魔王となった俺を殺した元親友の王子と初恋の相手と女神がクズすぎるので復讐しようと思ったけど人生やり直したら普通に楽しかった件

へたまろ

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EX章1:学園編

第3話:王族たち

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 王城での王族との話し合いは、ただただ疲れたとしか言いようが無かった。
 くたびれた顔のオーウェン陛下と、不機嫌さを隠すこともしようとしないオーランド卿。
 いたたまれない表情のロナウド殿下。
 そしてどこか楽しそうな、レオンハート卿。
 他人事と思ってそうな、リック殿下。
 
 この5人に囲まれて、謝罪と言い訳のオンパレード。
 といっても、最初の世界起因の話ではない。
 今回、リカルドが起こした事件に対するものだ。
 
 いや、最初の世界の出来事を引き合いに出して、オーランド卿がチクチクとオーウェン陛下をいじめている。
 オーランド卿は彼の叔父でもあるし、家族関係となると立場が強いのだろう。

「まったく、お前は救いようがない。我が孫からも諫言があったはずだ。あの子は駄目だと。何故、目を離した?」

 この場合の孫というのは、リカルドの取り巻きのバルザックではなくその兄のロジャーのことだろう。
 ジェニファーの兄でもある、しっかりとした青年。
 そして学園の教師でもある。
 
 もしかしたら、将来の義兄になるかもしれない人物……ちょっとまて、そうなるとバルザックが俺の義弟になるかもしれないということか?
 それは、少し勘弁してもらいたい。
 だって、あの子も馬鹿だから。

「まったくもって、面目の次第もございません」

 流石に身内と被害者しかいないからか、陛下も素直に謝罪をしている。
 それでいいのか? と思わなくもないけど、ここは静観の一手に限る。
 下手に口を挟んで、オーランド卿の不興を買うのは拙い。

 こういったのは、何が災いしてこっちに飛び火するかが分からないからな。

「ありえた世界線でも、わしはこやつのことを気に入っておったらしい。救えなんだのは口惜しいが、色々と手ほどきをした期待の新人が、世界最強の魔王に育ったというのも悪くない。わしは、その魔王の師とも言えなくは無いであろう?」
「なるほど、ルーク様にあれほどの武の才と、計略を教えられたのはレオンハート卿でしたか。それに、敵対したものに対する無情な対応も」
「ああ、敵に情けを掛けることほど、愚かなことはない。必ず、それが窮地を招くことになる。と言っても、圧倒的な力量差のある相手ならば、その限りでも無いがな」
「分かります。魔王であったルーク様も、哀れな孤児や小動物には優しさを向けることがありましたから」

 完全に蚊帳の外で、レオンハート卿とジェファードが楽しそうに会話しているのが奇妙なことに思えるけど。
 彼のお陰で、ジェファードが大人しいからこっちも放っておこう。

 ロナウド殿下はオロオロしているだけだし。
 大丈夫か、将来の国王陛下。

 リックの方が、落ち着いているぞ?
 まあ、俺と一緒でお茶飲みマシーンと化しているけど。
 完全に空気になろうとしているのが、よく分かる。
 それでいて、耳だけはダンボだ。
 やっぱり、殿下とは一番気が合う気がする。

 そんな疲れる面会の結果としては、色々な賠償の話も出ていた。
 正直いらないけど。
 親よりも上の爵位とか。

 そんなの提示していいのかな? と思ってたら、案の定オーランド卿からまたも雷が落とされていた。
 曰く、身内が迷惑を掛けた相手に対して、自分の部下として取り立てるのは賠償でもなんでもないと。
 さらには学園を卒業もしてない未成年に対して、貴族の義務まで貸すのかと。

「お前は、どれだけ迷惑を重ねれば気が済むのだ! まずは、相手の希望に沿ったものを用意するのが当たり前だろう! 情けない話だが……相手の望むものが分からないなら、直接聞くか事前に調査しておけ!」

 うん、そうだそうだ! 
 オーランド先生、もっと言ってやれ!
 今更、こちらからどうこうする気はないけど、個人で伯爵位なんて貰ったらジェニファーが捗るだけだ!
 ……それは、それでありなのか?

 いや、それが嫌だから、オーランド先生は強固に反対しているのかな?
 孫娘が嫁ぐかもしれないとなると、おじいちゃんとしては複雑だもんね。

「なんじゃルーク。そんな、温かい目を向けおって」

 あっ、オーランド先生に怪しまれてしまった。
 とりあえず、笑って胡麻化しておく。

「いえ、オーランド学園長はよく、私のことをご存知でと思いまして」

 俺の言葉に、オーランド卿が顎髭をしごくようにさする。
 逆に温かい目を向けられてしまった。

「ふむ、レオンハートの話ではないが、わしもお主のことを人一倍に気にかけておったようじゃ。流れ込んできた記憶によると、この馬鹿に徹底的に詰め寄って幽閉されるくらいにはのう」

 お……おおう。
 なんだかんだ俺が目を向けてなかっただけで、きちんと味方はいたようだ。
 俺の中の魔王ルークが、なんとも複雑な感情を抱いているのが分かる。
 最初のルークが生み出した、自己防衛のための第二人格ではあるが。
 彼もルークで間違いないからな。

 密かな女性ファンが居たということに関しても、相当に驚愕していたが。
 光の女神は本当に碌な奴じゃなかったと、再認識できる。

 そんな感じで、ほぼほぼオーランド卿の独壇場でこの話し合いは終わってしまった。
 俺に対する賠償は、とりあえず保留。
 一部は先に貰えることになった。

 学校へのエアボードでの通学許可。
 ありがとう、リック殿下。
 一番欲しいものを、ピンポイントでくれるなんて。
 学園長からは、もしこれをという商品があれば学校の専用の備品として扱ってくれるとのこと。
 調味料等も含めて。
 ようは、学園御用商人としての立場を認めてくれたのだ。
 勿論、商品の品質が見合ったものであればということだが。
 最優先での交渉権がもらえるらしい。
 
 うんうん、オーランド先生も俺のことをしっかりと見てくれているようだ。

 本格的な賠償に関しては、ロナウドと2人で考えろと突き放されていたけど。

 リック殿下とオーランド卿の提案は、あくまでも間に合わせ的なものらしい。
 いやいや、メインでも十分すぎる提案だった。

 レオンハート卿からは、騎士団訓練への自由参加という有難くない提案をもらった。
 それは俺が訓練されるんじゃなくて、俺が訓練する側じゃないのかと思ったのは内緒だ。

「違うぞ? 個対100人の騎士や、個対軍団戦の模擬訓練などわしじゃないと、用意はできんだろうと思ってな」

 あー、一応俺の訓練のつもりで提案してくれたのか。
 この人は、俺をどうしたいんだ?

「国落とし……国滅……二つ名として、憧れんか?」

 うん、そういう感覚はとっくの昔に捨てたから。
 二つ名なんて、黒歴史にしかならないからね?

 ジェファードが凄く嬉しそうなので、とりあえず脇腹に一撃喰らわせとく。

「ごふぇっ! あ、ありがとうございます」

 なんでもご褒美だな、こいつは。
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