上 下
94 / 96
第三章:王都学園編~初年度後期~

第29話:護符

しおりを挟む
 さてと……チェルシーのことが色々とばれて、ギールラウ子爵が簒奪者ということが多くの身分至上主義派に、知れ渡っている現状。
 とりあえず、ダリウスには確認しておいた。
 本気で焦って否定していたから、半分は信じてあげたよ。

「し……信用が無い」

 と嘆いていたけど。
 過去の自分を振り返ってみて欲しい。
 やってもおかしくないと思われるだけの実績はあると、自覚してもらいたい。
 マッチポンプってのは、そういうものだ。
 バレたら都合の良い事は、全て疑われることになるんだ。
 なかば、無理矢理こじつけることもできるし。

 しばらくは他人の不幸で自分が幸せになれる日は来ないと、覚悟した方が良いよ。

 ポーラは、私が彼女を紹介したら凄い顔をしていた。
 というか、私の正気を疑われた。

「頼られちゃったら断れなくて、つい」

 と頭を掻きながらテヘペロをしたら、ジト目を向けられたよ。
 まあ、仕方ない。
 我が軍団は、来るもの拒まずだ。
 もちろん、他者に迷惑を掛けない人ならね。
 
 私?
 私に迷惑を掛けるのは、全然オッケーだよ。
 私が迷惑を掛けるの?
 まあ、本気の迷惑は掛けるつもりはないけど。
 多少は、振り回してもいいよね?

 えてして、リーダーシップとはそういうものだ!

 とはいえ、最近はみんな大人しいんだよね。
 身分至上主義派閥も。
 なんなら、ジニーが物凄く静かなんだよ。
 今も机にしがみついて、教科書とにらめっこしてるみたいだし。
 ジェイやジェーンが教えてくれた。
 三度の親呼び出しのせいで、もはや習熟度テストを落とすことは絶対に出来ないと追い詰められているとか。
 親からも……

 そうだよね。
 あれだけ親に迷惑を掛けておいて、落第とか。
 見捨てられても、仕方ないよね。

 そして、カーラも大人しい。
 時折、縋るような視線を向けてくるので、声を掛けてあげてるけど。
 うん、分からないことがあったら、こうやって視線で教えてと訴えてくる。
 可愛い。

 フローラはテレサと勉強してる。
 テレサが……ナチュラルな天才だからね。
 先生の授業の再現とかが出来るレベルで。
 テレビ授業クオリティの友達がいて、良かったね。

 ジェイとジェーンだけど……ジェイは早々に諦めていた。
 というわけではなく、落第にならないラインの知識は覚えたからとポヤポヤしている。
 前回も、ギリギリで全教科合格していたらしい。
 ただ……答えを書いたところは全て正解で、他は白紙でギリギリ合格。
 先生の表情も、さぞや渋いものだっただろう。

 一方で、ジェーンは堅実な勉強スタイルで、前回は落第はしなかったらしい。
 どれもこれも、特筆するほどの好成績ではない。
 ただ、情けない成績でもない。
 普通。
 いたって、普通。
 100点満点のテストを、60~80点の間で全て終える程度の普通。

 馬鹿じゃないだけ、マシかな?
 
 オルガは普通に今回は、全教科合格を目指すんだってさ。
 誰かが落第したら、補習は一緒に受けるつもりらしい。
 案外、仲間想いだ。
 
 チェルシーは……前回も、普通に何個か補習があったらしい。
 今回もすでに、不安そうにしている。
 ソフィアと一緒に。

 そして、レイチェルが二人のために勉強会を開いていた。
 私も誘って欲しい……と、必死でオーラを出したんだけど。

「エルザ様に、勉強……必要ですか?」

 と真顔で聞かれて、思わず……

「当たり前じゃん! 必要だよ! めっちゃ必要!」

 と大声で肯定したよ。
 なんで、そんな嫌そうな顔するんだよ。
 邪険にしないでよー……

「授業を真面目に受けない方が、勉強会に来て他の方にちょっかいを出さずに真面目に勉強する絵が……正直、思い浮かびません」

 と正論を言われてしまった。
 ぐぬぬ……反論の余地が無い。
 しかし、なぜ他のクラスなのに私の授業態度を知っているんだ?
 まさか、スパイ?

「教師の間では有名ですよ? 話を聞いてないのに、質問には全部答える厄介な生徒として」

 まさかの、教師全員がスパイだったとは。

「人のせいにするまえに、我が身を振り返ってください」
「レイチェル……私にだけ、厳しい」

 そういえば、そうだ。
 レイチェルって、私にだけ妙に厳しい気がする。 
 最初は、あんなに遠慮してたのに。
 さては、私のことが大好きだな?
 このこの!

「なんですか、急に甘えて来て」
「うん、なんか元気出た」
「……それは、良かったです」

 あー……なんか、ミッシェルに対する扱いも混じってる? 
 しかし、自重はしない! 
 可愛いは、正義だからね!
 つんけんどんなレイチェルも、可愛いし。

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。 だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。 それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。 王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!? けれど、そこには……。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

処理中です...