25 / 124
第1章:ジャストール編
第19話:怒り
しおりを挟む
「お前たちやけに大人しいが、そんなに兄を怖がらないでやってくれないか?」
黒シャツの男から聞き出した元締めの屋敷に向かう道すがら、兵の代表を務める初老の男性に声をかける。
確か、ウェッジといったか?
「いえ、そのようなことは」
兵たちのアルトに向ける視線には、明らかに畏怖の念が込められている。
得体のしれない、それも想像をもつかない強さに恐れがあるのだろう。
ある程度そういった感情を抱かれるのは必要かもしれないが、必要以上に恐れられるのはいただけない。
兄はいずれ、この地を納める領主になるのだ。
少しでも障害になりそうなものは、芽のうちに摘み取っておかないと。
「確かに兄の強さに怯えるのは分かる……だがな、あれは神が授けてくださった力だ。その為人は、神が保証してくださっているということだ」
「はっ……」
歯切れが悪いし、どこか納得しかねている表情だ。
兄の力に対するそれだけじゃないのか?
もしかして、必要以上にアルトが暴れたか?
「頼もしいことではないか。兄がいれば、我が領地は安泰だ。むろん手の届かない場所までは守れないかもしれないが、兄が来るまで持ちこたえれば、どんな劣勢でも覆すことができる可能性があるということだ」
「そうですな。本当に、頼もしい限りです」
これは、素直な感情っぽいが。
頼もしい限りですのあとに、が……と続きそうな口ぶりだったな。
「まあ、慣れてもらうのと、兄をしっかりと見てもらえたら分かると思うさ。兄は、本当に家族思いでね、領民も同じように大事にしてくれると私は信じているよ」
「ははは、ルーク様は、アルト様が大好きなのですね」
「ああ、兄としてはこれ以上ないくらいに、優秀で素晴らしい人だと思っている」
「ルーク様のおっしゃる通りですね」
ん?
よくよく見れば、ウェッジが俺を見る目にも若干の怯えがあるように感じたのは、気のせいかな?
一瞬のことだったから、見間違いかもしれないが。
ウェッジとの話を切り上げて、兄の方に近づいていく。
微妙に他の兵がアルトから少し間を空けて、後ろをついていってるが。
アルトの護衛の役割もあるんじゃないかな?
アルトが先頭でいいのかな?
「お兄さまは、どれだけ暴れられたのですか?」
「ん? どうしてそんなことをいうんだい?」
俺の質問に笑顔で答えているが、どこか冷めた印象を感じる。
こんな兄は、初めてかもしれない。
「皆が怯えておりますよ」
「ふふ……」
なんだ、その不敵な笑みは。
どこかおかしい。
「私の弟が本気で怒っているんだ……私にとって、それがどれだけ腹立たしいことか」
……張り切ってたわけじゃなくて、アルトも静かにキレていたということか。
それも俺のために。
いや、俺のせいともいえるか。
俺のせいで、アルトが周りに怯えられているのか。
年甲斐もなく、感情を表に出し過ぎたか。
「それに、怯えられているといったらルークと、フォルスもだよ」
「えっ?」
アルトの爆弾発言に思わずフォルスの方を向くと、静かに頷かれた。
やはり、さっきのウェッジの視線は勘違いじゃなかったらしい。
「私も、なぜかあの者たちには非常に腹が立ってしまってですね……あのような、塵芥のような存在に心を動かされるとは」
フォルスもキレてたのか。
確かに珍しいな。
俺と俺の家族以外の人間なんか、虫や動物と一緒のこの世界の生物という括りで見てそうだが。
「フフフ、まあルークのあのような姿は見たことなかったからな。兄としては意外でもあるし嬉しくもある」
「それは、ひどくないですか?」
「ああ、あまりお前が人に対して不快感を表に出すところは見たことなかったからな。感情が希薄とまではいわないが、心を表にあまり出さないきらいがあるからな。子供らしくないと思って、兄は心配していたのだぞ」
確かに、この世界に来てからは子供らしくない子供だったかもしれないが。
それでも、それなりに子供らしさを演じていたと思うのだが。
「それをいったら、お兄さまのあのような雰囲気を見たのも、私は初めてですけどね」
「そうか? そうかもな……私も、ここまで心を揺れ動かされたのは最近では無かったかもしれないね。それだけ、お前のことを大事に思ってるってことさ」
うーむ。
面と向かって言われると、恥ずかしいな。
「まあ、お前はおじいさまが大好きだからな。あの人の町を汚されたのが、よほどに腹立たしかったのだろう。優しい子に育ってくれているようで、それもまた嬉しいぞ」
「ふふ、いつまで経っても私は、お兄さまにとって子供なのですね」
俺の言葉に、兄がキョトンとした表情を浮かべる。
そんなに、おかしなことを言ったか?
「12歳は、まだ子供だろう」
うん、おかしなことを言ったようだ。
「お二人とも、そろそろ着きますよ」
フォルスに促されて、道の先を見る。
なるほど、なかなかに立派な建物だ。
よほど、あくどいことをして稼いできたのか。
どれだけの人を不幸にしてきたか、あの建物だけで分かるな。
また、腹が立ってきたな。
「さてと……行くか」
「はい」
アルトに促されて、屋敷に入ろうとして2人同時に肩を掴まれる。
見ると、ウェッジが困った様子で首を横に振っていた。
「流石に、ここは私たちに任せてもらえませんか?」
「あー……そうだな」
ウェッジの言葉に、アルトが少し悩んだあとで首を縦に振る。
あれ?
なんか、ウェッジさんの表情に余裕がないというか。
「我が領地で、このような輩が専横していることを知らなった。それでは済まされませんからね」
怒ってる?
「我が隊、そして警備全てにも腹が立ちますし、ここの連中にはことさらです」
物凄く怒ってるな。
ここに来るまでの間に、沸々と怒りが沸いてきたのだろうか?
「ルーク様を見ていると、自分が情けなく……また、奴らが憎く思えてきて。恥ずかしい話ですが、この年でここまでの怒りを覚えるとは」
見ると他の兵の連中まで、怒気を放っている。
「グリッド様に仕え、この町を守る役割にある我らよりも、ルーク様の方が腹を立てている。はあ、我ながら本当に情けない」
俺のせいなの?
なんか、皆がこの悪党じゃなくて俺のせいで腹を立てているってのは、なんだかな。
まあ、フォルスに関しては違うと信じたいが。
***
「くっ、なんの証拠があって「黙れ。そんなもの、後からいくらでも出てくる」
屋敷に突入して10分足らず。
いま、商会長であり諸悪の根源である、ロットの首にウェッジが剣を当てている。
首から血が出てるから、寸止めですらない。
「証拠もなにも、心当たりがありすぎるだろう?」
「だからといって、こんな横暴がまかり通ると思うなよ! 俺の後ろにはヒッ!」
ロットが唾を飛ばしながら、何かを言いかけた瞬間にウェッジが首の剣を放して彼の右の眼球の目の前に切っ先を突き付けていた。
「後ろには?」
「……」
自分が何を口にしかけたのか気付いたのだろう。
ロットが慌てて、口をつぐむ。
「この地を納める方々を相手にして、その後ろ盾とやらには、貴方たちが悪事を働くに足るさぞや立派な正当性があるのでしょうね?」
ロットが目を逸らそうとした瞬間に、剣が眼球に突き刺される。
おいっ!
本当に刺したよこの人。
「ぐあああああっ!」
「聞きたいのはそんな汚い鳴き声ではなく、あなたの後ろにいる方の名前なのですが?」
眼球を抑えて蹲るロットの髪を掴んで、顔を持ち上げるウェッジ。
怖いよ、こいつ。
まあ、元からそのつもりはなかったが、どっちにしろこいつらを手下にする案は完全に消えたな。
「ウェッジやめろ」
「はっ」
アルトが、ウェッジに指示を出す。
流石にやり過ぎだと思ったのだろう。
思わず、ほぅっとため息が出た。
「ギャアアアア!」
兄上?
次の瞬間には、ロットの左耳が宙を舞っていた。
いつの間に?
見ると、アルトが剣を抜いて右下に切っ先を垂れ下げて持っている。
今の一瞬で、抜いて斬ったのか?
「ルーク、フォルスに頼めるか?」
「えっ? あっ、はい」
フォルスの魔法で、口を割らせろということだろう。
フォルスの方に視線を向けると、頷いてロットの方に近づいていく。
こいつは、この光景を見て何も思わないのか。
まあ、神からしたそうなんだろうな。
「俺たちの組織のバックは、ベゼル帝国のメイガン商会です……そして、メイガン商会の商会長の妻は、帝国貴族のアークダイ侯爵の二女です」
おお……大物が出てきたな。
なるほど、こいつら強気になるわけだ。
侯爵というだけでも厄介なのに、隣国のときたから本当に面倒だ。
ため息が止まらない。
流石に、これは証拠をしっかりと固めないと如何することもできない。
国同士の問題になる。
とはいえ、こいつらを潰す障害にはならんな。
どうみても、下っ端の便利な連中だろう。
しかし、侯爵家の娘が二女とはいえ商家に嫁ぐとは。
その商家は、よほどに大きいのか……それとも、貴族の血が代々入っているのか。
「ちなみに、派閥の準男爵の娘を養子に迎え入れて嫁がせてます」
ああ、自分の血を分けた娘じゃないなら、そりゃ気にならないか。
お互いに繋がりをもつためだけの、政略結婚。
最悪、簡単に尻尾切りができる状況なんだろうな。
「ちょっとベゼル帝国に行って、その商会と侯爵とやらに警告してきましょう」
「えっ? あっ、うん……」
完全に手詰まりかと思ったが、便利なやつがそばにいた。
フォルスが、ちょちょっと行ってガッツリと絞めてくれるらしい。
まあ、神だし……俺の従魔ではあるが、誰も神が従魔になっているとは思わないだろうし。
うん、まさに文字通りのデウスエクスマキナだな。
個人的には消化不良だが、神が従魔ってのはいいものだな。
本音で言えば、自分の手でどうにかしたいところだが。
流石に、相手が面倒すぎるな。
殺す以外の方法が思いつかないし、俺に人が殺せるかどうかという問題もある。
うーむ、殺すところを想像したが、そんなに忌避感はないな。
直接剣で殺すとなると、気になるかもしれないが。
魔法で殺すぶんには、あまり感情を……いや、おそらく嫌な思いはするだろうが、直接的に物理的に殺すのと比べて心理的には楽な気がする。
黒シャツの男から聞き出した元締めの屋敷に向かう道すがら、兵の代表を務める初老の男性に声をかける。
確か、ウェッジといったか?
「いえ、そのようなことは」
兵たちのアルトに向ける視線には、明らかに畏怖の念が込められている。
得体のしれない、それも想像をもつかない強さに恐れがあるのだろう。
ある程度そういった感情を抱かれるのは必要かもしれないが、必要以上に恐れられるのはいただけない。
兄はいずれ、この地を納める領主になるのだ。
少しでも障害になりそうなものは、芽のうちに摘み取っておかないと。
「確かに兄の強さに怯えるのは分かる……だがな、あれは神が授けてくださった力だ。その為人は、神が保証してくださっているということだ」
「はっ……」
歯切れが悪いし、どこか納得しかねている表情だ。
兄の力に対するそれだけじゃないのか?
もしかして、必要以上にアルトが暴れたか?
「頼もしいことではないか。兄がいれば、我が領地は安泰だ。むろん手の届かない場所までは守れないかもしれないが、兄が来るまで持ちこたえれば、どんな劣勢でも覆すことができる可能性があるということだ」
「そうですな。本当に、頼もしい限りです」
これは、素直な感情っぽいが。
頼もしい限りですのあとに、が……と続きそうな口ぶりだったな。
「まあ、慣れてもらうのと、兄をしっかりと見てもらえたら分かると思うさ。兄は、本当に家族思いでね、領民も同じように大事にしてくれると私は信じているよ」
「ははは、ルーク様は、アルト様が大好きなのですね」
「ああ、兄としてはこれ以上ないくらいに、優秀で素晴らしい人だと思っている」
「ルーク様のおっしゃる通りですね」
ん?
よくよく見れば、ウェッジが俺を見る目にも若干の怯えがあるように感じたのは、気のせいかな?
一瞬のことだったから、見間違いかもしれないが。
ウェッジとの話を切り上げて、兄の方に近づいていく。
微妙に他の兵がアルトから少し間を空けて、後ろをついていってるが。
アルトの護衛の役割もあるんじゃないかな?
アルトが先頭でいいのかな?
「お兄さまは、どれだけ暴れられたのですか?」
「ん? どうしてそんなことをいうんだい?」
俺の質問に笑顔で答えているが、どこか冷めた印象を感じる。
こんな兄は、初めてかもしれない。
「皆が怯えておりますよ」
「ふふ……」
なんだ、その不敵な笑みは。
どこかおかしい。
「私の弟が本気で怒っているんだ……私にとって、それがどれだけ腹立たしいことか」
……張り切ってたわけじゃなくて、アルトも静かにキレていたということか。
それも俺のために。
いや、俺のせいともいえるか。
俺のせいで、アルトが周りに怯えられているのか。
年甲斐もなく、感情を表に出し過ぎたか。
「それに、怯えられているといったらルークと、フォルスもだよ」
「えっ?」
アルトの爆弾発言に思わずフォルスの方を向くと、静かに頷かれた。
やはり、さっきのウェッジの視線は勘違いじゃなかったらしい。
「私も、なぜかあの者たちには非常に腹が立ってしまってですね……あのような、塵芥のような存在に心を動かされるとは」
フォルスもキレてたのか。
確かに珍しいな。
俺と俺の家族以外の人間なんか、虫や動物と一緒のこの世界の生物という括りで見てそうだが。
「フフフ、まあルークのあのような姿は見たことなかったからな。兄としては意外でもあるし嬉しくもある」
「それは、ひどくないですか?」
「ああ、あまりお前が人に対して不快感を表に出すところは見たことなかったからな。感情が希薄とまではいわないが、心を表にあまり出さないきらいがあるからな。子供らしくないと思って、兄は心配していたのだぞ」
確かに、この世界に来てからは子供らしくない子供だったかもしれないが。
それでも、それなりに子供らしさを演じていたと思うのだが。
「それをいったら、お兄さまのあのような雰囲気を見たのも、私は初めてですけどね」
「そうか? そうかもな……私も、ここまで心を揺れ動かされたのは最近では無かったかもしれないね。それだけ、お前のことを大事に思ってるってことさ」
うーむ。
面と向かって言われると、恥ずかしいな。
「まあ、お前はおじいさまが大好きだからな。あの人の町を汚されたのが、よほどに腹立たしかったのだろう。優しい子に育ってくれているようで、それもまた嬉しいぞ」
「ふふ、いつまで経っても私は、お兄さまにとって子供なのですね」
俺の言葉に、兄がキョトンとした表情を浮かべる。
そんなに、おかしなことを言ったか?
「12歳は、まだ子供だろう」
うん、おかしなことを言ったようだ。
「お二人とも、そろそろ着きますよ」
フォルスに促されて、道の先を見る。
なるほど、なかなかに立派な建物だ。
よほど、あくどいことをして稼いできたのか。
どれだけの人を不幸にしてきたか、あの建物だけで分かるな。
また、腹が立ってきたな。
「さてと……行くか」
「はい」
アルトに促されて、屋敷に入ろうとして2人同時に肩を掴まれる。
見ると、ウェッジが困った様子で首を横に振っていた。
「流石に、ここは私たちに任せてもらえませんか?」
「あー……そうだな」
ウェッジの言葉に、アルトが少し悩んだあとで首を縦に振る。
あれ?
なんか、ウェッジさんの表情に余裕がないというか。
「我が領地で、このような輩が専横していることを知らなった。それでは済まされませんからね」
怒ってる?
「我が隊、そして警備全てにも腹が立ちますし、ここの連中にはことさらです」
物凄く怒ってるな。
ここに来るまでの間に、沸々と怒りが沸いてきたのだろうか?
「ルーク様を見ていると、自分が情けなく……また、奴らが憎く思えてきて。恥ずかしい話ですが、この年でここまでの怒りを覚えるとは」
見ると他の兵の連中まで、怒気を放っている。
「グリッド様に仕え、この町を守る役割にある我らよりも、ルーク様の方が腹を立てている。はあ、我ながら本当に情けない」
俺のせいなの?
なんか、皆がこの悪党じゃなくて俺のせいで腹を立てているってのは、なんだかな。
まあ、フォルスに関しては違うと信じたいが。
***
「くっ、なんの証拠があって「黙れ。そんなもの、後からいくらでも出てくる」
屋敷に突入して10分足らず。
いま、商会長であり諸悪の根源である、ロットの首にウェッジが剣を当てている。
首から血が出てるから、寸止めですらない。
「証拠もなにも、心当たりがありすぎるだろう?」
「だからといって、こんな横暴がまかり通ると思うなよ! 俺の後ろにはヒッ!」
ロットが唾を飛ばしながら、何かを言いかけた瞬間にウェッジが首の剣を放して彼の右の眼球の目の前に切っ先を突き付けていた。
「後ろには?」
「……」
自分が何を口にしかけたのか気付いたのだろう。
ロットが慌てて、口をつぐむ。
「この地を納める方々を相手にして、その後ろ盾とやらには、貴方たちが悪事を働くに足るさぞや立派な正当性があるのでしょうね?」
ロットが目を逸らそうとした瞬間に、剣が眼球に突き刺される。
おいっ!
本当に刺したよこの人。
「ぐあああああっ!」
「聞きたいのはそんな汚い鳴き声ではなく、あなたの後ろにいる方の名前なのですが?」
眼球を抑えて蹲るロットの髪を掴んで、顔を持ち上げるウェッジ。
怖いよ、こいつ。
まあ、元からそのつもりはなかったが、どっちにしろこいつらを手下にする案は完全に消えたな。
「ウェッジやめろ」
「はっ」
アルトが、ウェッジに指示を出す。
流石にやり過ぎだと思ったのだろう。
思わず、ほぅっとため息が出た。
「ギャアアアア!」
兄上?
次の瞬間には、ロットの左耳が宙を舞っていた。
いつの間に?
見ると、アルトが剣を抜いて右下に切っ先を垂れ下げて持っている。
今の一瞬で、抜いて斬ったのか?
「ルーク、フォルスに頼めるか?」
「えっ? あっ、はい」
フォルスの魔法で、口を割らせろということだろう。
フォルスの方に視線を向けると、頷いてロットの方に近づいていく。
こいつは、この光景を見て何も思わないのか。
まあ、神からしたそうなんだろうな。
「俺たちの組織のバックは、ベゼル帝国のメイガン商会です……そして、メイガン商会の商会長の妻は、帝国貴族のアークダイ侯爵の二女です」
おお……大物が出てきたな。
なるほど、こいつら強気になるわけだ。
侯爵というだけでも厄介なのに、隣国のときたから本当に面倒だ。
ため息が止まらない。
流石に、これは証拠をしっかりと固めないと如何することもできない。
国同士の問題になる。
とはいえ、こいつらを潰す障害にはならんな。
どうみても、下っ端の便利な連中だろう。
しかし、侯爵家の娘が二女とはいえ商家に嫁ぐとは。
その商家は、よほどに大きいのか……それとも、貴族の血が代々入っているのか。
「ちなみに、派閥の準男爵の娘を養子に迎え入れて嫁がせてます」
ああ、自分の血を分けた娘じゃないなら、そりゃ気にならないか。
お互いに繋がりをもつためだけの、政略結婚。
最悪、簡単に尻尾切りができる状況なんだろうな。
「ちょっとベゼル帝国に行って、その商会と侯爵とやらに警告してきましょう」
「えっ? あっ、うん……」
完全に手詰まりかと思ったが、便利なやつがそばにいた。
フォルスが、ちょちょっと行ってガッツリと絞めてくれるらしい。
まあ、神だし……俺の従魔ではあるが、誰も神が従魔になっているとは思わないだろうし。
うん、まさに文字通りのデウスエクスマキナだな。
個人的には消化不良だが、神が従魔ってのはいいものだな。
本音で言えば、自分の手でどうにかしたいところだが。
流石に、相手が面倒すぎるな。
殺す以外の方法が思いつかないし、俺に人が殺せるかどうかという問題もある。
うーむ、殺すところを想像したが、そんなに忌避感はないな。
直接剣で殺すとなると、気になるかもしれないが。
魔法で殺すぶんには、あまり感情を……いや、おそらく嫌な思いはするだろうが、直接的に物理的に殺すのと比べて心理的には楽な気がする。
2
お気に入りに追加
1,538
あなたにおすすめの小説
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】
早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。
皆様どうぞよろしくお願いいたします。
【10/23コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【第2巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる