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第二章:王都学園編~初年度前期~
第24話:終業式
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「であるからして、我が校の生徒として他の貴族の子息令息の模範となるべき行動を心がけ……」
学園長の長い話を聞きながら、長期休暇の予定に思いを馳せる。
とりあえず、補習には1週間は確定で出ることにした。
そのことをブライト先生に告げると、何を企んでいると訝しがられてしまったけど。
別に、何も企んでいないですよ。
カーラとフローラの他に、ソフィも参加すると聞いたから参加するだけです。
レイチェルとテレサも誘ったけど、振られてしまった。
レイチェルは一度、自領に戻るみたいだし。
だから、その前にお茶会とお泊り会は提案している。
本当はズールアーク領へのお誘いも期待したけど、終ぞ誘われることは無かった。
寂しい……
「他者を思いやり、慎みある行動を取り、それでいて高貴で領地を背負う血族としての誇りを大事にし……」
にしても、長いなぁ……
誰も寝ていないけど、幻影魔法で起きてる姿を映しつつ目を瞑ってる子とかいないよねぇ……
「振り返れば、様々なことがあったと言える3ヶ月間であったでしょう。嬉しかったこと、楽しかったこと、悲しかったこと、悔しかったこと、それらが全て皆さんの血肉となり、成長の糧となるよう……」
これ、先輩方は毎年聞かされているんだよね?
グレイドルフ学園長の話を子守歌に、それこそ幻影魔法で胡麻化しながら寝ようかなと思うほどに長い。
まあ、椅子に座って聞けるだけましかな?
運動場で炎天下の下、立って聞かされたら昔の私なら倒れる自信はあるよ。
「私が最初の長期休暇を迎えた時は、それはそれは……」
出た、自分語り。
これがまた長いし、中身が薄いんだよねー。
山なし、谷なし、落ちなし、笑いなしの無いものずくしだ。
とりあえず、身分至上主義派にしっかりと先の話を言い聞かせるべきだと思うけどね。
たぶん、学園長はあっちよりだろうけど。
もしかしたら身分至上主義派というよりも、スペアステージア公爵家よりなだけかもしれない。
「最後に私事になりますが……」
嘘……だろ?
学園とまったく関係ない話を、取りにもってきやがった。
こいつ、腐ってやがる。
と言いたくなるような、本当にろくでもない学園長だよ。
校内ではニコニコと生徒の様子を見守りながら、見回りをする姿をよく見るけど。
いまいち、掴みどころが無いと言うか。
子供は純粋に好きなのかもしれない。
「今年は優秀な生徒も多く、エルザ・フォン・レオハート嬢は習熟度テストにて満点の成績を修め……」
さっきのプライベートが最後じゃなかったのか!
あと、カーラも満点だ。
こっちに、注目を集めるな。
嫌がらせにもほどがある。
「それでは、良い休暇を」
そう言って、学園長の話は締めくくられた。
正直、ぐったりしてる。
私だけじゃない。
それなりの生徒が少し死んだ目をしながら講堂を出て、陽の光を浴びて伸びをしながら復活していた。
「エリー」
「ダリウス殿下」
それから外に出た私は、兄はどこかなとキョロキョロしていたらダリウスに声を掛けられた。
違うお前じゃないとは言わない。
笑顔でニッコリと、対応する。
ちなみにクリントは私の後ろにちゃんといる。
私が探したのは、クリスお兄さまだ。
「これからしばらく、学園で貴女の姿を見られないと思うと寂しいですね」
「まあ、でも王妃殿下から茶会のお誘いは頂いておりますし、王都邸にしばらくは滞在するので是非殿下もいらしてください」
無難に対応。
こうやって仲の良いアピールを周囲にするのも、大事なのだろう。
水面下では婚約破棄の危機にあるという噂が流れているけど。
きっと、その噂を払拭するために、ダリウス殿下が動いていると皆思ってそうだね。
「素敵……」
「羨ましいですわ」
素直なことは良い事だと思います。
純粋な子は好きですわ。
私たちのやり取りを見て、頬を染めながら華やいだ声をあげた子たちに笑顔を振りまく。
顔は覚えたよ。
ぜひ、お近づきになりたいね。
「今はまだ、関係の悪化を見せるのは拙いということか」
「公爵家には利用価値がありますからね……表立って次世代の不仲を見せるわけには、いかないでしょう」
「どうりで、どこか芝居じみたやり取りだと思いましたわ」
それに引き換え、この子たちは。
大人顔負けの腹黒さだ。
殿下の言葉は概ね字面通りの意味だし、私も事実と社交辞令しか言ってない。
信じたいものを信じるのが人の性というけど、陳腐な悪人の性ではないだろうか。
「エリー……目が怖いよ」
「そうですか? 笑えていると思ったのですが」
「だから、余計にだよ」
ダリウス殿下に突っ込まれつつも、3人で仲良くおしゃべり。
相変わらず髪は短めに綺麗に切りそろえられていて、王子感が少ない。
ここまで来たらツンツンにおっ立てて、武闘派王子を目指すのも良いんじゃないかな。
ブレザーのお陰か、肩回りや背中周りに筋肉が付いたのか背中周りが少し大きく見える。
立派で頼りがいのある背中だ。
しかし、ときめかない。
いや婚約者だしこちらからは断れないのは、分かっているけどね。
幼馴染補正というものも発動しない。
小さい頃から知っている、歳の離れた近所の子供に対する感覚に近いかな?
彼の方が年上だけど。
1歳差なんて、誤差の範囲だ。
「ダリウス殿下、エルザ様、クリント様」
「シャルル!」
「シャルロット嬢か、どうした?」
私たちに近寄ってきて、声を掛ける子がさらに一人。
ニシェリア侯爵令嬢の、シャルルだ。
私と仲の良い先輩だね。
学園に通ったから、先輩後輩の関係になってしまった。
こんな小さい時から知っているのに、子供の成長は本当に早いものだ。
「エルザ様が久しぶりに会ったおばあ様みたいな目で私を見ているのはともかくとして、私は明日には王都を出て一度自領に向かいますので是非ご挨拶をと思いまして」
「なるほど、忙しいのだな。確かにニシェリア侯爵領は、その方の叔父が代官を務めているんだったな」
「来週には領都で夏を迎える祭事もありますし、私は今年からそういった方面のお手伝いを始めますの」
「えー! 長期休暇は、シャルルにもうちに泊まりにきてもらいたかったのに」
殿下とシャルルが真面目に挨拶を交わしているところに申し訳ないが、子供らしくない。
なので、子供らしく話の腰を折りにいった。
おおう、周りからも少し呆れた様子の視線が。
「お嬢様、もう少し成長なさってください。あまり我儘を言って、ニシェリア侯爵令嬢を困らせてはいけませんよ」
周囲に人が多いからか、クリントは完全に余所行き従者ポジションだし。
でも、クスクスと笑いながらも好意的な視線を向けてくれるご令嬢も、少なくはない。
3年生の先輩かな?
思わずそちらに、笑顔で軽く手を振ってしまった。
おおう……何やら、胸を抑えている。
……ハルナと似たような匂いがするから、あまりお近づきになりたくないね。
「やあ、皆ここに居たんだね。殿下もお疲れさまでした。ああ、シャルロットもいたのかい? いつも妹がお世話になっていたみたいだね。感謝するよ」
「いえ、そんな。私の方こそ学園内でエルザ様には、とてもよくしていただいてましたのよ。会う度に、美味しいお菓子も分けてくださいますし……これは、昔からでしたね」
ああ、そういえばシャルルには小さい頃から、鞄に入れた飴やクッキーをよく渡していた。
きちんと綺麗な紙で包んで、堅めの紙の箱で保護したお菓子。
最初は戸惑っていたけど、私が一緒に食べると意を決して食べてたのが懐かしい。
あの頃のシャルルも可愛かったな。
そんな感じで4人に増えて、わいわいやっていたらというか……わいわいやろうとしたら、お兄さまが私たちを見つけて駆け寄ってきた。
いまは、ダリウスとシャルルに挨拶をしている。
周囲に人が増えた気配はあるのに、周りにあったスペースが広くなったのが分かった。
どうやら兄は遠巻きに見るのが、丁度いいくらいの男性なのかな?
「クリス、私もその方の妹に多少は振り回されたが?」
「はは、殿下はこれから先も妹にずっと振り回されるのですから、今から慣れておかないとね。貴重な練習期間をもらえたと、感謝してもいいくらいだよ」
「はぁ……死が二人を分かつまで……か。死ぬまで退屈することのない、笑顔の絶えない人生になりそうだよ。苦笑も絶えなさそうだ」
「お二人とも失礼ですよ」
お兄さまとダリウスのやり取りに、シャルルが笑いながら突っ込んでいる。
仲が宜しくて、大変結構……これ、シャルルのことをお義姉様と呼ぶ日が来たりしないよね?
この2人なら家格も容姿も、釣り合いが取れてるし。
それって、なんて素敵!
「エルザ様が、婚約話を持ってくる叔母様のようなお顔になってきたので、私はここで失礼いたしますね。正門のところに、家の者を待たせておりますし」
「何よそれ。じゃあ、シャルルも元気でね! 手紙も書くし、領地にも遊びに行くからシャルルも来てちょうだい」
「ふふ、楽しみにしておりますわ。それでは皆様、ご機嫌よう」
そう言って、シャルルが私たちの前から立ち去る。
お兄さま、ダリウス、クリントが三者三様の表情で、その後姿を見送っていた。
そして、その後で三人がこっちに視線を向ける。
今度は、三人とも同じような表情だ。
あっ、クリントが溜息を吐いた。
「シャルロット様の半分で良いから、おしとやかな部分をお嬢に分けてもらいたい」
「分かっていないな。他と違うからこそ、エリーは魅力的なのだ」
「私はエルザがどんな娘に育っても、大事にするよ」
ふむ……合格点をあげられるのは、お兄さまだけだった。
学園長の長い話を聞きながら、長期休暇の予定に思いを馳せる。
とりあえず、補習には1週間は確定で出ることにした。
そのことをブライト先生に告げると、何を企んでいると訝しがられてしまったけど。
別に、何も企んでいないですよ。
カーラとフローラの他に、ソフィも参加すると聞いたから参加するだけです。
レイチェルとテレサも誘ったけど、振られてしまった。
レイチェルは一度、自領に戻るみたいだし。
だから、その前にお茶会とお泊り会は提案している。
本当はズールアーク領へのお誘いも期待したけど、終ぞ誘われることは無かった。
寂しい……
「他者を思いやり、慎みある行動を取り、それでいて高貴で領地を背負う血族としての誇りを大事にし……」
にしても、長いなぁ……
誰も寝ていないけど、幻影魔法で起きてる姿を映しつつ目を瞑ってる子とかいないよねぇ……
「振り返れば、様々なことがあったと言える3ヶ月間であったでしょう。嬉しかったこと、楽しかったこと、悲しかったこと、悔しかったこと、それらが全て皆さんの血肉となり、成長の糧となるよう……」
これ、先輩方は毎年聞かされているんだよね?
グレイドルフ学園長の話を子守歌に、それこそ幻影魔法で胡麻化しながら寝ようかなと思うほどに長い。
まあ、椅子に座って聞けるだけましかな?
運動場で炎天下の下、立って聞かされたら昔の私なら倒れる自信はあるよ。
「私が最初の長期休暇を迎えた時は、それはそれは……」
出た、自分語り。
これがまた長いし、中身が薄いんだよねー。
山なし、谷なし、落ちなし、笑いなしの無いものずくしだ。
とりあえず、身分至上主義派にしっかりと先の話を言い聞かせるべきだと思うけどね。
たぶん、学園長はあっちよりだろうけど。
もしかしたら身分至上主義派というよりも、スペアステージア公爵家よりなだけかもしれない。
「最後に私事になりますが……」
嘘……だろ?
学園とまったく関係ない話を、取りにもってきやがった。
こいつ、腐ってやがる。
と言いたくなるような、本当にろくでもない学園長だよ。
校内ではニコニコと生徒の様子を見守りながら、見回りをする姿をよく見るけど。
いまいち、掴みどころが無いと言うか。
子供は純粋に好きなのかもしれない。
「今年は優秀な生徒も多く、エルザ・フォン・レオハート嬢は習熟度テストにて満点の成績を修め……」
さっきのプライベートが最後じゃなかったのか!
あと、カーラも満点だ。
こっちに、注目を集めるな。
嫌がらせにもほどがある。
「それでは、良い休暇を」
そう言って、学園長の話は締めくくられた。
正直、ぐったりしてる。
私だけじゃない。
それなりの生徒が少し死んだ目をしながら講堂を出て、陽の光を浴びて伸びをしながら復活していた。
「エリー」
「ダリウス殿下」
それから外に出た私は、兄はどこかなとキョロキョロしていたらダリウスに声を掛けられた。
違うお前じゃないとは言わない。
笑顔でニッコリと、対応する。
ちなみにクリントは私の後ろにちゃんといる。
私が探したのは、クリスお兄さまだ。
「これからしばらく、学園で貴女の姿を見られないと思うと寂しいですね」
「まあ、でも王妃殿下から茶会のお誘いは頂いておりますし、王都邸にしばらくは滞在するので是非殿下もいらしてください」
無難に対応。
こうやって仲の良いアピールを周囲にするのも、大事なのだろう。
水面下では婚約破棄の危機にあるという噂が流れているけど。
きっと、その噂を払拭するために、ダリウス殿下が動いていると皆思ってそうだね。
「素敵……」
「羨ましいですわ」
素直なことは良い事だと思います。
純粋な子は好きですわ。
私たちのやり取りを見て、頬を染めながら華やいだ声をあげた子たちに笑顔を振りまく。
顔は覚えたよ。
ぜひ、お近づきになりたいね。
「今はまだ、関係の悪化を見せるのは拙いということか」
「公爵家には利用価値がありますからね……表立って次世代の不仲を見せるわけには、いかないでしょう」
「どうりで、どこか芝居じみたやり取りだと思いましたわ」
それに引き換え、この子たちは。
大人顔負けの腹黒さだ。
殿下の言葉は概ね字面通りの意味だし、私も事実と社交辞令しか言ってない。
信じたいものを信じるのが人の性というけど、陳腐な悪人の性ではないだろうか。
「エリー……目が怖いよ」
「そうですか? 笑えていると思ったのですが」
「だから、余計にだよ」
ダリウス殿下に突っ込まれつつも、3人で仲良くおしゃべり。
相変わらず髪は短めに綺麗に切りそろえられていて、王子感が少ない。
ここまで来たらツンツンにおっ立てて、武闘派王子を目指すのも良いんじゃないかな。
ブレザーのお陰か、肩回りや背中周りに筋肉が付いたのか背中周りが少し大きく見える。
立派で頼りがいのある背中だ。
しかし、ときめかない。
いや婚約者だしこちらからは断れないのは、分かっているけどね。
幼馴染補正というものも発動しない。
小さい頃から知っている、歳の離れた近所の子供に対する感覚に近いかな?
彼の方が年上だけど。
1歳差なんて、誤差の範囲だ。
「ダリウス殿下、エルザ様、クリント様」
「シャルル!」
「シャルロット嬢か、どうした?」
私たちに近寄ってきて、声を掛ける子がさらに一人。
ニシェリア侯爵令嬢の、シャルルだ。
私と仲の良い先輩だね。
学園に通ったから、先輩後輩の関係になってしまった。
こんな小さい時から知っているのに、子供の成長は本当に早いものだ。
「エルザ様が久しぶりに会ったおばあ様みたいな目で私を見ているのはともかくとして、私は明日には王都を出て一度自領に向かいますので是非ご挨拶をと思いまして」
「なるほど、忙しいのだな。確かにニシェリア侯爵領は、その方の叔父が代官を務めているんだったな」
「来週には領都で夏を迎える祭事もありますし、私は今年からそういった方面のお手伝いを始めますの」
「えー! 長期休暇は、シャルルにもうちに泊まりにきてもらいたかったのに」
殿下とシャルルが真面目に挨拶を交わしているところに申し訳ないが、子供らしくない。
なので、子供らしく話の腰を折りにいった。
おおう、周りからも少し呆れた様子の視線が。
「お嬢様、もう少し成長なさってください。あまり我儘を言って、ニシェリア侯爵令嬢を困らせてはいけませんよ」
周囲に人が多いからか、クリントは完全に余所行き従者ポジションだし。
でも、クスクスと笑いながらも好意的な視線を向けてくれるご令嬢も、少なくはない。
3年生の先輩かな?
思わずそちらに、笑顔で軽く手を振ってしまった。
おおう……何やら、胸を抑えている。
……ハルナと似たような匂いがするから、あまりお近づきになりたくないね。
「やあ、皆ここに居たんだね。殿下もお疲れさまでした。ああ、シャルロットもいたのかい? いつも妹がお世話になっていたみたいだね。感謝するよ」
「いえ、そんな。私の方こそ学園内でエルザ様には、とてもよくしていただいてましたのよ。会う度に、美味しいお菓子も分けてくださいますし……これは、昔からでしたね」
ああ、そういえばシャルルには小さい頃から、鞄に入れた飴やクッキーをよく渡していた。
きちんと綺麗な紙で包んで、堅めの紙の箱で保護したお菓子。
最初は戸惑っていたけど、私が一緒に食べると意を決して食べてたのが懐かしい。
あの頃のシャルルも可愛かったな。
そんな感じで4人に増えて、わいわいやっていたらというか……わいわいやろうとしたら、お兄さまが私たちを見つけて駆け寄ってきた。
いまは、ダリウスとシャルルに挨拶をしている。
周囲に人が増えた気配はあるのに、周りにあったスペースが広くなったのが分かった。
どうやら兄は遠巻きに見るのが、丁度いいくらいの男性なのかな?
「クリス、私もその方の妹に多少は振り回されたが?」
「はは、殿下はこれから先も妹にずっと振り回されるのですから、今から慣れておかないとね。貴重な練習期間をもらえたと、感謝してもいいくらいだよ」
「はぁ……死が二人を分かつまで……か。死ぬまで退屈することのない、笑顔の絶えない人生になりそうだよ。苦笑も絶えなさそうだ」
「お二人とも失礼ですよ」
お兄さまとダリウスのやり取りに、シャルルが笑いながら突っ込んでいる。
仲が宜しくて、大変結構……これ、シャルルのことをお義姉様と呼ぶ日が来たりしないよね?
この2人なら家格も容姿も、釣り合いが取れてるし。
それって、なんて素敵!
「エルザ様が、婚約話を持ってくる叔母様のようなお顔になってきたので、私はここで失礼いたしますね。正門のところに、家の者を待たせておりますし」
「何よそれ。じゃあ、シャルルも元気でね! 手紙も書くし、領地にも遊びに行くからシャルルも来てちょうだい」
「ふふ、楽しみにしておりますわ。それでは皆様、ご機嫌よう」
そう言って、シャルルが私たちの前から立ち去る。
お兄さま、ダリウス、クリントが三者三様の表情で、その後姿を見送っていた。
そして、その後で三人がこっちに視線を向ける。
今度は、三人とも同じような表情だ。
あっ、クリントが溜息を吐いた。
「シャルロット様の半分で良いから、おしとやかな部分をお嬢に分けてもらいたい」
「分かっていないな。他と違うからこそ、エリーは魅力的なのだ」
「私はエルザがどんな娘に育っても、大事にするよ」
ふむ……合格点をあげられるのは、お兄さまだけだった。
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