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第4章:魔王クラタ誕生「魔王ですか?」「いいえ、会長みたいなもんです……」

第2話:アンデッド参勤交代

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 ヴラド伯爵は知ってる。
 伯爵ってのは知らなかったけど。
 エリザベート伯爵夫人……
 さて誰でしょうか?
 急に来た、来客です。
 ブラムスのダンジョンに。
 正解は

『2人ともヴァンパイアの始祖です。もう一人ジル男爵と呼ばれる方が居ますが、彼はイコール配下ですので、この世界の3大ヴァンパイアの二人ですね』

 有難う石ころ。
 うん、でもヴラドは知ってるって。
 カーミラのご主人様だね。

 それ以前に、二人とも有名なヴァンパイアだし。
 こういう固有名詞を使い回すから、いまいち乗り切れない。

『イレギュラーな存在なので、ダンジョーン様が連れてきただけですよ。魔力との相性がずば抜けて良い、地球人ですし』

 強引なこじつけと、ご都合主義乙。
 あと地球人言うのやめよう。
 ファンタジーの種類が変わってくる。

『あっちの記憶はいじってますから、地球談義とかは無理ですよ』

 本当に便利な設定だね。
 デウスエキスマキナも、神を登場人物にすれば自由自在ってか?

 本当は、その神様ってGMとかって呼ばれてるんじゃないかな?
 GMコールとかできないかな?
 
「この度は、ヨシキ・クラタ様におかれましてはご健勝のことと存じ上げ喜ばしく思います」

 おっと、石ころとくだらないやり取りをしていたら、なかなかの美丈夫が丁寧に挨拶をしてきた。
 その前に、結構なご挨拶を受けてるけどね。
 うん、かなりというか、ちょっと前に。

「あー、君はあれだね? 部下を俺のダンジョンに送り込んだ奴だね?」
「ひいっ!」

 ひいっ! って。
 酷いな。
 まだ、君には何もしてないのだけど?
 まあ、いいや。
 ちなみに、このダンジョンの主はまだ戻ってきてない。

「フフッ、勇ましい殿方ですわね? 私はエリザベート・バートリと申します。この度のご活躍、大変素敵ですわ。今後は、ヨシキ様に忠誠をお誓い致しますので、是非、ブラムス様の時と同様、私共のダンジョンもよしなにお計らい頂けると有難く存じ上げます」
「耳が早いんだな。まあ、特に何かされた訳でも無いし、これまで同様ってのが分からないから、俺なりに仲良くしようと思う」
「はっ、寛大なお言葉、有難うございますわ」

 なんか、若干小ばかにされてる気分だけど、これがこの人の敬語なんだよね?
 それよりも、胸デカいね。
 あと、肌ぴちぴち。
 えっ? 400歳?
 ババアだった。
 人妻?
 あー、そうだよね。
 伯爵夫人だもんね。
 ノーサンキューだったわ。

 俺の言葉を受けて、エリザベートがヴラドに対して勝ち誇った目で見ている。
 この2人、仲が悪いのかな?

 まあ、良いや。
 俺的には人妻より、ヴラド君の部下の方が気になるし。

「そうだ、ヴラド君」
「はいっ!」

 そんな緊張しなくても良いじゃん。
 というか、本当にブラムスって強かったのかな?
 ブラムスを倒したのは伝わってるんだろうけど、ビビり過ぎじゃ無いか?

「君の所にいるカーミラちゃんね」
「あっ、その節は大変御無礼を致しました。あれはカーミラが勝手にやりましたことで、彼女には厳しい罰を与えることを「ちょっと、待って?」」

 いやいやいや。
 カーミラたんが、俺んとこに来たの君のせいだよね?
 何シレっと部下に責任を押し付けようとしてるんだ?
 なんか、俺の中のヴァンパイア始祖株がだだ下がりなんだけど?

「いや、お前のせいだろ?」
「ひいっ! すいません! すいません! すいません!」

 どんだけ謝るんだ、こいつは。
 まあ良いや。
 本題に行こう。

「あー、まあ、その事は良いんだ。良いんだけどさ……彼女独断専行のきらいがあるじゃん?」
「はいっ、私も困っておりまして」
「困ってるんだ? ふーん……」

 勝手な行動する部下って困るよね?
 そういうのって、やっぱりさ上司の資質が問われると思うんだ。
 そういう部下を上手くコントロール出来てこそ、良い上司だと思うんだよね?
 本人に注意することは簡単だけど、それでモチベーション下げられてもね。
 勝手に行動するって事は、自分で考えて行動出来るって事だからね?
 ただ、判断基準が未成熟だから……会社の方針と違う方向に勝手に動くから怒られる訳で。
 これが、会社と同じベクトルに向いた行動だったら、褒められてドンドン取り立てられてくべき人材になるわけさ。
 だから、そういった人を頭ごなしに怒るのは違うと思う。

 というようなことを、懇々と説明した。
 で結論。

「取りあえず、君には手に余るようだから、僕が直接面倒見るよ」
『……』

 秘書が何か言いたそうだ。
 でも、秘書が一人ってのは大変だろ?
 これは、お前の為でもあるんだ。

『いえ、マスターにダンジョンマスターとしての自覚が目覚めれば、これほど楽な仕事は無いのですが?』
「俺って、ほら、褒めて伸びるタイプだから」
『マスターは、死んで伸びるタイプでしょう?』
「ちょっ、誰うま!」
『言葉くらい、そろそろ威厳を持って欲しいものです』

 このくそ石ころめ!
 たまには……まあ、素直に褒めてくれることもあるが。
 なんか、感性がずれてるというか。
 そこ褒める? みたいなことで褒められたり。
 一番俺とベクトルがずれてるのは、この秘書かもしれない。

『マスターはダンジョン運営のベクトルがずれてます』
 
 くそっ……口じゃ勝てない。
 そもそも、世界観が違うから完全にアウェーだし。

「よ……宜しいのですか? でも、聖水漬けとかは、ご容赦願えませんか? 彼女も、根っから悪い奴というわけではないですし」

 こいつ、自分の手が離れた瞬間に部下に対して庇う事の出来る良い人上司アピール始めやがった。
 完全に他人事だから、吐けるセリフじゃねーか。

「俺もそう思う。環境が悪かったんだろうなと……あれっ? て言う事は、君が悪いんじゃ?」
「ひっ! いえいえ、彼女が私の指示を無視して勝手な事をしたの事実ですので」

 よしっ、こいつは捨て駒にしても良い奴認定確定だな。
 
「私も、ヨシキ様とご一緒しなくても宜しいのですか?」
「あー、バートリーさんは今まで通りダンジョン運営頑張って。ただ、何か事を起こす時は教えてね」
「いやですわ。エルとお呼びになって!」

 めっちゃ、色目使われてる。
 確かに、別嬪さんではあるけど。
 人妻にはあまり興味が無いというか……色々と面倒くさいというか。
 なまじ、旦那さんが出て来たところで腕力で解決できちゃう辺りが申し訳ないというか。

「ふふっ、未亡人ですわよ?」
「あー、いや……まあ……ゆっくりと考えとくから。今日はもう良いよ」
「つれない方ですね」

 未亡人ならOKだけど、あんた色々とこじらせてるからね?
 要注意人物だよ。
 セーブポイントが俺に警告するまでもなく、距離を置かせてもらいます。
 
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