魔王となった俺を殺した元親友の王子と初恋の相手と女神がクズすぎるので復讐しようと思ったけど人生やり直したら普通に楽しかった件

へたまろ

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EX章1:学園編

第6話:何故いる?

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 大きなエプロンを着けてカレーを取りに行った2人に手を振ると、さっそく周囲を見渡す。
 まあ、クラスメイトも多くいるけど、そこまで仲が良いとは言い難い。
 仲は悪くないレベル。

 顔見知り……いや、クラスメイトか。
 友達……と呼べなくもないか。

 すでにいくつかのグループが形成されているし、正直ジャスパーと一緒にいる時間が多かったから他の子のことをあまりよく知らない。
 共通の話題があればいいけれども、すでに盛り上がっているところに他の話題をブッ込んで割り込むのも気が引ける。
 プレゼントはどこか別の部屋に山積みにされているのだろうから、それも話題にしづらい。

 仕方なしに料理コーナーでも散策するかと、テーブルの方へと向かう。
 一応エルサたちの家の使用人に頼めば、持って来てはもらえるけれども。
 それだと時間潰しにならないから、自分の目で適当に料理を盛り付けて味わうとする。

 なんなら、綺麗な盛り付けに拘るのも、暇つぶしにはいいかもしれない。
 そう思って進み始めたのだけれども、見覚えのある後姿がテーブルに見える。
 うん……

「なんで、いるの?」
「あら? これはルーク様。偶然ですわね」

 どう考えても偶然とは思えないが、普通にジェニファがいた。
 ドレス姿で。

「ルーク様も招待されていたのですね」

 知ってたよね?
 ほぼほぼ、クラスメイト全員いるんだし。
 逆にこれで俺だけ呼ばれてなかったら、本当に悲しいよ。

「まあ、同じクラスだし。それよりも、ジェニファも呼ばれてたなら教えてくれたら良かったのに」
「私もこの間のジャストール旅行で、お二方とは親交を深めましたから。こうして招待していただけたのです」

 うん、これはなんらかの取引があったのだろう。
 いや、それ以前に公爵家から圧力を掛けられたら、2人には断れないだろう。
 これはいくない。

「言えば僕の方から口は利いたし、エスコートもできたのになぁ」
「……それは、惜しいことをしましたわ。でもエスコートなら、今からでも遅くはありませんよ?」
「ふふ、すでに皿に料理を乗せた状態で? それは、ちょっとおかしいと思うよ」

 うん、うちの料理人が提供した料理だからね。
 ジェニファのお皿には少なくない量の料理が乗っている。

「では、あちらでご一緒しませんか?」
「ジェニファ……今日の主役はエルサ嬢とクリスタ嬢でしょう? 目的を間違えてはいけませんよ? お二方を祝う席ですからね?」

 あっ、マリアもいたんだ。
 キーファの姉だ。

「これはこれは、お久しぶりですね。マリア様も、招待を?」
「いえ、私は弟の付き添いですよ。弟が女性の家を訪れるのですもの。ついていかない訳にはいかないですよね?」

 いや、付いてこなくても良いんじゃないかな?
 相変わらずよく分からない姉弟だ。
 チラリとマリアがキーファの方に視線を向けると、それに気付いた彼が笑顔で手を振っているが。
 目が笑っていない。
 それに応えるように微笑んだマリアもどこか人形のような、それでいて微笑みという言葉がしっくりとくる表情。
 うん、練習されつくされた微笑み。

 なぜこの2人がこんなにも仲が良い姉弟アピールを周囲にしているかは、本当に謎でしかない。
 いつかその謎に、迫れるのだろうか?

「むぅ……ルーク様が、マリアばっかり見てる。ちょっとマリア! 弟のところに行ってらしたら?」

 おい!
 友達を厄介払いするんじゃない。

「そうね、ルークがいるならジェニファを一人にしても、問題なさそうだし」

 さらりと、押し付けようとしないでほしい。
 そして主役2人を放置して、弟とのひと時を過ごそうとしないでほしい。
 できれば、緩衝材としてここに居てほしいのだけれども。

「ルーク様には、色々と料理の説明もお願いしたいですし」

 うん、シェフがいるんだから、そっちに聞いたらどうかな?
 バイキング形式だけど、一部ライブスタイルになってるんだし。
 これも、ジャストール発だけど。

 焼くだけ、揚げるだけの簡単なものはその場で調理して、出来立てが食べられるようにとの配慮。
 ホテルミラーニャの朝食もこのバイキングとライブ形式だから、クリスタから相談を受けた。
 バイキングの方も、基本的には裏で作っては提供を繰り返しているけどね。
 シェフズライブキッチンや、ライブメニューというのはこちらから要望を伝えられるのも良い。

 ステーキの焼き加減や、揚げて欲しいものを指定したり。
 ちなみにホテルミラーニャの方は、もっと本格的な料理も目の前で作ってくれる。
 料理のカクテルも入れる物を指定したりできるし。

 子供達にはシュリンプカクテルや、お兄様達にはオイスターカクテルが割と人気だったっけ?。

「好きな物を取るのはいいけれども、なるべく盛り付けは崩さないようにね……それから、僕の分まで取らなくていいからね?」

 とりあえず、ジェニファのお皿を見て苦笑いをしつつ指摘する。
 バイキングとかビュッフェで子供の分を一緒に取るのは別として、周りの人のために同じ料理をたくさん取るのはあまり良い行為とはいえない。
 とくにビュッフェでは。
 ビュッフェは食べた分の代金を払うのだから、やはり食べたいものをそれぞれが選んで食べるべきだしね。

 ここには貴族の子しかいないのだから、もう少しスマートに楽しむべきだと思う。
 公爵家のご令嬢なら。

「このハム、凄く美味しかったので」
「うん、知ってるよ」

 そう言って、山盛りにされたスパムもどきを見て溜息を吐く。
 色々な料理を少しずつ食べる方が、良いと思うんだけど。
 流石にこれを分けてもらわないと、ジェニファが他のものを食べられないだろうし。

「今回は、ありがたくおすすめを分けてもらうけどね。次からは、家で食べる料理の盛り付けをイメージしながら料理を取ってきたらいいと思うよ」

 そう言った僕の手に乗っているお皿を見て、ジェニファが何度か頷く。
 僕のお皿には3品しか乗っていない。
 けど、ソースを使った料理があるから、次はまた新しいお皿に変えるけどね。

「ホテルミラーニャだと扱いが難しい料理は取り分けてくれる人もいたし、お皿は都度都度交換してくれる人がいたからね」

 流石に、そこまでの人員は避けなかったのだろう。
 ジェニファの持っているお皿状態の子供たちが、あちらこちらにいるのを見て苦笑いする。

「でも、そんなにお皿を使ったら洗うのが大変なのでは?」
「それで味が混ざったら、作った人に失礼だからね。美味しい物を美味しく、美しく食べないと」

 うん、次から次に使い回すと、料理の見た目も味も変わってくるからね。
 
 あっ、でもジェニファのお陰で、寂しい思いはしなくて済んだ。
 その点は、素直に感謝しないとね。

「マリアったら……」

 お礼を言おうとジェニファの方を見たら、彼女は弟に声を掛けるところのマリアを見ていた。
 うん、彼女のお皿にはウニのカナッペと、イクラのカナッペが大量に載っていた。
 ジャストールでキーファが物凄く気に入ってた料理。

 ウニは海岸都市からちょっとズルして運んできたものだけど、イクラは養殖の鮭っぽい魚の卵を塩漬けにしたものだ。
 ホテルミラーニャでも好みは分かれたけど、俺の大好物だから頑張った。
 そして、キーファの好物でもある。

 うーん……下の方のカナッペのイクラとか、潰れてしまってるし。
 ウニの方も、変形している。
 
「僕の言うこと、分かった?」
「はい、あれを見たら……」

 おかげで、ジェニファが理解してくれたからよしとしよう。

「お姉さま……これだけたくさんの料理があるのですから、色々と楽しみましょうよ?」
「でも、あなたこれが好きでしょ?」
「確かに、そうですが」
「無くなる前に、味わってもらおうと思って」
「嬉しいです、お姉さま」

 三文芝居を始めた姉弟を見ながら、ジェニファとその場を逃げるように離れることになった。
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