チュートリアルと思ったらチートリアルだった件

へたまろ

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第6章:動き出す世界

第2話:今更ながらダンジョンマスターとして活動をしてみよう

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「はいっ、という訳でやってまいりましたカタログショッピングのお時間です」
「なんですか、それ?」

 うん、クロノは声だけは可愛い。
 文字の頃よりも大分、心象が良いぞ!
 つってもこの声を知ったら文字で罵られてたのも、可愛い女の子とメールでやり取りしてたみたいで楽しかった思い出に感じる。
 はっ! 
 でも、声が可愛いくてもそうじゃない娘も居るし。
 うちの近所のマックのドライブスルーなんて、深夜帯は凄く可愛らしくて元気な女の子の声で注文を取ってくれて、いざ受け渡し口に行ったらおばあちゃんだったりするし。
 期待しないようにしとこう。

「なんで、磨き布やら研磨剤、艶出しクリームを大量に交換しようとしているのですか?」
「いや、特に意味は無いぞ? 武器や防具の手入れ用に要るかもと思っただけだぞ?」

 危ない危ない。
 思っていることとは裏腹に、俺の探求心が冒険をしようとしていたようだ。

「現状マスターのダンジョンとしては、階層が120階層しかないというのは少し役不足ですね」
「そうか? 無駄に階層を増やすよりも今ある階層を強化した方が良いと思うけど……」
「まあ、それも一理ありますが」

 現状大改造をしているのは、50階層の牧場エリアくらいだもんな。
 下の階層とか、完全にボーナスステージだしね。
 10階層はアーマーコボルトとかだったっけ?
 でも、ここに来たジェシカ達は結構手こずってたよな。
 まあこの際だ、配置転換込みで全部テコ入れしちゃおう。

「ポイントってどのくらいあるの?」
「レベル1000も超えたましたし、御祝儀込みで20万ポイントはありますよ」

 おー!
 カタログで一番高い、日本製のお城が6万ポイントだからなんでも換えられるってことか。

「魔力操作を覚えたので、魔法も覚えるべきかと」
「じゃあ、10ポイントで換えられる初級火系……いや50ポイントの初級全属性魔法の方がお得か、どうせ俺自分の魔力使えないし後でいいや」
「そうですか……」

 魔法には憧れるけど、魔石に頼るのってなんかみっともないし。
 クロノとあーでもない、こうでもないと相談しながらダンジョンのリフォームを行う。
 一応150階層まで増やした。
 大罪系も、憤怒のサタン、嫉妬レヴィアタン、怠惰のベルフェゴール、強欲のマモン、暴食のベルゼブブ、色欲のアスモデウスが揃った。
 全部で4200ポイント……安くね?
 ルシファーさんだけは、どこかに封印されているらしい。
 基本的に大罪系はボスの中ではトップクラスらしく、扱いが難しいということで無職状態だったらしいけど。

「ふんっ、貴様如き矮小な存在が我の主とは忌々しい」

 サタンが玉座とともに召喚されて、俺を見下しながらほざいてきた。
 でかい、ザ・髭面の悪魔だったわ。
 角がやたらと立派だし。
 上半身裸で、筋肉もヤバい。
 目つきは鋭く、ちょい悪イケメンおっさんぽい。
 他の面々に比べて、顔がかなり良い。
 あー……ベルフェゴールの美女形態はノーカウント。
 醜いおっさんの完璧女装とか需要無いし。
 ベルゼバブは顔の前を蠅が飛び交っていて顔を見た事ないし。
 まあいいや、取り敢えず目の前のおっさんに立場を分からせないとな。

「あ”っ?」

 魔人化してサタンの頭を掴んで、顔を引き寄せて睨み付ける。
 
「ヒッ! 化け物!」

 お前が言うな!

――――――
「ハッハッハ! 主も人が悪い! そのように強大な力を隠して私を驚かせようなど、それにしても素晴らしいお力ですな」
「ハハ……まあ、宜しく頼む」

 強面のイケメンおっさんが揉み手でなんか言ってるけど、もう良いや。
 憤怒ってついてるのに、めっちゃニコニコしてるし。

「じゃあ、次はマモンか」
「ふんっ! 俺が働かせるのか……で、お前さんはいくら払えるんだ? このダンジョンを守れると思ったら全財産払っても安いもんだと思うがな?」

 金貨の入った袋を抱えた、小悪党っぽいおっさんが開口一番にどっかの崖の上に病院を構える凄腕無免許医みたいなことを言い出した。

「あー、マモン?」
「なんだ? おー、サタンか」
「いい、俺が話をしよう……なあ、マモン」
「貴様が雇い主か?」

 マモンに声を掛けたサタンを取りあえず押しとどめて、優しく話しかける。

「タダより高い物は無いって言葉知ってるか?」
「ああ、金で解決出来ないものは厄介だって事だろ? 俺には関係無いが」
「だから、お金より高い物を報酬としてやろう」

 そう言って、拳をマモンの前に突きつける。

「いらねーよキタねー腕なんて、それよりも俺は金が欲しいんだ」
「まあ、遠慮すんなって」
「グオッ! 何しやがる!」
「ん~? 一つじゃ足りなかったか?」

 そう言って、今度は左手を引き付ける。
 弓を引くような体勢だ。
 これから殴りますよって意思表示だね。

「分かった! 分かりましたって! 金じゃ無くて三食と住居付きでやりますって!」
「やります?」
「ヒッ!三食頂けたら、やらせていただきます」
「ここに何年も居るかも分からないのにたった、三食で良いのか?」
「そこで値引き交渉? 日に三食ですよ」
「フッ、冗談だ。分かってる」

 量は指定されてないから、サボったら米一粒とかにしてやろう。

 レヴィアタンも召喚する。

「あらー、私より先に貴方達が召喚されてたの? 嫉妬するわー」

 間延びした喋り方の、人間くらいのサイズの海蛇だった。
 どっちかっていうと、絵で見たシーサペントの方が近いかな?

「あー、安心してください……彼女が取りついた生き物は嫉妬深くなりますが、彼女自身はそうでもないので口癖みたいなもんです」

 あっ、そう。

「貴方が主? うーん、パッとしないわね……えっと~、あの~……え~……そうだ! 私達の主だなんて嫉妬するわー」

 あれか?
 そこ以外、嫉妬するポイントが無かったというのか?
 くっ、何が安心してくださいだサタンの奴め。
 地味にダメージ喰らったじゃないか。

 取り敢えず全員を新しく作った140階層に集める。
 かなり広い土地に湖や森、平野が配置された場所だ。

「お前ら全員ここの守護者な?」
「「「「「「はっ?」」」」」」
 
 6人のボスがキョトンとした表情を浮かべている。

「いや、戦力を分散しても各個撃破される可能性があがるだけだろ? だったら、全員で一緒の場所守った方が確実だし」
「おっしゃられてることは分かるのですが」
「メー」
「モー」

 あー、アスモデウス……お前は喋るな!
 と言いたいけど、割とメンタル弱かったりするからな。
 前も配下にしたとき、何度も殺したり殺された話をしたら謝られたし。
 できれば苦しませずに一思いに殺すのが、彼の流儀らしい。
 色欲とはいかに。
 あー、それはラファエルが彼の恋路を邪魔した際に広まったらしい。
 取りついた女の旦那を初夜の日に殺す度に、再婚してたから彼女が色欲家みたいに思われたとか。

 元々は激怒と情欲の魔神とか。
 どっちにしろエロ魔人じゃん。
 えっ? 
 その前は智天使?
 知らんがな。

 141階層に屋敷を7つ用意してたから、それを見せたら全員納得してたけど。
 神殿っぽい造りにしようかと思ったけど、実用性重視で古い日本家屋にしておいた。
 全員人型になれるし、サイズも自由という事で問題無かったよう。
 
 お仕事は1階層で俺がうち漏らした連中から、この階層を守る事。
 140階層を越えられたら、間違いなくお前らの新しい家は燃やされる。 
 木造だから良く燃えるぞ?
 と言ってやったら、やる気に燃えてた。

 あっ、アスモデウスが火球吹いて自分の家燃やしてる。
 違う?
 対火の加護を授けただけ?

 レビィアタンは水球で屋敷を覆ってる。
 中は空気で満たしてるから大丈夫?
 上と横に穴も開いてるから、換気もオッケー。
 そうですか。
  
 ベルゼバブは大量の蠅が屋敷の周りをクルクル回ってる。
 隙間が無いくらい。
 気持ち悪い。
 あー、蠅の中でも最上位の精鋭たち?
 喋れる連中の1個したのランクで、各種耐性と攻撃手段を持ってます。
 そうか……

 サタンは……あー、流石魔王と呼ばれてただけの事はある。
 ガーゴイルやら、リビングアーマーやら、悪魔やらを召喚し始めた。
 ガーゴイルよりは狛犬の方が良いんじゃ無いか?
 もしくはシーサー?
 リビングアーマーも武者鎧にしとこうか。
 御祝儀で鎧も石像も用意してやるから。
 悪魔は……おいとこう。

 ベルフェゴール……エグイな。
 屋敷に近づくと、怠惰のオーラが流れ込んでくる。
 歩くのも面倒くさくなるレベルか。
 屋敷の目の前に来ると、これは息をするのも面倒くさくなるレベルだな。
 火を付けようとしたら、火もやる気がなかった。
 シオシオといった様子で小さくなって消えた。
 全力だなおい!
 怠惰の悪魔がやるレベルじゃない頑張りだぞ!

 マモンは分かりやすい。
 入り口に注意書きが置いてある。
 屋敷に傷を付けた時の罰金額?
 あー……真っ先に破壊されるのはこの家かもな。
 こんな立て看板で防げたら、苦労しない。
 ダンジョンの前に設置するレベルだ。
 なになに? 
 この看板は呪いの効果付与でここに書いてあることを破ったものは、その後それだけの金額が収入から勝手に消えていく?
 自分が払い切れなかったら、子々孫々まで引き継ぐ。
 悪徳金融か!
 まあ、それでも真っ先に燃やされそうな気がしなくもない。

 取りあえず、やる気に満ち溢れているようで良かった。

 ちなみに1軒3000ポイントで、お前らよりそれ高いからな? と言ったら複雑な表情を浮かべてた。
 そして、さらに耐久強化に磨きが掛かってた。
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