チュートリアルと思ったらチートリアルだった件

へたまろ

文字の大きさ
上 下
90 / 99
第5章:会長と勇者

第16話:万事解決?消えたヒヨコの謎

しおりを挟む
「えっと……クラタさん?」
「フハハハ! クラタは死んだ! 我は魔人、クラータだ! 皆殺しだヒャッハー!」

 不安そうにこっちを見上げてくるカオルちゃんに、ちょっと嗜虐心がそそられる。
 魔人になった影響かな?
 翼をバサッと広げて、牙を剥いて笑ってみせる。

「良かった、クラタさんだった」

 一瞬でバレた。
 なんでバレたし。

「こんな馬鹿な事を言い出すのは、マスターくらいですよ?」
「お前、よく俺の事分かってるよな? 惚れんなよ」
「はいはい、カッコいいカッコいい」

 くそ、石ころが。
 声が可愛くても、中身は変わんねーわな。
 声が可愛い?
 ひらめいた!

「永久に時空の狭間に閉じ込めましょうか? 一応制限解除のお陰で、そのていどなら出来ますよ?」
「まだなんも言ってねーし!」

 こないだ、一生懸命磨いてあげてたら色っぽいメッセージが流れてたから、この状態で磨いたらどうなるのか興味あっただけだし。

「ゲスですね」
「知ってた」

 いつか、磨きあげちゃる!

「その姿は?」
「あー、実はさ……俺変身タイプだったんだわ」
「言いたくないということか?」

 俺の言葉に、質問をしたカオルちゃんの代わりにミカエルが答えてくれる。
 うん、心中察してもらってどうも。
 というか、あんたには言えんわな。
 主と読んでいたカイロスに盾に使われて、俺に殺されただなんて。

「いずれ、時期がきたら教えてやるわ」
「時期もなにも、私は勇者だ。貴様を殺すために存在するのだぞ?」
「えっ? ミカエル様、まだこのダンジョンマスターに挑むつもりなのですか?」
「当然!」

 ローレルの言葉に、さも当たり前だといった様子で答えるミカエル。
 そして、その返事にげんなりした表情を浮かべるローレル。
 安心しろ。
 お前と一緒に来てた、ナン一族も終盤はそんな表情だったぞ?
 勇者ってのは無駄に使命感が強いのな。

「というわけで、武器を返してくれないか?」

 ミカエルさん厚かましいね。
 俺を殺すつもりのやつに、なんで武器を渡さないといけないと思うかな?

「えー、普通敵に武器渡す人なんていないですよ?」

 カオルちゃんもそう言ってるし。
 まあ、返しても良いんだけどさ。

「はい、これ」
「なんだこの剣は! 私の剣を返せ」
「だから、それ!」

 クロノから渡して貰った剣の刃が、すっかり黒くなっていた。
 装飾も輝かしい白基調のものだったのに、今じゃ赤黒い。
 魔剣ですね……

「あー……俺が使ってたら、魔剣化しちゃった」
「なっ! 戻せ! 私の剣を元に戻せ!」
「無理……というか、剣の主も俺になってるし……」
「なっ! じゃあ、どうやってお前を倒したら良いんだ!」
「なんか、ごめん」

 取りあえず入り口でワーワー五月蠅いので、マスタールームの隣の謁見の間的な部屋まで連れていく。
 お出迎えは、ヘルとカーミラと、いつの間にか先回りして戻ったファング。
 そして、カーミラの後ろにはヘンリー王子。
 
「なっ!吸血姫ブラッドプリンセス地獄少女コール・デスだと! なんで、マスタークラスと神話級が!」
「俺の女だから」
「まあ、旦那様ったら!」
「妾はただの部下じゃ」

 2人の姿を見て、ミカエルが狼狽える。
 ヘルが嬉しそうに抱き着いてくるので、肩を抱き寄せる。
 照れんなカーミラ。
 頬が赤い……事も無かったわ。
 というか、目的のヘンリー王子は無視か。

「余もいるよ?」

 ヘンリー王子、この状況で頑張った。
 自分の事を余と呼ぶことでかろうじて、威厳を保てたと思うよ。 
 内容は、凄く寂しいものだけど。

「というか、ヨシキさんはどこ?」

 そして、辺りをキョロキョロするヘンリー。
 目の前に居るぞ?
 ああ、魔人化形態だったわ。

「フハハ! クラタは死んだ!「それは、もう良いです。こちらが、クラタさんらしいですよ」

 カオルちゃん酷い。
 ヘンリー王子が目を丸くしてる。
 可愛いじゃないか。

「お前! ヨシキさんを殺したのか?」
「あー、ごめん。俺だから」

 素直に信じちゃう素直な心に照らされて、自分が薄汚れた大人になった気がして返ってダメージを受けた。
 あ、純真な心を目の当たりにして、カオルちゃんもちょっと複雑そう。
 取りあえず、元に戻る。
 これも簡単。
 戻りたいと思えばいいだけ。

「ビックリした……あれもヨシキさんだったんだ。カッコいい!」
「王子様! 駄目ですよ、魔族なんかに憧れては」
 
 ローレルが慌てて、ヘンリーを嗜める。
 そしてローレルを見て、首を傾げるヘンリー。

「お主は誰だ?」
「えっ? あー、ローレルです。 元勇者の……国王陛下に謁見した時にお会いしたかと」
「ああ、ローレルか! ごめんごめん」

 完全に忘れられていたらしい。
 なんだ、ローレルも残念組ブラムス側か。
 このローレルが勇者でブラムスが魔王なら、面白い事になってたかも。
 あっ、どっちも格下相手には偉そうだったっけ?
 残念組なんか、どうでも良いか。

「ヘンリー王子! 戻りますよ!」
「なんで、ミカエルはこの状況で普通に返してもらえると思うの? お前、俺に傷すら負わせられないのに」
「えー、もうちょっと居たい」

 そして、なんで帰りたがらないの? 
 とうか、ヘンリーも帰ると言ったら帰してもらえるとでも思っているのだろうか?
 まあ、ミカエルが他のダンジョンを襲わない事を確約すれば返すけど。

「取りあえず、ミカエルがここしか狙わないっていうなら、返しても良いけど」
「僕の意見は? もう少し、ここで遊んでたいんだけど」

 完全に子供の居ない叔父さんちに遊びに来た。親戚の子状態だ。
 自分の家よりも優しくて、あれこれと甘やかしてる叔父さんに完全に懐いちゃったパターンだね。
 まあ、親と違って責任も無いし。
 無責任に、喜ぶことをしてあげられるからそうなるのは分かるが。
 両親聞いたら悲しむぞ?
 魔族のところに、もうちょっと居たいとか。

「私は、その約束を守ると誓う! だから、帰りましょう!」
「そうですよ! 陛下も心配されてますから」

 ミカエルとローレルが説得にかかる。
 ここは、助け船を出してやろうか。

「まあ、いつでも遊びに来ていいから、一度帰った方が良いんじゃないか?その方が両親も安心だし」
「連れ去った本人が何を!」
「ミカエル様! クラタさんが説得を手伝ってくれてるんですから、邪魔しないでください」
「あっ、すまん」

 ミカエルがローレルに怒られる。
 なんだ、ちゃんと補佐してるじゃないか。

「そっか……じゃあ、帰ろっかな」
「えっ? 牧場エリアのコカトリスの卵が孵ったの? ヒヨコで尻尾が小蛇? 見たい見たい!」
「そうじゃろ? ヘルと一緒に丁度いまからお祝いがてら、会いに行こうと思うての」
「私も行きたい!」
「良いぞ! 一緒に行こう!」
「僕も! 僕も!」
「「王子?」」

 カーミラ?

――――――
 ヘンリーは結局小一時間ほどヒヨコとじゃれたあとで、ミカエルとローレルに連れられて帰って行った。
 ちゃんと、他のダンジョンに手は出さないと契約書にサインもさせたし。
 取りあえず一安心。

「えっ? ヒヨコが一羽足りない?」
「別に、親のコカトリスの方は沢山生まれるしすぐに増えるからいいとは言ってるけど……」

 ヘンリー?
 数年後フィフス王国周辺に、コカトリスを操る王子の噂が流れたとか流れてないとか……

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

処理中です...