ、違いないな。で、カナタ坊っちゃんは何歳なんだ?」
「いくつに見える?」
うぜー。
女性にやられても腹立たしいのに、ガキにやられたら余計にイラつくわ。
臨時パーティを組む際に、一応年齢もステータスに多少は関係あるから確認することあるが、中途半端な年齢の女性ほどこれをやらかしやがる。
一番気になるのはお前らだ!
ガキや、中年なら熟練度も測りやすいし、そもそも中年になってまで冒険者をやってる女性は大体俺より強い。
16~28くらいの間が、年齢による熟練度の違いも大きくてパーティの能力を知るのに重要なんだよ。
そりゃ2~3歳くらいならそこまでだけど、やけに成熟した10代や、妙に若作りしたなんつったっけ?イースタン風に言うアラーサーってやつか?だと全然見た目と実力が噛み合わねーんだよ。
作戦を組むのに経験等の推測も……はっ、ついイラつきすぎて余計な事を思い出してしまった。
「こわーい」
「おう、そうか!じゃあ、怖いおじちゃんが怒る前に正直に言いな!」
「山賊みたい」
「やかましいわ!」
絶対このガキ俺の事を嘗めてやがってる。
そんな事を思っていると顎に手を当てて何やら考えている。
「うーん、本当にイースタンがいくつに見られるか知りたかったんだけどなあ。まあいいや、12歳だよ?」
「嘘吐け!どう見ても10歳に届くかってとこじゃねーか!」
「えっ?私と4つしか変わらない」
いけしゃあしゃあと平気で嘘吐きやがる。
まあ、嘗められないように鯖を読むって事もあるだろうが、幾らなんでも読み過ぎだ。
「ほらっ?」
そう言って冒険者証を見せられた。
って、冒険者かよ。
しかもF級……仮冒険者でも怪しい年齢なのに。
ちなみにカナタが出したカードはダミーカードである。
冒険者ギルドが正式発行するものと、違法に出回っているものがあるが前者は所持者のステータス以下であれば好きな数字にギルドで書き換えることが出来る。
また、冒険者ギルドで提示した場合正しい数値がギルド側に伝わるので問題無い。
発行はほぼほぼ稀でそれなりの理由が無いと発行される事は無い。
前回のバジリスク退治の報酬である。
ちなみに一部数値が補正値込みの数字より上になっているが、書き込めてしまった為担当のギルド職員は無かったことにした。
補正値がおかしいと脳が警鐘を鳴らし、深く考えた結果恐ろしい啓示が聞こえたような気がしたため、その担当職員は考える事を放棄したのだった。
「本当だ」
「確かに……イースタンってのは化け物か。まあいい、それと正冒険者になって見せびらかしたいのは分かるが、あまり人に見せるもんじゃねーぞ」
一応釘を刺して置く。
冒険者証ってのは、その本人の実力やある程度の情報が分かるため簡単に見せるもんじゃねー。
新人にありがちなミスだが、こういった事を教えるのが俺達ベテランの役割だ。
にしても凡庸だな。
こんなステータスでよくもまあ、この階層で生きてるもんだ。
ヒシト・カナタ
12歳
レベル4
HP12
MP24
筋力8
魔力40
体力11
敏捷62
スキル
気配探知 レベル255
隠密 レベル51
(他にも色々)
うん、一部子供離れしたステータスだが。
魔力があるのに魔法スキルが無い……勿体ない。
図書館でも教えてやるか?
まあ、ここでも平気で歩いていたのはスキルを見て納得したが。
気配探知レベル255ってなんだよ。
確かスキルレベルって10が最大だよな?
限界突破しても15くらいが関の山だ。
人類最高のスキルレベルは、過去の剣聖シュバルツの剣術レベル42だったはず。
あとはドラゴンや魔王、一部の魔族魔物で齢500歳を超える連中ですら最高で150くらいじゃなかったっけ?
あと隠密レベル51ってどういう状況だ?……レベル10で景色と同化出来るらしいから、レベル30くらいでも目の前に居ても認識できないんじゃね?
それが51……想像も付かんわ。
こわっ!
このガキこわっ!
そりゃ、ここでも普通に歩けるわ。
あとパッと見で気付けなかったけど、すげー小さく他にも色々って書いてあった。
なんじゃそりゃ。
イースタンすげーわ。
「ああ、見せる相手くらい選んでるから」
「ああ、なら良い」
「私よりレベル高い……しかも私と同じF級……こんな子供が……」
隣でチョコがめっちゃ凹んでるが、まあ仕方が無いか。
自分よりというか、子供にレベルで負けるとか。
安心しろ、田舎に行ったら場所によっちゃあレベル10のガキとか普通に居るから。
まあ、そんな場所自体が普通じゃないけどな。
「まあいい、取りあえず慎重に進んでくぞ」
カチッ!
「あっ!」
そう言って歩き始めた途端、ガキが罠を踏みやがった。
「馬鹿野郎!なんでそんな出鱈目なスキル持ってて罠探知持ってねーんだよ!」
慌ててカナタを付き飛ばそうと手を伸ばし、カナタに触れた瞬間……
――――――
「ここは……入り口?」
つい数時間前に体験した光の奔流を再度体験し、あっ、転移の罠だこれと絶望した。
こっからさらに上の階層に飛ばされんのかよ!って色々と覚悟した瞬間に何度も見た事のある景色が広がっていた。
やったら広い通路。
あちこちに掲げられたトーチ。
うん、1階層だし入り口の傍だねここ。
こんなラッキーがあって良いものか?
「ごめんなさい、巻き込んじゃった」
足元でカナタが俺のズボンを掴んで申し訳なさそうに頭を下げているが、なんとなく口元がヒク付いてるのが気になる。
怒られるのが怖いっていうより、笑いを堪えてるような気がするのは気のせいだと思いたい。
「ここ……1階層?」
「いやいや、でかしたぞ坊主!」
チョコが呟き、俺も思わずカナタを抱き上げてしまった。
半ば絶望的な状況から、最短最速で帰還。
まさに救いの神としか思えない。
ちなみに1階層に飛ばされる罠もちょいちょい無い事は無い。
帰り道に踏めば凄く有難い罠ではあるが、先に進んで居る時に踏んだ時のガッカリ感というかゲンナリ感は半端ない。
特に攻略を目指した状態で20階層を越えてこの罠を踏んだ冒険者は、心折れて2~3日は再挑戦を諦める。
大体そういった連中は30階層くらいまで、ドロップ品にも目をくれず食料の節約のためサクサク進んで居るから、究極の経費の無駄遣いにガッツリ凹むらしい。
だが、今回は死と隣合わせの帰還ルートだったため最高のアクシデントだ。
「これは!良い罠です!」
チョコがなにやら言っているが、罠はたいてい悪いものだ。
今回は別だが。
「良かったね」
怒られずにホッとしたのだろう。
カナタがそんな呟きを漏らしているが、ならもうちょっと感情を込めて言おうか?
聞いてる側からすれば奥歯にものが挟まったような、なんとも釈然としない反応だなおい!
元から、そこに入り口に飛ばされる罠があったかのような。
タイミングよくチョコの手を掴んでいたことといい、いやそんなわけは無い。
あってたまるか!
中には踏むタイミングで飛ばされる階層が違ったりする転移の罠もあったりするのに、狙って必要な転移の罠を踏める奴なんか存在する訳が無い!
なんとなく背筋を嫌な汗が伝うが、んっ?って感じで子供っぽく首を傾げられると気のせいだと思いたくなる。
うん、たぶん気のせいだろう。
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始はこの力を活かす為に町に移住すると、悪徳領主や商人達が不当に得た金品を奪う冒険者生活を始めるのだった・・・。
仕事中の空いている時間に物語を考えているので、更新は不定期です。また、感想や質問にも出来る限り答えるつもりでいますが回答出来ない場合も有ります。多少の強引な設定や進行も有るかもしれませんが、そこは笑って許してください。
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