異世界に召喚されて中世欧州っぽい異世界っぽく色々な冒険者と過ごす日本人の更に異世界の魔王の物語

へたまろ

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第2章:北風とカナタのバジリスク退治!~アリスの場合~ 

第19話:ペルセウスと北風とバジリスク5~絶対絶命からの食事会~

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「取りあえず、熊を解体しようか」
「カバチお願い」
「分かってるよ!その代わり、火をおこしといてね」

 グレイベアは体長ゆうに3mはあるので全ては運べないので、カバチが取りあえず太ももと両腕、お腹の肉だけ切り取って葉っぱに包んで少し開けた所に移動した。
 カバチは狩りを得意としていたおじさんのお陰で、あっ、カバチのお父さんのお陰で森の動物を捌けるんだ。
 何気に、食べれる野草にも詳しいし、おじさんに付き合って狩りにも出てたからレベルもメンバーの中で一番高いし、こうみえて弓も使えたりする。
 優秀なのだよ!おつむ以外は。

「一応野営の事も考えて来たから、調味料も少しは持ってきてるよ」
「良かった、カバチがこっち側で」
「うん、ただ宿泊ようのテントとかも僕が持ってるからカナタとアレクには悪い事しちゃったね」
「うっ……」

 素直に宿泊セットを持ったカバチと一緒だったことを喜んだ私に対して、相手の事を気遣うカバチ。
 というか、そもそもの原因は私だし。
 
「あっ……あっちは、カナタが居るから大丈夫でしょ!」
「そうだよね、カナタが居るなら問題無いか」

 ほっ、上手く誤魔化せたみたい。
 というか、カバチといい、アレクといい、なんでこんなにカナタを信頼できるのか不思議でならない。
 ただの腹黒爽やか風少年なのに。
 はっ!いま、睨まれた気がする!

――――――
 熊に襲われた時にほっぽり出した鞄を回収したカバチが、中から鍋を出すので私が魔法で薪に火を付ける。
 鍋をよく熱すると、そこにカバチが熊の腹から取った脂肪を焼いて油をひく。
 それから薄く切ったもも肉をと、よく塩荒いした掌を並べる。
 意外と掌も油が乗ってて美味しかったりする。
 
「あとは、あっこれとこれが食べられる」

 そう言ってカバチが適当に葉っぱを何枚かちぎって肉の上に振りかける。
 そして二つに折った、何かの茎の両端を包丁で切り落として一緒に焼くと辺りを甘い香りが漂ってくる。

「こっちは蕾を炒めたら甘くて美味しいよ、それからこっちの野草はゆでて灰汁を取らないとお腹が緩くなるから、そっちの鍋に水を入れて沸かせてくれる?」
「あっ、はい」

 カバチが手際よく、良く分からない草に付いてた蕾を肉の入った鍋に放り込むと、こんどは小さい鍋を渡してくるので、そこに水を入れて薪の上に並べて置く。

「あとは……、このふさふさした実も削りとって入れて一緒にゆでて。水を吸ってかさまし出来るし、一応穀物の一種だからね」
「あっ、はい」

 なんかフサフサしたススキみたいなのを渡して来たので、言われた通りにする。
 粟の一種らしい。

「そろそろ良いかな?これはピリッとしてて程よい辛みがあるから、そっちの鍋にって!ちゃんと灰汁を取らないと渋かったり苦かったりで、食べれれないよ!」
「あっ、すいません。はい」

 鍋をチラッとみたカバチ怒られた。
 というか、女子力ってなに?
 まあ、サバイバルだからこの料理は男子力が必要なんだよね?きっと。
 私は悪くないよね?

 ガサッ

 っと、料理に夢中になってたら、また嫌な予感……というか、嫌な音が……

「あっ!」
「あっ!」
「あっ!」
「あっ?」

 カバチが音を聞いて思わず声を出して振り返る。
 私も同じように声を出してしまう。
 そして、聞いた事の無いあっという鳴き声が聞こえる。
 思わず、疑問形で復唱するカバチ。

「人かあ……」
「人だ!」

 そこから現れた人を見て、思わず安堵の溜息がもれる。
 カバチもなんだと言った様子で呟いているが、相手は安堵の余り叫んでしまっているが。
 やめてくれ。
 その声で魔獣が寄って来るかもしれないじゃん。

「すまない。まさか、こんな森の奥に人が居るなんて思わなくて」
「ああ、こっちも、魔獣じゃなくて良かったです」

 私達の方を見て思わず頭を下げてくる、良さげな装備に身を包んだ冒険者風の男性。
 少し汚れて脂ぎっているが、元はサラサラだったんだろうなと思えるよなブロンドヘアーに、煤けた状態でも美形とわかる顔つき。
 ちょっと疲労の色が見えるが、育ちが良さそうな青年だ。

「えっと、お1人ですか?」
「えっ?いや、あと3人ほど向こうに居るんだが。なんというか……」
「なんというか?」
「怪我でもしてるの?」
「怪我というか……」

 なんとも歯切れが悪い。
 
「いや、2人は無事というか、怪我はしているんだが……1人ほど……」
「1人ほど?」
「……」

 なんで、そこで止まる。
 はっきりと喋れ。
 
「はあ……隠してもしょうがないか。石になってる」
「はっ?」
「えっ?」

 こっちのイラつきを感じ取ったのか、美青年が思い切った様子で話してくれたが。
 聞きたくなかったよその情報。

「っと、石化?」
「ってことは、バジリスクに襲われたのですか?」

 またも黙る青年。
 というか、シャキシャキ喋らんかい!っと思わず怒鳴りつけそうになってしまう。
 いや、格上っぽいけど。

「襲われたというか、襲う側だったんだけどね……」
「ああ……バジリスク退治に来て、逆にって事?」
「うっ!まあ、そうなんだけどね」

 ミイラ取りがミイラってやつだね。
 うん、それはちょっと恥ずかしいね。

「準備はしっかりとしてたんだけど、まさかの変異種が居てね。自分以外全員石化しちゃって、なんとか解石剤が2つあったから2人は助かったけど、3人も石化されるなんて思わなくて」
「それでその3人は?」
「そっちに隠れてる」
「石化した人も?」
「うん、それはメンバーの1人の巨人のハーフの男が運んでくれたからね。勿論バジリスクの方にもかなりの傷を入れたから、暫くは動けないと思うけど、止めを刺しに3人で行くか、このまま撤退するかで考えてて……」
「じゃあ、帰り道は分かるんですか?」
「分かるよ」

 よっしゃあ!
 これで、危機的状況は脱した。

「なるほど、私達は人探しに来て迷子になったので、人の事言えませんが……あっ、私は北風のアリスって言います。こっちのがカバチ」
「カバチです」
「ああ、ごめん自己紹介がまだだったね。一応ペルセウスのクリスだ」
「ああ!」
「見つけた!」

 突然叫びだした私達に、思わず美青年改めクリスが後ずさる。

「ノブレスオブリージュからの依頼で、貴方達を探しに来たんですよ!」
「えっ?本当に?あちゃー!もうそんなに経ってたのか」
「取りあえず、無事で良かったです」
「というか、わざわざ僕たちを探しに二人でこんなところまで来られるなんて、結構凄い子達?」
「いや、本当は4人だったんですけど……ハグレちゃって」
「アリスがトイレに行ったからいてっ!」

 余計な事を言う、カバチの脇腹に取りあえず肘打ちを喰らわせて黙らせる。

「じゃあ、一旦戻った方が良いかな?取りあえずメンバーを呼んでくるね」

 そう言ってクリスが藪の奥に入ると、少しして二人と石像を連れて戻って来る。
 っていうか、藪いっこ隔てたとこにいたのか。

「実はこいつが美味しそうな匂いがするっていうから」
「ああ、あまりに良い匂いがしたから、つい気になって。あっ、ジャン・モリオールだ。一応お袋はモリオール子爵の3女だけど、親父……巨人族だけどと駆け落ち同然で家を出てね。ずっと平民として暮らしてたから、ノブレスだけど気は遣わなくていい。というか、親父が死んだ後にジジイが迎えに来て、お前は子爵家に名を連ねる男。うちに戻って来いとか言い出してさ?俺からしたら、親父とお袋を追い出して、貧しい暮らしをさせておいて、何をいまさらって話だよな?でも、まあ、「おいっ!その話長くなるやつだろ?」
「あっ、すまんすまん!という訳だから、身分は貴族の末端の子爵の末端の3女の子だから、ほぼ平民と思ってくれていいよ」

 そう言って紹介されたのはめっちゃ喋る、身長2m50cmくらいありそうな、これまたイケメンだった。
 というか、巨人族って3m程度の小型種から、5mを越える大型種が居るけど、たぶん小型種の方なんだろう。
 そもそも小型種って美形揃いって聞くし。
 5m級は穏やかな性格の巨人から、荒くれものの魔族まで幅広く種族が分かれてるらしいけどね。
 ただ、友好的な巨人族って大人しくて、いつもニコニコと笑っているだけの癒し系って聞いたんだけど……

「でもさ、そこんとこちゃんと理解してもらわないと、俺達というかノブレスって普通の冒険者からかなり評判悪いじゃん?いやいや、確かに一部の勘違い共のせいでってのはあるけど、貴族ってそもそも平民からしたら腫れものな訳で、こう冒険者の中じゃ異質なんだから「分かったけど、初対面でこんな状況でそんな詳しく説明する必要あるか?ほら、2人とも困ってるじゃん」
「それは俺達がノブレスだから!「違う、お前が凄い勢いで喋るからだよ!」

 思わずポカンとしてしまうほどに、よく喋る。
 静かな癒し系?
 ああ、お母様に似たのかな?

「いや、しょうがないじゃん!親父だってめっちゃ喋る人だったぜ?お袋は巨人なのによく喋る親父と一緒になったら飽きない毎日になると思って結婚したらしいし。まあ、ルックスもかなり良かったみたいだしな。親父と俺が喋るのを楽しそうにお袋はニコニコと聞いてたぜ?」
「いや、お前、それこそいま関係無いから」

 はっ?
 どうやらお父様に似たらしい。
 おいっ、誰や巨人族が大人しいって言ったやつ。

「はあ……すまない、でこっちがテオラだ」

 続いて若くて可愛らしい女の子を紹介される。

「テオラ・ペスカリッチです。ペスカリッチ伯爵家の二女です。平民風情が私と口を聞くなんて無礼ですが許して差し上げない事はありませんわよ?それとそちらの女性は歳が近いようですので、どうしてもというなら友達になってあげなくもないですわよ?いや、私がなりたいというわけではなく、貴女がどうしてもというならですわよ?」
「いや、結構です」
「えっ?あの、遠慮なさらなくても良いのですよ?それにお友達になったからといっても、一緒に遊ぶかどうかは別ですし。ただ、貴女がどうしてもというなら、一緒に食事に行ったり買い物に行ったりしてさしあげないこともありませんわよ?まあ、恥ずかしいし気後れしてしまうのは分かりますわ?貴方は平民で私は貴族ですもの。ですけど、その目はどうしてもお友達になりたいのですよね?ですよね?」
「いえ、別に……」
「本当は?本当はどうなのですか?私と友達になるのはお嫌なのですか?」

 面倒くさい……
 超上から目線なのに、ここまで本心がダダ漏れなのはどうかと思う。
 断って、若干涙目になってるし。

「嫌ってわけじゃ……」
  
 本当は嫌だけど。

「仕方ない方ですわね!どうしても友達になりたいみたいですので、特別に許して差し上げますわ!さらに特別にテオラと呼ぶことも許して差し上げますわよ!その変わり……私もアリスと呼ばせてもらいます」
 
 だんだん声が小さくなっていってるうえに、顔真っ赤だし。
 というか、この子もめっちゃ喋る。
 
「ごめん……一応、悪い子じゃないんだけどね」
「まあ、こいつは別として、こんな感じでひたすら立場をひけらかす奴が多いから俺達嫌われるんだよな?」
「えっ?私のせいですの?」

 ジャンの言葉に、テオラが若干傷付いている。
 よく、こいつらパーティとして成立してるな。
 なんとなく、そこの石像を元に戻さない方が良い気がしてきた。

「あっ、そうそうそこの少年。申し訳ないんだが、俺達にもその食べ物分けてくれないか?お金なら戻った時に適正な金額払うから」
「いや、ただで良いよ」

 ジャンがそう言えばといった様子でカバチに話しかける。

「おい、さっき言ったろ?女の子がアリスで、男の子がカバチって。それにここまで4人で来るような冒険者なんだから、そこそこ腕も立つだろうし。そこの少年は失礼だろ」
「ううん、気にしてないから大丈夫」
「だってさ大将!本人もそう言ってるんだから良いじゃねーか!カバチか、ジャンだ宜しく!」
 
 そう言って太い手を差し出すジャン。

「うん、知ってる。さっき聞いた」

 その手を受け取るカバチが突っ込んでいる。

「そうか?なら、もう知り合いだな!」
「ふふっ、そうだね!じゃあ、一緒に食べようよ!」
「良いのか?」
「勿論!」

 おおう、単純もの同士通じるものがあるのか、既に仲良くなってる様子。
 この2人は相性良さそうだな。

「その私も、アリスとその……」
「ああもう!宜しくね!」
「仕方ありませんわね!」

 ムカッ!
 手を前に組んでモジモジしてたから、強引にその手を取って握手してあげるとテオラは頬を赤らめながらそんな事を言ってきた。
 可愛いような、可愛くないような。

「しっかし柔らかい肉だな。これなんの肉だ?」
「うん?それはグレイベアの掌だよ!」
「グレイベア!すげーな!まだ若そうなのに2人でグレイベアを狩れるのか?というか、グレイベアって食えるのか!掌うめー!」
「アリスの魔法のお陰だよ!」

 それは火を起こしたという意味で?グレイベアには全く効いてませんでしたけどなにか?
 まあ、カバチは盾が倒したとは思っていないようだけど。
 それと、パーティメンバーの私が食べるより先になんで食べてるのかなジャンさんは?

「ああ、すまんな。3日前に食料が尽きて、そっからギリギリ分かる範囲で野草しか食べてなかったから。弓専門のテューイは石になっちゃったから、鳥も取れなくてさ、特に彼は身体が大きいから」
「ああ、納得。それは災難でしたね」

 そう言ってクリスが苦笑いしている。
 気が付いたらテオラも野草の乗ったもも肉を食べている。
 貴族令嬢が外で魔獣の熊の肉を食べているとか、ご家族の方が知ったらどう思うのだろう。

「まあ、食べられなくも無いですわね。美味しくない事もないですわ。まあ、貴族向けでは無いですけど、私は嫌いでは無いですわ」

 そう?その割には凄い勢いで食べてますね。
 面倒くさい。

「このスープも、嫌いではないですわ。私個人としてですけど、貴族には合わないでしょうね。まあ……」

 スープを一口食べて、テオラがまた面倒くさい事を言ってる。
 そして二口目を口に入れた瞬間に固まってる。
 三口目で目をカッと見開いた。
 それから凄い勢いで口に運び出す。

「美味しい……なんですの!食べれば食べる程、様々な野草の味が鮮明に感じられてきて、それぞれが独自の歯ごたえと香りを持っているのに、というか、鼻を抜ける上品な香り、下に感じられるピリッとした爽やかな辛み、それでいて食べごたえのある実のようなもの。美味しい!美味しいですわ!」
「いやあ、そこまで褒められると照れるよ」
「ええ?アリスさんじゃなくて、貴方が作ったのですか?てっきり、こんな繊細な料理女性が作られたものだと……いや、確かにここまでくると。うちの料理人も男ばかりですし。料理はやはり男性の方が得意なものなのでしょうか?ならば私の料理が美味しくないのも道理」
「いや、それ間違ってるから!」
 
 思わずテオラのとんでも理論に突っ込んでしまった。
 料理人に男性が多いのと、テオラの料理が美味しくないのは別問題だと思うよ?

「確かに、これは美味しい。いや、凄いね」

 クリスさんも、カバチに手渡されたスープを飲んで感動している。
 というか、早く私も食べないと、私の分が無くなるーー!
 
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