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第三章:王都学園編~初年度後期~

第19話:人生の楽園 前編

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「ははは! 待てー!」
「お姉ちゃん、こっちだよー」
「速いなー! よーし、すぐに追いついちゃうぞー!」

 パタパタと村の運動場を走り回る子供達。
 そして、それを追いかける私。
 そう、今は鬼ごっこという名の脚力と体力の強化の特訓の時間だ。
 ついでに、敵から逃げる方法も学べる。
 凄く画期的な、訓練方法だな。

「掴まえたー!」
「わー、捕まっちゃった」

 よし、これで残すはあと一人。
 4歳の女の子の、キリちゃんだけだ。

「お姉ちゃん、速いよー」
「うふふ、捕まえたっと!」

 これで、全員を捕まえることが出来た。
 ん? 鬼ごっこじゃなくて、どろけい?
 違う違う。
 だって、鬼は私一人だもん。
 人さらい鬼ごっこだし。
 別に、全員を捕まえたいからこういうルールにしたわけじゃないよ?
 私だって、可愛い子供たちに追いかけられたいし。

 ちなみに……自分よりも年上の子たちからも、お姉ちゃんと呼ばれている。
 13歳から14歳くらいの子たちから。
 理由は、色々とあるけどさ。
 それ以上だと、お嬢様って呼んでくれるけどね。

 そう、ここは孤児たちを集めた、職業訓練村だ。

 村の中には、色々な施設がある。
 勿論、職業訓練の場だからね。
 鍛冶場や、縫製場などなど。
 建築技術を学ぶための、施設も。
 材木所もあるし、商店や宿もある。
 食堂だってあるんだ。

 そこでは、子供たちが希望の場所で働く訓練を受けられる。
 勿論、食堂でもシェフからウェイトレスまで、色々な仕事があるしね。
 さらに、そこに卸す食材を扱う、問屋も。
 屠殺場では、動物の解体を学ぶことが出来る。
 さらにこの村を管理運営する役所にも、子供たちの希望があれば学びに行ける。
 うんうん、素晴らしい村だ。
 リアルキッズニアだね。

 ちなみに午前中は、学校で基礎学習を学ぶ。
 そして、ここでも子供の希望者が副担任や助教授ならぬ助教師として、大人の教師の手伝いや代弁をする。
 大人たちは生徒数によって収入が変わるので、生徒の獲得に躍起になっている。
 それに、まだ一期生の年長組が最終段階で世に送り出してないけど、これから実際に就職した子を出すとその勤務先の評価でボーナスまで出るからね。
 子供達と一緒にいるのは、引退したお年寄りの方が多いけどさ。
 実際に現場にいるのは、普通に40代くらいの人も多いから。
 まあ、王族も噛んでる事業だからね。
 そことパイプを繋ぐという意味でも、積極的に大手の事業所から派遣されている人もいるし。

 初見で希望するのは冒険者ギルドが多いけど、簡単な仕事に思われているのかな?
 腕っぷし一つで一攫千金が狙えて、自由労働で好きな時に休めるとなったら良い職場に見えるかもしれないけど。
 結果として、ほとんどの人が大成できずにその日暮らしってのが多いんだ。

 家を借りられる冒険者でもまれなのに、マイホームを持って家庭をなんてのは夢のまた夢だね。
 まあ、毎日日替わりで女を抱いてる冒険者もいるから、男どもが憧れるのも分かるけどさ。
 小さい子たちは、そこまで汚れてなかったから一安心。
 純粋に、冒険者かっこいいと思ってるっぽい。

 女子からは、お嫁さんという職業が圧倒的に、希望者が多かった。
 花嫁修業はお年寄りの方たちから、しっかりと受けられるからね。

「次は、あれで遊ぼうよ!」
「ああ、あれは……」

 それから、男の子が指さしたのは上級者向けのアスレチック。
 ワイヤーに安全フックを掛けてベストを固定して、落下防止が必須なやつ。
 そのうえで、落下防止ネットがあちらこちらに張り巡らされたレベルの。

「あれは、12歳以上からしか参加できないから。小さい子たちが、退屈しちゃうよ?」
「ぼく、お姉ちゃんがあれやるの、見てるの好きだよ!」
「うん、ビューンって行って、ババババッてやって、ドババってゴールするのすごい!」
「しゅごい!」

 お……おおう。
 ここまで、期待されたらやるしかないか。

「しかし、あれをやりたがるということは、君たちそれなりに鍛えてきたんだね?」

 そして、挑戦状を叩きつけてきた、大きな子たちに視線を送る。
 不敵な笑みを浮かべている。
 ほう?
 私が、学校に通っている間に、よほど鍛えたようだ。
 ならば、宜しい!
 相手にとって不足無し!

「うそでしょ……」
「俺たち、まだ三段目なのに」
「もう、下で手を振ってる……」

 そう、このアスレチックはらせん状にギミックが用意して合って、一周するごとに次の段階に進む造りになっている。
 最高階層は6階で、そこから一気に下までワイヤーを使って降りると、池の上のギミックに到着。
 それをクリアして、初めて完全攻略になる。

 一周目にあるのは、本当に簡単なものばかり。
 二本の太い板の上を歩いたり、格子状でも目の小さめのロープを渡ったり。
 普通の階段だし、そこまで揺れない吊り橋とかだし。

 二周目も、板が細くなったり格子状のロープの賽の目が少し大きくなったり程度。

 三周目あたりから、難易度が跳ね上がってくる。
 板は一本に代わり、賽の目の広い格子状のロープが横ではなく縦に張られたり。
 これは上に上がるにつれて、手前側に鋭角になっていく。
 最後は、上に張られた状態に近いロープをぶら下がりながら、攻略するレベル。

 普通にテレビ番組でやってるようなレベル……を、異世界に合わせてさらに難易度を上げた感じかな?
 勿論、体力お化け、力の権化のような私の前では児戯に等しいレベルだけどね。

「じゃあ、汗をかいたからみんなで、お風呂の時間だよー」

 それから、子供達を連れて村にある大衆浴場に。
 ここで働いている子供達もいるけどね、結構大変な場所だ。
 湯を沸かすのに、大量の薪を燃やさないといけないし。
 たたら場とまではいかないまでも、熱くて大変そう。
 うん、暑いじゃなくて熱いのレベル。

 でも、みんなどの仕事も一生懸命やるし、基本的に何かしている。
 なんでもいいから、仕事をしたり訓練したらお金がもらえるからね。
 村でしか使えない、専用通貨。
 お金の使い方も学べるし、仕事をする意欲にもつながるし。
 これがないと、ご飯が食べられないからね。
 でも、さっきみたいに遊んでる風でも、身体を鍛えることにつながるような場合は訓練とみなす。
 そして、訓練でも給与は出る。
 騎士見習だって、訓練期間中は給与が出るからさ。
 似たようなものだよね。
 
 この村の運営は、税金と私の資産で行っているけど。
 そのうち、特産品とかも売りに出せるようになるだろうし。
 うん、なかなか良い塩梅だと思う。
 
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