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第4章:鬼
第13話:リュウキの家族
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ようやく里が視界に収められる位置に。
ここに来て、ニコが現実を見ることに。
「結構、大きいよね」
「ええ、まあ」
集落とはいえ、90世帯、約300人ほどの鬼が住む場所らしい。
なるほど、それなりに栄えているように見える。
外壁というか、柵があるのでそこまで中が詳細に見えるわけでもないが。
この距離にまで近づいてばれないのは、ゴタロウとフィーナの隠密の技術に流石と称賛を送るざるを得ない。
ただ、ランドールが不満そうだが。
「何をこそこそと。堂々と、正面から入ればいいじゃないか」
俺もそう思う。
ランドールを先頭に集落に入っていって、竜の威光のもとにリュウキの身分を保証させるのが一番の近道だな。
ランドール以外の存在意義が問われることになるだろうが。
やはり、合理性は大事だと思うぞ?
鬼って、やっぱり鬼なんだな。
男どもは、のきなみ2m越えかな?
てっきり肌は赤いかと思いきや、普通に黄色人種系の肌色か。
顔の彫りが濃くて、ちょっと強面が多い印象。
俯瞰の視点でばっちり確認済み。
狩猟だけじゃなく、農耕もしているようだ。
かなりおおざっぱなように見えなくもないが、畑のようなものもあるし。
人間が使うような農機具もあることから、人との交流があったのかもしれない。
最近の話を聞く限りだと、そういった関りはないみたいなので昔の話か?
もしかしたら、その頃にリュウキの祖先に人の血が混じった可能性もあるな。
「あっ、母さん」
リュウキの声に反応して、そっちに意識を集中させる。
木造の家から出てきたのは、40前後の女性。
ふくよかな……うん、ずっしりとした強そうな肝っ玉母さんっぽい。
人の良さそうな、それでいて意思の強そうな顔をしている。
ひっつめ髪とでもいうのかな?
最近の緩い感じのおしゃれひっつめ髪ではなく、昔ながらのあれ。
イギリスの歴史的有名バンドのヴォーカルに嫁いだ女史というか、海産系ネーミング家族のお母さんのあれ。
その表情は少しくたびれてて、疲労の色が濃く見える。
目の下に隈もある。
「リュウキ……どこに行ったのかねぇ」
頬に手を当てて、そんなことを呟きながら空を見上げる姿は哀愁を漂わせている。
そうか、行方不明の息子を心配してるようだ。
「母さん、いつまでもあんなやつのこと考えてないで、いいかげんシャキッとしてくれよ」
「そうよ。あんな、なりそこないいなくなって、せいせいしてるわ。それよりもお昼ご飯まだ? 昼から、カツキと森で狩猟デートなんだけど?」
そこに、若い鬼が2人ほど家から出てきて、母親に不満をぶつけている。
「兄さん……姉さん」
そうか、兄と姉か。
いなくなった弟のことを心配するどころか、厄介払いでも出来たような反応だな。
そんな2人をみて、母親がため息を吐く。
「リュウキは優しい子に育ったのに、あんたらときたら……」
情けないとでも言いたいのだろう。
目を閉じて俯いて、首を横に振っている。
「あいつは優しいんじゃなくて弱虫なだけじゃん。それよりも、飯早くしてくれよ」
「あら私は優しいわよ? 鬼には」
そんなことをのたまう2人に対して、母親は再度大きくため息を吐く。
「私は、なんのために頑張ってるんだろうね。私もあの子を追って、ここを出ようかしら」
「はは、冗談? 母さんが出てったら、誰が家事するんだよ」
「私はやだかんね」
「はぁ……」
2人の言葉に、母親ががっくりと肩を落として家に入っていった。
なんていうか……
あれだな……
「兄さんも、姉さんも酷いよ……今日、母さんの誕生日なのに」
「そうなの?」
「うわっ、最悪あいつら」
「誕生日か……お主ら短命種はそういったのを、大事にするものな。死に近づくのを指折り数えて、何がめでたいのやら」
「うわぁ……」
「流石に、ランドール様のその発言にも引きます」
「ぬぅ?」
そうか、今日はリュウキの母親の誕生日だったのか。
とはいえ、それが特別だとはランドールだけは思わなかったらしい。
ランドールの正直な感想に、ニコとフィーナがジトっとした視線を送っていた。
そして、ゴタロウはしれっと里の中に忍び込んでいた。
すでに、情報収集を始めているらしい。
「だいたい、あいつ誰の子なんだよって話だよな」
「最初に私達を裏切ったのは母さんなのに……父さんがいるってのに、人と子をなすなんて。本当にサイテー」
母親に取り残された2人が、何やら小声で言い合っているが。
やはり、リュウキは浮気して生まれた子供と思われているのか。
リュウキの表情が曇っている。
「僕のせいで……」
うーん、まだお前のせいかどうかわからんだろう。
その、母親が浮気をしてたかどうかの裏を、ゴタロウが探ってるところだからな?
結論を出すのは、それからでもいいと思うぞ?
と思ったが、それをリュウキに伝えることはしない。
ニコがやれるだけ頑張るまで、リュウキに対しては手も口も出さない方針で。
すでに、周りをが手を出しまくっている状況だが。
なぜ、俺は無機物になんかなってしまったのだろう。
せめて生き物なら、もっと自由気ままに生きられたのに。
誰かと一緒じゃないと行動できないからな。
その相手のことを尊重して、共存することのなんと難しいことか。
流石に、俺のせいで人生を狂わせるのは気が引けるし。
「とりあえず、お母さんに声かけてきたら?」
「でも……」
「一人で不安なら、付いて行ってあげるからさ」
本当に?
この状況で、中に入る度胸あるのか?
そもそも、人が入り込んだ時点で騒ぎになると思うが。
「えっ?」
そりゃそうだろう。
人なんて、もしかしたら敵どころか、獲物としか思ってないかもしれないぞ?
「そんな……」
たぶん、ゴブリンに対しても似たような認識じゃないかな?
「でもいい。きっと、なんとかなると思う! リュウキ君は、お母さんと話したいと思わない?」
「そりゃ、声かけたいけど……」
そもそも、ここにリュウキの居場所を作りにきたわけだが。
ニコが完全にノープランだということは分かっている。
家族なんだから、話し合えばなんとかなると。
そんな、脳みそお花畑な状況でここにきているのは、よく分かる。
自分の家族に置き換えてみたら、わかりそうだが。
まあ、今回はリュウキが本当に両親の子供である可能性があるからな。
正真正銘、不倫相手の子供のニコとは状況が違うが。
もしかしたら、可能性として0でもない。
リュウキの母親のことを、何一つ理解しているわけじゃないし。
ここらへんは、ゴタロウとその配下の情報待ちだ。
配下の方が、多少は動いていたみたいだが。
ほぼ、浮気の可能性は0と。
ただ、里の結界の外で逢引してたら、その限りじゃないらしい。
というか、シノビゴブリンが全力で、オーガの不倫調査とか。
俗っぽくて、なんというかファンタジー感が。
かなり、ギャグっぽい話だが、真面目な話なんだよな。
当事者からすれば。
流石にここに来る前の日本で、色んな物語を読んでいたが。
たぶん、鬼と人のドロドロとした不倫を描いたような物語は、聞いたことない。
取り合えず、リュウキの兄と姉がろくでもない鬼だということだけは分かった。
「戻った」
そこに、この里でも特別大柄な鬼がやってくる。
「父さん!」
「お帰りなさい」
どうやら、リュウキの父親らしい。
彼の兄と姉が、笑顔で出迎えている。
「ヨウキは?」
「母さんなら、いま昼食の準備してるんじゃないかな?」
「なんだ、まだできてないのか……たるんどるな」
ヨウキというのが、リュウキの母親の名前かな?
まだ準備中という話を聞いて、父親がフンッと不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「まったく、あのバカ女のせいで俺も良い晒し者だ。家事すらまともにできんのなら、もううちに置いておかなくてもいいか」
「ええー、あれでも一応俺の母さんなんだけど?」
「私の母さんでもある。それに、いないと困るし」
「ミキ、お前が家事をすればいいではないか」
「やだよ……勘弁」
なんだろう……
色々と腹の立つ家族ではあるが、姉が特に腹立たしいな。
口調が鬼っぽくないというか……
いや、まあ若い女性ではあるのだろうが。
なんか、イライラする。
「おい、ヨウキ! 飯はまだか!」
「はいはい、もうすぐできますよ」
「もうすぐってなんだ! 帰ったら、食えるようにしとけこの愚図が!」
「随分な言葉だね」
「なんだ、その目つきは? 貴様、あんな恥知らずな真似をしておいて、まだ嫁のつもりでいるのか?」
「なんの真似のことを言ってるのか知らないけど、あたしは恥じるような生き方なんてしてませんけどね」
「チッ……タツキ、ミキ! 外で食うぞ! こんな女が作った飯なんか食えるか」
「やった!」
「外食だ」
凄く険悪です。
最悪だな、この家庭内の空気。
でも、奥さんというかリュウキの母親が嘘を言ってるような気配はないし。
うーん……
これは、やっぱり覚醒遺伝的なあれか?
そして、この兄姉も最悪だな。
流石に、母親に同情してしまう。
しかし、これはいい機会じゃないか?
「あっ、3人が外に食べに出たら、家に行っても大丈夫じゃない?」
「うん……ばれないように、入れるかな?」
「そこは……ね?」
「はいはい、ニコ様のために頑張ります」
フィーナにお願いして、幻惑魔法か何かを使って入り込むつもりなのだろう。
ニコのあやふやな言葉に、フィーナが諦めたような表情で頷いている。
ニコの手助けはしたいけど、リュウキを手伝うことにちょっともやっとしてるのかな?
「それと、リュウキのお母さまのためにね」
ああ、それでも素直にリュウキのお母さんのためには頑張れるのか。
本当に、自然と誰かを思いやることが出来るようになったみたいだ。
立派に成長したな。
ニコと違って。
ニコに、一番成長してもらいたいのに……
ここに来て、ニコが現実を見ることに。
「結構、大きいよね」
「ええ、まあ」
集落とはいえ、90世帯、約300人ほどの鬼が住む場所らしい。
なるほど、それなりに栄えているように見える。
外壁というか、柵があるのでそこまで中が詳細に見えるわけでもないが。
この距離にまで近づいてばれないのは、ゴタロウとフィーナの隠密の技術に流石と称賛を送るざるを得ない。
ただ、ランドールが不満そうだが。
「何をこそこそと。堂々と、正面から入ればいいじゃないか」
俺もそう思う。
ランドールを先頭に集落に入っていって、竜の威光のもとにリュウキの身分を保証させるのが一番の近道だな。
ランドール以外の存在意義が問われることになるだろうが。
やはり、合理性は大事だと思うぞ?
鬼って、やっぱり鬼なんだな。
男どもは、のきなみ2m越えかな?
てっきり肌は赤いかと思いきや、普通に黄色人種系の肌色か。
顔の彫りが濃くて、ちょっと強面が多い印象。
俯瞰の視点でばっちり確認済み。
狩猟だけじゃなく、農耕もしているようだ。
かなりおおざっぱなように見えなくもないが、畑のようなものもあるし。
人間が使うような農機具もあることから、人との交流があったのかもしれない。
最近の話を聞く限りだと、そういった関りはないみたいなので昔の話か?
もしかしたら、その頃にリュウキの祖先に人の血が混じった可能性もあるな。
「あっ、母さん」
リュウキの声に反応して、そっちに意識を集中させる。
木造の家から出てきたのは、40前後の女性。
ふくよかな……うん、ずっしりとした強そうな肝っ玉母さんっぽい。
人の良さそうな、それでいて意思の強そうな顔をしている。
ひっつめ髪とでもいうのかな?
最近の緩い感じのおしゃれひっつめ髪ではなく、昔ながらのあれ。
イギリスの歴史的有名バンドのヴォーカルに嫁いだ女史というか、海産系ネーミング家族のお母さんのあれ。
その表情は少しくたびれてて、疲労の色が濃く見える。
目の下に隈もある。
「リュウキ……どこに行ったのかねぇ」
頬に手を当てて、そんなことを呟きながら空を見上げる姿は哀愁を漂わせている。
そうか、行方不明の息子を心配してるようだ。
「母さん、いつまでもあんなやつのこと考えてないで、いいかげんシャキッとしてくれよ」
「そうよ。あんな、なりそこないいなくなって、せいせいしてるわ。それよりもお昼ご飯まだ? 昼から、カツキと森で狩猟デートなんだけど?」
そこに、若い鬼が2人ほど家から出てきて、母親に不満をぶつけている。
「兄さん……姉さん」
そうか、兄と姉か。
いなくなった弟のことを心配するどころか、厄介払いでも出来たような反応だな。
そんな2人をみて、母親がため息を吐く。
「リュウキは優しい子に育ったのに、あんたらときたら……」
情けないとでも言いたいのだろう。
目を閉じて俯いて、首を横に振っている。
「あいつは優しいんじゃなくて弱虫なだけじゃん。それよりも、飯早くしてくれよ」
「あら私は優しいわよ? 鬼には」
そんなことをのたまう2人に対して、母親は再度大きくため息を吐く。
「私は、なんのために頑張ってるんだろうね。私もあの子を追って、ここを出ようかしら」
「はは、冗談? 母さんが出てったら、誰が家事するんだよ」
「私はやだかんね」
「はぁ……」
2人の言葉に、母親ががっくりと肩を落として家に入っていった。
なんていうか……
あれだな……
「兄さんも、姉さんも酷いよ……今日、母さんの誕生日なのに」
「そうなの?」
「うわっ、最悪あいつら」
「誕生日か……お主ら短命種はそういったのを、大事にするものな。死に近づくのを指折り数えて、何がめでたいのやら」
「うわぁ……」
「流石に、ランドール様のその発言にも引きます」
「ぬぅ?」
そうか、今日はリュウキの母親の誕生日だったのか。
とはいえ、それが特別だとはランドールだけは思わなかったらしい。
ランドールの正直な感想に、ニコとフィーナがジトっとした視線を送っていた。
そして、ゴタロウはしれっと里の中に忍び込んでいた。
すでに、情報収集を始めているらしい。
「だいたい、あいつ誰の子なんだよって話だよな」
「最初に私達を裏切ったのは母さんなのに……父さんがいるってのに、人と子をなすなんて。本当にサイテー」
母親に取り残された2人が、何やら小声で言い合っているが。
やはり、リュウキは浮気して生まれた子供と思われているのか。
リュウキの表情が曇っている。
「僕のせいで……」
うーん、まだお前のせいかどうかわからんだろう。
その、母親が浮気をしてたかどうかの裏を、ゴタロウが探ってるところだからな?
結論を出すのは、それからでもいいと思うぞ?
と思ったが、それをリュウキに伝えることはしない。
ニコがやれるだけ頑張るまで、リュウキに対しては手も口も出さない方針で。
すでに、周りをが手を出しまくっている状況だが。
なぜ、俺は無機物になんかなってしまったのだろう。
せめて生き物なら、もっと自由気ままに生きられたのに。
誰かと一緒じゃないと行動できないからな。
その相手のことを尊重して、共存することのなんと難しいことか。
流石に、俺のせいで人生を狂わせるのは気が引けるし。
「とりあえず、お母さんに声かけてきたら?」
「でも……」
「一人で不安なら、付いて行ってあげるからさ」
本当に?
この状況で、中に入る度胸あるのか?
そもそも、人が入り込んだ時点で騒ぎになると思うが。
「えっ?」
そりゃそうだろう。
人なんて、もしかしたら敵どころか、獲物としか思ってないかもしれないぞ?
「そんな……」
たぶん、ゴブリンに対しても似たような認識じゃないかな?
「でもいい。きっと、なんとかなると思う! リュウキ君は、お母さんと話したいと思わない?」
「そりゃ、声かけたいけど……」
そもそも、ここにリュウキの居場所を作りにきたわけだが。
ニコが完全にノープランだということは分かっている。
家族なんだから、話し合えばなんとかなると。
そんな、脳みそお花畑な状況でここにきているのは、よく分かる。
自分の家族に置き換えてみたら、わかりそうだが。
まあ、今回はリュウキが本当に両親の子供である可能性があるからな。
正真正銘、不倫相手の子供のニコとは状況が違うが。
もしかしたら、可能性として0でもない。
リュウキの母親のことを、何一つ理解しているわけじゃないし。
ここらへんは、ゴタロウとその配下の情報待ちだ。
配下の方が、多少は動いていたみたいだが。
ほぼ、浮気の可能性は0と。
ただ、里の結界の外で逢引してたら、その限りじゃないらしい。
というか、シノビゴブリンが全力で、オーガの不倫調査とか。
俗っぽくて、なんというかファンタジー感が。
かなり、ギャグっぽい話だが、真面目な話なんだよな。
当事者からすれば。
流石にここに来る前の日本で、色んな物語を読んでいたが。
たぶん、鬼と人のドロドロとした不倫を描いたような物語は、聞いたことない。
取り合えず、リュウキの兄と姉がろくでもない鬼だということだけは分かった。
「戻った」
そこに、この里でも特別大柄な鬼がやってくる。
「父さん!」
「お帰りなさい」
どうやら、リュウキの父親らしい。
彼の兄と姉が、笑顔で出迎えている。
「ヨウキは?」
「母さんなら、いま昼食の準備してるんじゃないかな?」
「なんだ、まだできてないのか……たるんどるな」
ヨウキというのが、リュウキの母親の名前かな?
まだ準備中という話を聞いて、父親がフンッと不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「まったく、あのバカ女のせいで俺も良い晒し者だ。家事すらまともにできんのなら、もううちに置いておかなくてもいいか」
「ええー、あれでも一応俺の母さんなんだけど?」
「私の母さんでもある。それに、いないと困るし」
「ミキ、お前が家事をすればいいではないか」
「やだよ……勘弁」
なんだろう……
色々と腹の立つ家族ではあるが、姉が特に腹立たしいな。
口調が鬼っぽくないというか……
いや、まあ若い女性ではあるのだろうが。
なんか、イライラする。
「おい、ヨウキ! 飯はまだか!」
「はいはい、もうすぐできますよ」
「もうすぐってなんだ! 帰ったら、食えるようにしとけこの愚図が!」
「随分な言葉だね」
「なんだ、その目つきは? 貴様、あんな恥知らずな真似をしておいて、まだ嫁のつもりでいるのか?」
「なんの真似のことを言ってるのか知らないけど、あたしは恥じるような生き方なんてしてませんけどね」
「チッ……タツキ、ミキ! 外で食うぞ! こんな女が作った飯なんか食えるか」
「やった!」
「外食だ」
凄く険悪です。
最悪だな、この家庭内の空気。
でも、奥さんというかリュウキの母親が嘘を言ってるような気配はないし。
うーん……
これは、やっぱり覚醒遺伝的なあれか?
そして、この兄姉も最悪だな。
流石に、母親に同情してしまう。
しかし、これはいい機会じゃないか?
「あっ、3人が外に食べに出たら、家に行っても大丈夫じゃない?」
「うん……ばれないように、入れるかな?」
「そこは……ね?」
「はいはい、ニコ様のために頑張ります」
フィーナにお願いして、幻惑魔法か何かを使って入り込むつもりなのだろう。
ニコのあやふやな言葉に、フィーナが諦めたような表情で頷いている。
ニコの手助けはしたいけど、リュウキを手伝うことにちょっともやっとしてるのかな?
「それと、リュウキのお母さまのためにね」
ああ、それでも素直にリュウキのお母さんのためには頑張れるのか。
本当に、自然と誰かを思いやることが出来るようになったみたいだ。
立派に成長したな。
ニコと違って。
ニコに、一番成長してもらいたいのに……
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