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第1章:剣と少年
第6話:鈴木さん激おこ
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どうする……
目の前には屈強な男……いや、一人痩せぎすの男もいるが。
3人の野郎共。
一気にこのまま走って逃げるか?
いや、追いつかれたら。
もしくは、石を投げられたり矢を射かけられたり……弓持ってるやつはいないな。
でもレンジャーっぽいやつがいるから、スリングくらい持ってても。
そもそもニコがすでに、怯えて膝が震えてる。
このまま駆け出しても、転ぶのがオチか。
「とりあえず、良いもん持ってるんだろ? 出せよ」
「もの次第じゃ、全殺しから半殺しに免除してやってもいいぜ?」
「まあ、やりすぎたらごめんだけどさ」
下卑た笑いに、イライラがさらにつのる。
よし、腹をくくれニコ。
どうせ、街を出るんだ。
最後に一暴れしようぜ!
「えっ?」
お前に力を与えてやるから、ボコボコにしてやれ。
「無理だよ~」
情けない声を出しているが、これでも無理か?
【身体強化を発動】
【筋力強化を発動】
【腕力強化を発動】
【敏捷強化を発動】
【脚力強化を発動】
【怪力を発動】
【超聴覚発動】
【超嗅覚発動】
【視力強化】
バフフルコース!
それぞれの効果ははっきりと検証してないけど、きっとかなり効果あるはず。
「身体に力が……」
よし、いけ!
ニコが、顔を上げて目の前の男を見る。
「おいっ、さっさと出せよ!」
「ひっ!」
ダメだ……
目の前の男の怒鳴り声に、すぐにシュンとなって頭を押さえ込んでしまった。
完全に、委縮してる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「ちっ、いいから出せっつーの!」
避けろばかっ!
ニコが顔を思いっきり殴られる。
うわっ……手で庇うくらいしろっつーの。
殴り返せ!
「これだけは、これだけは……」
あー……
ニコが亀のような姿勢になって、うずくまる。
これはこれで、イライラしてくる。
せっかくパワーアップしてやったのに。
「ちっ、いつもみたいにまたボコボコにやられてーのか?」
いつもみたいに?
「オラッ!」
「くそがっ!」
「今日は、やけに粘るじゃねーか!」
今日は?
あー、本気で腹立ってきた。
おい、ニコいい加減立ち上がれよ!
今のお前なら……
「うぅ、ごめんなさい。許してください」
ダメだ……完全にトラウマになってやがる。
「これでも、耐えられるかな?」
痩せぎすの男が、大きめの石を拾い上げて振り上げる。
おいっ、こいつバカじゃねーのか?
そんなの、普通のガキどころか大人でも大怪我するに決まってるだろう。
ニコ、立ち上がれ!
いや、転がれ!
避けろ!
くそっ!
間に合わん!
【剛毛を発動】
ん?
ニコが殴られた直後、頭がゆすられるような感覚が。
これは、もしかして?
俯瞰の視点で見ると、ニコが地面でつぶれている。
取り合えず剛毛は解除だな。
毛のお陰で、致命傷にはなってなさそうだけど。
やっぱり、気絶したみたいだ。
血は出てるけど、うーん。
頭だし。
取り敢えず気を失ってくれたのは、好都合だ。
俺の柄を握ってないけど、身体は動かせる。
身に着けてるからかな?
「死んだんじゃねーか?」
「まさか! もしかして、おい! 大丈夫か?」
痩せぎすの男が、慌てて駆け寄ってくるとニコの懐に手を入れる。
「なんだよ、ブツの心配か?」
「壊れもんだったらどうすんだよ!」
屑が……
「おい、汚い手で触んな」
「イタタタタ! いてー!」
気持ちわりーんだよ!
野郎に胸を触られるとか。
右手で男の指を掴んで反対に捻ると、反対に向けて思いっきり曲げる。
バキンという石が砕けるような音が手元から聞こえてきた。
ちょっとゾワッとしたけど、ちょっとスッキリもした。
だいぶ、フラストレーション溜まってたからね。
「ギャアアアア! こいつ折りやがった!」
「大丈夫か、メット!」
「クソガキ……が?」
ゆっくりと立ち上がって、メットと呼ばれた男を見下ろす。
指を抑えてうずくまってるつもりかもしれんが、お前が握ってるのはニコの手だ。
まだ、指は離してない。
「離せニコ! いてーだろーが!」
自分の状況分かってないのかな?
なんで、この状態で偉そうに指示できるんだ?
「あーん? 離せ?」
「グアアアア!」
掴んだ指をグニグニと曲げる。
激痛が走ってるんだろうな?
折れた骨で神経を刺激されて。
さぞや、痛かろう?
「てめっ、ニコ! メットの指を離せ!」
最初に絡んできたのとは別の男が後ろから羽交い絞めにしてきたので、上を見て目の位置を確認。
親指を思いっきり目のある場所に突き刺す。
といっても、眼球潰す度胸は流石にないので瞼から目の上の骨に向かって。
「グアアアアアア!」
じいちゃんは、相手が殺す気で来てるなら目を潰せっていってたけど。
想像しただけで気持ち悪い。
そして、これでも十分気持ち悪かった。
まあ、俺の指が汚れたわけじゃないけど。
てか、骨が砕けたっぽい……
そうか、強化マシマシだったの忘れてた。
だったら、こんなことしなくても……
相手の力が緩んだのを確認するまでもなく、腕を掴んで思いっきり前に投げ飛ばす。
そうメットの上に。
「ギャアアアアア!」
メットの指にさらに激痛が走ったようだが、知らん。
2人を順番に腹と顔を思いっきり……思いっきりはまずいな。
殺したら、反省できないじゃないか。
それなりの力で。
本当に人の身体からドガッて音が鳴ることあるんだ。
うわぁ、かなり痛そう。
心が……踊る。
ざまーみろ。
「くそ、お前卑怯だぞ?」
「何が?」
血を流しすぎたかも。
目に血が入って、ニコの視界が滲んできたので、俯瞰の視点をメインに。
「目つぶしとか……」
「3人掛かりで襲っといて、何言ってんだか」
男とニコの間に寝転がって唸っている、邪魔な2人を足でどかす。
さらに蹴って、道の隅に。
勢い余って壁にぶつかって、グエッって呻いてたけど知らん。
そして、目の前の最後の一人に微笑みかける。
「お前……本当にニコか?」
「ははは、どうでもいいからとっと来いよ。お前を殴れるのが楽しみでしゃーねんだわ」
……
「ごめんなさい、許してください」
「あーん? お前、自分が謝られても許さねーくせに、なんで自分は謝ってすむと思ってんだ?」
「ヒイッ!」
取り合えず指を3本ずつ折って、いまはひたすら親指をあちこちに突き刺してる。
筋肉の隙間とか、間接の隙間に。
肉を貫通するほどの威力じゃないけど、地味にジンジンと痛むやつ。
一撃ごとにくぐもった声が漏れてて、楽しくなってきた。
アハハハハ!
エイッ!
エイッ!
ハッ!
「もういいや」
急に冷静に。
俯瞰の視点を寄せたら、ニコがかなり凶悪な面してて素に戻ったというか。
客観的にみると、色々とあれな図だったというか。
正直、自分でひいてしまった。
「オラッ」
思いっきり……うん、怪力と筋力強化と脚力強化を切って、思いっきり手加減抜きで腹を蹴る。
かなりすっきり。
「おいっ、見せもんじゃねーぞ!」
そして、周囲にいた野次馬を威嚇。
うわぁ、柄悪すぎるぞニコ!
きっと、かなりのイメージダウンだな。
まあ、どうせ出ていくわけだし。
むしろ、怒らせたら怖いくらいのイメージを植え付けとこう。
そして3人を引きずって、元来た道を戻る。
「お邪魔しまーす!」
やってきましたは冒険者ギルド。
「えっ?」
「はっ?」
俺の姿……いや、これはニコだ。
ニコの姿を見た冒険者たちが、鳩が豆鉄砲を食ったような顔してる。
そのまま受付までいくと、手に持った荷物から乱暴に手を離して受付嬢にニッコリと微笑みかける。
「ひいっ!」
そんな、怯えなくても。
まあ、顔中血まみれだもんな。
ニコの血と返り血で。
「ギルマス出せ」
「はいっ?」
「いいから、とっととギルマス出せ!」
「ひいいっ!」
思いっきり微笑みかけてるのに、悲鳴とか酷いな。
「なんだ、騒々しい」
おお、呼ばなくてもきた。
「なにを……ニコ?」
「やあ、あなたがここの責任者かな?」
「なに馬鹿なこと言ってるんだ! 知ってるだろう!」
「ふーん」
首を傾けて、ちょっと口元を歪めた笑みを浮かべてみせる。
「……」
そんな、嫌そう顔しなくても。
「お宅のところの冒険者がさ……一般人の僕に街中でいきなり襲い掛かってきたんだけど?」
「一般人?」
「ああ、一般人じゃないの? さっき、ここクビになったし」
「……」
何を言いたいか理解したのか、ギルマスが黙り込む。
「しかも大事なお母さんの形見を寄越せって……ああ、直前に通行人も殴ったみたいだけど?」
「お前……本当にニコか?」
「そうだけど? っていうか、これって責任問題だよね?」
「しょ……証拠は?」
まあ、普通はそうだよね?
「おいっ!」
俺が入り口に声を掛けると、頬を腫らした一人の女性がおずおずと入ってくる。
そして、少し震えながら俺の横に転がってる男を指さす。
「そ……その男と、その連れに殴られた」
ここに来る前に回収してきた。
うまくいけば、冒険者ギルドからお金がもらえるかもと唆して。
「と、お前もっ自分で何したか言え!」
ついでに、途中で目を覚ましたくせに狸寝入りしてるこの男にも蹴りを入れる。
グエッといって、目を開けたが。
しゃがんで髪を掴んで、頭を持ち上げる。
そして、目線を合わせて睨みつける。
「ほらっ」
「すいません! すいません! もう二度としません! 許してください!」
「オーター、お前が本当に先に仕掛けたのか?」
「はいっ、すいません……ちょっと、いつものようにいじめてやろうと」
「だってさ?」
「いや、脅されてるんじゃ……」
ギルマス耳大丈夫か?
言わなくてもいいのに、こいついつものようにってはっきり言ってたよな?
常習犯だって、自供してるんだけど?
「俺も見てたよー」
そして、さらに追加の証言が。
ん?
誰だ?
また、こいつか……
割と、ニコに好意的な謎の男。
「ジーク……」
「ちょっと、坊主が気になってさ。後をつけてみたんだけど……面白いな坊主」
つけられてたって、全然気づかなかったぞ。
こいつ一体……
っていうか、それならもっと早く助けて欲しかったんだけど。
一瞬俺の方を見た気がしたが。
いやニコじゃなくて、剣の方。
まさかね……
まあ、良いや。
「じゃあ、とりあえずさっきの部屋で相談しようか? 色々と」
「ニコが……分かりやすくグレた……」
ギルマスのこの言葉にイラッとしたので、思わず殴りそうになった。
ジークと呼ばれた男に、腕を掴まれて我に返ったから助かったけど。
取り合えず旅費と、色々と準備するための資金はゲットできそうだ。
目の前には屈強な男……いや、一人痩せぎすの男もいるが。
3人の野郎共。
一気にこのまま走って逃げるか?
いや、追いつかれたら。
もしくは、石を投げられたり矢を射かけられたり……弓持ってるやつはいないな。
でもレンジャーっぽいやつがいるから、スリングくらい持ってても。
そもそもニコがすでに、怯えて膝が震えてる。
このまま駆け出しても、転ぶのがオチか。
「とりあえず、良いもん持ってるんだろ? 出せよ」
「もの次第じゃ、全殺しから半殺しに免除してやってもいいぜ?」
「まあ、やりすぎたらごめんだけどさ」
下卑た笑いに、イライラがさらにつのる。
よし、腹をくくれニコ。
どうせ、街を出るんだ。
最後に一暴れしようぜ!
「えっ?」
お前に力を与えてやるから、ボコボコにしてやれ。
「無理だよ~」
情けない声を出しているが、これでも無理か?
【身体強化を発動】
【筋力強化を発動】
【腕力強化を発動】
【敏捷強化を発動】
【脚力強化を発動】
【怪力を発動】
【超聴覚発動】
【超嗅覚発動】
【視力強化】
バフフルコース!
それぞれの効果ははっきりと検証してないけど、きっとかなり効果あるはず。
「身体に力が……」
よし、いけ!
ニコが、顔を上げて目の前の男を見る。
「おいっ、さっさと出せよ!」
「ひっ!」
ダメだ……
目の前の男の怒鳴り声に、すぐにシュンとなって頭を押さえ込んでしまった。
完全に、委縮してる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「ちっ、いいから出せっつーの!」
避けろばかっ!
ニコが顔を思いっきり殴られる。
うわっ……手で庇うくらいしろっつーの。
殴り返せ!
「これだけは、これだけは……」
あー……
ニコが亀のような姿勢になって、うずくまる。
これはこれで、イライラしてくる。
せっかくパワーアップしてやったのに。
「ちっ、いつもみたいにまたボコボコにやられてーのか?」
いつもみたいに?
「オラッ!」
「くそがっ!」
「今日は、やけに粘るじゃねーか!」
今日は?
あー、本気で腹立ってきた。
おい、ニコいい加減立ち上がれよ!
今のお前なら……
「うぅ、ごめんなさい。許してください」
ダメだ……完全にトラウマになってやがる。
「これでも、耐えられるかな?」
痩せぎすの男が、大きめの石を拾い上げて振り上げる。
おいっ、こいつバカじゃねーのか?
そんなの、普通のガキどころか大人でも大怪我するに決まってるだろう。
ニコ、立ち上がれ!
いや、転がれ!
避けろ!
くそっ!
間に合わん!
【剛毛を発動】
ん?
ニコが殴られた直後、頭がゆすられるような感覚が。
これは、もしかして?
俯瞰の視点で見ると、ニコが地面でつぶれている。
取り合えず剛毛は解除だな。
毛のお陰で、致命傷にはなってなさそうだけど。
やっぱり、気絶したみたいだ。
血は出てるけど、うーん。
頭だし。
取り敢えず気を失ってくれたのは、好都合だ。
俺の柄を握ってないけど、身体は動かせる。
身に着けてるからかな?
「死んだんじゃねーか?」
「まさか! もしかして、おい! 大丈夫か?」
痩せぎすの男が、慌てて駆け寄ってくるとニコの懐に手を入れる。
「なんだよ、ブツの心配か?」
「壊れもんだったらどうすんだよ!」
屑が……
「おい、汚い手で触んな」
「イタタタタ! いてー!」
気持ちわりーんだよ!
野郎に胸を触られるとか。
右手で男の指を掴んで反対に捻ると、反対に向けて思いっきり曲げる。
バキンという石が砕けるような音が手元から聞こえてきた。
ちょっとゾワッとしたけど、ちょっとスッキリもした。
だいぶ、フラストレーション溜まってたからね。
「ギャアアアア! こいつ折りやがった!」
「大丈夫か、メット!」
「クソガキ……が?」
ゆっくりと立ち上がって、メットと呼ばれた男を見下ろす。
指を抑えてうずくまってるつもりかもしれんが、お前が握ってるのはニコの手だ。
まだ、指は離してない。
「離せニコ! いてーだろーが!」
自分の状況分かってないのかな?
なんで、この状態で偉そうに指示できるんだ?
「あーん? 離せ?」
「グアアアア!」
掴んだ指をグニグニと曲げる。
激痛が走ってるんだろうな?
折れた骨で神経を刺激されて。
さぞや、痛かろう?
「てめっ、ニコ! メットの指を離せ!」
最初に絡んできたのとは別の男が後ろから羽交い絞めにしてきたので、上を見て目の位置を確認。
親指を思いっきり目のある場所に突き刺す。
といっても、眼球潰す度胸は流石にないので瞼から目の上の骨に向かって。
「グアアアアアア!」
じいちゃんは、相手が殺す気で来てるなら目を潰せっていってたけど。
想像しただけで気持ち悪い。
そして、これでも十分気持ち悪かった。
まあ、俺の指が汚れたわけじゃないけど。
てか、骨が砕けたっぽい……
そうか、強化マシマシだったの忘れてた。
だったら、こんなことしなくても……
相手の力が緩んだのを確認するまでもなく、腕を掴んで思いっきり前に投げ飛ばす。
そうメットの上に。
「ギャアアアアア!」
メットの指にさらに激痛が走ったようだが、知らん。
2人を順番に腹と顔を思いっきり……思いっきりはまずいな。
殺したら、反省できないじゃないか。
それなりの力で。
本当に人の身体からドガッて音が鳴ることあるんだ。
うわぁ、かなり痛そう。
心が……踊る。
ざまーみろ。
「くそ、お前卑怯だぞ?」
「何が?」
血を流しすぎたかも。
目に血が入って、ニコの視界が滲んできたので、俯瞰の視点をメインに。
「目つぶしとか……」
「3人掛かりで襲っといて、何言ってんだか」
男とニコの間に寝転がって唸っている、邪魔な2人を足でどかす。
さらに蹴って、道の隅に。
勢い余って壁にぶつかって、グエッって呻いてたけど知らん。
そして、目の前の最後の一人に微笑みかける。
「お前……本当にニコか?」
「ははは、どうでもいいからとっと来いよ。お前を殴れるのが楽しみでしゃーねんだわ」
……
「ごめんなさい、許してください」
「あーん? お前、自分が謝られても許さねーくせに、なんで自分は謝ってすむと思ってんだ?」
「ヒイッ!」
取り合えず指を3本ずつ折って、いまはひたすら親指をあちこちに突き刺してる。
筋肉の隙間とか、間接の隙間に。
肉を貫通するほどの威力じゃないけど、地味にジンジンと痛むやつ。
一撃ごとにくぐもった声が漏れてて、楽しくなってきた。
アハハハハ!
エイッ!
エイッ!
ハッ!
「もういいや」
急に冷静に。
俯瞰の視点を寄せたら、ニコがかなり凶悪な面してて素に戻ったというか。
客観的にみると、色々とあれな図だったというか。
正直、自分でひいてしまった。
「オラッ」
思いっきり……うん、怪力と筋力強化と脚力強化を切って、思いっきり手加減抜きで腹を蹴る。
かなりすっきり。
「おいっ、見せもんじゃねーぞ!」
そして、周囲にいた野次馬を威嚇。
うわぁ、柄悪すぎるぞニコ!
きっと、かなりのイメージダウンだな。
まあ、どうせ出ていくわけだし。
むしろ、怒らせたら怖いくらいのイメージを植え付けとこう。
そして3人を引きずって、元来た道を戻る。
「お邪魔しまーす!」
やってきましたは冒険者ギルド。
「えっ?」
「はっ?」
俺の姿……いや、これはニコだ。
ニコの姿を見た冒険者たちが、鳩が豆鉄砲を食ったような顔してる。
そのまま受付までいくと、手に持った荷物から乱暴に手を離して受付嬢にニッコリと微笑みかける。
「ひいっ!」
そんな、怯えなくても。
まあ、顔中血まみれだもんな。
ニコの血と返り血で。
「ギルマス出せ」
「はいっ?」
「いいから、とっととギルマス出せ!」
「ひいいっ!」
思いっきり微笑みかけてるのに、悲鳴とか酷いな。
「なんだ、騒々しい」
おお、呼ばなくてもきた。
「なにを……ニコ?」
「やあ、あなたがここの責任者かな?」
「なに馬鹿なこと言ってるんだ! 知ってるだろう!」
「ふーん」
首を傾けて、ちょっと口元を歪めた笑みを浮かべてみせる。
「……」
そんな、嫌そう顔しなくても。
「お宅のところの冒険者がさ……一般人の僕に街中でいきなり襲い掛かってきたんだけど?」
「一般人?」
「ああ、一般人じゃないの? さっき、ここクビになったし」
「……」
何を言いたいか理解したのか、ギルマスが黙り込む。
「しかも大事なお母さんの形見を寄越せって……ああ、直前に通行人も殴ったみたいだけど?」
「お前……本当にニコか?」
「そうだけど? っていうか、これって責任問題だよね?」
「しょ……証拠は?」
まあ、普通はそうだよね?
「おいっ!」
俺が入り口に声を掛けると、頬を腫らした一人の女性がおずおずと入ってくる。
そして、少し震えながら俺の横に転がってる男を指さす。
「そ……その男と、その連れに殴られた」
ここに来る前に回収してきた。
うまくいけば、冒険者ギルドからお金がもらえるかもと唆して。
「と、お前もっ自分で何したか言え!」
ついでに、途中で目を覚ましたくせに狸寝入りしてるこの男にも蹴りを入れる。
グエッといって、目を開けたが。
しゃがんで髪を掴んで、頭を持ち上げる。
そして、目線を合わせて睨みつける。
「ほらっ」
「すいません! すいません! もう二度としません! 許してください!」
「オーター、お前が本当に先に仕掛けたのか?」
「はいっ、すいません……ちょっと、いつものようにいじめてやろうと」
「だってさ?」
「いや、脅されてるんじゃ……」
ギルマス耳大丈夫か?
言わなくてもいいのに、こいついつものようにってはっきり言ってたよな?
常習犯だって、自供してるんだけど?
「俺も見てたよー」
そして、さらに追加の証言が。
ん?
誰だ?
また、こいつか……
割と、ニコに好意的な謎の男。
「ジーク……」
「ちょっと、坊主が気になってさ。後をつけてみたんだけど……面白いな坊主」
つけられてたって、全然気づかなかったぞ。
こいつ一体……
っていうか、それならもっと早く助けて欲しかったんだけど。
一瞬俺の方を見た気がしたが。
いやニコじゃなくて、剣の方。
まさかね……
まあ、良いや。
「じゃあ、とりあえずさっきの部屋で相談しようか? 色々と」
「ニコが……分かりやすくグレた……」
ギルマスのこの言葉にイラッとしたので、思わず殴りそうになった。
ジークと呼ばれた男に、腕を掴まれて我に返ったから助かったけど。
取り合えず旅費と、色々と準備するための資金はゲットできそうだ。
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