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第三章:王都学園編~初年度後期~

閑話:3ー5 ミッシェルの思惑

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 レイチェルの寝顔を見ながら、これからのことについて考えてみる。
 とりあえず、エルザは白で間違いないと思えるわね。
 この世界について、何も予備知識が無かったのは驚いたけど。
 サガラ様の話を聞くに、望む世界への転生を叶えるのがこの世界の主神とのこと。
 ただ、エルザは望んで来たわけじゃないから、この世界の知識が無いのだろう。

 巻き込まれ転生? ってのは、あまり聞いたこと……無いかな?

「んんっ」

 レイチェルが寝返りを打って足元に蹴った布団を、また掛けてあげる。
 
「ふふっ」
 
 思わず、声が漏れてしまうほどに愛おしい妹。
 この子をこの世界で不幸にしないようにと、頑張ってきたけど。
 エルザの件は僥倖だったとしか言いようがないか。

 いや、ウール商会の商会長の話から、もともと可能性は視野に入れてはいたけど。
 実際に会ってみて、確信できたし。
 これで、レイチェルの退場ルートは無くなった思っていいかな?
 本当は私がレイチェルのために、エルザと戦って道を切り開く予定だったんだけど。
 まあ、いいかな?

 それよりも、問題はポーラの方だ。
 あの子は、もともとの設定が転生者なんだよね。
 続編というか、スピンオフ作品の中のキャラだと。
 だから本人が自身について詳しくないのか……はたまた、亡くなったのが私よりも早かったのか。
 あるいは知ってて、余計な疑いをもたれないために黙っているのか。

 メーカーが起死回生の作品として出した『聖女伝説』という作品。
 大きな木を中心に鬱蒼とした森の外で、その木を見上げている少女と少年。
 なぜか二人の間に、作品に一切登場しない小さな女子もいる。
 さらに中央よりやや上に、大きな白い文字で『聖女伝説』というタイトル名。
 いかにも、何やらアウトなパッケージだったけど。
 発売前から、盛大に炎上していた。
 まあ、手掛けたのがとある主要ゲームメーカーの子会社のようなものだったから、訴訟にまではなってないけど。
 うん、似たようなパッケージのアクションRPGを出しているメーカー。
 その本社の人達は知らなかったみたいで、かなり叱責されたと……聖女伝説のファンブックに書いてあった。
 
 ……学園者の乙女ゲーとしては微妙なゲームだったけど、私にはドストライクだったのよ。
 
 そして、その作品は……ややこけだった。
 採算は取れたけど、思ったほどの売り上げは出せなかったと。
 
 で、続編とは別にスピンオフ作品を出した。
 全力で、流行りに乗っかって。
 それに出てきたのが、ポーラだ。
 原作を知るキャラとして、主人公を手助けするサポーター
 設定では、前世は日本人でこのゲームのユーザーだったという設定。

 うーん……かなり頼れる感じの性格だったと思うけど、今の彼女を見てると別人のように思えるんだよね。
 だから、本当の転生者の可能性が高いとは思うんだけど。
 元の設定が生きてる可能性も捨てきれない、微妙なグレーの判断。

 エルザは全力で受け入れているから、彼女に丸投げで様子見。
 幸い、詳しい話はレイチェルからも入ってくるし。
 
 しかし、エルザまでもが退場しないとなると。
 この作品の続編。
 『聖女伝説2』の展開が始まらないと思うんだけど。


 一応、知り合いからエルザとエレオールが学校で邂逅したとは聞いた。

 そう、スペアステージア公爵の娘で、聖女伝説2の主人公。
 兄であるエレオスが王権簒奪を企み、それを手伝う中で王族側の人達とふれあい徐々に絆されていくという設定。

 そう、プレーヤーは色々な男性キャラを操り、エレオール一人を口説き落とすゲームなのだ。
 誰でもいいからエレオールをこちらに引き込めば、物語が一気に進む。
 そして、エレオスを倒したあとで、誰と結ばれるかでエンディングが変わる。
 ちなみに、ダリウス王子も選択肢に入っている。
 前作のデータを引き継いでプレイすると、最終のエンディングで結ばれたキャラだけが外れた状態で始まる。
 前作を未プレイなら、ソフィアのことは無かったことにされる。

 色々と酷すぎるし、内容も邪道な乙女ゲーともいえる。

 うん、本当に迷走してたのがよく分かる。

 てか、ソフィアのことが無かったことにされるのに、エルザは断罪されたことになってるし。
 一作目の予備知識ありなら、ソフィアのことは無くしちゃまずかろう……と思うけど、前作のデータを引き継げば問題ないという認識で、ごり押していた。

 エルザは断罪されて、修道院送りになったんだけど。
 その途中で、何者かに襲われて殺されるという話だ。
 散々プレーヤーを苦しめてきた悪役令嬢だから、最後は殺されることでカタルシスを感じてもらおうという思惑だった。

 で、続編では実はエルザは生きてましたと。
 しかも事前の入学説明会で、すでにエレオスとエレオールに接触してたと。
 後付け設定になってたけど。
 
 でもって、断罪後は侵略性国家のトナリアーウ帝国に保護され、皇帝の妻になったと……
 その後、身分至上主義派閥の地盤をまるまる二人に譲って、スペアステージアを使って王家に復讐を試みた黒幕として登場する。

 しかし、結局エルザとは対決しない。
 To Be Continue? という文字がスタッフロールの後に出てくる。
 3も出るよと、言いたかったのかもしれないけど。
 最後に?を付けるあたりが、せこい。

 ちなみに二次創作でエルザが帝国軍を率いて侵略してダリウス含めて、最初の作品の主要人物を全て断罪する物語が地味にヒットした。
 レオブラッド辺境伯、レオハート公爵、ニシェリア侯爵がまずステージアを裏切り、その後スペアステージアを吸収して包囲殲滅戦を行うという……エルザのコアなファンが書いた物語が。

 ネット上では、

「もうこれが3で良いんじゃね?」
「とりあえず1の主要キャラを全員プレイアブルキャラにして、アクションRPGで……救いは無いけど」
「良い最終回だったなぁ」

 といった感想が飛び交っていた。
 とりあえず現状では、聖女伝説1で物語が完結しそうな勢いだけど。
 退場しないまま、来年には2の主要キャラも揃うわけだし。
 
 方針転換して、エルザに全力でレイチェルを取り込んでもらった方が良い気がしてきた。
 うん、私の妹はめっちゃ推せるほどに可愛いし。

 そうなれば、さらに全力でレイチェルを磨き上げないと。

 ヘアオイルや、化粧水、乳液等の品質向上。
 魔法も併用した、最新エステ技術の開発。
 服飾関係の発展……

 うん、お姉ちゃん張り切って頑張っちゃうぞー!
 
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