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第三章:王都学園編~初年度後期~

第30話:勉強会

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「というわけで、チキチキ第二回勉強会を開催します!」

 大きな拍手をしながら、いつものメンバーの前で開催宣言。
 今日は、豪華な顔ぶれだからね。
 気合も入るってもんよ!

「チキチキってなんですか?」
「うーん……」

 レイチェルから厳しい突っ込みが。
 そうやって、あらためて聞かれると困るね。
 教えて、異世界翻訳さん!

 ……塩対応だった。
 ボソッと「意味なんかありませんよ」という、脳内アナウンスが流れただけ。
 語呂が良いから、使っちゃうというか。
 昔からよく聞くから、使っちゃうというか。

 語源とかのイメージが伝わってきた結果……意味がないという結論に私もなってしまった。

「なんとなく?」
「まあ、良いんですけどね」

 良いらしい。
 ちなみに、なぜ第二回かというと……一回目はレイチェルの家でやったからね。
 メンバーはソフィとチェルシー。
 それまでも、彼女の家でやってたみたい。
 先生はレイチェルとミッシェル。
 ぐぬぬ……ミッシェルめ。
 こっそり、こんな楽しいイベントをしてたなんて。

「あんたが頼りないから、こっちでも二人の接点を増やすために妹にお願いしたんじゃない」

 とうとう、あなたではなくあんた呼ばわり。
 ぐぬぬ……でも、確かにミッシェルの言うことに、納得してしまった。
 ごめんね、ありがとう。
 でも、楽園の独り占めは許さん!

 ということで、場所を変えてうちでも二回目を行ったんだけどね。

 メンバーは、オルガ、レイチェル、カーラ、テレサ、フローラ、ポーラ、ジェーン、ジェイにチェルシーと、そしてなんと! ソフィも参加です!

 さらにいえば、講師役としてミッシェルとダリウスが。
 いや、ダリウスはたまたまアポなしで来て、この流れなんだけどね。
 だから、クリントも参加することに。
 ミッシェルが射殺すような視線をダリウスに送って、ダリウスが冷や汗をかいていた。
 うんうん、レイチェルのことは許されてないようだ。
 
 ちなみにクリントも講師役こっち側だ。
 なんだかんだでクリントも7位と好成績だからね。
 急遽ロータス先輩まで、呼びにいくことになったけど。
 うちの使用人が。
 はた迷惑な王子様だ。
 クリントもロータス先輩も用事があったかもしれないのに。

 それから全員で、もくもくと試験勉強。
 テレサが先生の言葉をほぼ覚えているから、講師役に回ってたけど。 
 丸暗記だから、質問にはうまく答えられないんだよね。
 フローラも二人で勉強してて、困っただろうね。

 ただ生徒が授業中にした質問と同じ内容なら、答えられるから凄いことには変わりないよね。

 ちなみにジェイと私はぜんぜん、勉強してないけど。
 カーラはおもにクリントに教えてもらってるし。
 真っ赤な顔して真剣に聞いてるから、これは成績の向上が期待できそうだね。

「そう見えるなら、随分と呑気なものね」

 ミッシェルからそんな突っ込みが入ってきた。
 そうか……あんなに真剣にやっても、カーラは合格が厳しいのか……
 鼻息荒く、クリントが字を書く手の動きを食い入るように見ているのに。

「そうじゃないけど、もうそれでいいわ」

 レイチェルはカリカリと独学でやってるし、チェルシーとソフィアはミッシェルに教えてもらっている。
 ジェーンはオルガと一緒にやってるけど、オルガもなかなか教えるのが上手みたいだ。

 みんな集中して勉強してて、えらいぞー!

 そして、ダリウスには誰も質問しない。
 ふふ、ボッチダリウスざまあ。
 何しに来た、お前。
 これはロータス先輩に、ダリウスを回収してもらう流れかな?

「おおよそ、婚約者に向けるような視線ではないと思うのですが」

 そして部屋に入ってきたロータス先輩に、開口一番そんなことを言われてしまった。
 
 
「そろそろ、休憩にしておやつタイムにしようよ」
「やったー!」
「エルザ様は……ずっと休憩でしたよね?」
「ジェイも」

 私の宣言にジェイが大声ではしゃぐと、さっそくレイチェルとジェーンから突っ込みが入った。
 何を失礼な! 
 私は一生懸命、みんなの進捗状況を確認してたぞ!
 それに、ジェイだってきちんとアドバイスしてたじゃん。
 現時点で受かる科目と、落ちる科目を伝えて回るという大役。
 信憑性は高いと思うぞ。
 彼女の嗅覚は折り紙付きだからね!

「だから嫌なんですよ! ジェイに落ちるって言われたら、絶対に落第するに決まってるじゃないですか」

 ジェーンが何気に酷いことを言ってるようで、事実っぽいことを言ってる。
 とはいえ、彼女はジェイの見立てでは、すでに全科目合格圏内に入ってるっぽいけどね。

 そしてジェーンの言葉に、カーラとソフィとチェルシーが絶望した表情を浮かべていた。
 いやいや、そこを重点的にリカバリーすればいいだけじゃん。

 ちなみにダリウスはロータス先輩が来た途端に、クリントを連れて庭で剣の鍛錬を始めてしまった。
 いやカーラの講師役……連れていかれちゃったんだけど。
 そういう意味でも、カーラの表情が絶望的だったのは笑えないね。

「というか、うちでもしょっちゅう3人を休憩に誘って、レイチェルに追い出されたよね?」
 
 お茶を飲んで、皆と楽しく話しているとミッシェルが水を差してくる。
 いや、まあそうなんだけどね。
 だから、私主催でうちで開いたんだよ。
 そしたら、タイムスケジュールは私が自由に出来るからね。
 なんといっても、ホストだからね!

「この大事な時期に、はた迷惑な」
「ミッシェルには迷惑を掛けてないけど?」

 勝手にレイチェルに着いて来たくせに、なんて態度のでかい。


「私以外に多大な迷惑を掛けそうだから、私が来たのよ!」
「なんと酷いことをいう」
「随分と楽しそうですね……」

 私とミッシェルがやいやいやってたら、オルガが扇子で口元を隠しながら声を掛けてきた。
 少しだけ機嫌が悪そうだけど、何かを伺うような表情にも見える。

「ミッシェル様は、思ったよりも大物ですわねぇ」

 ああ、子爵家のご令嬢であるミッシェルが私にあまりに砕けた言葉遣いだから、不快というか不思議に感じたのかな?
 とはいえ、なんと言ったものか。

「色々と事情があって、私とエルザ様はこういう形に落ち着いただけですわよ」

 ミッシェルが表情を消して、オルガに答えているけど。
 ミッシェルのお嬢様言葉って、なんか違和感しかない。
 
「羨ましいですわ」
「オルガ嬢もいずれ、こうなりますわよ」
「たぶん、一生ならないとは思いますけど……神童と呼ばれた者同士、通ずるものがあるのでしょうね」
「「一緒にしないでよ!」」

 オルガに言われて、思わず二人同時に突っ込んでしまった。
 うーん、完全に仲良しだこれ。
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