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第二章:王都学園編~初年度前期~
第31話:ロータス先輩とピーキー男爵家御令嬢
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結局、うちの可愛い子たちは連れていかれてしまった。
といっても、一曲分だけだろう。
色鮮やかなドレスを纏った子たちがクルクルと回ると、裾が広がってとても華やかに見える。
ソフィなんて、キラキラに輝いて見えるよ。
物理的にも。
スパンコール最高。
「随分と変わったドレスを送ったんだね」
ソフィの踊る様子を見て、ダリウスが飲み物を手渡してくる。
ごめん……彼が来るまで割と飲んだり食べたりしてたから、気持ちはありがたいけどそんなに喉は乾いていないんだ。
とりあえず受け取って、ソフィの方を眺める。
やっぱり、この辺りは平民の娘として育てられてきたんだなというのがよく分かる。
たどたどしい足取りで、一生懸命踊る姿は可愛らしいけど。
視線が常に首より下に行ってるから、ダンスのレッスンとかだったらかなり注意されそう。
ここから上手になるのは、大変そうだね。
「それよりも、先輩は良かったんですか?」
「ああ、彼は婚約者もいるからね。渡りに船だっただろう」
ちなみにソフィのダンスの相手は、クリントだ。
レイチェルはチャールズ先輩と踊っている。
ソフィの制服が汚されたときに、私をロータス先輩と一緒に見張っていた人。
ロータス先輩と違って、純粋に爽やかな感じの人だ。
少年と青年の中間にあるような年齢だけれども、背も高いしスタイルも良いから青年と呼んでも差し支えない。
身体は鍛えこまれているけど、無駄な肉が付いていないからか細く見えるし。
「彼、剣聖の孫だから」
これまた、ありきたりな役柄が出てきたなぁ。
ハルナが喜びそうな感じだ
他の子たちは、ロータス先輩が連れてきた子たちと踊っている。
レイチェルが時折、ソフィを羨ましそうに見ている。
クリントと踊りたかったのかな?
彼女もシャイだから、知らない先輩と踊るのは気まずいんだろうね。
クリントなら何度も面識もあるし、多少は気安いと思ってるのかも。
ちなみに、余ったのはロータス先輩だ。
ざまぁ……と思うほど、特に恨みはないけれども。
何故かこの人のこういう姿を見ると、ちょっとスッとする。
腹黒っぽいからだろうね。
私の見せ場を、ことごとく潰していった恨みもあるし。
そのロータス先輩だけれども、皆がペアを組んだのを確認すると頷いてどこかに行ってしまった。
そして、可愛らしい一年生の女の子と優雅に踊っている。
ちっ……イケメンは選り取り見取りで良いですね。
「彼女が、ロータスの婚約者だよ」
道理で双方、義務感を感じさせるような表情なわけだ。
お互いに微笑みあっているけれども、何故か微笑ましくないと思ったんだよね。
似た者同士ですか……そうですか。
よくお似合いのカップルで、良かったです。
「エリーは随分とロータスの評価が低いね」
「そうですか? 正当な評価だと思いますよ。あっ、これ美味しい」
急な愛称呼びをスルーして、飲み物を口に含む。
「うん、エリーの好きな味だもんね。モモチャの実」
モモチャの実か……
桃っぽい味の、謎の果実だった。
実物はかぼちゃみたいな見た目をしてたんだよね。
食感も。
なのに、味は桃なんだ。
このギャップが、絶妙に最初は受け付けなかった。
途中から、癖になったけどね。
ちなみに桃は桃である……私にとっては、あってもなくてもいい果物なんだ。
このモモチャ。
まあ、前の世界にも色々と変わった果実はあったからね。
こういうことも、あるだろう。
「さてと。お友達を使ってまで、人払いをさせた理由はなんですか?」
「ん? 最近、私たちの不仲説が出てるからね。ここらで、アピールしておこうかと」
おおう……どうやら、以前に婚約破棄の噂を流したことを、実は根に持っていたらしい。
不自然に周囲から人を引っぺがしたから、何か悪だくみでもあるかと思ったのに。
「それに、エルザと二人になりたいというのは本音だよ?」
「お茶会にお誘い頂ければ、いつでもできるじゃないですか」
「それじゃあ、意味がないよ。こんな時間に、エルザと2人で過ごせるのが良いんじゃないか」
ほっほ、なかなかお上手なことですね。
いつの間に、こんなに女性の扱いが上手くなったのやら。
以前は手土産すら、母であるミレニア王妃頼みだったのに。
というか、言われないと思いつきもしなかったくせに。
随分と成長したようで。
でも、そういうのは成長しない方が良いんじゃないかな?
順調にいけば普通に結婚する相手の居る人が。
「エルザは全然変わらないね。それに今日くらいは、普通に婚約者らしく過ごしてもいいと思うんだけど」
「あら? もう、エリーには飽きたので?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれないか? エリーと呼んでも、全然反応が無いから虚しくなっただけだよ」
おや?
拗ねてしまったかな?
まあ、良いか。
別にジュースで酔ったわけじゃないけど、腕ぐらい組んであげよう。
残念ながら、当たるほどの立派なものをもってるわけじゃないけど。
「はぁ……気を遣われてるね。これが、惚れた方の負けというやつか」
「今日の殿下は、随分と口が滑らかだこと。少し油物を控えた方が、良いと思いますよ」
「あの……」
ダリウスと軽口をたたき合っていると、一人の少女が声を掛けてきた。
うん、髪の毛の青い彼女。
さっきのことを、謝りに来たのかな?
ダリウスをジッと見つめて、手をモジモジさせている。
そして、意を決したのか、口を開く。
「私と踊ってください」
嘘じゃん。
凄い根性だな、この子。
婚約者と会話をしているところに割り込んできて、ダンスを申し込むとか。
一周回って、色々と凄い子だ。
もしくは、罰ゲームとかじゃないよね?
なんたら男爵令嬢っていってたし。
身分至上主義派に、ダリウスをダンスに誘えって命令されてたり。
「大丈夫? なんで、そんなに殿下と踊りたいのですか? 誰かに、脅されて命令されていたりするのですか?」
「それは流石に酷すぎないかい? いや、君以外とは踊るつもりはないけれども……私と踊るのは、人に脅されないとできないようなことなのか?」
あっ、ダリウスがガチ凹みしている。
ごめん、そういうつもりじゃなかったんだ。
彼女のことが、心配で。
「貴女には関係ありません! 私が、殿下をお慕いしているのです」
「ですって……良かったですね、殿下」
「少しは怒るとかないんだね……本当に大物だよ君は。どこから、その自信がくるのか分からないけれど……それでも、私はエルザ以外を選ぶつもりはないから、その態度が間違いじゃないのが腑に落ちないよ」
何故か、どんどんダリウスが暗くなっていってる。
そんなに気にしなくても、自分の気持ちをしっかりと持てばいいのに。
逆に私に愛されてるくらいの自信を、堂々と持ってもらいたいものだ。
「それは情愛や親愛であって、恋愛ではないと思うよ」
「なぜ、私の思ってることを?」
「私を無視しないでください!」
おおっ、へこたれない。
この少女の姿勢を、是非ともダリウスにも見習ってもらいたい。
てか、ダリウス狙いの女子って、強引な子が多いよね?
初対面のレイチェルみたいに。
「このくらいの気質が無いと、公爵家を敵に回してまで私とお近づきになりたいなんて思わないだろう。もしくは、家にとってよほどのメリットがあるか」
凄いなぁ。
ダリウスってば、こっちの反応ばかり気にしてナチュラルに彼女のことを無視しているよ。
「そこまでの気概をもって来られた彼女に、掛ける言葉は無いのですか?」
「ん? ああ、ピーキー令嬢。私はいま、婚約者との大事な時間を過ごしているんだ。申し訳ないが、今は遠慮してもらえるかな?」
「今は? でしたら、いつなら宜しいでしょうか?」
……すげぇ。
本当に凄いよ、ピーキーさんとこのお嬢さん。
はっきりと断られた言葉の中から、言質を拾いあげるとか。
上げ足取りここに極まれりだね。
反射速度もさることながら、隙を見逃さない姿勢も素晴らしいよ。
「そうだね、死が二人を別つときまでかな?」
「後妻ですか……」
さらりと凄く恥ずかしいことを言ったダリウスもだけれども、そこからその発想に結び付くピーキー令嬢も凄い。
あと、さくっと私が暗殺されそうな感じのやり取りになってるから。
あっ、曲が終わって皆が戻ってきた。
ダリウスが凄くガッカリした表情をしている。
そして、少し離れた場所にいるロータス先輩が嬉しそうだ。
やっぱり、いい性格をしているらしい。
「どうされたのですか、エルザ様」
あっ、カーラが走ってこっちに向かって来た。
ご令嬢が走るとか、みっともないからやめた方がいいよ。
「何をしているのですか?」
「貴女には関係ないでしょう! 私は、殿下と踊りたいと申し出ただけです」
「まあ、なんておこがましいことを! 身の程を知りなさい」
そして、のっけから喧嘩口調でピーキー令嬢に声を掛けている。
それにのっかるピーキー令嬢……
「貴女なんかが、エルザ様に代われるわけないでしょう!」
いや、私を引き合いに出さないで。
「はあ? 私の方がずっと綺麗だし」
「ん?」
「えっ?」
「はっ?」
「えっと……」
「ん-……」
あっ、男女含めこの場にいた皆が、言葉に詰まってる。
カーラの直接的な言葉よりも、ダメージありそうだけれども。
「はぁ? 私の方がどう見ても綺麗でしょう」
「ん-」
「あー」
「えーっと」
顔を真っ赤にして主張するピーキー令嬢に対して、全員が視線を反らした。
あっ、ダリウスがキレそうになってる。
「そうね、貴女の方が可愛い可愛い! 素敵よ」
「馬鹿にしないでよ!」
あっ、せっかく私だけでもと彼女の味方になってあげたのに、泣きながら逃げて行ってしまった。
どうしたんだろう。
「なんだったんでしょうね? せっかく、本心から褒めて差し上げたのに」
「あー、まあ……はい」
「そうですね……」
「全然歯牙にもかけてないって、プライドズタボロでしょうね」
なんだろう。
私が、止めを刺したみたいな流れにもっていくのはやめて欲しい。
そうして微妙な空気を残しつつ、パーティの夜は更けていった。
本当に、何がしたかったんだろう。
ああ、ダリウスと踊りたかったんだったっけ?
私が踊ってあげたらよかったかな?
といっても、一曲分だけだろう。
色鮮やかなドレスを纏った子たちがクルクルと回ると、裾が広がってとても華やかに見える。
ソフィなんて、キラキラに輝いて見えるよ。
物理的にも。
スパンコール最高。
「随分と変わったドレスを送ったんだね」
ソフィの踊る様子を見て、ダリウスが飲み物を手渡してくる。
ごめん……彼が来るまで割と飲んだり食べたりしてたから、気持ちはありがたいけどそんなに喉は乾いていないんだ。
とりあえず受け取って、ソフィの方を眺める。
やっぱり、この辺りは平民の娘として育てられてきたんだなというのがよく分かる。
たどたどしい足取りで、一生懸命踊る姿は可愛らしいけど。
視線が常に首より下に行ってるから、ダンスのレッスンとかだったらかなり注意されそう。
ここから上手になるのは、大変そうだね。
「それよりも、先輩は良かったんですか?」
「ああ、彼は婚約者もいるからね。渡りに船だっただろう」
ちなみにソフィのダンスの相手は、クリントだ。
レイチェルはチャールズ先輩と踊っている。
ソフィの制服が汚されたときに、私をロータス先輩と一緒に見張っていた人。
ロータス先輩と違って、純粋に爽やかな感じの人だ。
少年と青年の中間にあるような年齢だけれども、背も高いしスタイルも良いから青年と呼んでも差し支えない。
身体は鍛えこまれているけど、無駄な肉が付いていないからか細く見えるし。
「彼、剣聖の孫だから」
これまた、ありきたりな役柄が出てきたなぁ。
ハルナが喜びそうな感じだ
他の子たちは、ロータス先輩が連れてきた子たちと踊っている。
レイチェルが時折、ソフィを羨ましそうに見ている。
クリントと踊りたかったのかな?
彼女もシャイだから、知らない先輩と踊るのは気まずいんだろうね。
クリントなら何度も面識もあるし、多少は気安いと思ってるのかも。
ちなみに、余ったのはロータス先輩だ。
ざまぁ……と思うほど、特に恨みはないけれども。
何故かこの人のこういう姿を見ると、ちょっとスッとする。
腹黒っぽいからだろうね。
私の見せ場を、ことごとく潰していった恨みもあるし。
そのロータス先輩だけれども、皆がペアを組んだのを確認すると頷いてどこかに行ってしまった。
そして、可愛らしい一年生の女の子と優雅に踊っている。
ちっ……イケメンは選り取り見取りで良いですね。
「彼女が、ロータスの婚約者だよ」
道理で双方、義務感を感じさせるような表情なわけだ。
お互いに微笑みあっているけれども、何故か微笑ましくないと思ったんだよね。
似た者同士ですか……そうですか。
よくお似合いのカップルで、良かったです。
「エリーは随分とロータスの評価が低いね」
「そうですか? 正当な評価だと思いますよ。あっ、これ美味しい」
急な愛称呼びをスルーして、飲み物を口に含む。
「うん、エリーの好きな味だもんね。モモチャの実」
モモチャの実か……
桃っぽい味の、謎の果実だった。
実物はかぼちゃみたいな見た目をしてたんだよね。
食感も。
なのに、味は桃なんだ。
このギャップが、絶妙に最初は受け付けなかった。
途中から、癖になったけどね。
ちなみに桃は桃である……私にとっては、あってもなくてもいい果物なんだ。
このモモチャ。
まあ、前の世界にも色々と変わった果実はあったからね。
こういうことも、あるだろう。
「さてと。お友達を使ってまで、人払いをさせた理由はなんですか?」
「ん? 最近、私たちの不仲説が出てるからね。ここらで、アピールしておこうかと」
おおう……どうやら、以前に婚約破棄の噂を流したことを、実は根に持っていたらしい。
不自然に周囲から人を引っぺがしたから、何か悪だくみでもあるかと思ったのに。
「それに、エルザと二人になりたいというのは本音だよ?」
「お茶会にお誘い頂ければ、いつでもできるじゃないですか」
「それじゃあ、意味がないよ。こんな時間に、エルザと2人で過ごせるのが良いんじゃないか」
ほっほ、なかなかお上手なことですね。
いつの間に、こんなに女性の扱いが上手くなったのやら。
以前は手土産すら、母であるミレニア王妃頼みだったのに。
というか、言われないと思いつきもしなかったくせに。
随分と成長したようで。
でも、そういうのは成長しない方が良いんじゃないかな?
順調にいけば普通に結婚する相手の居る人が。
「エルザは全然変わらないね。それに今日くらいは、普通に婚約者らしく過ごしてもいいと思うんだけど」
「あら? もう、エリーには飽きたので?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれないか? エリーと呼んでも、全然反応が無いから虚しくなっただけだよ」
おや?
拗ねてしまったかな?
まあ、良いか。
別にジュースで酔ったわけじゃないけど、腕ぐらい組んであげよう。
残念ながら、当たるほどの立派なものをもってるわけじゃないけど。
「はぁ……気を遣われてるね。これが、惚れた方の負けというやつか」
「今日の殿下は、随分と口が滑らかだこと。少し油物を控えた方が、良いと思いますよ」
「あの……」
ダリウスと軽口をたたき合っていると、一人の少女が声を掛けてきた。
うん、髪の毛の青い彼女。
さっきのことを、謝りに来たのかな?
ダリウスをジッと見つめて、手をモジモジさせている。
そして、意を決したのか、口を開く。
「私と踊ってください」
嘘じゃん。
凄い根性だな、この子。
婚約者と会話をしているところに割り込んできて、ダンスを申し込むとか。
一周回って、色々と凄い子だ。
もしくは、罰ゲームとかじゃないよね?
なんたら男爵令嬢っていってたし。
身分至上主義派に、ダリウスをダンスに誘えって命令されてたり。
「大丈夫? なんで、そんなに殿下と踊りたいのですか? 誰かに、脅されて命令されていたりするのですか?」
「それは流石に酷すぎないかい? いや、君以外とは踊るつもりはないけれども……私と踊るのは、人に脅されないとできないようなことなのか?」
あっ、ダリウスがガチ凹みしている。
ごめん、そういうつもりじゃなかったんだ。
彼女のことが、心配で。
「貴女には関係ありません! 私が、殿下をお慕いしているのです」
「ですって……良かったですね、殿下」
「少しは怒るとかないんだね……本当に大物だよ君は。どこから、その自信がくるのか分からないけれど……それでも、私はエルザ以外を選ぶつもりはないから、その態度が間違いじゃないのが腑に落ちないよ」
何故か、どんどんダリウスが暗くなっていってる。
そんなに気にしなくても、自分の気持ちをしっかりと持てばいいのに。
逆に私に愛されてるくらいの自信を、堂々と持ってもらいたいものだ。
「それは情愛や親愛であって、恋愛ではないと思うよ」
「なぜ、私の思ってることを?」
「私を無視しないでください!」
おおっ、へこたれない。
この少女の姿勢を、是非ともダリウスにも見習ってもらいたい。
てか、ダリウス狙いの女子って、強引な子が多いよね?
初対面のレイチェルみたいに。
「このくらいの気質が無いと、公爵家を敵に回してまで私とお近づきになりたいなんて思わないだろう。もしくは、家にとってよほどのメリットがあるか」
凄いなぁ。
ダリウスってば、こっちの反応ばかり気にしてナチュラルに彼女のことを無視しているよ。
「そこまでの気概をもって来られた彼女に、掛ける言葉は無いのですか?」
「ん? ああ、ピーキー令嬢。私はいま、婚約者との大事な時間を過ごしているんだ。申し訳ないが、今は遠慮してもらえるかな?」
「今は? でしたら、いつなら宜しいでしょうか?」
……すげぇ。
本当に凄いよ、ピーキーさんとこのお嬢さん。
はっきりと断られた言葉の中から、言質を拾いあげるとか。
上げ足取りここに極まれりだね。
反射速度もさることながら、隙を見逃さない姿勢も素晴らしいよ。
「そうだね、死が二人を別つときまでかな?」
「後妻ですか……」
さらりと凄く恥ずかしいことを言ったダリウスもだけれども、そこからその発想に結び付くピーキー令嬢も凄い。
あと、さくっと私が暗殺されそうな感じのやり取りになってるから。
あっ、曲が終わって皆が戻ってきた。
ダリウスが凄くガッカリした表情をしている。
そして、少し離れた場所にいるロータス先輩が嬉しそうだ。
やっぱり、いい性格をしているらしい。
「どうされたのですか、エルザ様」
あっ、カーラが走ってこっちに向かって来た。
ご令嬢が走るとか、みっともないからやめた方がいいよ。
「何をしているのですか?」
「貴女には関係ないでしょう! 私は、殿下と踊りたいと申し出ただけです」
「まあ、なんておこがましいことを! 身の程を知りなさい」
そして、のっけから喧嘩口調でピーキー令嬢に声を掛けている。
それにのっかるピーキー令嬢……
「貴女なんかが、エルザ様に代われるわけないでしょう!」
いや、私を引き合いに出さないで。
「はあ? 私の方がずっと綺麗だし」
「ん?」
「えっ?」
「はっ?」
「えっと……」
「ん-……」
あっ、男女含めこの場にいた皆が、言葉に詰まってる。
カーラの直接的な言葉よりも、ダメージありそうだけれども。
「はぁ? 私の方がどう見ても綺麗でしょう」
「ん-」
「あー」
「えーっと」
顔を真っ赤にして主張するピーキー令嬢に対して、全員が視線を反らした。
あっ、ダリウスがキレそうになってる。
「そうね、貴女の方が可愛い可愛い! 素敵よ」
「馬鹿にしないでよ!」
あっ、せっかく私だけでもと彼女の味方になってあげたのに、泣きながら逃げて行ってしまった。
どうしたんだろう。
「なんだったんでしょうね? せっかく、本心から褒めて差し上げたのに」
「あー、まあ……はい」
「そうですね……」
「全然歯牙にもかけてないって、プライドズタボロでしょうね」
なんだろう。
私が、止めを刺したみたいな流れにもっていくのはやめて欲しい。
そうして微妙な空気を残しつつ、パーティの夜は更けていった。
本当に、何がしたかったんだろう。
ああ、ダリウスと踊りたかったんだったっけ?
私が踊ってあげたらよかったかな?
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