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第5章:巨人と魔王
第7話:町歩き
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結局、その後のゴタロウとアルバのやり取りは、生産的なものにはならなかった。
平行線とまではいわないまでも、アルバにこちら側に対する明確な壁のようなものを感じたし。
ゴタロウも、フィーナもそんなアルバに呆れかえっていたからな。
「とりあえず頂いた情報をもとに、こちらでも対策は考えさせてもらいます」
「そちらでな……勝手にしろ」
ゴタロウがクールなイケメンキャラみたいなことを言ってるけど。
単純に、もうアルバと話す気がないだけみたいだ。
はてさて、どうしたものか……
取り合えず、町を観光しつつカモミールの宿に戻ることにしたが。
『申し訳ありません、大人げないところを見せてしまって』
ゴタロウに、念話で謝られる。
ゴタロウが、若干へこんでいる。
それもそうか。
このことが原因で、ニコはミルウェイでは冒険者としての活動はできなくなってしまった。
アルバが、信用のできない輩を引き連れている方に、依頼するようなものはございませんと言ってのけたからな。
気にするな。
他の冒険者も言ってたじゃないか。
アルバは、他所からのフリーの冒険者には厳しいって。
お前がいなくても、状況に大差なかっただろう。
「どこに行こう? 買い物がいいかな? それとも食べ歩き?」
「ニコ様のやりたいことが、私はしたいです!」
なによりも当の本人がまったくといっていいほど、気にしていないからな。
すでに観光する気満々だし。
フィーナは、いつも通りのフィーナだ。
何も思うところはないらしい。
こういうところ、ドライだよな。
まあ、まずはニコは防寒着を買った方がいいと思うぞ?
ということだ。
ゴタロウも気にせずに、町を楽しもう
『はい』
にしても珍しいな。
お前があの手の手合いを、うまくあしらえないなんて。
『ええ、あまりにも稚拙で愚かな女性であるにもかかわらず、この町の防衛の要の一つである冒険者ギルドを束ねている立場というのが凄く腹立たしく感じてしまい……つい、あのような対応に』
まあ、あのくらい疑り深くないと、この町ではギルマスなんて務まらんのだろう。
それにお前が信用に足るということは、お前自身と俺達くらいしか分からんだろう。
信用なんて形のないものをすぐに納得できるよう証明するのは、それこそ至難のわざだからな。
『慰めてくださってるのですか?』
えっ?
いや、はは……
俺も、あの女に思うところがあっただけだ。
愚痴とまではいかんが、ぼやいてみたくなっただけだ。
気にするな。
『ありがとうございます』
気にするなと言っているのに。
こいつもこいつで、融通が利かないところがある。
まあ、自分に対してだから、あの女よりはよっぽどましだけど。
「なにこのお肉! 真っ白! 美味しいの?」
「これは、海獣の肉の脂身だぞ? まあ、食えんことは無いが、料理に使ったりするためのものだな。火もつかないこともない」
「へえ、これ全部が脂身なんだ」
通りの肉屋につるしてある、少し縁にピンクが混ざった真っ白な肉にニコが興味をひかれたらしい。
鑑定をかけてみると、海豹の肉と出たが。
海豹ってことは、アザラシかな?
でもここは、異世界。
本当に海に住む豹みたいな動物か、魔物がいるのかもしれない。
「少しなら、これだけでも食べられるぞ? 食ってみろ坊主」
そう言って、黒い前掛けをしたおっさんが、脂身を薄く削って渡してきた。
「そっちの嬢ちゃんとあんちゃんもどうぞ」
そして、もう2つスライスしてフィーナとゴタロウにも渡してくる。
生のままで、頂けと?
「ありがとう! いただきます」
「ご馳走になります」
「ありがたく、頂こう」
3人ともそれぞれがお礼をいって、ぱくりと口に放り込む。
「わぁ、甘い! ちょっと固いかと思ったけど、途中で溶けてなくなちゃった」
「なにこれ、美味しい!」
「ほう」
なん……だと?
美味しいのか、それ?
くっ、こういうとき自分がすぐに試せないのがうらめしい。
「外はキンキンに冷えてるからな! それで、しっかりと固まってるけど、体温で指に油がつくくらいには溶けやすいんだ。美味いだろう?」
「うん! ねえ、ゴタロウ?」
「そうですね、少しもらいましょうか」
「おっ、お買い上げかい? ただ、これだけで食うもんじゃねーからな? さっきみたいに薄くスライスしたら、つまみにはなるが存外脂身ってのはくでーんだ」
「へえ」
「ふふ、なるほどな……もしかしなくても、これに合うような肉もあるんだろう?」
「おっ、あんちゃん鋭いな? 普通は野菜とか穀物って思うだろうが、実はこっちの塩漬け肉と合わせるといい塩梅になるんだよ」
そう言っておっさんが見せてきたのは、壺の中に入ったちょっと黒くなっているが、何かの赤身だ。
筋もしっかりしてて、固そうにみえなくもないが。
と思ったら、もう一つ壺を出してきた。
こっちは、赤黒い肉。
見覚えがあるな。
クジラの肉っぽい。
「こっちは、さっきの脂身の主の、ウミーヒョンって魔物の肉だ! でこっちが、クージラって魔物の肉だ」
なんだろう?
俺のもってる言語スキルって、俺のこと馬鹿にしてるのかな?
ウミーヒョンって……もはや、元になったであろう言葉が横文字ですらない。
てっきりなんたらシードッグとかって、魔物がくると思ったのに。
クージラに至っては、そのまんまなんだろうな。
しかし、こうしてみるといろんな怪しいお肉があるけど。
干し肉もけっこうあるんだな。
「クージラってのは馬鹿みたいにでかい魔物でな、何十人掛かりでやっつけるようなやつなんだぜ?」
「そんなに大きいの?」
「ああ、ちっちゃな島よりでかいんじゃないか? まあ、体当たりされたら一撃でお陀仏だが、なれればそこまで被害なく狩れる魔物でもある」
「そうなんだ! 一度、見てみたいな」
「はは、まあ運がよければ、港からでも背中くらいは見えるかもな」
それから、適当に肉を包んでもらってゴタロウが支払いをする。
思ったほど、高くはない。
よく取れるのだろう。
海の資源が豊富なのか、肉や魚は驚くほど安い。
鹿や熊の肉も、普通に置いててそこまで高くない。
雪牛なんてのもいるらしく、牛肉まである。
ただ、豚はちょっと割高だった。
逆に、八百屋を覗いたりしたけど、野菜はかなり高い。
根野菜や実のようなものはそうでもないが、葉野菜はかなりのお値段だった。
どれもシャキッとしたようなのは置いてないくせに。
水分量の多い実の類は凍って味が落ちることはあるが、それはそれで歯ごたえや食感でカバーできてそうだし。
熱々の風呂上りに、ガンガンに暖かくした部屋で凍った果物を食べるのは、この町の人でも至福のひと時らしい。
酒は例に漏らさず、アルコール濃度の高いものばかり。
まあ、そういうものなのだろう。
それからも町をフラフラしていたら、ニコ達が不意に後ろから声を掛けられた。
ゴタロウもフィーナも、男が近付いてきているのは気付いていたみたいだが。
「すまんが、少し話をさせてくれないか?」
話しかけてきた男は、無精ひげを生やした眠たい目をした怪しいやつだ。
ウェーブのかかった男性にしては長めの肩まであるこげ茶の髪の毛、その上に狩人がかぶるような帽子をかぶっている。
服装は麻でできたシャツとパンツに、皮のベスト。
その上から毛皮のマントを羽織っている。
顔は怪しいが、身に着けているものはどこか清潔感が漂っている。
『どうしますか?』
取り合えず、さわりだけ話を聞いて判断したら良いんじゃないか?
「なに?」
とゴタロウと相談している間に、条件反射でニコが返事をしていた。
「おっ、坊ちゃん聞いてくれるかい?」
「うん、坊ちゃんじゃないけどね」
男はすぐにニコのそばに移動すると、頭をくしゃくしゃと撫でた。
意外と背が高いな。
たっぱがあるから細く見えるが、筋肉もしっかりとついてるようだ。
『そこそこやりそうですね』
冒険者……か、肉体労働者?
いや、戦闘は出来そうだな。
「まあ、うちのギルマスのことなんだけどさ」
冒険者か。
いや、無条件で信じるのもあれだな。
場所を変えようか。
人が多くいて、それでいて話が漏れないような場所とか?
「どこかで、座って話しませんか?」
「ん? そうだな。立ち話もなんだし、皆さんはごはんは済んだのかい?」
「いや、まだだよ」
「じゃあ、美味しいお店があるから、そこに行こうか?」
男がそう言って、首をくいっと曲げて笑顔でウィンクをする。
なかなか軽薄そうな男だ。
しっかりと、フィーナに向けてのものだと分かったし。
「それで構いませんが、荷物がいっぱいあるので宿に預けてからでも?」
「ああ、良いぜ! お、ウミーヒョンの脂身と塩漬けか? なかなか通好みな買い物だな」
「へえ、よく分かりましたね?」
「まあ、ね」
男の言葉にゴタロウの声が、1オクターブ下がる。
それに対して、男は含みある言い方をしてニヤリと笑っただけだが。
あれか……鑑定もちっぽいな。
さっきウィンクしたときにでも、鑑定を掛けられたか?
『ニコ様以外は大丈夫です……あの程度なら、防げますので』
ゴタロウもフィーナも、男の鑑定をはじいたらしい。
まあ、俺もたぶんレジストしてるはずだし。
『主は鑑定されても、たぶん錆びた剣と出るだけでは?』
いやいや、不思議な金属で出来た軽く錆びた剣くらいじゃないかな?
ん?
視線を感じる。
男の方に集中すると、ニコが腰に下げた俺をしっかりと見ている。
ちょっと、もの悲しそうな雰囲気で。
「色々と町のことも案内しよう……いい武器屋とか」
おいっ!
……おい。
絶対、俺の事を錆びた変わった剣と認識したなこいつ?
そして変わった金属で錆びてる武器を大事に持ってるニコに、同情でもしたのか?
悪いが、俺をそんじょそこらのなまくらと一緒にされちゃ困るぜ!
というか、失礼だなこいつ。
平行線とまではいわないまでも、アルバにこちら側に対する明確な壁のようなものを感じたし。
ゴタロウも、フィーナもそんなアルバに呆れかえっていたからな。
「とりあえず頂いた情報をもとに、こちらでも対策は考えさせてもらいます」
「そちらでな……勝手にしろ」
ゴタロウがクールなイケメンキャラみたいなことを言ってるけど。
単純に、もうアルバと話す気がないだけみたいだ。
はてさて、どうしたものか……
取り合えず、町を観光しつつカモミールの宿に戻ることにしたが。
『申し訳ありません、大人げないところを見せてしまって』
ゴタロウに、念話で謝られる。
ゴタロウが、若干へこんでいる。
それもそうか。
このことが原因で、ニコはミルウェイでは冒険者としての活動はできなくなってしまった。
アルバが、信用のできない輩を引き連れている方に、依頼するようなものはございませんと言ってのけたからな。
気にするな。
他の冒険者も言ってたじゃないか。
アルバは、他所からのフリーの冒険者には厳しいって。
お前がいなくても、状況に大差なかっただろう。
「どこに行こう? 買い物がいいかな? それとも食べ歩き?」
「ニコ様のやりたいことが、私はしたいです!」
なによりも当の本人がまったくといっていいほど、気にしていないからな。
すでに観光する気満々だし。
フィーナは、いつも通りのフィーナだ。
何も思うところはないらしい。
こういうところ、ドライだよな。
まあ、まずはニコは防寒着を買った方がいいと思うぞ?
ということだ。
ゴタロウも気にせずに、町を楽しもう
『はい』
にしても珍しいな。
お前があの手の手合いを、うまくあしらえないなんて。
『ええ、あまりにも稚拙で愚かな女性であるにもかかわらず、この町の防衛の要の一つである冒険者ギルドを束ねている立場というのが凄く腹立たしく感じてしまい……つい、あのような対応に』
まあ、あのくらい疑り深くないと、この町ではギルマスなんて務まらんのだろう。
それにお前が信用に足るということは、お前自身と俺達くらいしか分からんだろう。
信用なんて形のないものをすぐに納得できるよう証明するのは、それこそ至難のわざだからな。
『慰めてくださってるのですか?』
えっ?
いや、はは……
俺も、あの女に思うところがあっただけだ。
愚痴とまではいかんが、ぼやいてみたくなっただけだ。
気にするな。
『ありがとうございます』
気にするなと言っているのに。
こいつもこいつで、融通が利かないところがある。
まあ、自分に対してだから、あの女よりはよっぽどましだけど。
「なにこのお肉! 真っ白! 美味しいの?」
「これは、海獣の肉の脂身だぞ? まあ、食えんことは無いが、料理に使ったりするためのものだな。火もつかないこともない」
「へえ、これ全部が脂身なんだ」
通りの肉屋につるしてある、少し縁にピンクが混ざった真っ白な肉にニコが興味をひかれたらしい。
鑑定をかけてみると、海豹の肉と出たが。
海豹ってことは、アザラシかな?
でもここは、異世界。
本当に海に住む豹みたいな動物か、魔物がいるのかもしれない。
「少しなら、これだけでも食べられるぞ? 食ってみろ坊主」
そう言って、黒い前掛けをしたおっさんが、脂身を薄く削って渡してきた。
「そっちの嬢ちゃんとあんちゃんもどうぞ」
そして、もう2つスライスしてフィーナとゴタロウにも渡してくる。
生のままで、頂けと?
「ありがとう! いただきます」
「ご馳走になります」
「ありがたく、頂こう」
3人ともそれぞれがお礼をいって、ぱくりと口に放り込む。
「わぁ、甘い! ちょっと固いかと思ったけど、途中で溶けてなくなちゃった」
「なにこれ、美味しい!」
「ほう」
なん……だと?
美味しいのか、それ?
くっ、こういうとき自分がすぐに試せないのがうらめしい。
「外はキンキンに冷えてるからな! それで、しっかりと固まってるけど、体温で指に油がつくくらいには溶けやすいんだ。美味いだろう?」
「うん! ねえ、ゴタロウ?」
「そうですね、少しもらいましょうか」
「おっ、お買い上げかい? ただ、これだけで食うもんじゃねーからな? さっきみたいに薄くスライスしたら、つまみにはなるが存外脂身ってのはくでーんだ」
「へえ」
「ふふ、なるほどな……もしかしなくても、これに合うような肉もあるんだろう?」
「おっ、あんちゃん鋭いな? 普通は野菜とか穀物って思うだろうが、実はこっちの塩漬け肉と合わせるといい塩梅になるんだよ」
そう言っておっさんが見せてきたのは、壺の中に入ったちょっと黒くなっているが、何かの赤身だ。
筋もしっかりしてて、固そうにみえなくもないが。
と思ったら、もう一つ壺を出してきた。
こっちは、赤黒い肉。
見覚えがあるな。
クジラの肉っぽい。
「こっちは、さっきの脂身の主の、ウミーヒョンって魔物の肉だ! でこっちが、クージラって魔物の肉だ」
なんだろう?
俺のもってる言語スキルって、俺のこと馬鹿にしてるのかな?
ウミーヒョンって……もはや、元になったであろう言葉が横文字ですらない。
てっきりなんたらシードッグとかって、魔物がくると思ったのに。
クージラに至っては、そのまんまなんだろうな。
しかし、こうしてみるといろんな怪しいお肉があるけど。
干し肉もけっこうあるんだな。
「クージラってのは馬鹿みたいにでかい魔物でな、何十人掛かりでやっつけるようなやつなんだぜ?」
「そんなに大きいの?」
「ああ、ちっちゃな島よりでかいんじゃないか? まあ、体当たりされたら一撃でお陀仏だが、なれればそこまで被害なく狩れる魔物でもある」
「そうなんだ! 一度、見てみたいな」
「はは、まあ運がよければ、港からでも背中くらいは見えるかもな」
それから、適当に肉を包んでもらってゴタロウが支払いをする。
思ったほど、高くはない。
よく取れるのだろう。
海の資源が豊富なのか、肉や魚は驚くほど安い。
鹿や熊の肉も、普通に置いててそこまで高くない。
雪牛なんてのもいるらしく、牛肉まである。
ただ、豚はちょっと割高だった。
逆に、八百屋を覗いたりしたけど、野菜はかなり高い。
根野菜や実のようなものはそうでもないが、葉野菜はかなりのお値段だった。
どれもシャキッとしたようなのは置いてないくせに。
水分量の多い実の類は凍って味が落ちることはあるが、それはそれで歯ごたえや食感でカバーできてそうだし。
熱々の風呂上りに、ガンガンに暖かくした部屋で凍った果物を食べるのは、この町の人でも至福のひと時らしい。
酒は例に漏らさず、アルコール濃度の高いものばかり。
まあ、そういうものなのだろう。
それからも町をフラフラしていたら、ニコ達が不意に後ろから声を掛けられた。
ゴタロウもフィーナも、男が近付いてきているのは気付いていたみたいだが。
「すまんが、少し話をさせてくれないか?」
話しかけてきた男は、無精ひげを生やした眠たい目をした怪しいやつだ。
ウェーブのかかった男性にしては長めの肩まであるこげ茶の髪の毛、その上に狩人がかぶるような帽子をかぶっている。
服装は麻でできたシャツとパンツに、皮のベスト。
その上から毛皮のマントを羽織っている。
顔は怪しいが、身に着けているものはどこか清潔感が漂っている。
『どうしますか?』
取り合えず、さわりだけ話を聞いて判断したら良いんじゃないか?
「なに?」
とゴタロウと相談している間に、条件反射でニコが返事をしていた。
「おっ、坊ちゃん聞いてくれるかい?」
「うん、坊ちゃんじゃないけどね」
男はすぐにニコのそばに移動すると、頭をくしゃくしゃと撫でた。
意外と背が高いな。
たっぱがあるから細く見えるが、筋肉もしっかりとついてるようだ。
『そこそこやりそうですね』
冒険者……か、肉体労働者?
いや、戦闘は出来そうだな。
「まあ、うちのギルマスのことなんだけどさ」
冒険者か。
いや、無条件で信じるのもあれだな。
場所を変えようか。
人が多くいて、それでいて話が漏れないような場所とか?
「どこかで、座って話しませんか?」
「ん? そうだな。立ち話もなんだし、皆さんはごはんは済んだのかい?」
「いや、まだだよ」
「じゃあ、美味しいお店があるから、そこに行こうか?」
男がそう言って、首をくいっと曲げて笑顔でウィンクをする。
なかなか軽薄そうな男だ。
しっかりと、フィーナに向けてのものだと分かったし。
「それで構いませんが、荷物がいっぱいあるので宿に預けてからでも?」
「ああ、良いぜ! お、ウミーヒョンの脂身と塩漬けか? なかなか通好みな買い物だな」
「へえ、よく分かりましたね?」
「まあ、ね」
男の言葉にゴタロウの声が、1オクターブ下がる。
それに対して、男は含みある言い方をしてニヤリと笑っただけだが。
あれか……鑑定もちっぽいな。
さっきウィンクしたときにでも、鑑定を掛けられたか?
『ニコ様以外は大丈夫です……あの程度なら、防げますので』
ゴタロウもフィーナも、男の鑑定をはじいたらしい。
まあ、俺もたぶんレジストしてるはずだし。
『主は鑑定されても、たぶん錆びた剣と出るだけでは?』
いやいや、不思議な金属で出来た軽く錆びた剣くらいじゃないかな?
ん?
視線を感じる。
男の方に集中すると、ニコが腰に下げた俺をしっかりと見ている。
ちょっと、もの悲しそうな雰囲気で。
「色々と町のことも案内しよう……いい武器屋とか」
おいっ!
……おい。
絶対、俺の事を錆びた変わった剣と認識したなこいつ?
そして変わった金属で錆びてる武器を大事に持ってるニコに、同情でもしたのか?
悪いが、俺をそんじょそこらのなまくらと一緒にされちゃ困るぜ!
というか、失礼だなこいつ。
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