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第2章:北風とカナタのバジリスク退治!~アリスの場合~
第18話:ペルセウスと北風とバジリスク4~バジリスクの潜む森~
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「という訳で、ただいまより行方不明となったペルセウスの探索の為、エストフォレスト深部、シンフォレストの攻略に向かいます!」
「おーーー!」
「おーーー!」
「おー……」
カナタの宣言に対して元気よく返事する二人に対して、私はちょっと声小さめに答えた。
というか、ここはまだエストフォレストの入り口というか、ネクストフォレストの街の出口であって……周りにはこれから違う依頼の冒険に出るパーティや、他の街に向かう商人さん達が居るんだけど。
そんな大声で、有名パーティの失踪事件を発表するのはどうかと思うよ?
「えっ?ペルセウスって、あのノブレスオブリージュの?」
「まさか!だって、その中でも結構上位の方じゃなかったっけ?」
「というか、そもそもノブレスの連中の仲間が不明になって外注するか?」
「もしかするかも……最近クリスが店に来なくなったし」
あちこちでヒソヒソと話す声が聞こえるし。
「フッ……」
あっ、カナタがかなり悪い笑みを浮かべてる。
これって……わざと周囲に聞こえるように大きな声で言ったのか?
そうなのか?
「斬りかかられそうになったり、魔法ぶつけられたりしたからな。このくらい、別に良いだろ?」
「いや、てか根にもってたの?当てられたわけでもないのに?」
「一発は一発だ」
意外と根に持つタイプらしい。
こいつだけは怒らせないようにしないと。
「でどこら辺に居るかはもう分かってるの?」
「大体はな」
そう言ってニヤリとするカナタ。
普通に行って、普通に助けるだけだよね?
というか、別にあんた一人で行っても良いんだよ?
そんな事を思っていると、カナタが歩き始めた。
割と豪華な馬車の方に。
「一応、この魔除けの魔道具を搭載した馬車でシンフォレストの入り口まで乗せてってもらう事になったから」
なったからじゃないわよ!
どうりで、途中で姿消したかと思ったらこんな馬車借りて来てたの?
ってか、これいくらよ!
「勿論、これも経費で……だけどな」
「酷いな!」
思わず突っ込んでしまった。
というか、これをシンフォレストまで……約6時間くらい借りるとなると金貨が何枚居るんだろう……
「大丈夫、金貨5枚で借りられたよ」
「さいですか」
容赦の無いカナタのお陰でシンフォレストまでは、かなり楽に進む事が出来た。
そして、私達は今鬱蒼と生い茂る森の入り口に立っている。
「それじゃあ、これから森に入るからはぐれないようにな?」
「分かってるわよ!こんなところではぐれたらどうしようも……いや、迷ったらはぐれなくても終わりそうだけど」
「俺には人の気配が読めるから、迷う訳ないじゃん」
そうだった。
取りあえず、カナタとさえはぐれなければなんとかなるだろう。
――――――
「はぐれた……」
「はぐれたねー……」
と思っていたのに、森に入って2時間弱……カナタとアレクの姿が見えない。
そして横に居るのはとっても頼りになるカバチ……
不安でしかない。
「取りあえずさ、動かない方が良いよね?」
「そうね……、このままジッとしてたらカナタ達が探しに来てくれるかな?」
完全に人任せだけど、下手に動いてカナタ達から離れたら絶望的だという事は分かった。
ただ、そもそも魔獣溢れるこの場所でカナタ達が居たからってなんだというのだろう。
所詮はレベル5の無職なのに、何故か頼りにしてしまっている自分に少しげんなりしつつカバチと手ごろな場所を見つけて、そこに座り込む。
遠くから狼の遠吠えが聞こえる。
「あれは、フォレストウルフだよ?まあ、あれくらいなら僕でもなんとかなるけど」
「まあ、頼もしい。じゃあ、狼が出てきたら取りあえず邪魔にならないように隠れとくから」
「どうやって?鼻が凄く利くのに?というか、1匹ならなんだけど?群れに襲われたら無理だよ?」
全く頼りにならなかったわ。
――――――
それからさらに3時間……全然カナタ達が来てくれる気配が無い。
幸い魔獣にも遭遇してないけど、流石に不安になってくる。
「もしかして……もしかしてだけど、カナタとアレクがバジリスクに襲われて……」
「それは無いと思うけど。カナタならバジリスクくらいなんとかしそうだけどね」
何故だかそんな気がしてならないけど、ちょっと不安になってくる。
「大体さ、アリスがちゃんと出発前にトイレに行かないからこんなことになったんだよ!」
「うっ……ごめん」
そう、私がちょっと花を摘みに行くために、カバチを連れてアレクとカナタからちょっと離れただけなのだが、それがまさかこんなことになるとは。
シンフォレスト嘗めてました。
「ここじゃ音が聞こえるとか言って、どんどん奥に進んでいったあげく、どっちから来たか分からないとか勘弁してよ」
「だって、あの時は急いでたし。カバチだって道覚えて無いんだから一緒じゃん!」
大体、なんで二人揃って道を覚えてないんだって話だけどね。
「そりゃ、場所を決めたのはアリスなんだから、アリスが覚えてると思うじゃん!」
「だから仕方ないじゃん。もう限界だったんだから!」
「はぁ……そんなんなら、最初からカナタに言われた通りにサイレント掛けて貰ってすぐ近くで済ませれば良かったのに」
うっ……
「ごめん」
カナタがサイレントをかけようか?と言ってくれたのを断ったのは私だ。
だって、カナタがサイレントかけたところでカナタには聞かれそうな気がしたし。
ガサッ
「あっ……」
「あっ……」
っと二人で言い争いをしていたら、周囲の外敵の警戒を怠っていた。
すぐそばで音がしたかと思ったら、背後からグレイベアが現れた。
「やあ!」
「またあったね」
と言ってしまいそうなほど、記憶に新しいアイツだ。
カナタとの出会いのきっかけになった奴。
おそらくそれとは別の個体だろうけど、
「グァァァァァァ!」
「きゃああああああ!」
思いっきり威嚇されて、私はもう全力で走ったね。
それはもう魔法職とは思えない速さで。
「あっ!アリス待って!」
カバチを置き去りにして。
そして、少し遅れてカバチが追いかけてくる。
私の後ろを!
「馬鹿カバチ!どうせなら違う方向に逃げなさいよ!」
「だって、こっちの方が走りやすいし!」
「グルルルルォォォ!」
さらにその後ろを凄い速さで4足で走って来る熊。
ヤバいヤバいヤバい!
倒木の下を潜ったり、狭い木の隙間を通ったりするがグレイベアは強靭な腕で全てを弾き飛ばしておっかけてくる。
障害物のお陰で距離が縮まる事はないが、それでも気が抜ける状況じゃない。
そもそも体力的なものが、違い過ぎる。
カバチと比べても断然劣る私が、森の中を全力で走った結果。
「ぜえ……ぜえ……もう無理……ちょっとカバチ、なんとか、はあ……はあ……しなさいよ!」
「ええ?アリス体力無さすぎでしょ!」
すでに息も絶え絶えで、いつの間にか抜き去られたカバチに手を引っ張ってもらっているといった状況だ。
私はこいつを置き去りにしたのに、カバチ良い奴……
「グギュァァァァ!」
「えっ!」
「危ないアリス!」
そしてついに倒木を潜った私達の前に、倒木を飛び越えたグレイベアが立ちはだかり、一瞬で薙ぎ払われる。
すんでのところでカバチに押し飛ばされた私はともかく、その熊の一撃をもろに喰らったカバチが3mくらい吹っ飛んで木にぶつかる。
「カバチーーーー!」
「ギャアアアア!」
慌ててカバチに向かおうとするが、それよりも早くグレイベアがカバチに向かって駆け出す。
駄目だ、間に合わない!
「【火球】」
魔法を放って熊を足止めしようとするが、背中の毛を少し焦がしただけで速度を落とすことなくカバチに熊が覆いかぶさる。
と同時に弾き飛ばされる。
「えっ?誰か来てくれたの?」
突然の出来事に思わず足も手も止まってしまう。
そして無数の光る矢が熊目がけて飛んでいく。
「魔法使い?」
グレイベアが光る矢に全身を貫かれて崩れ落ちた事で、ようやくその先が見える。
えっ?盾?
「我が持ち主に手を出そうとは、獣の分際で生意気な!」
そして喋る盾……
うん……うん?
はっ?
見ると気を失ったカバチの前に、カナタがあげた盾が直立してる。
盾がどうやって自立してるのかはともかく、カバチに撫でられてにこやかな笑みを浮かべていた女神のレリーフが今は憤怒の表情を浮かべている。
「グ……グルルゥ」
「う……う~ん……あれっ?熊は?」
グレイベアが辛そうに起き上がるのと同時にカバチが目を覚ます。
「いや、カバチ大丈夫?」
「うん?僕は大丈夫だけど、凄いね!グレイベアやっつけたの?」
カバチは頭を振って、全身を貫かれてヨロヨロと歩こうとする熊を見て私にキラキラとした目を向けてくる。
やめて、私じゃないから。
むしろ置いて逃げようとしたうえに、カバチを危険な目に合わせてしかも庇ってもらっただけだから。
だから、そんな純粋な憧れの目を向けないで。
「……」
ふと盾を見ると、またニコニコとした微笑に変わっていた。
ちょっ、なんとか言ってよ!
さっきみたいに喋ってよ!
しかも若干目が冷たいんですけど?
元の持ち主そっくりだなおい!
「私じゃない!盾が守ってくれただけだから!いいから、カバチ早く止めを!」
「うん!」
私の呼びかけに、腰の後ろに横向きに掛けた鞘からショートソードを取り出して、カバチが熊の眉間を思いっきり突く。
えっ?いやいや、喉とか胸とかもっと柔らかいところあるでしょ!
なんでよりによって厚い脂肪と、固い頭骨に護られたそこを狙うの!
「アタックエンハンス、ガードリデュース」
私の予想とは裏腹に、ズグシュという音を鳴らしてカバチのショートソードが隈の眉間を貫く
というか、今思いっきり補助魔法と妨害魔法使って無かった?その盾。
ちょっと、その盾物凄く欲しいんですけど?
なんで私はなんでも凍らせる石ころなのよ!
そんな盾があるなら、もっと凄いもんあったでしょ!
「やった!倒したよ!」
「へー、スゴイデスネ」
「なんで棒読み?」
どうやらカバチは気付いていないらしい。
まあ、ともかくグレイベアという大物を討伐出来た事で、少し安心する。
「で、ここどこ?」
「あっ……」
どうやら、熊においやられてさらに森の奥に入ってしまったらしい。
完全に周囲が見覚えの無い景色だ。
いや、元々見覚えの無い景色だけど、植生がね……
森の奥にようこそ!っていうように原始的な草や、苔の入った木が歓迎してくれている。
「終わった……」
「えっ?」
私の呟きに、カバチが泣きそうになっている。
いや、まあ食料はそこの熊のお陰で困ら無さそうだけどね。
火も水も魔法でどうにかなりそうだけど。
魔物も……その盾があれば……
(今の戦闘で蓄えられた魔力を使い切りましたので、明日までは動けませんよ。その間主を宜しくお願いしますね)
脳内に透き通るような、綺麗な女性の声が響き渡る。
そっとカバチの持った盾に目を向けると、困ったように微笑んだあとウィンクされた。
終わった……
トイレに付き合わせて、一緒に迷子になって、熊に追いかけられて、カバチを置いて逃げて、そのカバチに助けられたあげくさらに迷子……
カバチごめん……
「おーーー!」
「おーーー!」
「おー……」
カナタの宣言に対して元気よく返事する二人に対して、私はちょっと声小さめに答えた。
というか、ここはまだエストフォレストの入り口というか、ネクストフォレストの街の出口であって……周りにはこれから違う依頼の冒険に出るパーティや、他の街に向かう商人さん達が居るんだけど。
そんな大声で、有名パーティの失踪事件を発表するのはどうかと思うよ?
「えっ?ペルセウスって、あのノブレスオブリージュの?」
「まさか!だって、その中でも結構上位の方じゃなかったっけ?」
「というか、そもそもノブレスの連中の仲間が不明になって外注するか?」
「もしかするかも……最近クリスが店に来なくなったし」
あちこちでヒソヒソと話す声が聞こえるし。
「フッ……」
あっ、カナタがかなり悪い笑みを浮かべてる。
これって……わざと周囲に聞こえるように大きな声で言ったのか?
そうなのか?
「斬りかかられそうになったり、魔法ぶつけられたりしたからな。このくらい、別に良いだろ?」
「いや、てか根にもってたの?当てられたわけでもないのに?」
「一発は一発だ」
意外と根に持つタイプらしい。
こいつだけは怒らせないようにしないと。
「でどこら辺に居るかはもう分かってるの?」
「大体はな」
そう言ってニヤリとするカナタ。
普通に行って、普通に助けるだけだよね?
というか、別にあんた一人で行っても良いんだよ?
そんな事を思っていると、カナタが歩き始めた。
割と豪華な馬車の方に。
「一応、この魔除けの魔道具を搭載した馬車でシンフォレストの入り口まで乗せてってもらう事になったから」
なったからじゃないわよ!
どうりで、途中で姿消したかと思ったらこんな馬車借りて来てたの?
ってか、これいくらよ!
「勿論、これも経費で……だけどな」
「酷いな!」
思わず突っ込んでしまった。
というか、これをシンフォレストまで……約6時間くらい借りるとなると金貨が何枚居るんだろう……
「大丈夫、金貨5枚で借りられたよ」
「さいですか」
容赦の無いカナタのお陰でシンフォレストまでは、かなり楽に進む事が出来た。
そして、私達は今鬱蒼と生い茂る森の入り口に立っている。
「それじゃあ、これから森に入るからはぐれないようにな?」
「分かってるわよ!こんなところではぐれたらどうしようも……いや、迷ったらはぐれなくても終わりそうだけど」
「俺には人の気配が読めるから、迷う訳ないじゃん」
そうだった。
取りあえず、カナタとさえはぐれなければなんとかなるだろう。
――――――
「はぐれた……」
「はぐれたねー……」
と思っていたのに、森に入って2時間弱……カナタとアレクの姿が見えない。
そして横に居るのはとっても頼りになるカバチ……
不安でしかない。
「取りあえずさ、動かない方が良いよね?」
「そうね……、このままジッとしてたらカナタ達が探しに来てくれるかな?」
完全に人任せだけど、下手に動いてカナタ達から離れたら絶望的だという事は分かった。
ただ、そもそも魔獣溢れるこの場所でカナタ達が居たからってなんだというのだろう。
所詮はレベル5の無職なのに、何故か頼りにしてしまっている自分に少しげんなりしつつカバチと手ごろな場所を見つけて、そこに座り込む。
遠くから狼の遠吠えが聞こえる。
「あれは、フォレストウルフだよ?まあ、あれくらいなら僕でもなんとかなるけど」
「まあ、頼もしい。じゃあ、狼が出てきたら取りあえず邪魔にならないように隠れとくから」
「どうやって?鼻が凄く利くのに?というか、1匹ならなんだけど?群れに襲われたら無理だよ?」
全く頼りにならなかったわ。
――――――
それからさらに3時間……全然カナタ達が来てくれる気配が無い。
幸い魔獣にも遭遇してないけど、流石に不安になってくる。
「もしかして……もしかしてだけど、カナタとアレクがバジリスクに襲われて……」
「それは無いと思うけど。カナタならバジリスクくらいなんとかしそうだけどね」
何故だかそんな気がしてならないけど、ちょっと不安になってくる。
「大体さ、アリスがちゃんと出発前にトイレに行かないからこんなことになったんだよ!」
「うっ……ごめん」
そう、私がちょっと花を摘みに行くために、カバチを連れてアレクとカナタからちょっと離れただけなのだが、それがまさかこんなことになるとは。
シンフォレスト嘗めてました。
「ここじゃ音が聞こえるとか言って、どんどん奥に進んでいったあげく、どっちから来たか分からないとか勘弁してよ」
「だって、あの時は急いでたし。カバチだって道覚えて無いんだから一緒じゃん!」
大体、なんで二人揃って道を覚えてないんだって話だけどね。
「そりゃ、場所を決めたのはアリスなんだから、アリスが覚えてると思うじゃん!」
「だから仕方ないじゃん。もう限界だったんだから!」
「はぁ……そんなんなら、最初からカナタに言われた通りにサイレント掛けて貰ってすぐ近くで済ませれば良かったのに」
うっ……
「ごめん」
カナタがサイレントをかけようか?と言ってくれたのを断ったのは私だ。
だって、カナタがサイレントかけたところでカナタには聞かれそうな気がしたし。
ガサッ
「あっ……」
「あっ……」
っと二人で言い争いをしていたら、周囲の外敵の警戒を怠っていた。
すぐそばで音がしたかと思ったら、背後からグレイベアが現れた。
「やあ!」
「またあったね」
と言ってしまいそうなほど、記憶に新しいアイツだ。
カナタとの出会いのきっかけになった奴。
おそらくそれとは別の個体だろうけど、
「グァァァァァァ!」
「きゃああああああ!」
思いっきり威嚇されて、私はもう全力で走ったね。
それはもう魔法職とは思えない速さで。
「あっ!アリス待って!」
カバチを置き去りにして。
そして、少し遅れてカバチが追いかけてくる。
私の後ろを!
「馬鹿カバチ!どうせなら違う方向に逃げなさいよ!」
「だって、こっちの方が走りやすいし!」
「グルルルルォォォ!」
さらにその後ろを凄い速さで4足で走って来る熊。
ヤバいヤバいヤバい!
倒木の下を潜ったり、狭い木の隙間を通ったりするがグレイベアは強靭な腕で全てを弾き飛ばしておっかけてくる。
障害物のお陰で距離が縮まる事はないが、それでも気が抜ける状況じゃない。
そもそも体力的なものが、違い過ぎる。
カバチと比べても断然劣る私が、森の中を全力で走った結果。
「ぜえ……ぜえ……もう無理……ちょっとカバチ、なんとか、はあ……はあ……しなさいよ!」
「ええ?アリス体力無さすぎでしょ!」
すでに息も絶え絶えで、いつの間にか抜き去られたカバチに手を引っ張ってもらっているといった状況だ。
私はこいつを置き去りにしたのに、カバチ良い奴……
「グギュァァァァ!」
「えっ!」
「危ないアリス!」
そしてついに倒木を潜った私達の前に、倒木を飛び越えたグレイベアが立ちはだかり、一瞬で薙ぎ払われる。
すんでのところでカバチに押し飛ばされた私はともかく、その熊の一撃をもろに喰らったカバチが3mくらい吹っ飛んで木にぶつかる。
「カバチーーーー!」
「ギャアアアア!」
慌ててカバチに向かおうとするが、それよりも早くグレイベアがカバチに向かって駆け出す。
駄目だ、間に合わない!
「【火球】」
魔法を放って熊を足止めしようとするが、背中の毛を少し焦がしただけで速度を落とすことなくカバチに熊が覆いかぶさる。
と同時に弾き飛ばされる。
「えっ?誰か来てくれたの?」
突然の出来事に思わず足も手も止まってしまう。
そして無数の光る矢が熊目がけて飛んでいく。
「魔法使い?」
グレイベアが光る矢に全身を貫かれて崩れ落ちた事で、ようやくその先が見える。
えっ?盾?
「我が持ち主に手を出そうとは、獣の分際で生意気な!」
そして喋る盾……
うん……うん?
はっ?
見ると気を失ったカバチの前に、カナタがあげた盾が直立してる。
盾がどうやって自立してるのかはともかく、カバチに撫でられてにこやかな笑みを浮かべていた女神のレリーフが今は憤怒の表情を浮かべている。
「グ……グルルゥ」
「う……う~ん……あれっ?熊は?」
グレイベアが辛そうに起き上がるのと同時にカバチが目を覚ます。
「いや、カバチ大丈夫?」
「うん?僕は大丈夫だけど、凄いね!グレイベアやっつけたの?」
カバチは頭を振って、全身を貫かれてヨロヨロと歩こうとする熊を見て私にキラキラとした目を向けてくる。
やめて、私じゃないから。
むしろ置いて逃げようとしたうえに、カバチを危険な目に合わせてしかも庇ってもらっただけだから。
だから、そんな純粋な憧れの目を向けないで。
「……」
ふと盾を見ると、またニコニコとした微笑に変わっていた。
ちょっ、なんとか言ってよ!
さっきみたいに喋ってよ!
しかも若干目が冷たいんですけど?
元の持ち主そっくりだなおい!
「私じゃない!盾が守ってくれただけだから!いいから、カバチ早く止めを!」
「うん!」
私の呼びかけに、腰の後ろに横向きに掛けた鞘からショートソードを取り出して、カバチが熊の眉間を思いっきり突く。
えっ?いやいや、喉とか胸とかもっと柔らかいところあるでしょ!
なんでよりによって厚い脂肪と、固い頭骨に護られたそこを狙うの!
「アタックエンハンス、ガードリデュース」
私の予想とは裏腹に、ズグシュという音を鳴らしてカバチのショートソードが隈の眉間を貫く
というか、今思いっきり補助魔法と妨害魔法使って無かった?その盾。
ちょっと、その盾物凄く欲しいんですけど?
なんで私はなんでも凍らせる石ころなのよ!
そんな盾があるなら、もっと凄いもんあったでしょ!
「やった!倒したよ!」
「へー、スゴイデスネ」
「なんで棒読み?」
どうやらカバチは気付いていないらしい。
まあ、ともかくグレイベアという大物を討伐出来た事で、少し安心する。
「で、ここどこ?」
「あっ……」
どうやら、熊においやられてさらに森の奥に入ってしまったらしい。
完全に周囲が見覚えの無い景色だ。
いや、元々見覚えの無い景色だけど、植生がね……
森の奥にようこそ!っていうように原始的な草や、苔の入った木が歓迎してくれている。
「終わった……」
「えっ?」
私の呟きに、カバチが泣きそうになっている。
いや、まあ食料はそこの熊のお陰で困ら無さそうだけどね。
火も水も魔法でどうにかなりそうだけど。
魔物も……その盾があれば……
(今の戦闘で蓄えられた魔力を使い切りましたので、明日までは動けませんよ。その間主を宜しくお願いしますね)
脳内に透き通るような、綺麗な女性の声が響き渡る。
そっとカバチの持った盾に目を向けると、困ったように微笑んだあとウィンクされた。
終わった……
トイレに付き合わせて、一緒に迷子になって、熊に追いかけられて、カバチを置いて逃げて、そのカバチに助けられたあげくさらに迷子……
カバチごめん……
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さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
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