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第1章:ジャストール編
第14話:祖父母
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「義父さま、今年もお世話になります」
3月、入学式を一か月後に控え祖父の家を訪れる。
ジャストール領にある、避暑地的観光都市だ。
うちが男爵家でありながら、それなりに潤っている要因の一つだ。
そもそも、辺境の地とはいうものの国境沿いの領地なのだ。
他国との交易のお陰で、経済は少なからず発展している。
特に辺境伯の持つ領地などは、関税の関係もあり王都に次ぐ規模だ。
そして、うちもそのおこぼれを預かっている。
だからか、交易に関しては下手な伯爵家よりは、よほど利益をあげている。
加えて、観光地が領地にあるともなると、やはり経済効果は大きい。
夏に涼しく、町では異国の地の産物も取り扱っていて、国内にありながら異国情緒を体験できる。
住人にも、隣国から移住してきたものも少なからずいるため、本格的な外国料理が食べられる。
隣国との間には、辺境伯領がありワンクッションあるので、仮に攻め込まれてもすぐに戦火に巻き込まれるわけでもない。
逃げるだけの時間は稼げるのだ。
人気が出ないわけがない。
まあ、いまは周辺国家との関係は良好だから、その心配はないが。
それはそれで、観光事業への後押しとなっている。
「うむ、よく来たのう。アルト、ルーク、ヘンリー、サリア、大きくなったな」
「お久しぶりですおじいさま、おばあさま。おじいさま、半年前にもお会いしたではないですか? さほど変わりませんよ」
「子供の成長は、早いものだ。特にアルトとルークはよく鍛えておるな。背はあまり変わらぬかもしれぬが、肩回りが大きくなったのはよくわかる。体が一回りは大きく見えるぞ」
ひいき目もあるのだろうが、誉められて悪い気はしない。
祖父のグリッドが嬉しそうに、目を細めて俺たちの顔を見回す。
「それにヘンリーとサリアは、半年で十分にでかくなっておるしの」
「おじいさも、おばあさまも健在でなによりです。おばあさまは、むしろ肌が若返っているようにも見えますが」
「ふふふ、ありがとう。あなたのお父様が作られた、化粧水と呼ばれる魔法の水のお陰かしらね?」
俺もアルトに続いて挨拶する。
祖母のカーラが、誉められてうれしそうだ。
うん、でも本当に半年前よりは肌のハリがよくなっている気がする。
効果あったんだな、なんちゃって化粧水。
海藻や植物油に含まれるグリセロールを使った、化粧水。
消石灰と炭酸ナトリウムから、苛性ソーダを作るところから始めないといけないが。
まあ、こんなことを子供の俺が言い出したら、それはそれは……
また坊ちゃんが変なことをとしか、言われなかったが。
石鹸自体は、もともと早い段階で製造に取り掛かっていたからな。
これは天然油脂と、苛性ソーダで簡単にできるのだが。
その際に、グリセリンも出来上がる。
このグリセリンが化粧水の代用品になるとかなんとかで、とりあえず化粧水もどうにかこうにか形になった。
異世界の植物は、思ったより素直だった。
魔法の力もちょっと、借りることになったけど。
攪拌や、分離したグリセロールと遊離アルカリと遊離脂肪酸を分けるのに。
そういったことが、得意な魔法使いっているわけで。
まあ、鍋でぐつぐつと怪しい材料を煮込んで、薬を作っている魔女の方を想像してもらったらいいかな?
早い話が、ポーションなどの魔法薬の製造も行っている魔道具屋の店主に手伝ってもらった。
ポーションも材料を攪拌して、漉したり魔法を加えたりして必要なものとそうでないものを分ける作業から作っているらしいから、要領はよかった。
そういった魔法薬は液体が多いから、特に石鹸よりも化粧水づくりの方が得意そうだったな。
自分の肌を使って、何度も実験を重ねたことで納得のできる商品ができたと報告があったよ。
ビレッジ商会と業務提携を結んでもらって、そちらで販売をしてもらっている。
いまのところ、売れ行きはかなり好調とのこと。
予約が大量に入って、最長で2カ月待ちだとか。
魔法屋のおばあさん、弟子を採った方がいいんじゃないかな?
「その化粧水ですが、あれはゴートではなく、この子が主導で作っているのですよ! お義母さま」
祖母の言葉に、母が自慢げに説明を始める。
うん、ちょっと待って、その話長くなるよね?
先に、ヘンリーとサリアに挨拶させてくれないかな?
「ヘンリー、サリア、おじいさまとおばあさまにご挨拶を」
祖母が母の方に向いた瞬間に、ヘンリーとサリアの背中を押して前に出してあげる。
2人が少し恥ずかしそうにしながら、祖父母の方を見上げる。
うん、アルト……そんな悔しそうに、こっちを見ないでくれるかな?
まあ、兄としてこういったサポートをやりたかったのは分かるが。
「おじいさま、おばあさまごぶさたしてます」
「あえてうれしいです」
うん、練習通りに上手にできた。
祖父母が、嬉しそうに目を細めて2人の頭を撫でる。
「うん、わしも会えてうれしいぞ」
「おやおや、ずいぶんと言葉が上手になりましたね」
そして、精一杯の笑顔で誉めてくれた。
ヘンリーとサリアも嬉しそうだ。
おじいさまの腰の辺りにヘンリーが、おばあさまの腰の辺りにサリアが抱き着いて、花の開くような笑顔で2人を再度見上げる。
「ありがとうおじいさま、おばあさま!」
「じょうずにいえたよ、おにいさま!」
うんうん、可愛い可愛い。
それから、リビングに移動してメイドにお茶を入れてもらう。
ヘンリーとサリアは、果物のジュースを貰っていた。
茶受けには、隣の国のお菓子が出されたのでちょっと嬉しい。
美味しそうなクッキーだ。
「2人とも足をパタパタさせない」
「はーい」
少し高い椅子のため、ヘンリーとサリアは地面に届かない足をプランプランさせていたが、アルトが軽く注意するといい返事でピタッとやめた。
素直だ。
「それで、キャロさん? 化粧水の主導がルークというのは本当かしら?」
「ええ、お義母さま! 聞いてください! この子が、植物から取れた油で石鹸と化粧水を作ったんですよ」
おい!
おい……
いくら祖父母とはいえ、メインの原料をあっさりとばらすな。
まあ、別にこの人たちがどうこうする人じゃないってのは分かるけど。
誰も、口止めしなかったのか。
思わず、溜息がもれる。
母は相手が祖父母で身内だから、言ったのだと信じたい。
きっと、息子自慢のついでにポロリじゃないと……
それと、嘘はいかん。
俺は、作ってない。
「お母様、作ったのは私ではありませんよ? 私は、自分の思ったままを伝えただけで、作ったのは町の薬師の方です」
「でも、アイデアはあなたでしょ? 方法も、一緒になって考えたってみんなが言ってましたよ」
ちょっと待て、皆って誰だ?
「皆というのは?」
「屋敷のものもですが、その製造に携わっている魔法屋の店主から、販売元のビレッジ商会の支店長までみんなですよ」
……まあ、口止めはしてなかったし。
最初に石鹸の話を持ち出したのは、屋敷だった。
しかし、それで俺が作れると思われても困る。
流石に、魔法屋の店主のようにはいかない。
魔力を使う部分の製造は真似できるが、それまでの工程は流石に教えてもらいながら練習しないと無理だろうし。
「そうなのですか? じゃあ、いまあるもの以外にも原料の植物を変えたら、違う香りのものも作れるということですか?」
「そうなの、ルーク?」
「……おそらく、難しくはないと思いますが。多少の向き不向きはあるかと」
流石に、原料別での難易度はあまりないとは思うけど。
簡単に作られると思われても困るし。
油だったら、牛脂からでも作れなくはないし。
「ちょうど、隣国から仕入れてる油で、いいのがあるのよ。椿油っていうのだけど、冬場とかに乾燥した肌に塗ると痒みがおさまるのよね」
椿油があるのか。
どうやら、乾燥肌の痒み止めとして使われているようだけど。
「それでしたら、直接お顔に塗られても大丈夫ですよ」
「あら、どういうことかしら?」
「椿オイルは不乾性油なので、べた付きませんし。オレイン酸が多く含まれているので酸化もしにくいという特性がありますから。マッサージをするように優しく顔に馴染ませてあげてください。美容効果も期待できますよ?」
「……何を言ってるのかしら、この子は?」
うん、伝わってない。
まあ、そうだろうと思ったけど。
「ルークはほら……賢いから」
アルト、困ったなら無理に口を挟まなくてもいいぞ?
「ルークは天才なのです」
母上、少し黙ってもらえるかな?
「お前たちの兄は、すごいな」
「うん!」
「なんでも、しってるの」
祖父と、ヘンリー、サリアのやり取りに少しほっこりする。
「最近入ってきたばかりの椿油を、知っているだけでも驚きなのに。いや、そういった意味で、どういうことかしらと聞きたかったのだけど、まさか痒みを抑える以外の使い道まで知ってるなんて……不思議な子ね」
祖母が、少し眉を寄せて困ったような笑みを浮かべている。
そうか、ジャストールの町で見たことないだけど、ここら辺だと普通に手に入るものだと思っていた。
いや、でもまあ知ってるものは知ってる。
しかし、椿油か。
まだ、そこまでの価値を見出されていないなら、どうにかして卸元と繋ぎを作っておきたいな。
どれくらいの量が生産されているのかも気になるし。
隣の国の特産ということだが、こっちでも作れないかな?
椿の木を領都で見たことないし、この町でも見かけたことないな。
もしかしたら、辺境伯領にいけばあるかもしれない。
そもそも、こっちの国の人は椿油の元が何かも分かってない可能性がある。
邪神翻訳で椿油となっているが、実際の固有名詞は違う可能性もある。
現物を見て、確かめてみる必要が出てきた。
お金はいくらあっても困らないからな。
ましてや、王都の学園なんていったら、それなりの貴族のパーティとかに呼ばれることもあるだろう。
服にだって金がかかるだろうし……下手したら、パーティを主催しないといけないときがくるかもしれない。
チラリと、アルトの方に顔を向ける。
「ん? どうした?」
「いや」
アルトが、王都でどんな生活をしているか、やっぱり詳しく聞いておいた方がいいな。
あと、兄の交友関係も。
変なところと、繋がってなければいいのだが。
3月、入学式を一か月後に控え祖父の家を訪れる。
ジャストール領にある、避暑地的観光都市だ。
うちが男爵家でありながら、それなりに潤っている要因の一つだ。
そもそも、辺境の地とはいうものの国境沿いの領地なのだ。
他国との交易のお陰で、経済は少なからず発展している。
特に辺境伯の持つ領地などは、関税の関係もあり王都に次ぐ規模だ。
そして、うちもそのおこぼれを預かっている。
だからか、交易に関しては下手な伯爵家よりは、よほど利益をあげている。
加えて、観光地が領地にあるともなると、やはり経済効果は大きい。
夏に涼しく、町では異国の地の産物も取り扱っていて、国内にありながら異国情緒を体験できる。
住人にも、隣国から移住してきたものも少なからずいるため、本格的な外国料理が食べられる。
隣国との間には、辺境伯領がありワンクッションあるので、仮に攻め込まれてもすぐに戦火に巻き込まれるわけでもない。
逃げるだけの時間は稼げるのだ。
人気が出ないわけがない。
まあ、いまは周辺国家との関係は良好だから、その心配はないが。
それはそれで、観光事業への後押しとなっている。
「うむ、よく来たのう。アルト、ルーク、ヘンリー、サリア、大きくなったな」
「お久しぶりですおじいさま、おばあさま。おじいさま、半年前にもお会いしたではないですか? さほど変わりませんよ」
「子供の成長は、早いものだ。特にアルトとルークはよく鍛えておるな。背はあまり変わらぬかもしれぬが、肩回りが大きくなったのはよくわかる。体が一回りは大きく見えるぞ」
ひいき目もあるのだろうが、誉められて悪い気はしない。
祖父のグリッドが嬉しそうに、目を細めて俺たちの顔を見回す。
「それにヘンリーとサリアは、半年で十分にでかくなっておるしの」
「おじいさも、おばあさまも健在でなによりです。おばあさまは、むしろ肌が若返っているようにも見えますが」
「ふふふ、ありがとう。あなたのお父様が作られた、化粧水と呼ばれる魔法の水のお陰かしらね?」
俺もアルトに続いて挨拶する。
祖母のカーラが、誉められてうれしそうだ。
うん、でも本当に半年前よりは肌のハリがよくなっている気がする。
効果あったんだな、なんちゃって化粧水。
海藻や植物油に含まれるグリセロールを使った、化粧水。
消石灰と炭酸ナトリウムから、苛性ソーダを作るところから始めないといけないが。
まあ、こんなことを子供の俺が言い出したら、それはそれは……
また坊ちゃんが変なことをとしか、言われなかったが。
石鹸自体は、もともと早い段階で製造に取り掛かっていたからな。
これは天然油脂と、苛性ソーダで簡単にできるのだが。
その際に、グリセリンも出来上がる。
このグリセリンが化粧水の代用品になるとかなんとかで、とりあえず化粧水もどうにかこうにか形になった。
異世界の植物は、思ったより素直だった。
魔法の力もちょっと、借りることになったけど。
攪拌や、分離したグリセロールと遊離アルカリと遊離脂肪酸を分けるのに。
そういったことが、得意な魔法使いっているわけで。
まあ、鍋でぐつぐつと怪しい材料を煮込んで、薬を作っている魔女の方を想像してもらったらいいかな?
早い話が、ポーションなどの魔法薬の製造も行っている魔道具屋の店主に手伝ってもらった。
ポーションも材料を攪拌して、漉したり魔法を加えたりして必要なものとそうでないものを分ける作業から作っているらしいから、要領はよかった。
そういった魔法薬は液体が多いから、特に石鹸よりも化粧水づくりの方が得意そうだったな。
自分の肌を使って、何度も実験を重ねたことで納得のできる商品ができたと報告があったよ。
ビレッジ商会と業務提携を結んでもらって、そちらで販売をしてもらっている。
いまのところ、売れ行きはかなり好調とのこと。
予約が大量に入って、最長で2カ月待ちだとか。
魔法屋のおばあさん、弟子を採った方がいいんじゃないかな?
「その化粧水ですが、あれはゴートではなく、この子が主導で作っているのですよ! お義母さま」
祖母の言葉に、母が自慢げに説明を始める。
うん、ちょっと待って、その話長くなるよね?
先に、ヘンリーとサリアに挨拶させてくれないかな?
「ヘンリー、サリア、おじいさまとおばあさまにご挨拶を」
祖母が母の方に向いた瞬間に、ヘンリーとサリアの背中を押して前に出してあげる。
2人が少し恥ずかしそうにしながら、祖父母の方を見上げる。
うん、アルト……そんな悔しそうに、こっちを見ないでくれるかな?
まあ、兄としてこういったサポートをやりたかったのは分かるが。
「おじいさま、おばあさまごぶさたしてます」
「あえてうれしいです」
うん、練習通りに上手にできた。
祖父母が、嬉しそうに目を細めて2人の頭を撫でる。
「うん、わしも会えてうれしいぞ」
「おやおや、ずいぶんと言葉が上手になりましたね」
そして、精一杯の笑顔で誉めてくれた。
ヘンリーとサリアも嬉しそうだ。
おじいさまの腰の辺りにヘンリーが、おばあさまの腰の辺りにサリアが抱き着いて、花の開くような笑顔で2人を再度見上げる。
「ありがとうおじいさま、おばあさま!」
「じょうずにいえたよ、おにいさま!」
うんうん、可愛い可愛い。
それから、リビングに移動してメイドにお茶を入れてもらう。
ヘンリーとサリアは、果物のジュースを貰っていた。
茶受けには、隣の国のお菓子が出されたのでちょっと嬉しい。
美味しそうなクッキーだ。
「2人とも足をパタパタさせない」
「はーい」
少し高い椅子のため、ヘンリーとサリアは地面に届かない足をプランプランさせていたが、アルトが軽く注意するといい返事でピタッとやめた。
素直だ。
「それで、キャロさん? 化粧水の主導がルークというのは本当かしら?」
「ええ、お義母さま! 聞いてください! この子が、植物から取れた油で石鹸と化粧水を作ったんですよ」
おい!
おい……
いくら祖父母とはいえ、メインの原料をあっさりとばらすな。
まあ、別にこの人たちがどうこうする人じゃないってのは分かるけど。
誰も、口止めしなかったのか。
思わず、溜息がもれる。
母は相手が祖父母で身内だから、言ったのだと信じたい。
きっと、息子自慢のついでにポロリじゃないと……
それと、嘘はいかん。
俺は、作ってない。
「お母様、作ったのは私ではありませんよ? 私は、自分の思ったままを伝えただけで、作ったのは町の薬師の方です」
「でも、アイデアはあなたでしょ? 方法も、一緒になって考えたってみんなが言ってましたよ」
ちょっと待て、皆って誰だ?
「皆というのは?」
「屋敷のものもですが、その製造に携わっている魔法屋の店主から、販売元のビレッジ商会の支店長までみんなですよ」
……まあ、口止めはしてなかったし。
最初に石鹸の話を持ち出したのは、屋敷だった。
しかし、それで俺が作れると思われても困る。
流石に、魔法屋の店主のようにはいかない。
魔力を使う部分の製造は真似できるが、それまでの工程は流石に教えてもらいながら練習しないと無理だろうし。
「そうなのですか? じゃあ、いまあるもの以外にも原料の植物を変えたら、違う香りのものも作れるということですか?」
「そうなの、ルーク?」
「……おそらく、難しくはないと思いますが。多少の向き不向きはあるかと」
流石に、原料別での難易度はあまりないとは思うけど。
簡単に作られると思われても困るし。
油だったら、牛脂からでも作れなくはないし。
「ちょうど、隣国から仕入れてる油で、いいのがあるのよ。椿油っていうのだけど、冬場とかに乾燥した肌に塗ると痒みがおさまるのよね」
椿油があるのか。
どうやら、乾燥肌の痒み止めとして使われているようだけど。
「それでしたら、直接お顔に塗られても大丈夫ですよ」
「あら、どういうことかしら?」
「椿オイルは不乾性油なので、べた付きませんし。オレイン酸が多く含まれているので酸化もしにくいという特性がありますから。マッサージをするように優しく顔に馴染ませてあげてください。美容効果も期待できますよ?」
「……何を言ってるのかしら、この子は?」
うん、伝わってない。
まあ、そうだろうと思ったけど。
「ルークはほら……賢いから」
アルト、困ったなら無理に口を挟まなくてもいいぞ?
「ルークは天才なのです」
母上、少し黙ってもらえるかな?
「お前たちの兄は、すごいな」
「うん!」
「なんでも、しってるの」
祖父と、ヘンリー、サリアのやり取りに少しほっこりする。
「最近入ってきたばかりの椿油を、知っているだけでも驚きなのに。いや、そういった意味で、どういうことかしらと聞きたかったのだけど、まさか痒みを抑える以外の使い道まで知ってるなんて……不思議な子ね」
祖母が、少し眉を寄せて困ったような笑みを浮かべている。
そうか、ジャストールの町で見たことないだけど、ここら辺だと普通に手に入るものだと思っていた。
いや、でもまあ知ってるものは知ってる。
しかし、椿油か。
まだ、そこまでの価値を見出されていないなら、どうにかして卸元と繋ぎを作っておきたいな。
どれくらいの量が生産されているのかも気になるし。
隣の国の特産ということだが、こっちでも作れないかな?
椿の木を領都で見たことないし、この町でも見かけたことないな。
もしかしたら、辺境伯領にいけばあるかもしれない。
そもそも、こっちの国の人は椿油の元が何かも分かってない可能性がある。
邪神翻訳で椿油となっているが、実際の固有名詞は違う可能性もある。
現物を見て、確かめてみる必要が出てきた。
お金はいくらあっても困らないからな。
ましてや、王都の学園なんていったら、それなりの貴族のパーティとかに呼ばれることもあるだろう。
服にだって金がかかるだろうし……下手したら、パーティを主催しないといけないときがくるかもしれない。
チラリと、アルトの方に顔を向ける。
「ん? どうした?」
「いや」
アルトが、王都でどんな生活をしているか、やっぱり詳しく聞いておいた方がいいな。
あと、兄の交友関係も。
変なところと、繋がってなければいいのだが。
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