魔王となった俺を殺した元親友の王子と初恋の相手と女神がクズすぎるので復讐しようと思ったけど人生やり直したら普通に楽しかった件

へたまろ

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第3章:覚醒編(開き直り)

第18話:続々集結

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「しばらくぶりだね」
「一カ月も経ってないですよ」

 町の入り口でアルト達を出迎えたが、兄であるアルトが両手を広げてハグを求めてきたので思わず苦笑いしつつ応える。
 本当に、たかだか数週間離れてただけなんだけどね。
 この調子で言ったら、ヘンリーやサリアに会ったらどんな反応をするのだろう。
 後ろからジェニファのため息が聞こえてきた気がしたが。
 ちなみに、エルザとクリスタの方からは何故か生唾を飲むような音が。
 気にしないようにしよう。

「ようこそお越しくださいました、ジャストールへ。そして、ミラーニャの町へ」
「この度は、お招きいただきありがとうございます。噂に名高い最先端を行く観光都市を、是非とも満喫させていただきます」
「期待しても良いんだろ? アルトから耳にタコができるほど聞かされたからな。この町とルークの自慢話は」

 キーファの姉のマリアと、ジャスパーの兄のガーラントが笑顔で馬車から降りてきて声を掛けてくる。
 
「はい、せいいっぱいのもてなしをご用意しております」

 そう言って手を差し出して、2人と交互に握手をする。
 ガーラントにはギュッと引き寄せられて、優しく抱きしめられた。

「あとで、手合わせもお願いしたい。そっちの方も、アルトと弟から色々と聞かされているからな」

 そして耳元で、そんなことを囁かれた。
 道中で何の話をしたんだと2人に恨みがましい視線を送ったが、ジャスパーは町の景観を見るのに夢中だし、アルトはエルザ達に挨拶をしていて全く気付いてもらえなかった。

「このまま馬車と荷物の方は、私の方で今夜の宿にお届けいたします」

 全員が馬車から降りたところで、ジェノスが4人に声を掛けて御者台に乗り込んでいた。
 御者台も3人は優に座れるくらいにスペースがあるので、御者と並んでもまだまだ余裕だ。
 案外、道中にここに座りたがる子供は多いのだ。
 子供だけとは限らないけど。

「では、後程合流いたしますので、フォルス様、よろしくお願いいたします」
「ああ、任せられた」

 ジェノスが姿勢よく頭を下げて、そのまま馬車を町の奥の方へと進めていったが。
 
「お二人は、同僚では?」
「厳密には、フォルスの方が格がかなり上ですね」
「格ですか? もしかして、どちらも貴族の方の縁者でしょうか?」

 マリアの疑問になんとなく答えたけど、疑問が残ったのか首を傾げていた。
 いや、まあそこらへんを詳しく説明するのは、色々と問題があるので笑って誤魔化す。
 
「フォルス様!」

 さて、歩いて最初の目的地へと向かおうとしたら、通りの反対から声を掛けられる。
 聞き覚えのある少女の声。

「あっ、ルーク様! すみません、いらっしゃるのに気づかなくて」
「リーナ……嬢?」

 まさかの、正ヒロインがここで再会とか。
 運命の悪戯感が半端ない。
 いや、彼女にとっては、フォルスとの劇的再会かもしれないが。

「ご無沙汰しておりますリーナ様」
「お変わりがないようで、何よりです。リーナ様には私のことを覚えておいていただいて、身に余る光栄です」
「いえ、お二人にまたお会いできて、こちらこそ嬉しいですわ」

 フォルスと2人で無難に挨拶を返すと、リーナがスカートの端をつまんで片足を下げつつちょんと膝を曲げてカーテシーを返してきた。
 そういえば、初めて会った時も同じように可愛らしい仕草の挨拶だったな。
 よくよく考えるとちょっと特殊なポーズなのに、地球と同じように挨拶として使われているというのも今考えると不思議な気持ちが沸かなくもない。
 ここら辺の時代背景とかがよく分からないんだけど、まあ昔からあってもおかしくない礼儀作法ではあるけども偶々こんなポーズで挨拶をするかな?
 異世界でも挨拶が共通なのは、色々と意図的なものを感じなくはない。
 いや、だからといって異世界の挨拶がぶっ飛んでても困るけど。
 そのともだち……こ的なのがデフォとかだったら、もう絶望しかない。

「ゴホン……お嬢様?」

 おお、執事の人も健在で良かった。
 全然歳を取ったようには見えないけど。
 元気そうだ。

「えっ? あっ……」

 そしてその老齢の執事の咳払いで、リーナがこっちの状況に気付く。
 うん、現在侯爵家の子息令嬢をもてなしているところ。
 そして、俺の後ろには伯爵家の令嬢だけでなく、公爵家の令嬢までいる状況。
 ちなみにリーナの実家はブライト伯爵家。
 そう伯爵家なのだ。
 公爵家や侯爵家とは比べるべくもなく、家格は低い。
 その伯爵家の令嬢が上位貴族の子供たちを無視して、俺に最初に……厳密には俺の執事に最初に声を掛けたわけだ。
 大失点だな。

 見る見るうちに顔が赤くなったかと思うと、すぐに青ざめていき、最後には白くなっていた。
 
「私、なんて失礼を……」
「別に私は気にしてませんわよ」

 ガクガクと震えて泣きそうになっているリーナに対して、優しい声音で微笑みかけたのはジェニファだった。
 どういう風の吹き回しだろう。
 古い知り合いの女の子とか、嫉妬で当たったりとかするかと思ったけど。
 流石にそれは己惚れすぎか。
 俺にジェニファが好意を寄せているのは確信しているとはいえ、どこまでの好意かまでは計り知れない部分はあるし。
 そこまで詳しく切り込んだわけじゃないからな。
 しかし、なんとなく裏があってもおかしくないような穏やかな反応。

「フォルス様……確かにルーク様の執事ではありますが、見目麗しく不思議な魅力をお持ちの殿方ですわね?」
「えっ、あ……はい」
「申し遅れました、わたくしジェニファ・フォン・ヒュマノと申します。ルーク様とは大変良い関係を築かせていただいておりまして。リーナさんは、ブライト伯爵家の御令嬢でしたわね? ルーク様とは古いお付き合いで?」
「初めまして、リーナ・フォン・ブライトと申します。挨拶が遅れて、誠に申し訳ありません」

 ジェニファがまくしたてるように声を掛けているが、リーナは頭の回転が追い付いていなさそうだよな。
 そして、馬車の入り口のすぐそばで俺と挨拶どころか、一言目を発する機会を逃して居心地悪そうなジャスパーを見るとなんかホッとする。
 キーファが楽しそうな目でジャスパーとリーナとフォルスを見ているが。
 彼にとっては、色々と観察対象が同時に現れて目移りしてるって感じだな。
 相変わらずの良い趣味だ。

 エルザ達は一転して複雑そうな表情だな。
 自分たちがあの立場ならと置き換えて考えていたりするのかな?
 なんか、修羅場とは違うけど……リーナにとっては修羅場か。
 なんと間の悪い子なんだろう。
 ある意味で、絶妙なタイミングともいえるけど。
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