聖女の強くてニューゲーム! 王族との婚姻はもう懲り懲りだよ。

へたまろ

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王太子妃→王妃→王太后→后王太后……疲れた

第2話:青春の日々よ! 私は、帰ってきた!

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 一度落ちた意識が再度浮上してくるのを感じる。
 随分と長い事、眠っていたような気がするけれども夢を見ていたわけじゃない。
 暗闇の中を、一筋の光に向かって突き進んでいた。
 まるで蝶のように、宙に浮かびながら。

 そして、その光に飛び込んだとき……視界が開けるような感覚に陥った。
 てっきり天国かと思ったその視界の先は、懐かしい天井だった。

「家……」

 そう、大昔に住んでいた自分の家の天井だ。
 王都の学園に通うためにあてがわれた、大通りから一本逸れたところにある路地裏の建物。
 
「なんて夢だい。まさか、まだ死んで無いとわね」

 思わず悪態をついて、身体を起こす。
 自分の身体をぺたぺたと触ってみるが、違和感がない。
 いや、違和感しかない?

 そもそも、違和感を感じることが違和感か。
 夢の中で、ここまで鮮明に触覚を発揮できることが。

「随分とピチピチだねぇ。夢の中じゃ、そういうこともあるもんかね」

 私は顔やら肩やらを触って、自身の身体までもその家に住んでいた当初の状態になっていることに気付く。
 かなり、若返ったようだ。
 枯れ枝のようになっていた腕に目をやると、張りのある若々しい肌に生まれ変わっている。
 嬉しいやら、嬉しくないやら。

「随分と残酷な夢だこと」

 そう言って、伸びをする。
 自分がこれからやるべきことは、分かっている。
 テーブルの上に置かれた鞄を見て。
 どうやら、学園に向かわないといけないようだ。

 しかし……それが当然だと思っていいのだろうか?
 まあ、いいだろう。
 どういった状況か分からんが、その思惑に乗っかってやろう。

 そう感じた私は、鞄を手に部屋から出る。
 懐かしいお隣さんが、家の前を掃除しているのを見て思わず目を細めてしまった。
 そういえば、こんな人もいたっけ?

「おはよう」
「はいはい、おはようねぇ」
「えっ?」

 箒を手に持った中年の女性に声を掛けられたので、思わず普通に返事をしたら怪訝そうな顔をされた。

「随分と、年季の入った挨拶だね。何か、変な夢でも見たのかい?」
「えっ? いえ、おっほっほ……そうですね、どうやら子や孫に恵まれる夢を見ていたので、ついおばあさんになったつもりでしたわ」
「それはそれで、おかしな喋り方だけどね。さっさと目を覚まして、シャキッとおし!」
「はいはい、ありがとうございます」

 ふむ……どうやら、この夢は割とリアルな感じのようだね。
 歳相応の喋り方をしたら、夢の中の人物が突っ込んでくるくらいに。
 なるほど……

「ったぁ!」

 そして、思ったより身軽な身体だった私は、自分のイメージより早く大きく足が動いたらしく、足の小指を大通りに出る道にある段差にぶつけてしまった。

 ……痛い……だと?
 そして、夢とは思えないリアルな痛覚に、思わず顔を顰めてしまった。
 いや、痛みで顰めてしまったのかな?

 とりあえず……何かがおかしい。
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