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第1章:仮冒険者と魔王様、冒険者になる!~エンの場合~
第3話:ようこそ湖の町レイクポートへ
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いまいちカナタさんの理屈に納得は出来てないけれど、取り合えずものはためしだという事で角ウサギの角を持っていくことで話は纏まった。
「じゃあ、俺はこの子を逃がしてくるからちょっと待ってて」
カナタさんはそう言うと、森の中を踏み入っていく。
うん……ここで逃がしてもいいんじゃないかな?
そんな怪しい行動に、付いて行こうとしたときに声を掛けられる。
「あっ、付いてこようとしても気配で分かるから」
ですよねー……忘れてたけど。
にしても怪しい、どうしても気になる。
けどどうしようも出来ないか。
それから少しして、カナタさんが戻って来る。
相変わらず、爽やかなスマイルを携えているが何をしてきたか凄く気になる。
「あの……普通に逃がしたんですよね?」
「うん、そうだよ」
ニコニコと何もないかのように答える彼に、余計に怪しさを覚えつつも諦めるしかないか。
「じゃあ、行こうか」
「ええ……」
うー……気になる。
けど、彼のスマイルは全くもって、付け入るスキがない。
それから、しばらくチラチラとカナタさんに目をやりながら森を進むと、一気に視界が開ける。
「道だ!」
「うん、ここを真っすぐ歩く人の気配がポツポツとしてたからね」
そうですか……僕には分かりませんけど。
それから、暫く何事も無く森の中の道を真っすぐ進むと、目の前に森スライムが飛び込んでくる。
が、こっちを見るとすぐに興味を無くしたかのように、森に戻って行った。
終始、こんな状況でちょいちょい低級の魔物が出てくるけれど、すぐに森に返っていく。
どっちかというと、何かを確認しに来ているかのようだ。
なんでかって?
皆、カナタさんの方をチラッと見てから慌てて森に帰って行ったからね。
絶対、この人凄い人だよなー……
森を40分程歩くと、森の出口に出る。
ここからは、平原を丘に向かってちょっと上ると、僕が拠点にしている町が見えてくる。
大きな湖を中心に、人口約5000人が住む中規模の町だ。
滞在中の冒険者や行商人、観光客を含めると、おおよそ6000人近くの人がここには居る。
「はー、どうにか生きて帰れる」
僕は、森の出口で大きく深呼吸をして空を見上げる。
うん、もう星が出始めてるよ。
でも、どうにか夜は宿で泊まれそうで良かった。
「ふーん……あの先に町があるんだ」
となりで、ボソッとつぶやいたカナタさんはどこか楽しそうだ。
まあ、今まで何をしていたのか聞きそびれたが、久しぶりに町に行くんだろうな。
取りあえず歩こう。
「ここからは、僕が案内しますよ」
「っていっても、一本道だけどね」
……
なんか、ちょいちょい悪意を感じる発言があるのは気のせいだろう。
それにしても、一般人ぽい恰好の割には体力が凄いよな。
全然疲れた様子も見えないし、何より服も靴も汚れてないし本人も涼しい顔をしているから、とてもじゃないが森を歩いてきたなんて誰も思わないだろうな。
本当にこの人何者?
「えっと……カナタさんは、身分証明書とか持ってます? 冒険者では無さそうですけど、商業ギルドや魔法ギルドの発行する身分証でも良いのですが」
「えっ? それってどんなやつ?」
どんなやつって言われても、困るんだけど。
もしかして、身分証自体知らないのかな。
本当に。東の大陸から迷って来た人かもしれないな……
「えっと、これです」
そう言って、僕が自分の冒険者証を見せると手を伸ばしてくる。
まあ、仕方が無いか。
慌てて、その手を避けるように手をあげると、彼が一瞬驚いた表情をする。
というより、なんでって顔ですねそれ。
「ダメですよ! ギルドの発行するものには、本人の詳しい情報やステータスが乗ってますので、無暗に見てはいけないんですから」
「えっ? そうなの? じゃあ、仕方が無いか」
そう言って、彼が何かをこっちに差し出してくる。
ブッ!
えっ? なんで?
ふと自分の手を見ると、そこには何もない。
あの、一瞬で取られたの?
っていうか、確実に避けたよね?
どうやって?
「ん? 見ちゃいけないんだろ? 返すよ」
「え、あっ……はい」
僕は、そう言ってカナタさんから自分の冒険者証を受け取る。
この人戦闘系は苦手って言ってたけど、絶対嘘だよね。
だって、直接戦闘でも全く勝てる気しないし。
「はあ……気を付けてくださいね! 体重や年齢が乗ってますから、うかつに女性の冒険者証を覗いた日には殺されたってしょうがないですよ!」
「それは怖いねー」
うん、全然怖がってないですね。
あまり緊張感の無い返事に、気が抜けてくる。
もういいや、ちょっと慣れて来たし。
それから、また歩くのを再開する。
そして、20分後……どうにか、レイクポートの町の門の前に辿り着く。
門の両脇には松明が大量に掲げられていて道を広範囲に渡って照らしている。
門の外にも、数本並べてある。
この街は、夜も人の出入りがあるから広範囲に渡って明かりで照らして、門の上から常に衛兵が交代で見張っている。
そして、門の両脇にも二人の衛兵が立っている。
魔物襲撃や、怪しい集団が近付いてきたときは、門の上の衛兵が警鐘を鳴らしすぐに門を閉められるようにしているのだ。
「止まれ! ってなんだ、エンか」
「ああ、こんばんわガンツさん」
僕に声を掛けて来たのは、頬に十文字傷のあるかなりおでこの広い40代の男性だ。
それなりに実力のある兵士だったらしいけど、年齢的に前線で戦うのがきつくなったらしく門兵に志願したらしい。
といっても、それでもC級冒険者の戦士職よりは強いらしい。
「随分遅かったな……出たの朝だっただろ? 何かあったか?」
「いえ、ちょっと珍しい獲物が居たので追っかけたらちょっと迷ってしまって」
「おいおい……森の中には入るなって、ギルドで習うだろ?」
僕の言葉に、ガンツさんはちょっと呆れ気味だ。
「まあ、冒険者だもんな……そこに、珍しいものがあれば冒険もしたくなるか。無事で良かったな!」
すぐにニカっと笑うと、背中をバシバシと叩いてくる。
いくら皮鎧を着てるからって、ちょっと痛いです。
苦笑いをしつつその手をかわすと、ガンツさんはん? っとした表情を浮かべたあと、すぐに僕の背後に視線を移す。
「それで、後ろの男性は?」
「ああ、こちらはカナタさんという方で、森で迷っていた僕を拾ってくださった方です」
僕の言葉に一瞬驚いたガンツさんだったが、すぐに何かに納得したかのようにうんうんと首を縦に振る。
それから、カナタさんの方に話しかける。
「ああ、うちのルーキーを助けてくれてありがとうな。ところで見ない顔……というより、見ない人種だがイースタンか?」
「イースタンになるんでしょうね。カナタと言います。まあ、俺としては東洋人って言われた方がピンと来るけど」
ガンツさんの質問に、相変わらず飄々とした様子でカナタさんが受けごたえする。
それから、身分証を持っていない事を話すと、門の裏にある詰め所に案内される。
「さてと、街の滞在許可証を発行するから、まずはこちらの用紙に記入してくれるか?」
ガンツさんが差し出した紙を見て、カナタさんが首を傾げる。
ああ、そうかイースタンだから、文字が分からないのかな?
いや、そんな事は無いだろう。
たしか、イースタンの人達はこっちの文字を使ってるって聞いたけど。
「ああ、読めるし書けるのか……この辺はテンプレだな」
また、何やら意味の分からない呟きが聞こえる。
テンプレってなんだろう?
すぐにサラサラと羽ペンで内容を埋めていく。
「そうだ、こいつの身元保証人はお前で良いのかエン? 身元保証人が要れば、このまま発行して終わりだが」
「ええ、命の恩人でもありますし……なんとなくですが、信用に値する人だと思いますよ」
身元保証人が居ない場合は、基本的にこの詰め所の横の宿泊施設に3日間は押し込まれる。
布団も何もないただの石造りの建物で、外出の際は衛兵が1人付いてくる。
しかも、制限時間は30分だ。
とはいえ、このシステムが発動したのを余り見たことが無い。
大体が身元保証人が居るか、そもそも身分証を持っていない人なんてほとんどいない。
無くした人も、すぐに自分の町で再発行してもらうし、知り合いが身元保証してくれるからね。
例外は、こちらに来たばかりのイースタンがたまにここにお世話になるって事くらいで、それも数年に1度のレベルだからね。
すぐに身分証を発行してもらうことが出来たので、簡単に町に入る事が出来た。
門を潜ると、目の前に石畳が敷かれた大通りに直面している。
そして、その両脇は商店がひしめき合っている。
当然、もう夜なので閉まっているお店も多いが、飲食関係はまだまだ開いている。
「ようこそ、レイクポートへ!」
ガンツさんがそう言って、カナタさんを通す。
「うん、素晴らしいな」
カナタさんは目をキラキラさせて、町の様子を見ている。
うん、取り合えず僕はいつまでこの人に付き合ったら良いんだろう……
「じゃあ、俺はこの子を逃がしてくるからちょっと待ってて」
カナタさんはそう言うと、森の中を踏み入っていく。
うん……ここで逃がしてもいいんじゃないかな?
そんな怪しい行動に、付いて行こうとしたときに声を掛けられる。
「あっ、付いてこようとしても気配で分かるから」
ですよねー……忘れてたけど。
にしても怪しい、どうしても気になる。
けどどうしようも出来ないか。
それから少しして、カナタさんが戻って来る。
相変わらず、爽やかなスマイルを携えているが何をしてきたか凄く気になる。
「あの……普通に逃がしたんですよね?」
「うん、そうだよ」
ニコニコと何もないかのように答える彼に、余計に怪しさを覚えつつも諦めるしかないか。
「じゃあ、行こうか」
「ええ……」
うー……気になる。
けど、彼のスマイルは全くもって、付け入るスキがない。
それから、しばらくチラチラとカナタさんに目をやりながら森を進むと、一気に視界が開ける。
「道だ!」
「うん、ここを真っすぐ歩く人の気配がポツポツとしてたからね」
そうですか……僕には分かりませんけど。
それから、暫く何事も無く森の中の道を真っすぐ進むと、目の前に森スライムが飛び込んでくる。
が、こっちを見るとすぐに興味を無くしたかのように、森に戻って行った。
終始、こんな状況でちょいちょい低級の魔物が出てくるけれど、すぐに森に返っていく。
どっちかというと、何かを確認しに来ているかのようだ。
なんでかって?
皆、カナタさんの方をチラッと見てから慌てて森に帰って行ったからね。
絶対、この人凄い人だよなー……
森を40分程歩くと、森の出口に出る。
ここからは、平原を丘に向かってちょっと上ると、僕が拠点にしている町が見えてくる。
大きな湖を中心に、人口約5000人が住む中規模の町だ。
滞在中の冒険者や行商人、観光客を含めると、おおよそ6000人近くの人がここには居る。
「はー、どうにか生きて帰れる」
僕は、森の出口で大きく深呼吸をして空を見上げる。
うん、もう星が出始めてるよ。
でも、どうにか夜は宿で泊まれそうで良かった。
「ふーん……あの先に町があるんだ」
となりで、ボソッとつぶやいたカナタさんはどこか楽しそうだ。
まあ、今まで何をしていたのか聞きそびれたが、久しぶりに町に行くんだろうな。
取りあえず歩こう。
「ここからは、僕が案内しますよ」
「っていっても、一本道だけどね」
……
なんか、ちょいちょい悪意を感じる発言があるのは気のせいだろう。
それにしても、一般人ぽい恰好の割には体力が凄いよな。
全然疲れた様子も見えないし、何より服も靴も汚れてないし本人も涼しい顔をしているから、とてもじゃないが森を歩いてきたなんて誰も思わないだろうな。
本当にこの人何者?
「えっと……カナタさんは、身分証明書とか持ってます? 冒険者では無さそうですけど、商業ギルドや魔法ギルドの発行する身分証でも良いのですが」
「えっ? それってどんなやつ?」
どんなやつって言われても、困るんだけど。
もしかして、身分証自体知らないのかな。
本当に。東の大陸から迷って来た人かもしれないな……
「えっと、これです」
そう言って、僕が自分の冒険者証を見せると手を伸ばしてくる。
まあ、仕方が無いか。
慌てて、その手を避けるように手をあげると、彼が一瞬驚いた表情をする。
というより、なんでって顔ですねそれ。
「ダメですよ! ギルドの発行するものには、本人の詳しい情報やステータスが乗ってますので、無暗に見てはいけないんですから」
「えっ? そうなの? じゃあ、仕方が無いか」
そう言って、彼が何かをこっちに差し出してくる。
ブッ!
えっ? なんで?
ふと自分の手を見ると、そこには何もない。
あの、一瞬で取られたの?
っていうか、確実に避けたよね?
どうやって?
「ん? 見ちゃいけないんだろ? 返すよ」
「え、あっ……はい」
僕は、そう言ってカナタさんから自分の冒険者証を受け取る。
この人戦闘系は苦手って言ってたけど、絶対嘘だよね。
だって、直接戦闘でも全く勝てる気しないし。
「はあ……気を付けてくださいね! 体重や年齢が乗ってますから、うかつに女性の冒険者証を覗いた日には殺されたってしょうがないですよ!」
「それは怖いねー」
うん、全然怖がってないですね。
あまり緊張感の無い返事に、気が抜けてくる。
もういいや、ちょっと慣れて来たし。
それから、また歩くのを再開する。
そして、20分後……どうにか、レイクポートの町の門の前に辿り着く。
門の両脇には松明が大量に掲げられていて道を広範囲に渡って照らしている。
門の外にも、数本並べてある。
この街は、夜も人の出入りがあるから広範囲に渡って明かりで照らして、門の上から常に衛兵が交代で見張っている。
そして、門の両脇にも二人の衛兵が立っている。
魔物襲撃や、怪しい集団が近付いてきたときは、門の上の衛兵が警鐘を鳴らしすぐに門を閉められるようにしているのだ。
「止まれ! ってなんだ、エンか」
「ああ、こんばんわガンツさん」
僕に声を掛けて来たのは、頬に十文字傷のあるかなりおでこの広い40代の男性だ。
それなりに実力のある兵士だったらしいけど、年齢的に前線で戦うのがきつくなったらしく門兵に志願したらしい。
といっても、それでもC級冒険者の戦士職よりは強いらしい。
「随分遅かったな……出たの朝だっただろ? 何かあったか?」
「いえ、ちょっと珍しい獲物が居たので追っかけたらちょっと迷ってしまって」
「おいおい……森の中には入るなって、ギルドで習うだろ?」
僕の言葉に、ガンツさんはちょっと呆れ気味だ。
「まあ、冒険者だもんな……そこに、珍しいものがあれば冒険もしたくなるか。無事で良かったな!」
すぐにニカっと笑うと、背中をバシバシと叩いてくる。
いくら皮鎧を着てるからって、ちょっと痛いです。
苦笑いをしつつその手をかわすと、ガンツさんはん? っとした表情を浮かべたあと、すぐに僕の背後に視線を移す。
「それで、後ろの男性は?」
「ああ、こちらはカナタさんという方で、森で迷っていた僕を拾ってくださった方です」
僕の言葉に一瞬驚いたガンツさんだったが、すぐに何かに納得したかのようにうんうんと首を縦に振る。
それから、カナタさんの方に話しかける。
「ああ、うちのルーキーを助けてくれてありがとうな。ところで見ない顔……というより、見ない人種だがイースタンか?」
「イースタンになるんでしょうね。カナタと言います。まあ、俺としては東洋人って言われた方がピンと来るけど」
ガンツさんの質問に、相変わらず飄々とした様子でカナタさんが受けごたえする。
それから、身分証を持っていない事を話すと、門の裏にある詰め所に案内される。
「さてと、街の滞在許可証を発行するから、まずはこちらの用紙に記入してくれるか?」
ガンツさんが差し出した紙を見て、カナタさんが首を傾げる。
ああ、そうかイースタンだから、文字が分からないのかな?
いや、そんな事は無いだろう。
たしか、イースタンの人達はこっちの文字を使ってるって聞いたけど。
「ああ、読めるし書けるのか……この辺はテンプレだな」
また、何やら意味の分からない呟きが聞こえる。
テンプレってなんだろう?
すぐにサラサラと羽ペンで内容を埋めていく。
「そうだ、こいつの身元保証人はお前で良いのかエン? 身元保証人が要れば、このまま発行して終わりだが」
「ええ、命の恩人でもありますし……なんとなくですが、信用に値する人だと思いますよ」
身元保証人が居ない場合は、基本的にこの詰め所の横の宿泊施設に3日間は押し込まれる。
布団も何もないただの石造りの建物で、外出の際は衛兵が1人付いてくる。
しかも、制限時間は30分だ。
とはいえ、このシステムが発動したのを余り見たことが無い。
大体が身元保証人が居るか、そもそも身分証を持っていない人なんてほとんどいない。
無くした人も、すぐに自分の町で再発行してもらうし、知り合いが身元保証してくれるからね。
例外は、こちらに来たばかりのイースタンがたまにここにお世話になるって事くらいで、それも数年に1度のレベルだからね。
すぐに身分証を発行してもらうことが出来たので、簡単に町に入る事が出来た。
門を潜ると、目の前に石畳が敷かれた大通りに直面している。
そして、その両脇は商店がひしめき合っている。
当然、もう夜なので閉まっているお店も多いが、飲食関係はまだまだ開いている。
「ようこそ、レイクポートへ!」
ガンツさんがそう言って、カナタさんを通す。
「うん、素晴らしいな」
カナタさんは目をキラキラさせて、町の様子を見ている。
うん、取り合えず僕はいつまでこの人に付き合ったら良いんだろう……
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