公爵家御令嬢に転生?転生先の努力が報われる世界で可愛いもののために本気出します「えっ?私悪役令嬢なんですか?」

へたまろ

文字の大きさ
上 下
87 / 109
第三章:王都学園編~初年度後期~

第22話:ちょっとそこのダンスィ!

しおりを挟む
 さて、女の子たちの恋愛事情を詳しく把握した。
 うん、知ってた。

 貴族のご令嬢方にそんな、夢やロマンが無いってことは。
 まあ、白馬の王子様にすら憧れはしない。
 シンデレラストーリーにも興味が無いっぽいことも。

「どっちもほぼ初対面の、顔が良くて身分が高いだけの相手ですよね?」
「今の状況と、何が違うので?」
「ああ、物語だから容姿が優れているという点だけですか……」
「優しいというよりも、甘いと言うか……素性も分からない初対面の女性相手に運命を感じちゃうような王子は、色々と不安ですねぇ」
「ましてや眉目秀麗ともなれば」
「ええ、知らない第二王子、第三王子が現れるならともかく、まさかの第一王子よりも年上の王子が出てきたら……」
「そもそもが、嫁いでみたら王妃ではなく側妃だったということも……」
「皆さん、辛辣ですね……」

 うん、誰がどのセリフをとは言わないけど、そういうことらしい。
 いやぁ、心が荒んじゃうよね?
 普段は全力で私を肯定してくれる子たちも、自分の将来のこととなると正直だ。
 お姉さんは、本音が聞けて嬉しいけどね。

 でもって、ソフィアにも聞いてみた。
 寮の彼女の部屋で。
 いっつもうちに招待してばかりで、彼女の部屋には行ったこと無かったからね。
 彼女の実家には、よくお世話になってるけど。

「綺麗にしてるじゃない」
「綺麗にしてるのではなく、物が無いだけですよ」
「おっ? おねだりが上手になったねぇ」
「違います! 本当に、違いますから! 絶対にそういうつもりで言ったわけじゃないので!」
「押すな、押すなかなぁ?」
「なんですかそれ! 意味が分かりません! 押すなと言われたら、押さないのが普通ですからね」

 なるほど、物が少なくて寂しいってことかな?

「物が少ないと掃除が楽で、部屋も広くてとっても便利です! 今の状況が、まさに最高なんですよぉ」

 急にへたくそな演技で、わざとらしくそんなことを言いだしたけど。
 ふーん。
 今回は、勘弁してあげよう。
 
 別に広い部屋に移動させて、物をいっぱい送り付けてもいいんだけどね。

「好きな人……ですか?」
「うん、いないの? 住んでた村とかに」
「いえ……こんな見た目なので、男子からはからかわれてばかりで……」

 結構、目立つ白髪だもんね。

「おばあちゃんとかは、よく言われましたね」
「ふーん……ちょっと、その子たちの名前を教えてくれるかな?」
「いやですよ! なんか、怖いですし」

 いや、別に報復するつもりじゃないし。

「ちょっと、詳しい話を本人たちにも聞いてみたくて」
「話だけで終わらないですよね?」
「うーん、信用が無いなぁ」

 本当に話を聞くだけなのに。
 確かに白い髪の毛って、子供達なら不気味に思う子もいたかもしれないけど。
 わざわざ絡みに来るってのは……そういうことだよね?
 
 どこの世界も、ダンスィってのは変わらないなぁ。
 いや、周りの男子は割と、気遣いの紳士も多かった。
 貴族の世界は、ちょっと違うかも。

「でも、フィフスさんは気になりますね」
「フィフス?」

 どこかで聞いたような……

「学年3位の男子生徒ですよ」
「ああ! 私も、よく知らないんだよねぇ」
「えっ?」
「えっ?」

 私の言葉に、ソフィがびっくりしてたけど。
 なんで?

「同じクラスの子ですよね? たまに、お話もされてたと思うんですけど」
「えっ? どの子だろう?」
「……」

 少し気まずい空気になってしまった。
 うーん……

「あっ! あの剣!」
「はい、エリーお嬢様に買ってもらった剣ですよ」

 なんとなく居心地悪くて視線を彷徨わせていたら、壁に飾られた剣が目に入った。
 ていうか、剣を支えるL型の木材とか……

「支えは町で買ってきて、私が付けたんです」
「へぇ……DIYも出来るんだ」
「ディーアイワイ?」

 おい、異世界翻訳! 
 そこを、直訳したら伝わらないだろう!
 えっと……

「大工をいっちょやってみたの略かな?」
「変わった省略の仕方ですね」

 うん……誤魔化せたのかな?
 えっ?
 分かる人には、DIY(Do It Yourself)で通じる?
 この世界でも?
 っていうか、そういう意味だったんだ。
 

 へぇ……
 ……ん?
 ……おい、異世界翻訳!

 いま、明らかに私の脳内で弁明したよね?
 自我あるよね?

 ちょっ、黙るな!
 

「で、そのフィフスの何が気になるのかな?」
「さっきの流れは、無かったことになったんですね」
「ん? いや、まあ」

 自分の翻訳スキルがぶっ飛んでたのを改めて認識して、色々とぶっ飛んだら会話が戻ってしまった。
 まあ、結果オーライかな?
 本題に戻れたってことで。

「うーん……特に目立った方ではないですし、寮の敷地内で見かけても普通なのに凄いなって」
「褒めてるのか、けなしてのるのかよく分からないけど」
「なんか、普通にしててエルザ様やレイチェル様の次に頭が良いって、凄いですよね? その、身分を振りかざすこともないですし」

 ああ、口ほどにもない身分至上主義派閥の子たちを見てたら、普通にしてて好成績ってのはポイント高そうだもんね。
 っていうことは、割と女子の中でも人気が出てるんじゃないかな?

 いや、出てないかも……地味だし。
 話題にはなってるかもしれないけどさ。

 それからソフィの部屋を色々とチェック。

「あんまり、ジロジロ見ないでください! 恥ずかしいですよ」
「一緒にお風呂にも入った仲なのに、何を恥ずかしがってるのかな?」
「あれは、温泉じゃないですか!」

 なるほど……あまり飾り気のない部屋だけど、なんか妙に落ち着く印象を受ける。
 でも、確かに足りないものも多いみたいだけどね。

 妙に落ち着くのは、家具の配置かな?
 ビジネスホテルっぽいから……

 まあ、王宮からの支援金で住んでるから、一番下のランクにはなるよね。
 でも、男爵や準男爵の子たちとは、同レベルの部屋なんだよねぇ……

 そう考えたら、ちょっと笑えて来た。

「やっぱり、殺風景ですよね」
「いや、ソフィも貴族の子たちと同じ部屋に住んでると思ったら、凄いなぁっと思って」
「どう考えても、不敬ですよね?」
「どこが? むしろ、もっといい部屋に住まわせてあげたくなってきた」
「どうして、そういう結論になるんですか!」

 とりあえず、不便は感じてないようなので……最低限の家具は備え付きだもんね。
 そして、最低限必要な備品は、支給してもらってるみたいだし。
 ちょっとだけ、ダリウスを見直した……陛下の差し配かもしれないけど。

「じゃあ、いまから男子寮に行こうか!」
「なんでですか!」
「私も、そのフィフス君が気になるから!」

 そう言って、半ば強引に連れ出すと男子寮の寮母さんに事情を説明して、歓談スペースを貸してもらう。
 女子寮は男子禁制だけど、男子寮は歓談室までは女子も入れる。
 授業や行事、委員の関係で打ち合わせが必要なこともあるし。
 だから、歓談室とは名ばかりのミーティングルームだね。

 寮母さんが居るところからも、ロビーからもほぼ丸見えに近いけど。

 男子寮に女子が来ているからか、奇異の視線をあちらこちらから向けられているけど。
 身分至上主義派閥の子たちのように、不快な印象というわけではない。
 単純に、興味本位って感じかな?

「おい、誰だ……」
「この寮に女子が訪ねてくるなんて」
「しかも、寮監の許可を簡単に取れるような子たちなんて」
「くっ……羨ましくなんか……あるんだからな」

 私のヘルイヤーが周囲の子たちの会話を、拾いまくっている。
 
「そこのレディたち? 誰かと待ち合わせかな? 良かったら、その子が来るまでお茶でもどう……か……な?」

 ロビーの椅子に座ってたら、先輩っぽい人が声を掛けて来て……フリーズしてた。

「申し訳ありません」
「人の顔を見て、いきなり謝るなんて……よほど、後ろめたいことでもあるのかしら?」
「違います……殿下のご婚約者様であらせられる、エルザ様に気安く声を掛けてしまった不敬を詫びているのです」

 それから、唐突に感情を押し殺した声で謝ってきたので、思わずチクリと刺してみたけど。 
 普通に気付かなかっただけと。

「お茶……「お茶を飲まれてはいかがかなと、具申させていただいたまでです。ご一緒しようだなんて、そんな大それたことは考えておりませんでしたよ? はい」」

 まあ、このくらいで勘弁してあげようか。
 まったく、貴族の子たちの寮だから多少はマシかと思ったけど、あんまり関係なかったみたいだね。

 とりあえず……

「ちょっと、そこの貴方? フィフスさんを呼んできてもらえる?」

 遠巻きに見ていた男の子に声を掛けたら首を傾げられた。

「はっ! はいっ! ……って、フィフスって誰だ?」

 えっ?
 この寮にいるはずなんだけど。
 周囲の子たちも、首を傾げている。

 もしかして、フィフス君は妖精だったのか!
 
「あれだよ、上階層のひきこもり」
「ああ! あのがり勉」

 なんだ、ちゃんとコツコツ勉強するタイプだったのか。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。 剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作? だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。 典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。 従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。 望んで召喚などしたわけでもない。 ただ、落ちただけ。 異世界から落ちて来た落ち人。 それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。 望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。 だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど…… 中に男が混じっている!? 帰りたいと、それだけを望む者も居る。 護衛騎士という名の監視もつけられて……  でも、私はもう大切な人は作らない。  どうせ、無くしてしまうのだから。 異世界に落ちた五人。 五人が五人共、色々な思わくもあり…… だけれど、私はただ流れに流され……

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...