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第1章:赴任
第39話:野蛮エルフ
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「えっと……」
俺の前に4人のエルフが座らされている。
口には猿轡のようなものをはめられて。
この布、なんとうちのゴブリン達が編んだんだ。
教えたのはテレビやら、ネットで調べたアスマさん。
……うん、別にあまりにしつこいからだとか、ハンガーストライキに負けたからだとかじゃない。
人の家のトイレに引きこもるのは、流石に反則だと思う。
最初の2日間は完全に放置してた。
けど、トイレが使えないのは不便極まりない。
なので、魔法でトイレを増設してたんだけど。
あまりにも反応が薄いので、先に根負けしたのはアスマさん。
トイレから出て来て、他にもトイレが増えてるのを見て膝から崩れ落ちた。
しかもトイレは2つ。
男性用と、女性用をこの機会に分けたんだけど。
流石に、目の前で泣かれると。
「いや、欲しくて泣いたんじゃない! この2日間、いろんな誘惑と闘って頑張ったことが無意味だったことに、何か走馬灯のようなものが流れて……」
その程度のことで、走馬灯なんて大げさな。
大体、悠久の時を生きるエルダーリッチにとって2日間なんて、大したことないだろう。
「我は、いま一分一秒を惜しむほどに、ここでの暮らしを楽しんでおるのだ」
という言葉に、ちょっと嬉しく思ったこともある。
でもなー……鍵だけ掛けて、転移したらよかったのに。
魔法で、中にいるように見せかけたりできたんじゃないのか?
「それは反則だろう……相変わらず、姑息なことだけはよく思いつく」
いや、トイレに閉じこもるような姑息な手段を取っておいて、何を……
しかし、念願のスマホを手に持って、小躍りしている姿をみると許してしまったわけだが。
「動かない……」
落とし穴。
アスマさんの指に、画面が反応しなかった。
骨はダメなのか。
「我はエルダーリッチに至って、初めて自分の身体が不便で憎いと思った……今なら、世界が滅ぼせそうな気がする」
身体中からオーラを放って物騒なことを呟くアスマさんに、思わずため息。
仕方ないからスマホが触れる手袋と、タッチペンも用意することに。
ネットにアプリにといじり倒しては電池が切れて、充電中のスマホを前に座布団に正座して待つ骸骨のなんと鬱陶しいことか。
「もう1台欲しい」
本気でぶん殴ろうかと思った。
「違う違う、安いのでいい! 廃棄品でも!」
てっきり、充電中にもう1台あればエンドレスとでも言い出すのかと思った。
「ぶ……分解してみたい……」
そっちか。
研究者としての興味が出てしまったようだ。
たぶん、分解しても何も分からないと思うけど。
CPUとか、そこからさらに分解できるものなのだろうか?
あと、アプリは開発者が作ってサーバーに入れてあるんじゃないかな?
スマホで解析ができるか分からないけど、バラしても中からアプリの元は出てこないぞ?
「そのくらい知っとるわ!」
怒られた。
まあ、安いスマホくらいなら。
ジャッキーさんに、ジャンクショップでも覗いてもらって、数台仕入れてもらおう。
もしアスマさんが有効活用できるようになったら、役に立つだろうし。
***
うん、大幅に脱線した。
今は、目の前のエルフたちだな。
ゴザの上に座らされているけど。
この、ゴザ!
うちのゴブリン達が編んだ。
作り方はアスマさんが……
目の前の耳の長い美男美女がソワソワし始めたので、現実逃避を止める。
なんでエルフか分かったかというと、アスマさんが教えてくれた。
というか、本当にアスマさん便利だよな。
この世界の知識に俺のいた世界の知識にと、本当に万能になりつつある。
「猿轡を、とってあげて」
俺の言葉に、ゴブエモンがちょっと不服そう。
「いや、口を開けば口汚く我らを罵り、あげくには魔法を使ってこようとする始末……とりあえず、ここに連れてきたのは珍しい種族っぽいので殺していいかどうかの確認です」
ゴブエモンの言葉に、エルフ達が顔を青くしてオロオロしている。
もともと色白だから、分かりやすく真っ青。
「あっ」
そして通りすがりのゴブゾウが、何かに気付いた様子で声を出す。
その場の全員に注目されて、ちょっと恥ずかしそう。
そして4人のエルフのうち、2人が大げさに騒いでいる。
ゴブゾウが顔をそらして、その場から離れようとするので引き留める。
「顔見知りか?」
「いえ……なんといいますか」
さらに、そこにストリングが通りかかる。
エルフの2人がさらに騒ぎ立てるが、ストリングは首を傾げてそのままどこかに……
少しして、慌てて走って戻ってきた。
そして、エルフの顔を確認。
首を傾げて、立ち去ろうと……
「顔見知りか?」
「いえ、前にちょっと……と思ったのですが、エルフの顔の違いってよく分からなかったんで」
そうか……お前も、ここに残るように。
「ゴブゾウ?」
「えっと……人身売買というか、珍しい動植物を売買するハンターっぽい連中に襲われてました」
その言葉に、ストリングが手を打って頷く。
「あの時の!」
……そうか、そういえばストリングを連れ帰った経緯で、そんなようなことを聞いていた気がする。
その横で、ゴブエモンが首を横に振る。
「余計なことを……放っておけばよかったものを」
「いや……まあ、困ってたみたいだったから」
ゴブエモンの言葉に、ゴブゾウが苦笑い。
で、この4人はどうした?
「はい、ハンターに襲われていたところを私の部隊のものが見つけ、仕方なし助けたら襲い掛かってきたので捕まえてここに連れてきました」
へぇ……2回も助けられてるのに、襲い掛かるとか。
「エルフってのは野蛮なんだな……」
俺の言葉に、4人が騒ぎ立てる。
なんか、それすらも身勝手な態度に見えて、ちょっとイラっとする。
ふーん……
「本当に野蛮なんだな」
思わず、声が厳しくなってしまった自覚はある。
周りのゴブリン達が、背筋を伸ばす程度には。
お前たちに向けて言ったわけじゃないんだけど。
4人のエルフも大人しくなってるけど。
「そのハンターたちは?」
「追い払いました」
そっかー……
まあ、そっちはどうでもいいかな?
とりあえず。
「この4人は外に放り出していいよ。で、門や壁、誰かに攻撃を仕掛けてきたらすぐ殺していいから」
俺の言葉に、4人が真っ青を通り越して真っ白に。
白から青、で白に戻ったから、落ち着いたのかな?
なんてあほなことは言わない。
「あー……殺すのは、気分が悪いから両手両足の骨を折って、森の中に」
それは、殺すのと一緒ですと言われてしまった。
4人に顔を向けると、全力で頷いている。
いやいや、前提条件がこっちに攻撃を仕掛けたらって言ったよね?
もしかして、攻撃を仕掛けるつもりなのかな?
大人しく帰れば済む話で。
「じゃあ、それで」
キーキーと喚く声が聞こえるけど。
別に……あっ、一人ほど白目を剥いて倒れてしまった。
仕方なく詳しく話を聞くと、場所も分からない森の奥地で放り出されても帰られないと。
知らんがな。
さらに、最近は弱い魔物が減って、強い魔物が増えてて危険だとも。
知らんがな。
弓も矢も奪われて、ここまでに魔法をいっぱい使って魔力も減ってると言われたけど。
知らんがな。
じゃあ、村に知り合いがいたら、考えてみると。
ミーシャとオットーを名乗るエルフが、ゴブゾウに声を掛けて思いっきり首を振られていた。
「助けてもらってまともな礼もいえぬ恥知らずな知り合いなど、俺にはおらん」
……
ゴブエモンは、論外だな。
「某を頼ろうとする根性が気に入らん」
ちょっと、怒ってるし。
「あっ、待って!」
ストリングには凄い速さで逃げられていた。
見境なくなってきてるなー。
エドとシドにも確認したけど、知り合いじゃないとのこと。
ドワーフ並みに珍しい種族らしく、そんな珍しい種族同士はなかなか交流を持つことはないらしい。
ちなみに、仲が悪いというほどでもないと。
仲が悪くなるほど、交流した記録が無いと。
なるほど……
ちょっと可哀そうになってきたので、一晩だけ預かることに。
ちなみにエルフ達は、それぞれイケゴブ、ビジョゴブに連れていかれた。
じゃんけんで勝った者達に。
今日一晩のお世話係兼見張りだな。
エルフ達が騒がしい。
「やっぱり、手足折っとくか?」
大人しく、ドナドナされていった。
大丈夫、そんな悲壮感漂わせる必要はないから。
無理矢理はダメっていってあるし。
良い奴ばっかりだから。
俺の前に4人のエルフが座らされている。
口には猿轡のようなものをはめられて。
この布、なんとうちのゴブリン達が編んだんだ。
教えたのはテレビやら、ネットで調べたアスマさん。
……うん、別にあまりにしつこいからだとか、ハンガーストライキに負けたからだとかじゃない。
人の家のトイレに引きこもるのは、流石に反則だと思う。
最初の2日間は完全に放置してた。
けど、トイレが使えないのは不便極まりない。
なので、魔法でトイレを増設してたんだけど。
あまりにも反応が薄いので、先に根負けしたのはアスマさん。
トイレから出て来て、他にもトイレが増えてるのを見て膝から崩れ落ちた。
しかもトイレは2つ。
男性用と、女性用をこの機会に分けたんだけど。
流石に、目の前で泣かれると。
「いや、欲しくて泣いたんじゃない! この2日間、いろんな誘惑と闘って頑張ったことが無意味だったことに、何か走馬灯のようなものが流れて……」
その程度のことで、走馬灯なんて大げさな。
大体、悠久の時を生きるエルダーリッチにとって2日間なんて、大したことないだろう。
「我は、いま一分一秒を惜しむほどに、ここでの暮らしを楽しんでおるのだ」
という言葉に、ちょっと嬉しく思ったこともある。
でもなー……鍵だけ掛けて、転移したらよかったのに。
魔法で、中にいるように見せかけたりできたんじゃないのか?
「それは反則だろう……相変わらず、姑息なことだけはよく思いつく」
いや、トイレに閉じこもるような姑息な手段を取っておいて、何を……
しかし、念願のスマホを手に持って、小躍りしている姿をみると許してしまったわけだが。
「動かない……」
落とし穴。
アスマさんの指に、画面が反応しなかった。
骨はダメなのか。
「我はエルダーリッチに至って、初めて自分の身体が不便で憎いと思った……今なら、世界が滅ぼせそうな気がする」
身体中からオーラを放って物騒なことを呟くアスマさんに、思わずため息。
仕方ないからスマホが触れる手袋と、タッチペンも用意することに。
ネットにアプリにといじり倒しては電池が切れて、充電中のスマホを前に座布団に正座して待つ骸骨のなんと鬱陶しいことか。
「もう1台欲しい」
本気でぶん殴ろうかと思った。
「違う違う、安いのでいい! 廃棄品でも!」
てっきり、充電中にもう1台あればエンドレスとでも言い出すのかと思った。
「ぶ……分解してみたい……」
そっちか。
研究者としての興味が出てしまったようだ。
たぶん、分解しても何も分からないと思うけど。
CPUとか、そこからさらに分解できるものなのだろうか?
あと、アプリは開発者が作ってサーバーに入れてあるんじゃないかな?
スマホで解析ができるか分からないけど、バラしても中からアプリの元は出てこないぞ?
「そのくらい知っとるわ!」
怒られた。
まあ、安いスマホくらいなら。
ジャッキーさんに、ジャンクショップでも覗いてもらって、数台仕入れてもらおう。
もしアスマさんが有効活用できるようになったら、役に立つだろうし。
***
うん、大幅に脱線した。
今は、目の前のエルフたちだな。
ゴザの上に座らされているけど。
この、ゴザ!
うちのゴブリン達が編んだ。
作り方はアスマさんが……
目の前の耳の長い美男美女がソワソワし始めたので、現実逃避を止める。
なんでエルフか分かったかというと、アスマさんが教えてくれた。
というか、本当にアスマさん便利だよな。
この世界の知識に俺のいた世界の知識にと、本当に万能になりつつある。
「猿轡を、とってあげて」
俺の言葉に、ゴブエモンがちょっと不服そう。
「いや、口を開けば口汚く我らを罵り、あげくには魔法を使ってこようとする始末……とりあえず、ここに連れてきたのは珍しい種族っぽいので殺していいかどうかの確認です」
ゴブエモンの言葉に、エルフ達が顔を青くしてオロオロしている。
もともと色白だから、分かりやすく真っ青。
「あっ」
そして通りすがりのゴブゾウが、何かに気付いた様子で声を出す。
その場の全員に注目されて、ちょっと恥ずかしそう。
そして4人のエルフのうち、2人が大げさに騒いでいる。
ゴブゾウが顔をそらして、その場から離れようとするので引き留める。
「顔見知りか?」
「いえ……なんといいますか」
さらに、そこにストリングが通りかかる。
エルフの2人がさらに騒ぎ立てるが、ストリングは首を傾げてそのままどこかに……
少しして、慌てて走って戻ってきた。
そして、エルフの顔を確認。
首を傾げて、立ち去ろうと……
「顔見知りか?」
「いえ、前にちょっと……と思ったのですが、エルフの顔の違いってよく分からなかったんで」
そうか……お前も、ここに残るように。
「ゴブゾウ?」
「えっと……人身売買というか、珍しい動植物を売買するハンターっぽい連中に襲われてました」
その言葉に、ストリングが手を打って頷く。
「あの時の!」
……そうか、そういえばストリングを連れ帰った経緯で、そんなようなことを聞いていた気がする。
その横で、ゴブエモンが首を横に振る。
「余計なことを……放っておけばよかったものを」
「いや……まあ、困ってたみたいだったから」
ゴブエモンの言葉に、ゴブゾウが苦笑い。
で、この4人はどうした?
「はい、ハンターに襲われていたところを私の部隊のものが見つけ、仕方なし助けたら襲い掛かってきたので捕まえてここに連れてきました」
へぇ……2回も助けられてるのに、襲い掛かるとか。
「エルフってのは野蛮なんだな……」
俺の言葉に、4人が騒ぎ立てる。
なんか、それすらも身勝手な態度に見えて、ちょっとイラっとする。
ふーん……
「本当に野蛮なんだな」
思わず、声が厳しくなってしまった自覚はある。
周りのゴブリン達が、背筋を伸ばす程度には。
お前たちに向けて言ったわけじゃないんだけど。
4人のエルフも大人しくなってるけど。
「そのハンターたちは?」
「追い払いました」
そっかー……
まあ、そっちはどうでもいいかな?
とりあえず。
「この4人は外に放り出していいよ。で、門や壁、誰かに攻撃を仕掛けてきたらすぐ殺していいから」
俺の言葉に、4人が真っ青を通り越して真っ白に。
白から青、で白に戻ったから、落ち着いたのかな?
なんてあほなことは言わない。
「あー……殺すのは、気分が悪いから両手両足の骨を折って、森の中に」
それは、殺すのと一緒ですと言われてしまった。
4人に顔を向けると、全力で頷いている。
いやいや、前提条件がこっちに攻撃を仕掛けたらって言ったよね?
もしかして、攻撃を仕掛けるつもりなのかな?
大人しく帰れば済む話で。
「じゃあ、それで」
キーキーと喚く声が聞こえるけど。
別に……あっ、一人ほど白目を剥いて倒れてしまった。
仕方なく詳しく話を聞くと、場所も分からない森の奥地で放り出されても帰られないと。
知らんがな。
さらに、最近は弱い魔物が減って、強い魔物が増えてて危険だとも。
知らんがな。
弓も矢も奪われて、ここまでに魔法をいっぱい使って魔力も減ってると言われたけど。
知らんがな。
じゃあ、村に知り合いがいたら、考えてみると。
ミーシャとオットーを名乗るエルフが、ゴブゾウに声を掛けて思いっきり首を振られていた。
「助けてもらってまともな礼もいえぬ恥知らずな知り合いなど、俺にはおらん」
……
ゴブエモンは、論外だな。
「某を頼ろうとする根性が気に入らん」
ちょっと、怒ってるし。
「あっ、待って!」
ストリングには凄い速さで逃げられていた。
見境なくなってきてるなー。
エドとシドにも確認したけど、知り合いじゃないとのこと。
ドワーフ並みに珍しい種族らしく、そんな珍しい種族同士はなかなか交流を持つことはないらしい。
ちなみに、仲が悪いというほどでもないと。
仲が悪くなるほど、交流した記録が無いと。
なるほど……
ちょっと可哀そうになってきたので、一晩だけ預かることに。
ちなみにエルフ達は、それぞれイケゴブ、ビジョゴブに連れていかれた。
じゃんけんで勝った者達に。
今日一晩のお世話係兼見張りだな。
エルフ達が騒がしい。
「やっぱり、手足折っとくか?」
大人しく、ドナドナされていった。
大丈夫、そんな悲壮感漂わせる必要はないから。
無理矢理はダメっていってあるし。
良い奴ばっかりだから。
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