チュートリアルと思ったらチートリアルだった件

へたまろ

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第5章:会長と勇者

第6話:新たなる勇者

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「ローレル様が罷免されました」

 ローレルが勇者の資格をはく奪されたらしい。
 カオルちゃん情報。
 カオルちゃんの話のよると、新たな神託が下ったらしい。
 ローレルを補佐として、新勇者を鍛え上げこのダンジョンを攻略しろとの事だったらしい。
 
 カオルちゃんが、ローレルじゃ絶対無理だと進言した結果らしい。
 なに、余計な事してんの?

「すいません……少しでもお役に立てたらと思って」

 カオルちゃんも、しょんぼりしてる。
 ダンジョン攻略を諦めさせる方向に話を持っていきたかったらしい。
 とはいえ、なってしまったものは仕方が無い。
 なら仕方が無い。
 まあ、新しい勇者が来たところで今までと状況は変わらないだろう。

 なんと、勇者様のレベル上げのためにあちこちの小さなダンジョンが攻略されだしたとのこと。
 それは良くない。

 新勇者は、剣士でミカエルさん。
 若手の凄腕の剣士だったとの事。
 男装の麗人らしく、女性とのこと。
 うん、期待が持てる。
 女性に優しいという情報も筒抜け。
 何をしてくれとんじゃい!

「いや、チジョーン様にも優しくして頂けると思ったので。あのお方も、凄くお綺麗なので」

 そういう問題か?
 そういう問題かも。

 次々と踏破されていくダンジョンを見ながら、周囲のダンジョンもようやく危機感を覚えたらしい。
 各所の有力ダンマス達に相談が相次いでいるらしい。
 今まで、あまり小さなダンジョンに勇者が来ることなんて殆ど無かったからね。

 それに伴って、魔王ゴアルガさんも同盟入りした。
 曰く、魔族のダンジョンも被害に遭い始めたとの事。
 尻に火がついて、脳筋の魔族たちにもようやくこの同盟の重要性が理解出来たらしい。
 という事で緊急会議。
 メンバーは俺、イコール、ゴアルガ、テューポーン。
 リカルド、メガララさんは属国?属ダンジョンの対応に追われて離れられないらしい。
 ブラムスは参加してるよ。
 なんか、お茶啜ってるだけの置物と化してるけど。

「どうしたら良いですかね?」
「取りあえず、ある程度の手勢を率いて勇者の所属する国を襲うか?」

 イコールが不安そうに問いかけてきた。
 テューポーンはやる気満々だが。
 うん、でもそれやるとテューポーンに矛先が向きそうだし。
 ここは、あれか?
 会長の俺が一人で行くべきか?
 俺一人なら、なんにも問題無さそうだし。

「魔族総出で行っても良いですが、その間にいくつのダンジョンが勇者の手に落ちるか」

 有象無象のダンジョンが一番多いゴアルガさんが、一番不安が大きいらしい。
 いよいよもって全面戦争。
 いやいや、防衛線に徹してください皆さん。
 あんたらが落とされたら、それこそ取り返しが付かないので。

「その勇者が所属する国ってどこ?」
『フィフス王国ですね。サード王国の西にあります』

 そうか、ここから5番目くらいに遠い国かな?
 シルバでどのくらいの時間で着くかな?

『大体2時間くらいですかね』

 かなり遠かった。
 2000kmくらい?
 でも、シルバならすぐ着くのか。
 ちょっと行ってみようかな?

「俺が一人で行って来よう。フィフス王国とやらには、お姫様とか居ないのか?」
「確か幼い王子が一人居たかと」

 ちっ。
 ここは定番らしく、お姫様を攫って勇者のヘイトをこっちに向けようと思ったのに。
 とはいえ、今度の勇者は女性。
 男の子連れてきた方が効果的かも。

 という訳で、一人で行くことにした。
 テューポーンがかなり渋っていたが、お前連れて行ってもなんの役にも立たんだろ?
 人間にはかなり恐れられているらしく、連れて行くだけでも抑止力として優秀だとか。
 目立ちたく無いし、やっぱいらね。

「フィフス王国は、かなり大きな騎士団を擁しておりますので一人はいくらなんでも無謀かと」
「一人に対して全員が戦う訳じゃないからな? 一度に4人対処出来たらやる事一緒だし」
「遠距離から、かなりの制御の魔法が飛んでくるが?」
「大丈夫、吸収出来るから。どっちかっていうと、常に回復してもらえて楽出来て良いや」

 皆、色々と情報を持ってる。
 君たち引きこもりのはずなのに、色々と物知りなのね。
 まあ、俺の場合石ころがなんでも答えてくれるから問題無いけど。

 普通に観光しつつ、夜にでも行動起こすかな?
 取りあえず、フィフス王国の城下町であるフィフスの街に向かうかな?
 会議の結果は、俺が一人で行って王子様を攫って来て勇者のヘイトをここに向けて勇者を釘付けにする。
 他の面々は自ダンジョンと所属ダンジョンの防衛力強化。
 共同戦線の構築。
 情報ネットワークの整備。
 襲撃時の周囲のダンジョンの対応。
 ダンジョン捨てて、他のダンジョンに保護してもらうのか。
 他のダンジョンから援軍を送るのか。
 各々に任せよう。

「ハイド! シルバ!」

 シルバに乗って駆けること2時間。
 大きな町が見えてきた。
 取りあえず、門から見えないところでシルバを返す。
 ここからは徒歩。
 歩いてみたら意外と遠かった。
 シルバ、マジ優秀。

「トラベラーか……ファースト領のメラミの街とはえらく遠くから来たな」
「まあ、折角見知らぬ場所に来たので、色々と見て回りたくて。初めて見るものばかりで楽しいですよ?」

 嘘だ。
 流れる速度が速すぎて、景色なんか全然見れてない。
 しいて言うなれば、線のように流れる景色が珍しいくらいか?

「この国はファーストとは全然違うからな、きっと楽しめると思う。良い旅を」
「有難う。ご苦労様です」
 
 とっても愛想の良い門兵さんで、ちょっとほっこり。

「美味しい」

 途中の屋台で買った謎の鶏串を頬張りながら町を歩く。
 流石城下町、石畳が引かれてて歩きやすい。
 歩きなれてない人なら足の裏が痛くなりそうだけど。
 俺は大丈夫だけどね。

「なあ聞いたか?」
「ああ、また勇者様がダンジョンを一つ落としたらしいじゃないか」
「あのミカエルちゃんが勇者様か……」
「俺、密かに好きだったんだけど」
「勇者じゃなくても無理じゃ無いか。この街で一番のベッピンさんだったんだから」
「好きになっただけで、別に付き合えるとは思ってねーよ」
「ハハハ、それ言ったらみんな一緒だな」

 なるほど、ミカエルちゃんはこの街で一番のベッピンさんなのか。
 良い事を聞いた。
 取りあえず、次は何を食べよう。
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