55 / 77
第1章:赴任
第47話:スタンピード
しおりを挟む
「スタンピードが発生しております」
ジソチが、少し慌てた様子で報告に来た。
俺の家には、いまアスマさんの他にジニー達が来ている。
ミレーネ?
ミレーネは相変わらず、うちで寝泊まりしているけど。
ジソチの言葉に、ガードが慌てて立ち上がる。
「規模は?」
「かなりの大規模で、それも単種族ではなく多くの種族が押しかけてます」
押しかけてます?
ということは、目的地はここか?
それからジソチについて、外壁の上に立つ。
空気の膜である程度の断熱効果があるとはいえ、若干肌寒い。
ジャッキーさんに慌てて、秋物の服を買ってきてもらって良かった。
長袖はここに来た時に着ていたスーツしかなかったからな。
他のゴブリン達のために、たくさん買ってきてもらったけど。
着ているのはおもに、ゴブリンビューティばかり。
他のゴブリンは、半袖でも平気らしい。
確かに、遠くから砂煙をあげて魔物の集団が押しかけている。
「魔物の大量発生か? 何かあったのかな」
俺のつぶやきに、遅れてきたアスマさんが首を傾げている。
「いや、集団暴走だ。大量発生したからといって、集団で何かを襲うということはない」
なるほど。
で、なんでスタンピードが起こったんだ?
「それは、これから分かるだろう。ここに来る種族や行動を見ればな……人間どもだって、時折スタンピードを起こしておろう? それこそ、お主の国でも」
日本でスタンピード?
てか、人のスタンピードってなんだ?
「ほれ、バーゲンとやらではそれこそ妙齢の女性からアラサー、アラフォー、アラフィフに至るまで多くの女性が暴走しておる」
あー……なんとなくイメージできた。
でも、ちょっと昔のイメージかな?
ワゴン争奪戦のような感じか。
「あとはコミケとやらの国際展示場駅の様子であったり。まあ、デモなんかもそれにあたるのであろう? 集団直訴なんぞこの世界でやったら、ほとんどのものが殺されるぞ? 革命を起こそうと動くなら話は別じゃが」
最後の例え以外は、なんとなくスタンピードが簡単にイメージできる雰囲気だな。
しかし、そうか。
あれもスタンピードなのか。
「ふむ……あまり、害はなさそうじゃな」
アスマさんの視線の先には、彼が張った緑色の結界の中に入ったとたんに勢いを緩めて、後ろに押されるようにして外壁に集まる動物たちが。
そうか、急に降った雪から逃げてきた動物や魔物達か。
「ちょっと、手狭そうじゃな。吸い上げる魔力量を調節して、少し範囲を広げるか」
「そうだね。下手したら外壁を突き破って中に入ってきそうだし、小さい魔物とか押されて潰されても可哀そうだしね」
アスマさんが村の中心に突き立てた、杖の方に向かって飛んで行った。
しばらくして、結界が押されるように広がっていくのが見える。
「これで当面の間、食料には困らなさそうですね」
ジソチの言葉に、思わずギョッとした表情で見てしまった。
なんて酷いことを考える。
寒さから逃げてきた可哀そうな動物たちを、殺して食べるつもりなのか?
「この時期はあまり動かないので、脂がのって美味しいんですよ」
いや、そうかもしれないけど。
あれを殺して食べるのは、ちょっと違う気が。
「アスマ様の結界を利用しているのですから、利用料として数匹くらいなら」
思わず、溜息を吐いてしまった。
流石に、あれを見て殺して食べようとは思わん。
寒さから身を守るために、家族や種族単位で固まって温め合っているのを見ると。
いや、一部肉食系の魔物が、草食系の魔物を狙っているところもあるが。
「あれは殺さん。せっかく逃げてきたのだ。その逃げた先で、また生命の危機に襲われるなど流石にな」
「相変わらず、お優しいですね」
「偽善だ」
ジソチの言葉に苦笑いで答えると、外壁の下に目を向ける。
「お前たちもここで寒さを凌ぐのは構わんが、この結界内で殺し合いは許さんからな? そんなことをしたら、その種族は追い出すぞ」
声を張り上げて告げると、肉食の魔物達が慌てて頷いていた。
こういうとき、言葉が伝わるのは便利だ。
そして、草食系の動物たちがホッとした様子で、ようやくくつろぎ始めた。
それを見て、肉食系の動物たちも渋々膝を折って、リラックスモードに。
しかし、野営組の騎士たちにお引き取り頂いたあとで良かった。
彼らが残っていたら、流石にパニックになっていただろうし。
しかし、さながら動物園と言うか、サファリパークみたいだな。
あー……糞尿とか、そこで垂れ流されると困るな。
結界が広がったから、その一番外側で種族ごとに分かれてするように。
何体かの魔物達は、外側に向かって行き穴を掘り始めていたが。
なかなかに、賢いようだ。
***
とりあえず外の混乱は落ち着いたので、村の中心部に戻る。
さっきチラリと結界の外を見たが、なるほど雪が凄く積もっていた。
こうなると、ゴブリン達は狩りには出かけられない。
いや出られることは出られるだろうが。
現状、その獲物たちが外壁に集まっている状態。
そして、その獲物を殺すことを禁じたばかり。
となると、仕事が無い。
流石に食料に関しては、ある程度の備蓄はある。
最悪は、ジャッキーさんに買ってきてもらえばどうにかできる。
幸いにも、アスマさんの結界のお陰で、農作物も一部を除いて順調に育っている。
暇を持て余したゴブリン達だが、自主トレを行っているものが多い。
強さにどん欲なのだろうか?
ポイントの割り振りを、この際に一気に進めてしまおう。
数が増えたこととレベルの上りが早くて、適当に振って手ぶってしまっている。
もうそろそろ必要ないかなと思いつつも、こうなったらいけるとこまでと最初に器量にある程度振り分ける。
それから方向性を定めて、力特化や魔力特化、体力特化に、器用さ特化と、いろいろな方面に突き抜けた成長をさせていく。
ふふ、結婚組の反応が楽しみでもある。
ストリングやイッヌが朝起きて、嫁さんがさらに可愛くなっていたらどう思うだろうか?
ある意味で羨ましい。
ゴブ美も家事を頑張っているしな。
とりあえず器量と器用さをメインで伸ばしたが。
家事仕事は意外と力も体力も使う。
だから、そっちも伸ばしてある。
あとはスキルだが。
炊事、洗濯、掃除のスキルを伸ばす。
家事ばかり行っていたからか、そういったスキルが発生していた。
なくても出来ることだけど、このスキルを取ると効率がよくなるらしい。
炊事スキルが上がると、レシピを簡単かつ完璧に暗記したり。
料理もスキルがあると、一度作ったら覚えられるとか。
調味料の細かい分量まで込みで。
しかもその分量も、正確な分量を目分量で量れるレベルになるらしい。
意図的に変えなければ、毎回完璧に同じ味に調えることも。
洗濯や掃除にしても、まあ補助的な効果が認められるとのこと。
これによって手際がさらによくなったゴブ美に対して、ミレーネがハンカチを噛んで悔しがっていたが。
そんな暇があるなら、手伝って修行したらどうだろうか?
最近ようやく、あれこれ自分のことをするようになったが。
食器の配膳とかもやってくれるようになった。
流石に色々と拙いと思ったのかもしれない。
手遅れだけど。
まあ、意識改善が出来ただけでもよしとしよう。
「いつも頑張ってるからね。褒美となるかどうかは分からないけど、これ! 欲しがって本ね」
「ありがとうございます」
それから、和食と洋食と中華のレシピ本を一冊ずつ。
洋食の本には、フレンチとイタリアンが載っている。
それから個人的に用意した、エスニック系の本も渡した。
和洋中の料理の本が欲しいと言っていたけど、たぶんこれも喜んでもらえると思って。
「料理は、和洋中だけじゃなかったのですね」
あー、まあ……よその世界のことだから、難しいよね?
ラーメンのレシピ本とかも……
「ラーメンは和食ですか? 中華ですか?」
うん、ラーメンはインスタントとか袋麵とか、ご当地のお土産の生麺とかを出したことあるから、ゴブ美も当然知っている。
そして、そういった質問が来ることも。
「作った国のものだ。中国でラーメンを作れば中華、日本で作れば和食だな」
いや、中華だと思うけど。
豚骨や塩、味噌ラーメンはとなると。
カレーだって、ブリティッシュとインドがあるし。
そして日本に入ってきたのはブリティッシュカレーだ。
特徴はスパイスから作るか、カレー粉から作るか。
「まあ、おおむねあっておるが。相変わらず、大雑把な説明じゃのう」
俺の言葉に、アスマさんが苦笑いをしている。
配合を事前にしておくか、都度都度スパイスを入れて味を調えるかの違いかな?
アスマさんに呆れられた気がしたので、詳しく説明しようと思って断念。
実際のところ、その辺はよく分かってない。
「ちなみに、その中間にアングロインディアン料理がある。有名なのはチャツネか?」
あー、チャツネね
うん、チャツネ。
知ってる。
あれ、日本料理?
「……言葉の響き的に日本語っぽいが、インド人とイギリス人が共同で作り出したものじゃ。どちらかというと、インド料理じゃな」
ふーん……
「カレーも、結局ジャパニーズカレーなどと呼ばれておるが、カレー粉の進化がカレー缶で完成形がカレールーじゃな」
カレー缶か。
「30種類のスパイスをブレンドした缶らしいのう」
カレーの話をしてたら、カレーが食べたくなった。
ただ、ラーメンも捨てがたい。
「はいはい、分かってますよ」
ゴブ美さんが、良いお母さんや奥さんみたいな返事をする。
「今日は夕飯は早めにカレーにして、夜食にラーメンを用意しましょう」
うん、嬉しい。
罪悪感のある組み合わせだけど、なかなかに心躍る提案だ。
「ラーメンは豚骨と鶏ガラから出汁を取るので、時間もかかりますしね」
そこから作ってくれるのか。
期待しかできない。
「といっても2日も煮込んだりできないので、圧力鍋ですが」
十分。
夜が楽しみになってきた。
「圧力鍋か……仕組みは分かったが、再現がのう」
「仕組みが分かっただけでも凄いと思うけど」
「これが魔道具で作れれば、ポーションを含め薬の生成に革命が起こるぞ」
へえ。
「お主がイメージしているような、魔女が鍋でグツグツ色々な材料を煮込むという工程が一気に短縮できるでのう」
あのイメージで間違ってなかったのか。
ちょっとゴブ美が骨を煮込む姿を想像して、違うものが出来そうな気がしたので首を振ってイメージを消す。
とりあえずご飯ができるまで、ゴブリン達のステ振りを頑張るか。
ジソチが、少し慌てた様子で報告に来た。
俺の家には、いまアスマさんの他にジニー達が来ている。
ミレーネ?
ミレーネは相変わらず、うちで寝泊まりしているけど。
ジソチの言葉に、ガードが慌てて立ち上がる。
「規模は?」
「かなりの大規模で、それも単種族ではなく多くの種族が押しかけてます」
押しかけてます?
ということは、目的地はここか?
それからジソチについて、外壁の上に立つ。
空気の膜である程度の断熱効果があるとはいえ、若干肌寒い。
ジャッキーさんに慌てて、秋物の服を買ってきてもらって良かった。
長袖はここに来た時に着ていたスーツしかなかったからな。
他のゴブリン達のために、たくさん買ってきてもらったけど。
着ているのはおもに、ゴブリンビューティばかり。
他のゴブリンは、半袖でも平気らしい。
確かに、遠くから砂煙をあげて魔物の集団が押しかけている。
「魔物の大量発生か? 何かあったのかな」
俺のつぶやきに、遅れてきたアスマさんが首を傾げている。
「いや、集団暴走だ。大量発生したからといって、集団で何かを襲うということはない」
なるほど。
で、なんでスタンピードが起こったんだ?
「それは、これから分かるだろう。ここに来る種族や行動を見ればな……人間どもだって、時折スタンピードを起こしておろう? それこそ、お主の国でも」
日本でスタンピード?
てか、人のスタンピードってなんだ?
「ほれ、バーゲンとやらではそれこそ妙齢の女性からアラサー、アラフォー、アラフィフに至るまで多くの女性が暴走しておる」
あー……なんとなくイメージできた。
でも、ちょっと昔のイメージかな?
ワゴン争奪戦のような感じか。
「あとはコミケとやらの国際展示場駅の様子であったり。まあ、デモなんかもそれにあたるのであろう? 集団直訴なんぞこの世界でやったら、ほとんどのものが殺されるぞ? 革命を起こそうと動くなら話は別じゃが」
最後の例え以外は、なんとなくスタンピードが簡単にイメージできる雰囲気だな。
しかし、そうか。
あれもスタンピードなのか。
「ふむ……あまり、害はなさそうじゃな」
アスマさんの視線の先には、彼が張った緑色の結界の中に入ったとたんに勢いを緩めて、後ろに押されるようにして外壁に集まる動物たちが。
そうか、急に降った雪から逃げてきた動物や魔物達か。
「ちょっと、手狭そうじゃな。吸い上げる魔力量を調節して、少し範囲を広げるか」
「そうだね。下手したら外壁を突き破って中に入ってきそうだし、小さい魔物とか押されて潰されても可哀そうだしね」
アスマさんが村の中心に突き立てた、杖の方に向かって飛んで行った。
しばらくして、結界が押されるように広がっていくのが見える。
「これで当面の間、食料には困らなさそうですね」
ジソチの言葉に、思わずギョッとした表情で見てしまった。
なんて酷いことを考える。
寒さから逃げてきた可哀そうな動物たちを、殺して食べるつもりなのか?
「この時期はあまり動かないので、脂がのって美味しいんですよ」
いや、そうかもしれないけど。
あれを殺して食べるのは、ちょっと違う気が。
「アスマ様の結界を利用しているのですから、利用料として数匹くらいなら」
思わず、溜息を吐いてしまった。
流石に、あれを見て殺して食べようとは思わん。
寒さから身を守るために、家族や種族単位で固まって温め合っているのを見ると。
いや、一部肉食系の魔物が、草食系の魔物を狙っているところもあるが。
「あれは殺さん。せっかく逃げてきたのだ。その逃げた先で、また生命の危機に襲われるなど流石にな」
「相変わらず、お優しいですね」
「偽善だ」
ジソチの言葉に苦笑いで答えると、外壁の下に目を向ける。
「お前たちもここで寒さを凌ぐのは構わんが、この結界内で殺し合いは許さんからな? そんなことをしたら、その種族は追い出すぞ」
声を張り上げて告げると、肉食の魔物達が慌てて頷いていた。
こういうとき、言葉が伝わるのは便利だ。
そして、草食系の動物たちがホッとした様子で、ようやくくつろぎ始めた。
それを見て、肉食系の動物たちも渋々膝を折って、リラックスモードに。
しかし、野営組の騎士たちにお引き取り頂いたあとで良かった。
彼らが残っていたら、流石にパニックになっていただろうし。
しかし、さながら動物園と言うか、サファリパークみたいだな。
あー……糞尿とか、そこで垂れ流されると困るな。
結界が広がったから、その一番外側で種族ごとに分かれてするように。
何体かの魔物達は、外側に向かって行き穴を掘り始めていたが。
なかなかに、賢いようだ。
***
とりあえず外の混乱は落ち着いたので、村の中心部に戻る。
さっきチラリと結界の外を見たが、なるほど雪が凄く積もっていた。
こうなると、ゴブリン達は狩りには出かけられない。
いや出られることは出られるだろうが。
現状、その獲物たちが外壁に集まっている状態。
そして、その獲物を殺すことを禁じたばかり。
となると、仕事が無い。
流石に食料に関しては、ある程度の備蓄はある。
最悪は、ジャッキーさんに買ってきてもらえばどうにかできる。
幸いにも、アスマさんの結界のお陰で、農作物も一部を除いて順調に育っている。
暇を持て余したゴブリン達だが、自主トレを行っているものが多い。
強さにどん欲なのだろうか?
ポイントの割り振りを、この際に一気に進めてしまおう。
数が増えたこととレベルの上りが早くて、適当に振って手ぶってしまっている。
もうそろそろ必要ないかなと思いつつも、こうなったらいけるとこまでと最初に器量にある程度振り分ける。
それから方向性を定めて、力特化や魔力特化、体力特化に、器用さ特化と、いろいろな方面に突き抜けた成長をさせていく。
ふふ、結婚組の反応が楽しみでもある。
ストリングやイッヌが朝起きて、嫁さんがさらに可愛くなっていたらどう思うだろうか?
ある意味で羨ましい。
ゴブ美も家事を頑張っているしな。
とりあえず器量と器用さをメインで伸ばしたが。
家事仕事は意外と力も体力も使う。
だから、そっちも伸ばしてある。
あとはスキルだが。
炊事、洗濯、掃除のスキルを伸ばす。
家事ばかり行っていたからか、そういったスキルが発生していた。
なくても出来ることだけど、このスキルを取ると効率がよくなるらしい。
炊事スキルが上がると、レシピを簡単かつ完璧に暗記したり。
料理もスキルがあると、一度作ったら覚えられるとか。
調味料の細かい分量まで込みで。
しかもその分量も、正確な分量を目分量で量れるレベルになるらしい。
意図的に変えなければ、毎回完璧に同じ味に調えることも。
洗濯や掃除にしても、まあ補助的な効果が認められるとのこと。
これによって手際がさらによくなったゴブ美に対して、ミレーネがハンカチを噛んで悔しがっていたが。
そんな暇があるなら、手伝って修行したらどうだろうか?
最近ようやく、あれこれ自分のことをするようになったが。
食器の配膳とかもやってくれるようになった。
流石に色々と拙いと思ったのかもしれない。
手遅れだけど。
まあ、意識改善が出来ただけでもよしとしよう。
「いつも頑張ってるからね。褒美となるかどうかは分からないけど、これ! 欲しがって本ね」
「ありがとうございます」
それから、和食と洋食と中華のレシピ本を一冊ずつ。
洋食の本には、フレンチとイタリアンが載っている。
それから個人的に用意した、エスニック系の本も渡した。
和洋中の料理の本が欲しいと言っていたけど、たぶんこれも喜んでもらえると思って。
「料理は、和洋中だけじゃなかったのですね」
あー、まあ……よその世界のことだから、難しいよね?
ラーメンのレシピ本とかも……
「ラーメンは和食ですか? 中華ですか?」
うん、ラーメンはインスタントとか袋麵とか、ご当地のお土産の生麺とかを出したことあるから、ゴブ美も当然知っている。
そして、そういった質問が来ることも。
「作った国のものだ。中国でラーメンを作れば中華、日本で作れば和食だな」
いや、中華だと思うけど。
豚骨や塩、味噌ラーメンはとなると。
カレーだって、ブリティッシュとインドがあるし。
そして日本に入ってきたのはブリティッシュカレーだ。
特徴はスパイスから作るか、カレー粉から作るか。
「まあ、おおむねあっておるが。相変わらず、大雑把な説明じゃのう」
俺の言葉に、アスマさんが苦笑いをしている。
配合を事前にしておくか、都度都度スパイスを入れて味を調えるかの違いかな?
アスマさんに呆れられた気がしたので、詳しく説明しようと思って断念。
実際のところ、その辺はよく分かってない。
「ちなみに、その中間にアングロインディアン料理がある。有名なのはチャツネか?」
あー、チャツネね
うん、チャツネ。
知ってる。
あれ、日本料理?
「……言葉の響き的に日本語っぽいが、インド人とイギリス人が共同で作り出したものじゃ。どちらかというと、インド料理じゃな」
ふーん……
「カレーも、結局ジャパニーズカレーなどと呼ばれておるが、カレー粉の進化がカレー缶で完成形がカレールーじゃな」
カレー缶か。
「30種類のスパイスをブレンドした缶らしいのう」
カレーの話をしてたら、カレーが食べたくなった。
ただ、ラーメンも捨てがたい。
「はいはい、分かってますよ」
ゴブ美さんが、良いお母さんや奥さんみたいな返事をする。
「今日は夕飯は早めにカレーにして、夜食にラーメンを用意しましょう」
うん、嬉しい。
罪悪感のある組み合わせだけど、なかなかに心躍る提案だ。
「ラーメンは豚骨と鶏ガラから出汁を取るので、時間もかかりますしね」
そこから作ってくれるのか。
期待しかできない。
「といっても2日も煮込んだりできないので、圧力鍋ですが」
十分。
夜が楽しみになってきた。
「圧力鍋か……仕組みは分かったが、再現がのう」
「仕組みが分かっただけでも凄いと思うけど」
「これが魔道具で作れれば、ポーションを含め薬の生成に革命が起こるぞ」
へえ。
「お主がイメージしているような、魔女が鍋でグツグツ色々な材料を煮込むという工程が一気に短縮できるでのう」
あのイメージで間違ってなかったのか。
ちょっとゴブ美が骨を煮込む姿を想像して、違うものが出来そうな気がしたので首を振ってイメージを消す。
とりあえずご飯ができるまで、ゴブリン達のステ振りを頑張るか。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
よろしくお願いいたします。
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる