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第三章:王都学園編~初年度後期~

第25話:楽しい休日

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「じゃあ、買ったものは私の鞄にいれとくから! また、あとで家に届けさせるね」

 そう言ってテレサとフローラから荷物を受け取ると、自分のマジックバッグにどんどん突っ込んでいく。
 ちなみに、ポーラはマジックバッグを持ってた。
 やっぱり日本人からしたら、必須品だよね?
 多少高くても、無理して買うくらいに。

「時間停止異空間収納型のスキルがあっても、良いと思います!」

 と、ポーラが切実に言ってたけど。
 そういえばこういったファンタジーならど定番だもんね。
 ……いや、無い話も多いけど。
 PCのフォルダーみたいなインベントリが、いまじゃ主流かな?

 マジックバッグも進化してるんだよね。
 
「でも、乙女ゲーではそもそも、そこまで必要性がないですもんね。インベントリの中からアイテムを選択して使うシーンはありますけど、そんなにたくさんのキーアイテムがあるわけでもないですし」

 そして、自己解決してた。

 うーん、確かに転送魔法や転送魔法陣で物を送ることは出来るんだけどね。

 取り出すのは、無理だよね。
 向こうから送ってもらわないと。
 
 そもそもが空間接続型の転移だと、物は送れないからね。
 いや厳密には送れるんだけど、物は勝手に動かないからね。
 繋いだあとでこっちが手で押し込むか、向こうから取ってもらわないといけない。
 動物は自分で動くから、かろうじていけるけど。

 でもって座標指定型だと、物は座標を思い浮かべられないから魔法陣で指定するのが一般的だったりする。
 だから、特定の場所同士でしかやり取りができないんだよね。
 どっちにしろ、取り出そうと思ったら向こうから送ってもらわないといけないし。

 だったら、自分で持って転移で運ぶのが一番簡単なんだよね。
 とりあえず、倉庫竜宮城に放り投げといたら、あとはあっちの変異生物が勝手に整理してくれるし。
 細かい場所は、サガラさんが指示してくれるから。
 取りに行った時も、言えば持って来てもらえるし。

 そして荷物が入ったバッグをテレサが持ってくれる。
 私は別で、小さいマジックバッグも持ってるからね。
 お菓子用の。
 あまり気にしなくてもいいのに、やっぱり体裁を気にするらしい。
 それだったら、皆で空のバッグを持ったらいいかな?
 それなら、いちいち私のバッグを誰が持つかで、揉めないし。
 うん、次からは人数分のバッグを……いや、いっそのこと全員にマジックバッグを配るか。
 それだと本末転倒か。
 荷物を減らすためのマジックバッグなのに。
 一人一つずつ鞄を持ってたら、意味がない。
 うん、空のバッグの配布も却下だ。

「次は何を見に行こう?」
「そうですね……私たちの買い物に付き合ってもらったわけですし、ポーラ嬢は何か欲しいものはありますか?」

 フローラが優しくポーラに声を掛けているが、彼女は恐縮した様子で首を横に振っている。
 いやいや、せっかく参加したんだから、行きたい場所を言えばいいのに。

「私は本当に時間があったからご一緒させてもらっただけで、皆さんと一緒にいられるだけで楽しいですよ」
 
 なんていじらしいことを言っているけど、キャラ変わりすぎだと思う。
 テレサとフローラが訝し気にしてるのを見て、溜息を吐く。
 というか、私の方が前世でもかなり年上だったことで、変に懐かれてるんだよね。
 
 気持ちは分かる。
 こんな世界に生まれ変わって知り合いもいないなかで、日本人に出会えただけでもホッとするだろう。
 ましてやそれが、大人だったりしたらね。
 歳のことは言わないけど、彼女からすれば頼れる存在なんだろうね。

 彼女がなるべく、私と一緒に居たい理由は痛いほど分かるよ。
 そう居たい理由が痛いほど……これ、この世界の言葉でもダジャレになってるんだろうか?

 試したところでダジャレになっていようがなってなかろうが、大火傷するのは目に見えてるのでやめておこう。
 あとで、クリントあたりに言ってみようかな?

 それよりもここは年上の女性として、ポーラの本音を引き出さないとね。
 全員が一日を振り返って、今日は良かったななんて思い出になる日にしたいし。
 
「ポーラは食べるのが好き? それとも、可愛いものが好き? あっ、もしかして何か実用的なものを探してたり」
「うーん……食べるのは好きですね。特に、レオハート領の料理は……当然ですよね」
「ん? どうして、当然なんだい?」

 私の質問に対するポーラの答えに、テレサが突っ込んでいる。
 こ……これは、答えに窮するよね。
 前世の日本で食べたものと似ているから! とは答えるわけにはいかないだろうし。
 ポーラが困ってるのを見て助け舟を出してあげたいけど、私もどう言いつくろうべきか困ってしまった。
 
「そ……そうでしょう? 私が、色々と考えたものですし。そういえば、レオハート領に来られたことが?」
「幼い頃に何度か、父に連れられて」
「でしたら、美味しくて当たり前ですわ! 楽しい思い出に彩られた食事には、思い出補正というスパイスが降りかけられてますので!」

 よーしよし、上手く胡麻化せたはずだ。

「思い出補正……ですか」
「ええ、自分にとって良い思い出は、その時の体験を何倍にも際立たせるものですよ!」
「ど……どおりで、レオハート領の料理はどこで食べても、確実なお味だったんですね」
「そうじゃなくても、美味しいけどね」

 ポーラも私に乗っかってきて、上手い事この流れを胡麻化せた。
 テレサが、身も蓋もないこと言っているが。
 
「エルザ様がお嬢様のような言葉を使われるときは、何かを隠してる時だってレイチェル嬢が……「えっ?」」

 ちょっと! フローラ!
 そう言うのは、知ってても言わないのがお約束でしょう! 
 というか、それ以前にレイチェル!
 なんで、そんな情報を伝えるのよ!

「エルザ様を前にして、それを言ってどうするんですか……これで、エルザ様の嘘が更に上手になられても困るでしょう」

 テレサが呆れた様子で、フローラに突っ込んでいる
 いや……突っ込むところが違わなくないかい?
 あってるんだけど、なんか違うというか……

「とっ、とりあえずお腹も空いてきたし、こっ、ここはポーラの提案を受け入れて、うちの料理を出してくれる場所に行きましょう!」
「てことは、レオハート邸ってことですか?」
「まっ、まあ……あそこが、たぶん一番ですけど。そうじゃなくて最近、この先の通りの角に多国籍料理のお店を出したんだよ」
「出した? 出来たじゃないということは、エルザ様が出資されてるのですか?」
「そ……そだよー……」

 別に、隠すようなことじゃないけど。
 自分の経営しているレストランに招待って、ちょっと気恥しい気がしてきたぞ。
 気にしても仕方ないか。

「た……多国籍料理とか……自重しないんですね」
「食べたいものを食べたいときに食べられるのは、最高の幸せだからね! ハンバーガーとか炙りになるけどお寿司もあるよー」

 私の答えに、ポーラが目頭を押さえていた。
 あ、あれは違う……眉間を揉んでいたの見間違いだった。

「フードコートですかっ!」
「違うよ、厨房はちゃんと一つだよ……でも、フードコートか。ポーラも良いところに目を付けたね!」
「余計なことを言った……」
「出資はするし、共同経営にしてあげるって」

 そんな感じでポーラとワイワイやってたら、二人が首を傾げていた。

「妙に仲が良いですね」
「誰とでも仲が良くなれるのは凄いですけど……距離感の詰め方異常じゃないですか?」

 そ……それは、ちょっと見逃して欲しいかなぁ……
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