チュートリアルと思ったらチートリアルだった件

へたまろ

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第二章:ダンジョンマスターと魔物と人とチーター

第5話:冒険者ギルドその後のお約束

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「てめえ!」
「おい!」

 案の定遠くで見ていた3人組が立ち上がる。
 目の前の二人よりはやるように見える。
 ただ、見えるだけで所詮は毛が生えた程度だろう。
 派手な音を立てて、椅子や机を蹴飛ばしながら近づいてくる。

 特殊な加工が施してあるであろう革の装備に身を包んだ、30代っぽい細身の男性。
 なんと悪役よろしく、モヒカン頭だ。

 ガリガリの黒いローブに身を包んだ、魔法使いっぽい40代の男性。
 目が若干逝ってるように見えるけど、ヤバい薬でもやってるのではなかろうか?

 そして、完全にデブとしか言い表せれない、武闘衣に身を包んだ20代の男性。
 手に骨付き肉を持ったまんまだ。
 うん、憧れの恐竜肉っぽいあれだ。
 是非、分けて貰いたい。

 ただ、鉄の肉体とは一体なんなのか?
 哲学だろうか?
 
「俺達の仲間に何をしやがる!」
 
 すぐ前まで来た3人を無視してカウンターの方に目をやる。
 普通にギルド職員はカウンターに居る冒険者の相手してた。
 平常運行か……

「そっちが先に絡んできたんだろう!」
「これ以上やるって言うのなら、俺達も黙って無いぞ!」
「うう、皆さん落ち着いてください」
「おい、ヨシキ! 遠慮せずやっちまえ!」

 最後はミランだ。
 言っておくが、俺はお前に雇われた訳でも何でも無いからな?
 そもそも、トラブルの原因はお前だ。
  こちらを睨み付ける3人組。
 そして、その3人の背後にゆっくりと忍び寄る黒い影。

「お前ら……これ以上暴れるなら、わしも黙って無いぞ?」

 スキンヘッドのマッチョマン2人目登場。
 たぶん、こいつは……

「マスター!」
「いや、別に俺達は……」
「俺達はなんだ?」

 デブが何か言い訳をしようとして、マスターにギロリと睨まれて思わず口ごもっている。
 うん、お約束だな。
 ある程度騒ぎが大きくなったら、ギルドマスターが出て来て収める。
 そして、ギルマスとこれがきっかけで仲良くなって厄介事を頼まれる展開だな。
 という事で、そんな約束事はフラグと一緒にへし折ってしまおう。

「いきなり、横から口を出してくるな」
「うっ……」
「「「あっ」」」

 取りあえずギルマスの顎にデコピンを当てる。
 今度は上手に脳を揺さぶるだけに留められた。
 きっと、次に俺が死んで復活したら、手加減のスキルゲットしてるだろうな。

「おい、お前……」
「嘘だろ? マスターが一撃……」
「しかも指一本で?」

 目の前の3人が信じられないものを見るかのような目で、こっちを見ている。
 だが、野郎に見つめられてもなんにも嬉しくない。

「あっ?」
「ひいっ!」
「勘弁してくれ!」
「うひゃあ!」

 3人に軽く凄むと、3人が慌てて頭を下げて逃げていく。
 ここはあれだ、言ってみたいセリフを消化するチャンスだ。
 俺は足元に転がっているマスターじゃない方のマッチョとヒョロ男を掴むと、3人の方に放り投げる。

「忘れもんだ」
「「「ひいいっ!」」」

 3人とも同じような悲鳴を上げて慌てて二人を連れてギルドから出ていった。
 ちっ、そこは「覚えてろよー」って言って逃げて、後で「先生こいつが例の生意気な奴です。やっちゃってください」ってフラグ立てるとこだろ?
 まあ、いいや。
 それよりも、周囲がかなり静かだ。
 カウンターに居た受付係も、こっちを見て目を白黒させている。

「その人マスター……」
「ん?」

 ジェウォンが真っ青な顔で呟くように声を掛けて来たので、思いっきりとぼけてみる。
 そもそもゲームの中なんだから、都合の悪いお約束にまで付き合う必要は無いと思うんだ。

「マスターって?」
「ここで、一番偉い人……そして、この街に4人しか居ないA級冒険者……」
「ふーん、紛らわしい。もめ事の最中に首突っ込んでくるなら、ちゃんと自己紹介してからにしてくれないとてっきりあのチンピラの仲間かと思っちゃうんじゃん。見た目もハゲでマッチョで悪党面だし、完全に最初に絡んできた裸マッチョの兄弟かと思ったわ」
「ちょっ!」

 慌ててジェウォンが俺の口を塞いでくるが、良いよ別に。
 それに、周りで見てた冒険者も何人か笑いを堪えてるからね。
 それにしても、本当にNPCの行動がリアル過ぎて若干引くわ。

『今の行動は褒めてあげます。冒険者ギルドのマスターなんて、ダンジョンの敵の元締めみたいなものですからね』

 セーブポイントは、ご機嫌のようだ。
 ちょっとデレたのか?
 相変わらず上から目線だけど。
 こいつは、本当に俺の部下なのだろうか?

「出鱈目な奴だな」
 
 あっ、ミランが博士モードだ。
 呆れてるっぽいな。
 子供っぽいミランに呆れられるのはちょっと頂けない。

「いや、それなら事前にここに居る人たちの情報くらい、多少は教えてくれてても良いじゃ無いか? あんな悪人面が後から現れたら、こいつらのボスだと思うだろ?」
「プッ!」
「ブッ!」

 とうとう周囲の冒険者の数人が噴き出した。
 顔は覚えてるから、後で売ってやってもいいかもな。
 それにしても、A級冒険者が4人か。
 このハゲは別として、3人とはちょっと話してみたいかな。

 冒険者ギルドの受付で、職員に「僕、この人がマスターだなんて知らなかったんですー」「怖い人たちに絡まれて混乱してたら、一番怖そうな顔した人が来たからついリーダーだと思ってー」と全力で俺は悪くないアピールをして、登録してもらった。
 職員達の中にも、まああの状況でいきなりマスターが近付いたらそう思っても仕方ないかなって空気が流れてたから、多分庇って貰えるだろう。
 取りあえず、マスターに気に入られて厄介事を押し付けられるフラグは折る事に成功したようだ。

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