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第1章:赴任
第42話:恐れていた事態
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この村もだいぶゴブリン以外の人が増えた。
人だけじゃないけど。
人が7人
ジニー、サーシャ、ギイ、ガードの4人と、ミレーネ、イッヌ、ストリング。
エルフが4人。
ミーシャと、オットー。
あとの2人は、マリーとイグナというらしい。
ドワーフが2人。
エドとシド。
獣人が1人。
犬人族で、ワオン。
手のひらを翳したら、お買い物ができそうな名前だ。
骸骨が1人。
アスマさん。
うん、ゴブリンの村に住みたがる奇特な人たちだ。
ジャッキーさんが特に問題ないと言っていたから、別にいいんだけどね。
問題なのはこっち。
目の前にいる、武装した40人の人達。
全員拘束してあるけど。
続々、運ばれてきてるけど。
増えて来てるけど。
いや、もともと120人くらいいたかな?
ミスト王国の騎士団。
そう、ミレーネのいた国の。
あそこの騎士たちが攻めてきた。
また。
本当に、迷惑。
***
遡る事2時間前
「我こそは、バハムル・フォン・ユベンターク! 貴様らが我が妹に行った悪逆非道の行いの数々! 決して許さん! 潔く首を差し出せ」
ここ、ゴブリンの集落だって情報は持ってないのかな?
王族の人って、律儀に名乗りをあげないとだめな決まりがあったり。
「といっても、言葉は通じぬのだろうがな」
そう言って鼻で笑う、ミレーネの面影のある金髪イケメン。
とりあえず外壁に立って、こっちも挨拶。
「言葉分かるよー! それと、初めまして。妹さんはミレーネさんであってますか?」
「えっ? あっ? いや、えっ?」
混乱してるなー。
そしてミレーネの時と違ってすぐに他の騎士たちが、バハムルと名乗ったイケメンの前に盾を構えて並んだ。
普通は、そうだよねー。
あの時が、おかしかったんだよ。
よかった、この世界の人が馬鹿じゃなくて。
「いや、ミレーネさんのお兄さんですか?」
「あっ、うむ……そうだが?」
答えてくれた。
会話ができる相手かな?
「ミレーネさんなら無事ですよ。門を開けるので……そうですね、とりあえず数人で様子を確認に来てはいかがですか?」
「そ……そうなのか?」
おお、好感触。
ちょっと、嬉しそう。
「騙されてはいけません若様! きっと、そういってこっちを油断させて、中に引き込んで殺すつもりなのです。戦力を分散させて各個撃破。基本中の基本です」
うわぁ……ミレーネの時と違って、優秀な参謀もついてるのか。
いまばっかりは、邪魔だなー。
前みたいに、頭の軽い人の集まりならすぐに解決できるのに。
「そ……そうか。そうだな。危ないところだった」
「危なくないですよー」
「もうだまされんぞ! それに、いずれにせよ力で押し通れば済む話だ!」
うわぁ、一瞬で交渉決裂。
ゴブリンの言うことなんて信じられないか。
しかし、この人数。
しかも王子様が連れてきたとなると、精鋭揃いだろう。
騎士たちの動きを見るに、ミレーネの時とは全然違う。
「そんなに、私を引き合いにださなくてもいいだろう」
一応、ミレーネを呼んだが。
横で、何やらプリプリ言ってる。
そのくらい、酷かったんだけどね。
あなたたちは。
「私ならここにいます、お兄様!」
とりあえず、ミレーネを外壁に立たせて叫ばせる。
「ミレーネ!」
「騙されてはいけません! きっとミレーネ殿下の生皮を剥いで被ってるのです」
「そ……そうなのか?」
いやいや、こえーよ!
なんて、発想をするんだよ。
「そもそも、姫殿下はあのようにおしとやかで物腰柔らかい雰囲気ではありません」
「言われてみればそうだな。騙されるところだった……ということは、妹はすでに……」
「残念ですが」
酷い言われようだな。
横でミレーネが凹んでいるが。
「あんまりではないか」
本気で凹んでいるが。
まあ、ドンマイとしか声の掛けようがない。
しかし、バハムルの横にいるじいさん邪魔だな。
それなり以上にやりそうだけど。
「ランスロットは、第一騎士団の副団長だ。第一騎士団は陛下が率いているから、実質騎士たちの中では王の次に位置する。そして、言うまでもなく実力は一位だ」
本気ってわけか。
仕方ない。
「ぬっ!」
「殿下、下がってください」
ゴブリン達が外壁で立ち上がって、石を構える。
なぜかミレーネも石を構えているけど。
「はっはっは、あの姿は妹っぽいな……どこまでも、愚弄する! 許さんぞ!」
そのミレーネを見てバハムルが悲しそうに笑ったあと、キレた。
そして俺の横でミレーネが悲しそうに苦笑いして、キレた。
「一斉に放て!」
真っ先に石をバハムルめがけて投げた後に、号令。
ミレーネが。
うん……それ、俺の仕事。
流石はきちんとした騎士たち。
しっかりと盾で防いで、陣形を整えている。
「破城槌準備!」
おお、門を壊すための大きな杭が用意されている。
あれか……振り子式じゃなくて、完全人力の方か。
確かに、そっちの方が持ち運びとかは便利なのかな?
森だと、道が細かったりするし。
ただ、それはちょっと見逃せない。
ゴブリン達に、硬い石を渡す。
人に向けて投げるのは、砕けやすい石だけど。
あれは、流石に。
一斉に破城槌に向けて、投擲。
一瞬で粉々に。
これだけの数を同じ的に投げて、全部別々の場所に着弾とか。
本当にうちのゴブリン達は、命中精度が異常だ。
それと威嚇のために、その石を敢えて騎士の盾にぶつける。
ゴブエモンとゴブゾウとゴブマルが。
「ぐっ!」
「なっ!」
「ばかな!」
盾がぐしゃりとへしゃげている。
その盾を構えていた騎士は、腕を抑えて後方に慌てて下がっていったけど。
「さてと……まだ、抵抗するならこの石をどんどん投げます。というか、普通に攻撃しますよー!」
「くっ、ブラフだな! そんなことが出来るなら、最初からやっているはずだ!」
俺の言葉に、バハムルが大声で怒鳴り返してきた。
なのでさっき投げたのより、一回りでかい固い石を一部のゴブリン達に構えさせる。
そして、残りのゴブリン達は、弓と矢を構える。
以前のなんちゃって弓矢と違って、エルフとドワーフが監修したちゃんとした弓矢。
結局初期の弓矢は、投石よりも威力が弱かったからなー。
今度は、期待できそうだ。
「……」
バハムルが困った様子で、横の男性に視線を向ける。
ランスロットって言ってたっけ?
その2人の間に石を投げさせる。
綺麗に一列に並ぶように。
さらに同時に、矢も放たせる。
ちょうど一列に並んだ石と石の間に、矢が突き立つように。
うん、違う。
石に突き立てるんじゃなくて。
いや、全部の石に突き立ってるから、わざとだろうけど。
「無理……ですな」
「ランスロット」
「若、撤退命令を。殿は、私が勤めますゆえ」
いや、逃がさないし。
バハムルとランスロットは。
何がなんでも捕まえるから。
ということで、空中に向けて爆発する系の火魔法を次々と放つ。
全員の視線が空に集中している間に、バハムルとランスロットの周りに石の壁を。
「小癪な!」
すぐにランスロットが壁を破壊したから、その先に新しい壁を。
「くっ!」
壊されたらまた壁。
どんどん掘り進む形になってるけど、気付いているのかな?
気付いてないんだろうな。
条件反射で目の前に出てきた新しい壁を破壊して進んでるから。
その後ろをバハムルが後ろを警戒しながら追いかけているけど。
別の出口を作った方が良かったと思う。
「ぬっ! これは頑丈そうじゃな! ちと、本気で!」
そう言って壁を破壊。
その前にまた壁を。
「先ほどので、魔力が尽きたか? また、もろい壁に戻ったな!」
そりゃそうだ。
さっき、ランスロットが壊したのは、この村の外壁だから。
ちなみに、すでにそれも直したけど。
「はい、いらっしゃい!」
俺が両手を広げて出迎えると、ランスロットが唖然とした表情を浮かべていた。
うん、壁をちょっとずつ角度をつけて、この村の中に入ってくるように誘導したんだけど。
思いのほか上手くいって、笑いが堪え切れない。
そして、ランスロットの後をついてきていたバハムルが状況を理解して、怒鳴った。
「ランスロット! 裏切ったのか!」
「ち、違いますぞ! 罠にかけられたのです」
いいのかな?
内輪もめしてる場合じゃないと思うんだけど。
俺の横に、もっと怒れる人がいるんだけど。
「ランスロット!」
「ひっ」
「おしとやかじゃなくて、悪かったわね!」
「ひ……姫!」
ミレーネが思いっきり超至近距離で、ランスロット目掛けて石を投げまくった。
流石に、この距離で見たら分かるか。
ランスロットが慌てた様子で石を弾きながら、視線を泳がせていたけど。
誰も助けてくれないと思うぞ。
諦めろ。
人だけじゃないけど。
人が7人
ジニー、サーシャ、ギイ、ガードの4人と、ミレーネ、イッヌ、ストリング。
エルフが4人。
ミーシャと、オットー。
あとの2人は、マリーとイグナというらしい。
ドワーフが2人。
エドとシド。
獣人が1人。
犬人族で、ワオン。
手のひらを翳したら、お買い物ができそうな名前だ。
骸骨が1人。
アスマさん。
うん、ゴブリンの村に住みたがる奇特な人たちだ。
ジャッキーさんが特に問題ないと言っていたから、別にいいんだけどね。
問題なのはこっち。
目の前にいる、武装した40人の人達。
全員拘束してあるけど。
続々、運ばれてきてるけど。
増えて来てるけど。
いや、もともと120人くらいいたかな?
ミスト王国の騎士団。
そう、ミレーネのいた国の。
あそこの騎士たちが攻めてきた。
また。
本当に、迷惑。
***
遡る事2時間前
「我こそは、バハムル・フォン・ユベンターク! 貴様らが我が妹に行った悪逆非道の行いの数々! 決して許さん! 潔く首を差し出せ」
ここ、ゴブリンの集落だって情報は持ってないのかな?
王族の人って、律儀に名乗りをあげないとだめな決まりがあったり。
「といっても、言葉は通じぬのだろうがな」
そう言って鼻で笑う、ミレーネの面影のある金髪イケメン。
とりあえず外壁に立って、こっちも挨拶。
「言葉分かるよー! それと、初めまして。妹さんはミレーネさんであってますか?」
「えっ? あっ? いや、えっ?」
混乱してるなー。
そしてミレーネの時と違ってすぐに他の騎士たちが、バハムルと名乗ったイケメンの前に盾を構えて並んだ。
普通は、そうだよねー。
あの時が、おかしかったんだよ。
よかった、この世界の人が馬鹿じゃなくて。
「いや、ミレーネさんのお兄さんですか?」
「あっ、うむ……そうだが?」
答えてくれた。
会話ができる相手かな?
「ミレーネさんなら無事ですよ。門を開けるので……そうですね、とりあえず数人で様子を確認に来てはいかがですか?」
「そ……そうなのか?」
おお、好感触。
ちょっと、嬉しそう。
「騙されてはいけません若様! きっと、そういってこっちを油断させて、中に引き込んで殺すつもりなのです。戦力を分散させて各個撃破。基本中の基本です」
うわぁ……ミレーネの時と違って、優秀な参謀もついてるのか。
いまばっかりは、邪魔だなー。
前みたいに、頭の軽い人の集まりならすぐに解決できるのに。
「そ……そうか。そうだな。危ないところだった」
「危なくないですよー」
「もうだまされんぞ! それに、いずれにせよ力で押し通れば済む話だ!」
うわぁ、一瞬で交渉決裂。
ゴブリンの言うことなんて信じられないか。
しかし、この人数。
しかも王子様が連れてきたとなると、精鋭揃いだろう。
騎士たちの動きを見るに、ミレーネの時とは全然違う。
「そんなに、私を引き合いにださなくてもいいだろう」
一応、ミレーネを呼んだが。
横で、何やらプリプリ言ってる。
そのくらい、酷かったんだけどね。
あなたたちは。
「私ならここにいます、お兄様!」
とりあえず、ミレーネを外壁に立たせて叫ばせる。
「ミレーネ!」
「騙されてはいけません! きっとミレーネ殿下の生皮を剥いで被ってるのです」
「そ……そうなのか?」
いやいや、こえーよ!
なんて、発想をするんだよ。
「そもそも、姫殿下はあのようにおしとやかで物腰柔らかい雰囲気ではありません」
「言われてみればそうだな。騙されるところだった……ということは、妹はすでに……」
「残念ですが」
酷い言われようだな。
横でミレーネが凹んでいるが。
「あんまりではないか」
本気で凹んでいるが。
まあ、ドンマイとしか声の掛けようがない。
しかし、バハムルの横にいるじいさん邪魔だな。
それなり以上にやりそうだけど。
「ランスロットは、第一騎士団の副団長だ。第一騎士団は陛下が率いているから、実質騎士たちの中では王の次に位置する。そして、言うまでもなく実力は一位だ」
本気ってわけか。
仕方ない。
「ぬっ!」
「殿下、下がってください」
ゴブリン達が外壁で立ち上がって、石を構える。
なぜかミレーネも石を構えているけど。
「はっはっは、あの姿は妹っぽいな……どこまでも、愚弄する! 許さんぞ!」
そのミレーネを見てバハムルが悲しそうに笑ったあと、キレた。
そして俺の横でミレーネが悲しそうに苦笑いして、キレた。
「一斉に放て!」
真っ先に石をバハムルめがけて投げた後に、号令。
ミレーネが。
うん……それ、俺の仕事。
流石はきちんとした騎士たち。
しっかりと盾で防いで、陣形を整えている。
「破城槌準備!」
おお、門を壊すための大きな杭が用意されている。
あれか……振り子式じゃなくて、完全人力の方か。
確かに、そっちの方が持ち運びとかは便利なのかな?
森だと、道が細かったりするし。
ただ、それはちょっと見逃せない。
ゴブリン達に、硬い石を渡す。
人に向けて投げるのは、砕けやすい石だけど。
あれは、流石に。
一斉に破城槌に向けて、投擲。
一瞬で粉々に。
これだけの数を同じ的に投げて、全部別々の場所に着弾とか。
本当にうちのゴブリン達は、命中精度が異常だ。
それと威嚇のために、その石を敢えて騎士の盾にぶつける。
ゴブエモンとゴブゾウとゴブマルが。
「ぐっ!」
「なっ!」
「ばかな!」
盾がぐしゃりとへしゃげている。
その盾を構えていた騎士は、腕を抑えて後方に慌てて下がっていったけど。
「さてと……まだ、抵抗するならこの石をどんどん投げます。というか、普通に攻撃しますよー!」
「くっ、ブラフだな! そんなことが出来るなら、最初からやっているはずだ!」
俺の言葉に、バハムルが大声で怒鳴り返してきた。
なのでさっき投げたのより、一回りでかい固い石を一部のゴブリン達に構えさせる。
そして、残りのゴブリン達は、弓と矢を構える。
以前のなんちゃって弓矢と違って、エルフとドワーフが監修したちゃんとした弓矢。
結局初期の弓矢は、投石よりも威力が弱かったからなー。
今度は、期待できそうだ。
「……」
バハムルが困った様子で、横の男性に視線を向ける。
ランスロットって言ってたっけ?
その2人の間に石を投げさせる。
綺麗に一列に並ぶように。
さらに同時に、矢も放たせる。
ちょうど一列に並んだ石と石の間に、矢が突き立つように。
うん、違う。
石に突き立てるんじゃなくて。
いや、全部の石に突き立ってるから、わざとだろうけど。
「無理……ですな」
「ランスロット」
「若、撤退命令を。殿は、私が勤めますゆえ」
いや、逃がさないし。
バハムルとランスロットは。
何がなんでも捕まえるから。
ということで、空中に向けて爆発する系の火魔法を次々と放つ。
全員の視線が空に集中している間に、バハムルとランスロットの周りに石の壁を。
「小癪な!」
すぐにランスロットが壁を破壊したから、その先に新しい壁を。
「くっ!」
壊されたらまた壁。
どんどん掘り進む形になってるけど、気付いているのかな?
気付いてないんだろうな。
条件反射で目の前に出てきた新しい壁を破壊して進んでるから。
その後ろをバハムルが後ろを警戒しながら追いかけているけど。
別の出口を作った方が良かったと思う。
「ぬっ! これは頑丈そうじゃな! ちと、本気で!」
そう言って壁を破壊。
その前にまた壁を。
「先ほどので、魔力が尽きたか? また、もろい壁に戻ったな!」
そりゃそうだ。
さっき、ランスロットが壊したのは、この村の外壁だから。
ちなみに、すでにそれも直したけど。
「はい、いらっしゃい!」
俺が両手を広げて出迎えると、ランスロットが唖然とした表情を浮かべていた。
うん、壁をちょっとずつ角度をつけて、この村の中に入ってくるように誘導したんだけど。
思いのほか上手くいって、笑いが堪え切れない。
そして、ランスロットの後をついてきていたバハムルが状況を理解して、怒鳴った。
「ランスロット! 裏切ったのか!」
「ち、違いますぞ! 罠にかけられたのです」
いいのかな?
内輪もめしてる場合じゃないと思うんだけど。
俺の横に、もっと怒れる人がいるんだけど。
「ランスロット!」
「ひっ」
「おしとやかじゃなくて、悪かったわね!」
「ひ……姫!」
ミレーネが思いっきり超至近距離で、ランスロット目掛けて石を投げまくった。
流石に、この距離で見たら分かるか。
ランスロットが慌てた様子で石を弾きながら、視線を泳がせていたけど。
誰も助けてくれないと思うぞ。
諦めろ。
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