魔王となった俺を殺した元親友の王子と初恋の相手と女神がクズすぎるので復讐しようと思ったけど人生やり直したら普通に楽しかった件

へたまろ

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EX章1:学園編

第11話:放課後のお誘い

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「はあ、お前のせいで酷い目にあった」
「良いですね。その取り繕わない言動。あの頃を思い出します」

 何を懐かしんでいるのだ、こいつは。
 本当にもう、困ったもんだ。

 結局のところ、俺が喜々として戦争に参加したことへの説教がメインだった。
 休暇中に危ないことをした生徒への、個別指導といったところだろうが。
 危ないことの規模が、想定外だとも言われたな。
 毎年問題を起こす生徒がいるらしいけれども、前代未聞だってさ。
 
 うん、前例があったら、この世界は地獄だと思う。
 生徒が定期的に、神と揉めて戦争を起こすとか。

 その戦争すらも、元をただせばこいつとリカルドのせいだ。
 ひいては学園長の甥っ子の息子さんと、その悪友の不始末だと思うのだが。

 逃げることは恥じゃないと言われても、相手の目的が俺である以上逃げても無駄だと思う。
 と思ったのが顔に出ていたのか、さらに怒られた。
 王都に向かえば、途中で応援に向かった各地の領軍とも合流できたとか。
 
 それは、被害が増えるだけじゃないのか? と思ってしまった。
 そう、また顔に出てしまった。

 そのことに対する、追加のお小言が。
 子供が大人相手に、傲慢が過ぎると。
 傲慢というか事実……これも顔に出た。

 うん、この無限ループで、気が付けば外が茜色だ。
 始業式の日は昼までなのだけれでも。

 まあ、お陰で昼食をご馳走になったのは、良かったことだと思おう。
 学食だったけれども。
 意外にも学食って、普通にやってるんだ。

 それもそうか。
 敷地内の寮に住んでいる子もいるわけだし。
 うちと同じ、木っ端貴族の子供。
 うちみたいにお金や伝手があれば、王都に家を持つことができるけれども。
 貧乏領地だと、家の維持ができないらしい。
 別荘地みたいな感じで、使用人は当主の移動に合わせてついてくるかたち。
 だから子供がその別荘を使用すると、常時使用人をもう一世帯分雇わないといけないとか。
 
 いや、自活すればいいじゃんと思ったが、そこはあれだ。
 貧乏でもおぼっちゃん、お嬢様。
 生活能力が低すぎると。

 俺は出来るけどな。
 大学の時は、一人暮らしだったし。
 社会人になっても、独身の間は賃貸のマンションに住んでいたし。

「やっと解放されたか」
「待ちくたびれましたよ」

 そして校門に向かってジェファードと2人でトボトボと歩いていると、正面に影が2つ見えた。
 ジャスパーとキーファか。
 呼び出しくらった俺を待ってるとか、奇特な子たちだな。

「あれ? 着替えてる?」
「長くなると思ったので、一度帰ってからまたきたのですが」
「その予想を超えて、長かったな」

 おおう……待ってたんじゃなくて、迎えにきたのか。
 
「それで、2人はどうしてここに?」
「どうしても何もジェニファー嬢が、ジャストール組で食事をと言い出したからですよ」
「流石にマリア嬢も一緒じゃ、キーファも断れなかったようだ」

 そういうことね。
 でもジャストール組って呼び方はどうなんだ?
 たぶん、夏にジャストールに行った面子のことだろうけども。
 ということは、ジャスパーの兄のガーラントも来るのか。
 それとアルトと、クリスタとエルサ。
 アイゼン辺境伯の息子のビンセント。
 リーナは……今期の編入生に名前が無かったから、アイゼン辺境伯領か。

 さてと……

「こいつはそこに侵略しようとして、アイゼン辺境伯領止まりだったけど?」

 俺は後ろに立つジェファードを親指で差して、2人に問いかけると困ったような表情を浮かべられた。

「ジェニファー嬢が、ジェファードも確保するようにと」

 言葉が穏やかじゃない。
 強制参加か。

「未来のお方様の言葉なら、従うしかありませんね」

 お前……本当に日本まで追いかけてきてないよな?
 そこは奥様で良いんじゃないのか?
 いや、良くはないけど。
 まだ、あくまで婚約打診の段階だ。
 外堀はガッチガチに埋められているけど。

「アマラ様に教えていただきました」

 なるほど。
 余計なことを教えるな。

「その前に、皆で街を見て回りたいらしいですよ」
「ふーん……普通に学生の行動……なのかな? 貴族の子供達だけでってのは、ちょっと問題じゃないか?」

 基本的に護衛が付いて回るけど、これだけの面子だ。
 相当な大所帯になりそうだけど。

「そこはガーラント様とジャスパーがいるので、護衛の訓練を兼ねてとのことでした。さらにいえば、ルークとジェファード……様がいる状態で、危険などありえないとも」
「誰が?」
「ブレード侯爵です」

 ……
 何も言う気がなくなってしまった。
 凄い、スパルタだな。
 それでもこっそりと、数人くらいは護衛を……つけてなさそうだ。

「任せてください。ルーク様の手を煩わせるようなことは、致しませんので」

 ジェファードが目をキラキラとさせて、何かのたまっているけど。
 正直、面倒くさい。
 
「別にいらない。ジェノファ」

 俺が声を掛けると、すぐに影の中から色黒の美丈夫が現れる。
 闇の精霊王だ。
 その場にいた全員が驚きつつも、呆れた表情を俺に向けてきた。
 いや、えっ?
 俺が悪いの、これ?

「いや、念話のつもりだったんだけど?」

 そもそもお願い事を、話だけで済ますつもりだったのに。

「たまたま、側におりましたので」

 いや、絶対違うよね?
 ジャストール領にいたはずだけど?

「まあいいや、適当に防御特化の闇の精霊を人数分貸して欲しかっただけなんだけど?」
「私が一時的に加護を与えますので、大丈夫ですよ」

 まあ、結果が一緒なら別に良いんだけど。
 なんで、こいつ王都にいるんだ?

「ジャストール料理と周辺の領地や国の料理を提供するお店を、王都に出しまして」
「へえ……聞いてないんだけど?」
「グリッド様の提案です。それと、ジャストールの名産を取り扱うお店も併設しておりまして」

 あー……、そういえばおじいさまと、そんな感じの話をしたな。
 ミラーニャの町魅力を、幅広く伝えるためにはみたいな感じの。

 大領地のメイン都市に、ジャストール領直営の店を出す話。
 特産品や郷土料理、さらには観光情報を宣伝するブース。
 所謂いわゆる、アンテナショップの構想を。
 
 まさか、リーチェの村を担当した時から俺の補佐になっている、マルコスではなくおじいさまが手を出してくるとは。
 
「王都に来るための、口実でもありますよ」
「てっきり、ミラーニャの町とその周辺から出るつもりは、無いと思ってた」
「色々と商機を得るためでしょう。ルーク様に任せっきりでは、体裁が悪いと思ったのでしょう。あとは、おじいちゃん凄いって言われたいと、ぼやいていましたし」

 そうか……
 ハイクオリティな物まねをありがとう。
 流石は精霊。

「私たちはあってないような存在ですからね。姿かたちも自在に変えられますし、声くらいは簡単なものです」

 大したことないと本心で思っているんだろう。
 だからこその、言葉なんだろうし。
 普通のことを自慢したり、報告する必要ないもんな。

 でも、もう少し早く教えてくれたらと、思わなくもない。
 他人の声が簡単に出せるって、やばいからな?
 戦争で相手の指揮官の声色に変えて、でたらめな指示を出したらあっというまに戦況はひっくり返るぞ。
 撤退指示や突撃命令、さらには寝返りの鬨の声とか……使いどころは色々とあるが。

 本人が本心で思ってそうなので、今度ゆっくり話そう。
 さて……キーファとジャスパーに聞くべきことができたな。

「今日の予定は?」
「ジャストールの名産店と、食事所を楽しむ予定ですが?」
「ああ、限定パンフレットなるものも、欲しくてな。それを使って父や母に、ジャストールの魅力を説明したい」

 やっぱりか。
 きっと、ジェニファの提案だろうけど。
 あのパンフレット、簡易だけど地図も載ってるんだよね。
 まあ、他領に流れたところで、問題は無いけどさ。
 戦争を仕掛けられたところで、どうとでも対処できるし。

 領内の情報操作を狙ったような間諜を送られるのは困るけど。
 ただのスパイなら、どうってことはない。
 それが不要になるための情報発信の場だから、構わない。
 真似したい領地には、真似してもらってもいい。
 もはや地位は盤石となりつつあるから、領内の発展じゃなくて国内の発展にも目を向け始めてるし。
 鉄道横断構想のためにも、他領の協力も得たいしね。

 さてさて、俺からしたらただの視察だけれども。
 皆が楽しみにしてるようだし、別に構わないか。
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