8 / 74
第1章:仮冒険者と魔王様、冒険者になる!~エンの場合~
第7話:エンついに念願のF級冒険者になる(笑)
しおりを挟む
「どうやって、捕まえたんですか?」
机の上に置かれた角ウサギの角を見て、ユリアさんが身を乗り出して聞いてくる。
そんなに意外ですか? 僕がこれを持ってきたのが……
物凄く、物凄く失礼な質問にちょっと悲しくなる。
でも良く考えるんだエン! 僕は角ウサギを狩っていないじゃないか!
だから、ユリアさんのこの態度は当たり前のものじゃないのか?
確かに、角ウサギのあのスピードを見たら、僕が狩れるようなレベルじゃない事は一目瞭然だったな。
それに、ユリアさんはじめギルド職員の方々は冒険者のステータスをある程度把握しているから、今の僕のレベルじゃ到底狩ることは出来ないと思っていんだろうな……そうだよ!
僕の力じゃないよ!
カナタさんのお陰だよ!
でも、もう少しくらい信じてくれてもいいじゃん。
なんて事を考えていたら、ちょっと時間が経ち過ぎてしまったようだ。
横で暇を持て余したカナタさんがとんでも無い事を言い出す。
「いや、目の前に角ウサギが現れた瞬間に、彼は手に持っていたナイフを投げたんだよ。確かに人間が走るよりは早いし、事実ウサギの後ろ脚に命中してね……そこからは早かった。マントをウサギに投げつけて身動きを封じて、そのままマントごと腰に差したショートソードで止めを刺して終わり! いやぁ、冒険者ってのは凄いもんだね」
あんたは何を言ってんだ?
そんな事が出来るなら、だてに9ヶ月も仮冒険者なんてやってないですよ。
「きっと常に想定していたんだろうね……角ウサギを見つけてから狩るまでの流れは、相当のイメージトレーニングを行って来たに違いない、見事な動きだったよ」
うん……いつか狩れたらいいなーって妄想はしてましたが、捕まえる段取りなんて考えちゃいませんでしたよ。
というか、想定外の速さに森に迷わされて殺されかけましたけど何か?
そんな事を考えながら白い目をカナタさんに向けているとクスリと笑われた。
「懐かしいなその目……よく配下の者や、敵から向けられてたっけ……」
何やら過去を懐かしむような表情をされた……解せぬ。
というか、配下とか敵とかやっぱり大物だったんじゃないですか!
なんとも言えない表情でカナタさんを見つめていると、ユリアさんに肩をチョンチョンとされる。
そっちに視線を送ると、何かを要求するかのように手を出して来る。
うん、何かなー?
何が欲しいのかなー?
なんとなく分かるけど、分かりたくない……
「嘘ですよね? ちょっとエン君、ギルドカードを提出してくれるかな?」
案の定、ユリアさんにジト目で見られながら冒険者証の提出を要求される。
はい、早速ピンチ来ました!
冒険者証には討伐した魔物の情報が何故か記載されるんだよね。
どういう仕組みなんだろう?
っていうか、冒険者証見られたら一発でバレるんですけど?
打って変わって恨みがましい目をカナタさんに向けると、顔を背けられた。
聞こえましたよ? ブフッっていう声?
いま、貴方そっちを向いて必死で笑うの堪えてるんでしょ?
やっぱり、カナタさんってやっぱりな人だった……
「えっと、そのですね……その角ウサギの角なんですけど……」
「いいから、ギルドカード早く見せてくれるかなー? お姉さん、エン君が立派に角ウサギを倒した証明が見たいなー」
うん、貴女も全然カナタさんの言う事信用してないでしょ?
てか、僕が狩ってないってすでにユリアさんの中で確定してるっぽい。
失礼な人だ! ……その通りですけどね。
僕は冒険者証を提出すると同時にジャンピング土下座の準備に入る。
イースタンの人が流行らせた、謝罪の最上級の形の1つだ。
その上には土下寝というものがあるらしいが、それはもう命を取られてもおかしくない時に使うものらしい。
「嘘つき!」
はっ? はあああ? えっ? なんで僕が?
嘘吐いたのカナタさんですよね?
なんで、その視線をこっちに向けるんですか?
ちょっ! カナタさん! 助けてくださいよ!
と言えたらどんなに楽だろうか……
ユリアさんのセリフを聞いた瞬間、僕はカウンターから後ろにジャンプしてそのまま土下座の姿勢に入る。
「でも、これで彼はF級冒険者だろ?」
が……意外な事に助け舟を出してくれたのもカナタさんだった。
僕は正座して、今にも頭を地面に擦りつけんとする中途半端な姿勢で固まってしまった。
そしてそんなカナタさんの言葉に、ユリアさんが目を見開いている。
ああ、あれですね……
こんなズルして、F級になんかなれるわけないでしょ? っていう、呆れの表情って奴ですね?
「いや、まあそうなんですけどね……」
だが、ユリアさんの口から出たのは僕の予想に反して肯定の言葉だった。
ナンダッテー!
いや、えっ? どういうこと?
「フフッ……キミも中々意地が悪いね。気が合いそうだ」
「仮冒険者とは思えない不遜な物言いですね……でも奇遇です。私も嫌いじゃないですよ」
なんで通じ合ってるのこの二人。
というか、お願い説明プリーズ!
「えっと、僕がF級昇格って本当ですか?」
僕の言葉に、ユリアさんが静かに頷くと説明を始めてくれる。
「ええ、本当ですよ。冒険者に求められる事は確実な任務遂行の能力ですから。手段は問いませんよ? 角ウサギの角をかって来ることが条件です。要は目的は角の提供です。手段は、買おうが狩ろうが関係ありませんから……むしろ柔軟な発想で確実に依頼を達成できる方が、角ウサギを狩る能力しか無い人より優秀です」
うん、本当にカナタさんの言った通りだった。
というか、トンチか!
いくらなんでも、これは酷い!
流石に文句を言おうかとも思ったが、ここでへそを曲げられて昇進がおじゃんになるのも嫌だから黙っていた。
「ていうか、逆に角ウサギ狩れないのに、角持ってくる人の方が優秀ですしね。ちなみに犯罪は駄目ですよ? 強奪や窃盗では無い事の確認の為にギルドカードを出してくださいって意味ですから」
「ああ、ならこれで宜しいでしょうか?」
ああ、そういう事か……
見事に引っ掛けられたというか、騙されたというか……
もうやだ……カナタさんも、ユリアさんも苦手だ。
「おめでとうございます! これで、エンさんもF級冒険者ですよ!」
そう言って、冒険者証を更新してくれる。
ああ……夢にまで見た冒険者の証!
紙だった冒険者証から、金属製のプレートにランクアップだ!
全てが金属というわけではなく裏側には魔法の板が張り付けられていて、そこにステータス等の情報が記載されている。
プレートを手に取って、感動に浸っていると周囲から拍手が送られてくる。
「おめでとう!」
「おめでとうエンさん!」
「ついに、冒険者の仲間入りだな!」
「エン坊も、これで一人前か!」
「うわー、俺あと半年は掛かる方にかけてたのに」
「私も……エン君って真面目だから、愚直にステータスアップ図って角ウサギ狩って来ると思ったのに、ちょっとガッカリ……」
「いや、良いんだよ。冒険者としてはこっちの方がな」
職員の方々や、冒険者の先輩方、僕より後から入って来た子達が賛辞の言葉を送ってくれる。
余りの嬉しさに感動して泣きそうになっていると、カナタさんがユリアさんに話しかけるのが見えた。
「えっと……俺も角ウサギの角を提出したらいいのか?」
「いえ、カナタさんは別の課題です。そうですね、アスラの森に生息する尾長鳥の風切り羽を狩ってきてください」
なんだろう……ユリアさんに嘘吐いたからか僕の課題より、遥かに難易度の高い要求されてる。
ププッ! ざまーみろ!
普段の行いが、見事に返って来てら。なんて事を考えていたら、ニコニコと笑いながら睨まれた。
背筋が凍るような感覚に陥るが、ニコニコ笑いながら睨むとか器用すぎるだろおい!
「それは、これかな?」
そう言ってカナタさんが、これまたどこからか黄色い羽を取り出してユリアさんに提出している。
ブッ! ちょっ、なんで持ってるんですか!
「えっ? あっ……はい、それです……」
ユリアさんが物凄い面食らった顔をしている。
ユリアさんのあんな表情、初めて見たな。
「お……おめでとうございます。カナタさんもこれでF級冒険者です……」
ユリアさんが面白く無さそうにカナタさんから、冒険者証を受け取っている。
そうですか……僕が9ヶ月かかったのに、一日というかその場でF級ですか……
というか、このタイミングの必要あったのですか?
わざとですか? わざとですね……だって、目がちゃんと笑ってますもんね……
チキショー!
そして、僕の時とは違って周囲の人達が生気の無い目でカナタさんを見つめている。
まるで死んだ魚のような目をしている。
「あれ? 俺の時はそんなに祝福されないのかな?」
そんな周囲の様子を知ってか知らずか、無神経にもカナタさんがボソッと呟く。
少し間を置いてから、遠慮がちにその場に居た全員から拍手が送られる。
「おい……やっぱりアイツ、ヤバいって」
「なんで、エンの奴あんなやつと居るんだ?」
「ああ、もしかして角ウサギの角もあの人が用意したんじゃない?」
「ありえる……というか、尾長鳥とかまず見つけるのが大変なのに」
「狩人じゃなさそうだし、もしかして魔法使い?」
ああ、そうですよ? 僕の角ウサギもカナタさんが取ってくれましたよ?
「これ無駄になっちゃったな……ああ、そういえば素材の買い取りとかもしてくれるんだよね?」
ゴトンという音が、目の前のカウンターから聞こえてくる。
そう! カナタさんはさらに僕に追い打ちをかけるかのように、袋から角ウサギの角を机に出していた。
僕の出したそれより、かなり長く立派な角だ……おいフザケンナ! そっちを僕にくれよ!
というか、なんで今出すの?
鬼なの? 悪魔なの?
空気読めないとかってレベルじゃないよ?
一周回って空気読んで、空気壊しましたってレベルだよ?
もうやだ……帰りたい。
「えっ? あっ、はい。素材の買い取りはあちらになります」
知ってたよね?
だって、あそこにめっちゃデカく素材買い取り受付って書いてあるもんね?
知っててここに出したよね?
周囲の人達は、僕がF級に昇格したのなんかとっくに記憶の彼方に置き去りにして、カナタさんの事を話している。
うん、儚く消えた僕のスポットライト……どこに行ったの? 次はいつ浴びられるの?
机の上に置かれた角ウサギの角を見て、ユリアさんが身を乗り出して聞いてくる。
そんなに意外ですか? 僕がこれを持ってきたのが……
物凄く、物凄く失礼な質問にちょっと悲しくなる。
でも良く考えるんだエン! 僕は角ウサギを狩っていないじゃないか!
だから、ユリアさんのこの態度は当たり前のものじゃないのか?
確かに、角ウサギのあのスピードを見たら、僕が狩れるようなレベルじゃない事は一目瞭然だったな。
それに、ユリアさんはじめギルド職員の方々は冒険者のステータスをある程度把握しているから、今の僕のレベルじゃ到底狩ることは出来ないと思っていんだろうな……そうだよ!
僕の力じゃないよ!
カナタさんのお陰だよ!
でも、もう少しくらい信じてくれてもいいじゃん。
なんて事を考えていたら、ちょっと時間が経ち過ぎてしまったようだ。
横で暇を持て余したカナタさんがとんでも無い事を言い出す。
「いや、目の前に角ウサギが現れた瞬間に、彼は手に持っていたナイフを投げたんだよ。確かに人間が走るよりは早いし、事実ウサギの後ろ脚に命中してね……そこからは早かった。マントをウサギに投げつけて身動きを封じて、そのままマントごと腰に差したショートソードで止めを刺して終わり! いやぁ、冒険者ってのは凄いもんだね」
あんたは何を言ってんだ?
そんな事が出来るなら、だてに9ヶ月も仮冒険者なんてやってないですよ。
「きっと常に想定していたんだろうね……角ウサギを見つけてから狩るまでの流れは、相当のイメージトレーニングを行って来たに違いない、見事な動きだったよ」
うん……いつか狩れたらいいなーって妄想はしてましたが、捕まえる段取りなんて考えちゃいませんでしたよ。
というか、想定外の速さに森に迷わされて殺されかけましたけど何か?
そんな事を考えながら白い目をカナタさんに向けているとクスリと笑われた。
「懐かしいなその目……よく配下の者や、敵から向けられてたっけ……」
何やら過去を懐かしむような表情をされた……解せぬ。
というか、配下とか敵とかやっぱり大物だったんじゃないですか!
なんとも言えない表情でカナタさんを見つめていると、ユリアさんに肩をチョンチョンとされる。
そっちに視線を送ると、何かを要求するかのように手を出して来る。
うん、何かなー?
何が欲しいのかなー?
なんとなく分かるけど、分かりたくない……
「嘘ですよね? ちょっとエン君、ギルドカードを提出してくれるかな?」
案の定、ユリアさんにジト目で見られながら冒険者証の提出を要求される。
はい、早速ピンチ来ました!
冒険者証には討伐した魔物の情報が何故か記載されるんだよね。
どういう仕組みなんだろう?
っていうか、冒険者証見られたら一発でバレるんですけど?
打って変わって恨みがましい目をカナタさんに向けると、顔を背けられた。
聞こえましたよ? ブフッっていう声?
いま、貴方そっちを向いて必死で笑うの堪えてるんでしょ?
やっぱり、カナタさんってやっぱりな人だった……
「えっと、そのですね……その角ウサギの角なんですけど……」
「いいから、ギルドカード早く見せてくれるかなー? お姉さん、エン君が立派に角ウサギを倒した証明が見たいなー」
うん、貴女も全然カナタさんの言う事信用してないでしょ?
てか、僕が狩ってないってすでにユリアさんの中で確定してるっぽい。
失礼な人だ! ……その通りですけどね。
僕は冒険者証を提出すると同時にジャンピング土下座の準備に入る。
イースタンの人が流行らせた、謝罪の最上級の形の1つだ。
その上には土下寝というものがあるらしいが、それはもう命を取られてもおかしくない時に使うものらしい。
「嘘つき!」
はっ? はあああ? えっ? なんで僕が?
嘘吐いたのカナタさんですよね?
なんで、その視線をこっちに向けるんですか?
ちょっ! カナタさん! 助けてくださいよ!
と言えたらどんなに楽だろうか……
ユリアさんのセリフを聞いた瞬間、僕はカウンターから後ろにジャンプしてそのまま土下座の姿勢に入る。
「でも、これで彼はF級冒険者だろ?」
が……意外な事に助け舟を出してくれたのもカナタさんだった。
僕は正座して、今にも頭を地面に擦りつけんとする中途半端な姿勢で固まってしまった。
そしてそんなカナタさんの言葉に、ユリアさんが目を見開いている。
ああ、あれですね……
こんなズルして、F級になんかなれるわけないでしょ? っていう、呆れの表情って奴ですね?
「いや、まあそうなんですけどね……」
だが、ユリアさんの口から出たのは僕の予想に反して肯定の言葉だった。
ナンダッテー!
いや、えっ? どういうこと?
「フフッ……キミも中々意地が悪いね。気が合いそうだ」
「仮冒険者とは思えない不遜な物言いですね……でも奇遇です。私も嫌いじゃないですよ」
なんで通じ合ってるのこの二人。
というか、お願い説明プリーズ!
「えっと、僕がF級昇格って本当ですか?」
僕の言葉に、ユリアさんが静かに頷くと説明を始めてくれる。
「ええ、本当ですよ。冒険者に求められる事は確実な任務遂行の能力ですから。手段は問いませんよ? 角ウサギの角をかって来ることが条件です。要は目的は角の提供です。手段は、買おうが狩ろうが関係ありませんから……むしろ柔軟な発想で確実に依頼を達成できる方が、角ウサギを狩る能力しか無い人より優秀です」
うん、本当にカナタさんの言った通りだった。
というか、トンチか!
いくらなんでも、これは酷い!
流石に文句を言おうかとも思ったが、ここでへそを曲げられて昇進がおじゃんになるのも嫌だから黙っていた。
「ていうか、逆に角ウサギ狩れないのに、角持ってくる人の方が優秀ですしね。ちなみに犯罪は駄目ですよ? 強奪や窃盗では無い事の確認の為にギルドカードを出してくださいって意味ですから」
「ああ、ならこれで宜しいでしょうか?」
ああ、そういう事か……
見事に引っ掛けられたというか、騙されたというか……
もうやだ……カナタさんも、ユリアさんも苦手だ。
「おめでとうございます! これで、エンさんもF級冒険者ですよ!」
そう言って、冒険者証を更新してくれる。
ああ……夢にまで見た冒険者の証!
紙だった冒険者証から、金属製のプレートにランクアップだ!
全てが金属というわけではなく裏側には魔法の板が張り付けられていて、そこにステータス等の情報が記載されている。
プレートを手に取って、感動に浸っていると周囲から拍手が送られてくる。
「おめでとう!」
「おめでとうエンさん!」
「ついに、冒険者の仲間入りだな!」
「エン坊も、これで一人前か!」
「うわー、俺あと半年は掛かる方にかけてたのに」
「私も……エン君って真面目だから、愚直にステータスアップ図って角ウサギ狩って来ると思ったのに、ちょっとガッカリ……」
「いや、良いんだよ。冒険者としてはこっちの方がな」
職員の方々や、冒険者の先輩方、僕より後から入って来た子達が賛辞の言葉を送ってくれる。
余りの嬉しさに感動して泣きそうになっていると、カナタさんがユリアさんに話しかけるのが見えた。
「えっと……俺も角ウサギの角を提出したらいいのか?」
「いえ、カナタさんは別の課題です。そうですね、アスラの森に生息する尾長鳥の風切り羽を狩ってきてください」
なんだろう……ユリアさんに嘘吐いたからか僕の課題より、遥かに難易度の高い要求されてる。
ププッ! ざまーみろ!
普段の行いが、見事に返って来てら。なんて事を考えていたら、ニコニコと笑いながら睨まれた。
背筋が凍るような感覚に陥るが、ニコニコ笑いながら睨むとか器用すぎるだろおい!
「それは、これかな?」
そう言ってカナタさんが、これまたどこからか黄色い羽を取り出してユリアさんに提出している。
ブッ! ちょっ、なんで持ってるんですか!
「えっ? あっ……はい、それです……」
ユリアさんが物凄い面食らった顔をしている。
ユリアさんのあんな表情、初めて見たな。
「お……おめでとうございます。カナタさんもこれでF級冒険者です……」
ユリアさんが面白く無さそうにカナタさんから、冒険者証を受け取っている。
そうですか……僕が9ヶ月かかったのに、一日というかその場でF級ですか……
というか、このタイミングの必要あったのですか?
わざとですか? わざとですね……だって、目がちゃんと笑ってますもんね……
チキショー!
そして、僕の時とは違って周囲の人達が生気の無い目でカナタさんを見つめている。
まるで死んだ魚のような目をしている。
「あれ? 俺の時はそんなに祝福されないのかな?」
そんな周囲の様子を知ってか知らずか、無神経にもカナタさんがボソッと呟く。
少し間を置いてから、遠慮がちにその場に居た全員から拍手が送られる。
「おい……やっぱりアイツ、ヤバいって」
「なんで、エンの奴あんなやつと居るんだ?」
「ああ、もしかして角ウサギの角もあの人が用意したんじゃない?」
「ありえる……というか、尾長鳥とかまず見つけるのが大変なのに」
「狩人じゃなさそうだし、もしかして魔法使い?」
ああ、そうですよ? 僕の角ウサギもカナタさんが取ってくれましたよ?
「これ無駄になっちゃったな……ああ、そういえば素材の買い取りとかもしてくれるんだよね?」
ゴトンという音が、目の前のカウンターから聞こえてくる。
そう! カナタさんはさらに僕に追い打ちをかけるかのように、袋から角ウサギの角を机に出していた。
僕の出したそれより、かなり長く立派な角だ……おいフザケンナ! そっちを僕にくれよ!
というか、なんで今出すの?
鬼なの? 悪魔なの?
空気読めないとかってレベルじゃないよ?
一周回って空気読んで、空気壊しましたってレベルだよ?
もうやだ……帰りたい。
「えっ? あっ、はい。素材の買い取りはあちらになります」
知ってたよね?
だって、あそこにめっちゃデカく素材買い取り受付って書いてあるもんね?
知っててここに出したよね?
周囲の人達は、僕がF級に昇格したのなんかとっくに記憶の彼方に置き去りにして、カナタさんの事を話している。
うん、儚く消えた僕のスポットライト……どこに行ったの? 次はいつ浴びられるの?
125
お気に入りに追加
346
あなたにおすすめの小説

神様の願いを叶えて世界最強!! ~職業無職を極めて天下無双する~
波 七海
ファンタジー
※毎週土曜日更新です。よろしくお願い致します。
アウステリア王国の平民の子、レヴィンは、12才の誕生日を迎えたその日に前世の記憶を思い出した。
自分が本当は、藤堂貴正と言う名前で24歳だったという事に……。
天界で上司に結果を出す事を求められている、自称神様に出会った貴正は、異世界に革新を起こし、より進化・深化させてほしいとお願いされる事となる。
その対価はなんと、貴正の願いを叶えてくれる事!?
初めての異世界で、足掻きながらも自分の信じる道を進もうとする貴正。
最強の職業、無職(ニート)となり、混乱する世界を駆け抜ける!!
果たして、彼を待っているものは天国か、地獄か、はたまた……!?
目指すは、神様の願いを叶えて世界最強! 立身出世!

おっさん付与術師の冒険指導 ~パーティーを追放された俺は、ギルドに頼まれて新米冒険者のアドバイザーをすることになりました~
日之影ソラ
ファンタジー
十年前――
世界は平和だった。
多くの種族が助け合いながら街を、国を造り上げ、繁栄を築いていた。
誰もが思っただろう。
心地良いひと時が、永遠に続けばいいと。
何の根拠もなく、続いてくれるのだろうと……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
付与術師としてパーティーに貢献していたシオン。
十年以上冒険者を続けているベテランの彼も、今年で三十歳を迎える。
そんなある日、リーダーのロイから突然のクビを言い渡されてしまう。
「シオンさん、悪いんだけどあんたは今日でクビだ」
「クビ?」
「ああ。もう俺たちにあんたみたいなおっさんは必要ない」
めちゃくちゃな理由でクビになってしまったシオンだが、これが初めてというわけではなかった。
彼は新たな雇い先を探して、旧友であるギルドマスターの元を尋ねる。
そこでシオンは、新米冒険者のアドバイザーにならないかと提案されるのだった。
一方、彼を失ったパーティーは、以前のように猛威を振るえなくなっていた。
順風満帆に見えた日々も、いつしか陰りが見えて……
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる