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第三章:王都学園編~初年度後期~
閑話:3-2 ミッシェルの苦悩
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私には、妹がいる。
哀れで醜い可愛い妹が。
本当にね……なんで、こんなに可愛いんだろう。
私がこの世界に生まれ落ちた時は覚えていない。
ただ、3歳の頃に漠然と記憶が芽生えた。
そう前世の……
ちょっと、ありがちすぎるよね?
前世で研究職についていた私は、まさかの過労死という経験を経てこの地に降り立ったのさ。
転生なのか、憑依なのかは分からないけど。
その時に思った。
過労死で転生って……まさかではあるけど、ありきたり過ぎないってね。
でもって、そういう場合て神様がさ……前世で苦労したから、今世では楽に生きよみたいな展開になるよね。
なったよね。
おじいちゃん神様が夢の中に出て来てさ、色々と話してくれたわけ。
胡散臭いなと思ったよ。
なんせ想像通り過ぎる神様だったから。
白い空間で炬燵にミカンのおじいちゃん神様からお茶を勧められて、色々と話をされた。
それなりの身分の家で、自由に生きたらいいってさ。
美貌と前世の知識、それから技術系のスキルももらった。
他には言語チートやら、健康な身体やら。
凄いよね、健康な身体。
徹夜しても、全然疲れないし。
なんなら、三徹だって平気。
健康って怖い。
それで、色々と興味のあることを調べたり考えたりして、実践したり。
物を作る事にも没頭した。
……前世とやってること、あまり変わらなくない?
疲れない分、前世よりも働いてるし。
健康ってそういうことなのかな?
確かに健康な体はもらえたけど、健全な生活は送っていない。
そして、私が6歳の時に妹が生まれた。
名前はレイチェル。
レイチェル・フォン・ズールアーク。
雷が体を駆け抜けるような衝撃を受けた。
私は、この子を知っている。
そう、前世でやったゲームの悪役令嬢……の取り巻き以下の便利な捨て駒。
白豚令嬢なのに、ライバルの悪役令嬢ですらない。
肌も荒れてて、そばかすまである女の子。
目つきも悪く、性格も悪い。
そのうえ自意識過剰で、ナルシスト。
男の前では、ややぶりっ子なところはあるけども基本的には性格は陰険でかなり悪い。
ゲームの悪役令嬢のエルザ・フォン・レオハートに全力で媚をうって取り入って、うまい汁を吸って学園生活を途中まで楽しく謳歌する女の子。
途中退場させられる、哀れな女の子。
めっちゃ可愛い。
白玉のようなほっぺに、クリッとした瞳でこっちを見て「ダァッ」って笑いながら手を伸ばしたのを見て、何があってもこの子を守るって決めた。
絶対に、あの性悪な悪役令嬢の手先になって不幸なことにならないように、何を差し置いても守って見せると。
小さい頃は、いつもお姉さま! と言いながら、一生懸命後ろをついてきたレイチェル。
私が研究をしていると、お菓子を持って来てくれたこともあった。
膝に乗せて、一緒にお菓子を食べながら勉強を教えながら研究もした。
何があってもいいように、心を鬼にしてレベル上げもさせた。
私の研究の成果で、レベルを上げると肌も強くなる。
荒れにくくなるということが、分かった。
あくまで健康的な生活を送っていれば、という範疇でだけど。
化粧水や乳液だって作った
おかげでレイチェルの頬っぺたは、大きくなっても子供のような餅肌っぷりだ。
その頬に頬ずりをするのが、何よりもの私の心の健康法になった。
ふっくらしたお腹に顔を埋めて匂いを嗅ぐときは、まさに至高のひと時だった。
いつの頃からだろうか……彼女は、私に対して怯えた表情を見せることが増えてきた。
一晩中、ベッドの脇で彼女の寝顔を眺めていたら、夜中に目覚めた彼女に叫ばれたこともあった。
寝なくても平気な身体だから、寝る間も惜しんで全力で瞼にその姿を焼き付けていただけなのに。
私の妹がこんなに可愛いはずがない悪役令嬢の取り巻きのレイチェルなのに、世界一可愛いのだから仕方ない。
お父さまからも、私のレイチェルへの入れ込みっぷりは正直怖いほどだと言われたけど。
レイチェルはそんなことは思っていないはず……たぶん。
自己評価が低くて私が褒めても、素直に受け取ってくれないことも増えてきた。
もしかして、知り合いの男の子に何か言われたのかな?
好きな子だったりし……レイチェルの好きな男の子……
許せない。
レイチェルの好きを独り占めして良いのは、私だけなのに。
「お姉さま……顔が怖いです」
つい、未来のレイチェルの彼氏を想像したら、表情が強張っていたのかもしれない。
色々と考えて、ときおり抑えきれない感情が表情に出てしまうのは仕方ないと思う。
だって、こんなに可愛い妹なんだもん。
そんなレイチェルが、とうとうエルザと出会ってしまった。
しかも、なぜかエルザに懐かれている。
我が家の使用人から、全力でエルザがレイチェルを甘やかしているという話も聞いた。
あの腐れアマが!
お前は一人であれこれやって、勝手に地獄に落ちろ!
うちの可愛い妹を巻き込むんじゃない。
そう思って、あれこれとレイチェルに吹き込んだが。
絶賛、友達となって行動を共にすることが多くなってきた。
何回かエルザもうちに来たが、私に馴れ馴れしく話しかけてくるのも鬱陶しい。
ゲームの世界程、性格が悪そうではないが。
それでも油断はできない。
すでに世界の強制力が働いて、レイチェルだけでなく相方のカーラまで手下にしたらしい。
ダリウスとの邂逅も、上手い事いかなかったし。
こんなに可愛い妹に興味を持たないなんて、あの王子の目はやはり節穴だ。
悪役令嬢のエルザと婚約して、婚約者がいる状態で脳みそお花畑のヒロインに懸想するだけのことはある。
このダリウス、ゲームの中での攻略難易度は最低だ。
なんせメインの攻略対象だからか、無難な行動で簡単に堕ちる。
安パイダリウスが彼の異名といっても、差し支えないレベルだ。
エルザの兄のクリスは、エルザに対してそこまでの愛情は無い。
なんせ我がままで性格の悪い妹だ。
流石に掛けられた迷惑が多すぎて、愛想も尽かすってことかな。
それでも妹に対する情くらいは持ち合わせていた。
だから隠れ攻略対象ではあるが、エルザの兄ということで攻略難易度は相当に高い。
逆にクリントはエルザの異母弟として、彼女に常に虐げられて虐められていた分、難易度はやや低めだ。
色々と話が違う。
クリスはエルザを溺愛しているっぽいというか、かなり良い兄妹関係が築けているようだ。
クリントもなぜか異母弟ではなく、異母兄としてエルザを支えようと頑張っている
微妙に私の知っている話と、内容が異なる。
彼女の周りの人達も、顔ぶれが違うし。
そもそも、ソフィアとも仲が良い。
揚げ句に、自身が中心となって暗躍するはずの身分至上主義派と、対立しているとか。
おかげで、レイチェルもソフィアと仲良くなっている。
私はレイチェルには、ソフィアには優しくするように何度も言って来たからね。
平民であっても、優秀な子はいるんだってことも教えたし。
できればエルザではなく、ソフィアの側にいれば将来勝ち組に入れると思ったから。
妹を守るためにもと、彼女の交友関係に口を出しまくった。
……結果、たぶんうざいと思われてる。
確かにだれだれちゃんと遊んじゃダメよ! とかって、親に言われたら……ムッとしてた。
皆から疎遠にされて友達とも満足に遊べない子と、仲良くできる私は優しいって自己満足に浸ってた。
結果、懐かれて依存されて……子供の頃には気づかなかったけど、親の言ってた意味をだいぶ経ってから理解できた。
対等な立場だから、友達として接していたけど。
大人から見ると、かなり面倒くさい子だ。
それに他の子からも嫌われていたから、その子といると他の友達が近寄ってこなかった。
その子がいないときは、遊んでくれたりしたけど。
その子は私しかいなかったから、ほぼ毎日遊ぶ約束をしてた時期もあったっけ。
他の子も私と遊びたいと思ってくれてたみたいだけど、そのせいで一時期その子としか遊べなかった。
断るのが心苦しかったから。
その頃に、今日は他に約束あって遊べないから明日遊ぶ約束をしよう! と言えてれば……
話が逸れた。
うん、子供の交友関係に口を出す親の気持ちがよく分かったけど、子供から見た気持ちも分かる。
なんで、そんな酷いことを言うのって……
私が誰と遊んでも、良いじゃん。
友達なんだしと。
うちに来て、勝手に冷蔵庫開けたり。
お菓子を遠慮なく、種類まで指定して強請ったり。
何かしてもらっても、ありがとうと言わない子。
仲の良い友達だから私は気にしてなかったけど、親からしたらやっぱりあれな子だ。
私にとって親から見たそれが、エルザだ。
そしてレイチェルにとっては、当時の私から見たそれがエルザだ。
くぅ……親の心、子知らずというが。
凄くもどかしい。
そう思っていたのだけれども……妙に、礼儀正しいんだ。
うちに来ると、手土産は必ず持参してくるし。
私の分まで。
認めたくないが、良い子だ。
そして、その力は……化け物だ。
せめてこの命と引き換えにレイチェルを守れるようにと、一生懸命にレベル上げも頑張っている。
レイチェルにも私が着くまでの時間を稼げるようにと、レベル上げをさせている。
それも、うざがられている原因の一つかもしれない。
そのエルザ……
私と同じなのかもしれない。
そう思うようなことが、たくさんあった。
向こうも、そう思ってるんじゃないかと思えるくらいに。
ただゲームと現実が違うのか、それとも彼女もそうなのか。
彼女の行動は、このゲームを知っているようには見えない。
それに、いくらなんでも破天荒すぎると思ったところもある。
そして、出会ってしまった。
核心に触れる場所で
前世の色々な食料品や調味料を取り扱っていたコーヒー豆ショップを、丸パクリしたようなお店で。
そこで、そのお店を作ったのが彼女だと知ってしまった。
これはもう! と思ってしまったんだかが。
ただねぇ……よくよく考えたら、このゲームを作ったのは現代日本の制作会社なわけで。
現代日本にあるようなお店が、ゲームの世界にあっても何も不思議じゃないってことに。
ここが世界として存在している以上、ゲームの方が何らかの要因で制作スタッフのインスピレーションに降りた可能性もあるけど。
どっちが先かは、分からない。
でも、某やくざゲームのスピンオフ作品でも、明治維新の世界に万屋ドンキーホテを模したお店があったりしたわけだし。
エルザが私と同じ可能性は、限りなく高くなったわけだけど。
絶対とは言い切れない。
元々、この世界にはそのコーヒー豆やさんぽいお店が、あった設定の可能性も0じゃないから。
0と1の差は、かなり大きい。
これは、本格的に彼女のことを調べる必要がある。
「お姉さんって……もしかして、転生してない?」
こっちがこんなに悩んでるのに、ドストレートに聞いてきたエルザを思わず二度見してしまった。
哀れで醜い可愛い妹が。
本当にね……なんで、こんなに可愛いんだろう。
私がこの世界に生まれ落ちた時は覚えていない。
ただ、3歳の頃に漠然と記憶が芽生えた。
そう前世の……
ちょっと、ありがちすぎるよね?
前世で研究職についていた私は、まさかの過労死という経験を経てこの地に降り立ったのさ。
転生なのか、憑依なのかは分からないけど。
その時に思った。
過労死で転生って……まさかではあるけど、ありきたり過ぎないってね。
でもって、そういう場合て神様がさ……前世で苦労したから、今世では楽に生きよみたいな展開になるよね。
なったよね。
おじいちゃん神様が夢の中に出て来てさ、色々と話してくれたわけ。
胡散臭いなと思ったよ。
なんせ想像通り過ぎる神様だったから。
白い空間で炬燵にミカンのおじいちゃん神様からお茶を勧められて、色々と話をされた。
それなりの身分の家で、自由に生きたらいいってさ。
美貌と前世の知識、それから技術系のスキルももらった。
他には言語チートやら、健康な身体やら。
凄いよね、健康な身体。
徹夜しても、全然疲れないし。
なんなら、三徹だって平気。
健康って怖い。
それで、色々と興味のあることを調べたり考えたりして、実践したり。
物を作る事にも没頭した。
……前世とやってること、あまり変わらなくない?
疲れない分、前世よりも働いてるし。
健康ってそういうことなのかな?
確かに健康な体はもらえたけど、健全な生活は送っていない。
そして、私が6歳の時に妹が生まれた。
名前はレイチェル。
レイチェル・フォン・ズールアーク。
雷が体を駆け抜けるような衝撃を受けた。
私は、この子を知っている。
そう、前世でやったゲームの悪役令嬢……の取り巻き以下の便利な捨て駒。
白豚令嬢なのに、ライバルの悪役令嬢ですらない。
肌も荒れてて、そばかすまである女の子。
目つきも悪く、性格も悪い。
そのうえ自意識過剰で、ナルシスト。
男の前では、ややぶりっ子なところはあるけども基本的には性格は陰険でかなり悪い。
ゲームの悪役令嬢のエルザ・フォン・レオハートに全力で媚をうって取り入って、うまい汁を吸って学園生活を途中まで楽しく謳歌する女の子。
途中退場させられる、哀れな女の子。
めっちゃ可愛い。
白玉のようなほっぺに、クリッとした瞳でこっちを見て「ダァッ」って笑いながら手を伸ばしたのを見て、何があってもこの子を守るって決めた。
絶対に、あの性悪な悪役令嬢の手先になって不幸なことにならないように、何を差し置いても守って見せると。
小さい頃は、いつもお姉さま! と言いながら、一生懸命後ろをついてきたレイチェル。
私が研究をしていると、お菓子を持って来てくれたこともあった。
膝に乗せて、一緒にお菓子を食べながら勉強を教えながら研究もした。
何があってもいいように、心を鬼にしてレベル上げもさせた。
私の研究の成果で、レベルを上げると肌も強くなる。
荒れにくくなるということが、分かった。
あくまで健康的な生活を送っていれば、という範疇でだけど。
化粧水や乳液だって作った
おかげでレイチェルの頬っぺたは、大きくなっても子供のような餅肌っぷりだ。
その頬に頬ずりをするのが、何よりもの私の心の健康法になった。
ふっくらしたお腹に顔を埋めて匂いを嗅ぐときは、まさに至高のひと時だった。
いつの頃からだろうか……彼女は、私に対して怯えた表情を見せることが増えてきた。
一晩中、ベッドの脇で彼女の寝顔を眺めていたら、夜中に目覚めた彼女に叫ばれたこともあった。
寝なくても平気な身体だから、寝る間も惜しんで全力で瞼にその姿を焼き付けていただけなのに。
私の妹がこんなに可愛いはずがない悪役令嬢の取り巻きのレイチェルなのに、世界一可愛いのだから仕方ない。
お父さまからも、私のレイチェルへの入れ込みっぷりは正直怖いほどだと言われたけど。
レイチェルはそんなことは思っていないはず……たぶん。
自己評価が低くて私が褒めても、素直に受け取ってくれないことも増えてきた。
もしかして、知り合いの男の子に何か言われたのかな?
好きな子だったりし……レイチェルの好きな男の子……
許せない。
レイチェルの好きを独り占めして良いのは、私だけなのに。
「お姉さま……顔が怖いです」
つい、未来のレイチェルの彼氏を想像したら、表情が強張っていたのかもしれない。
色々と考えて、ときおり抑えきれない感情が表情に出てしまうのは仕方ないと思う。
だって、こんなに可愛い妹なんだもん。
そんなレイチェルが、とうとうエルザと出会ってしまった。
しかも、なぜかエルザに懐かれている。
我が家の使用人から、全力でエルザがレイチェルを甘やかしているという話も聞いた。
あの腐れアマが!
お前は一人であれこれやって、勝手に地獄に落ちろ!
うちの可愛い妹を巻き込むんじゃない。
そう思って、あれこれとレイチェルに吹き込んだが。
絶賛、友達となって行動を共にすることが多くなってきた。
何回かエルザもうちに来たが、私に馴れ馴れしく話しかけてくるのも鬱陶しい。
ゲームの世界程、性格が悪そうではないが。
それでも油断はできない。
すでに世界の強制力が働いて、レイチェルだけでなく相方のカーラまで手下にしたらしい。
ダリウスとの邂逅も、上手い事いかなかったし。
こんなに可愛い妹に興味を持たないなんて、あの王子の目はやはり節穴だ。
悪役令嬢のエルザと婚約して、婚約者がいる状態で脳みそお花畑のヒロインに懸想するだけのことはある。
このダリウス、ゲームの中での攻略難易度は最低だ。
なんせメインの攻略対象だからか、無難な行動で簡単に堕ちる。
安パイダリウスが彼の異名といっても、差し支えないレベルだ。
エルザの兄のクリスは、エルザに対してそこまでの愛情は無い。
なんせ我がままで性格の悪い妹だ。
流石に掛けられた迷惑が多すぎて、愛想も尽かすってことかな。
それでも妹に対する情くらいは持ち合わせていた。
だから隠れ攻略対象ではあるが、エルザの兄ということで攻略難易度は相当に高い。
逆にクリントはエルザの異母弟として、彼女に常に虐げられて虐められていた分、難易度はやや低めだ。
色々と話が違う。
クリスはエルザを溺愛しているっぽいというか、かなり良い兄妹関係が築けているようだ。
クリントもなぜか異母弟ではなく、異母兄としてエルザを支えようと頑張っている
微妙に私の知っている話と、内容が異なる。
彼女の周りの人達も、顔ぶれが違うし。
そもそも、ソフィアとも仲が良い。
揚げ句に、自身が中心となって暗躍するはずの身分至上主義派と、対立しているとか。
おかげで、レイチェルもソフィアと仲良くなっている。
私はレイチェルには、ソフィアには優しくするように何度も言って来たからね。
平民であっても、優秀な子はいるんだってことも教えたし。
できればエルザではなく、ソフィアの側にいれば将来勝ち組に入れると思ったから。
妹を守るためにもと、彼女の交友関係に口を出しまくった。
……結果、たぶんうざいと思われてる。
確かにだれだれちゃんと遊んじゃダメよ! とかって、親に言われたら……ムッとしてた。
皆から疎遠にされて友達とも満足に遊べない子と、仲良くできる私は優しいって自己満足に浸ってた。
結果、懐かれて依存されて……子供の頃には気づかなかったけど、親の言ってた意味をだいぶ経ってから理解できた。
対等な立場だから、友達として接していたけど。
大人から見ると、かなり面倒くさい子だ。
それに他の子からも嫌われていたから、その子といると他の友達が近寄ってこなかった。
その子がいないときは、遊んでくれたりしたけど。
その子は私しかいなかったから、ほぼ毎日遊ぶ約束をしてた時期もあったっけ。
他の子も私と遊びたいと思ってくれてたみたいだけど、そのせいで一時期その子としか遊べなかった。
断るのが心苦しかったから。
その頃に、今日は他に約束あって遊べないから明日遊ぶ約束をしよう! と言えてれば……
話が逸れた。
うん、子供の交友関係に口を出す親の気持ちがよく分かったけど、子供から見た気持ちも分かる。
なんで、そんな酷いことを言うのって……
私が誰と遊んでも、良いじゃん。
友達なんだしと。
うちに来て、勝手に冷蔵庫開けたり。
お菓子を遠慮なく、種類まで指定して強請ったり。
何かしてもらっても、ありがとうと言わない子。
仲の良い友達だから私は気にしてなかったけど、親からしたらやっぱりあれな子だ。
私にとって親から見たそれが、エルザだ。
そしてレイチェルにとっては、当時の私から見たそれがエルザだ。
くぅ……親の心、子知らずというが。
凄くもどかしい。
そう思っていたのだけれども……妙に、礼儀正しいんだ。
うちに来ると、手土産は必ず持参してくるし。
私の分まで。
認めたくないが、良い子だ。
そして、その力は……化け物だ。
せめてこの命と引き換えにレイチェルを守れるようにと、一生懸命にレベル上げも頑張っている。
レイチェルにも私が着くまでの時間を稼げるようにと、レベル上げをさせている。
それも、うざがられている原因の一つかもしれない。
そのエルザ……
私と同じなのかもしれない。
そう思うようなことが、たくさんあった。
向こうも、そう思ってるんじゃないかと思えるくらいに。
ただゲームと現実が違うのか、それとも彼女もそうなのか。
彼女の行動は、このゲームを知っているようには見えない。
それに、いくらなんでも破天荒すぎると思ったところもある。
そして、出会ってしまった。
核心に触れる場所で
前世の色々な食料品や調味料を取り扱っていたコーヒー豆ショップを、丸パクリしたようなお店で。
そこで、そのお店を作ったのが彼女だと知ってしまった。
これはもう! と思ってしまったんだかが。
ただねぇ……よくよく考えたら、このゲームを作ったのは現代日本の制作会社なわけで。
現代日本にあるようなお店が、ゲームの世界にあっても何も不思議じゃないってことに。
ここが世界として存在している以上、ゲームの方が何らかの要因で制作スタッフのインスピレーションに降りた可能性もあるけど。
どっちが先かは、分からない。
でも、某やくざゲームのスピンオフ作品でも、明治維新の世界に万屋ドンキーホテを模したお店があったりしたわけだし。
エルザが私と同じ可能性は、限りなく高くなったわけだけど。
絶対とは言い切れない。
元々、この世界にはそのコーヒー豆やさんぽいお店が、あった設定の可能性も0じゃないから。
0と1の差は、かなり大きい。
これは、本格的に彼女のことを調べる必要がある。
「お姉さんって……もしかして、転生してない?」
こっちがこんなに悩んでるのに、ドストレートに聞いてきたエルザを思わず二度見してしまった。
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