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へたまろ

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第二章:ダンジョンマスターと魔物と人とチーター

第13話:戦後処理~さらばカーミラたん、ただいまメイベルたん~

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「ハッハッハ!凄いな!景色がまるで見えない!」
「ブルル?」

 俺はいま、シルバスレイプニルに跨ってメラミの街に向かっているところだ。
 取りあえず、食事中に消えたら大事だから領主邸に戻るって決めた。
 セーブポイントも、ファングも、何故かカーミラも放っとけば良いのにといった表情だった。
 否、セーブポイントとファングからは無言の圧力を掛けられた。
 何故、威圧耐性がここで仕事しない!

 手順としては、俺が椅子に座る。
 セーブポイントがファングとカーミラを入り口に吹っ飛ばしてファングがカーミラを外にポイする。
 全て元通りという手筈なのだ。

 にしても、こいつ早すぎるだろ。
 マジで、景色が流れていくのが線のようにしか見えない。

 ちなみに、カーミラたんとは色々と話もした。

「今日は、あの町に俺泊まるから、外の軍勢引かせとけよ? じゃなきゃ、全員漏れなく森の肥料にしてやるからな?」
 
 的な事を、言っておいた。

「生かして返されるなどなんて屈辱! じゃが、敗者は勝者に従うのみ! 今日の所は、引いてやろう」

 あら、潔い。
 まあ、結構な力の差を見せつけたからね。
 最初にカーミラも言ってたが、彼我の力がようやく理解できたのだろう。
 うん、俺って結構強いじゃん。
 そうか、敗者は勝者に従うのか……

「よし、今のは無し! カーミラたん、俺の嫁「グルルル!」

 ファングに頭を噛み付かれた。
 頭蓋骨砕けるかと、思った。

「なんじゃ?」
「なんへもないへふ……」

 フルフェイスのフェンリルの被り物をしたまま、取りあえず最初の約束通りに動いて貰う。

「そやつは、お前の従魔じゃないのか?」
「ほうはへほ?」
「あまり強い魔物を従魔にするのも、難儀じゃのう……」

 何故か同情された。

「じゃが、このまま引き下がると思うなよ? それに、ヴラド様がこのままお主を放置するわけは無いからの?」

 出がけにカーミラは偉そうに、ウエーン! おやびんに言付けてやる!
 って捨て台詞吐いてた。
 脳内で、セリフも変えといた。
 うん、やっぱり可愛い。
 そして、やっぱりクララが立った。
 ごめん、なんでも無いです。
 フラグが立った。
 言い直したから、そんな不思議なものを見る目で見ないで。
 美女と犬と石の視線に耐え切れず、慌ててシルバに飛び乗る。

「ハイド! シルバ!」
「ヒヒーン!」

――――――

 ちなみに、メイベルにダンジョンの異変の件は俺一人で明日調査するという事で纏まった。
 なら、火の誓いを付けると言われたが、足手纏いなど要らない。 
 でも、メイベルたんと二人なら良いかな?

「ふむ、私がここをいま離れるのは……いや、事が事だけにこの目で確かめるのも悪くない」
「うん、だったら私も連れてってよ。色々とアドバイスできると思うし」

 ミランも漏れなく付いてくるらしい。
 両手に華……いや、一人はチューリップだけど。

「冗談だ。1人で良い」

 うん、本当に冗談だよ?
 元から、撒くつもりだったし。
 別に、手元の石ころの圧力に屈したわけじゃ無いんだからね。

――――――
『お帰りなさいませ、マスター』
「知らない石ころだ」

 話が終わって、領主邸から出た後ミランを家まで送った。
 送り狼になる心配は無い。
 残念、完全にストライクゾーンから外れてたからな。
 もう10年経ったら来い。
 ん? もう成長止まってる?
 それは、すまんかった。
 
 ミランの頭を撫でて、ミランが部屋に入った瞬間に景色が歪んで見慣れた部屋に居た。
 俺の意志に関係なく転移させられるとか、もはや助手の権限の域を超えてると思う。
 越権行為だ!

『私は常にマスターの為を思って行動しております。あの後どうされるおつもりでしたか?』
「……」

 無言の抵抗だ。

『ポケットに金貨を忍ばせて、どこに向かうおつもりでしたか?』
「うん? えっと、たまにはお酒でも飲もうかと」
『ふーん……領主邸であれだけ飲み食いしたのに?』
「……」

 流石に、この石ころ俺に干渉し過ぎだと思うんだ。
 別に、綺麗なお姉ちゃんが居るお店とか行こうと思ってた訳じゃ無いんだよ?
 別に、そんなお店があるかどうかも知らないし。
 助手、アシスタント、サポーター、秘書……
 色々と呼んできたが、こいつ秘書だ。
 それも眼鏡した、きつい目つきで社長相手にもズケズケと正論で物申す怖いタイプの奴だ。
 仕事と効率を上司よりも優先するタイプだ。
 しかも覇気を使って、丁寧な口調で下手にでつつ命令する一番ウザイ奴。

『まあ、そういったお店に入って行ったらポケットの中身は回収するつもりでしたけどね』
「本当にすいませんでした」

 こいつ、鬼か!
 怖いお兄さんたちに苛められちゃうじゃん。
 流石に無銭飲食を腕力で解決するのは違うと思うから、非常に困る事態になってた。

「ハッハッハッハッ!」

 説教が終わったと感じたのか、ファングがこっちに近づいて尻尾をフリフリ待機してた。
 うん、俺はお前さえ居てくれたらええんや。
 一人と一匹で頑張ってこうな。

 ワシャワシャワシャワシャ!

「ワンワン!」

 ああ、可愛い!
 可愛いと言えば、メイベルたんとカーミラたんも……ごめんごめん、お前が一番だって!
 心行くまで、ファングをもふり倒した。

――――――
 
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