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第二章:ダンジョンマスターと魔物と人とチーター
第4話:冒険者ギルドのお約束
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「ここが、冒険者ギルドですよ」
ジェウォンの案内で辿り着いた先には、3階建ての大きな建物がある。
入り口には剣と魔獣の看板が掲げられていて、こちらの文字で冒険者ギルドと書かれていた。
取りあえず中に入ってみる。
ムワッとした空気が広がっていて、いかにもな人達が中でたむろしている。
運動部の部室ほどではないけど。
思ったよりもロビーに人数が少ないのは、夕方だからだろうか?
もう少し依頼から戻ってきた人たちが、居てもいいかと思うが。
中は正面に総合受付っぽいカウンターがあって、入り口右側が歓談用のスペースだろうか?
カウンター横にある掲示板に、依頼書っぽいものが張ってある。
遠目には良く分からないはずだが、ここからでも良く見える。
視力もかなり良くなったようだ。
歓談用に椅子やテーブルが並べられている方に目を向けると、小綺麗な装備をしたパーティからいかにもチンピラっぽい柄の悪いパーティと同じ冒険者といっても色んなタイプが居る。
今居るのは6組ほどだろうか?
あとはカウンターの所で報告をしているのが一組と、依頼書の前に若い男性が一人立っているくらいか?
中に居た何人かがこっちを見て、すぐにまたパーティ同士の話に戻る。
特に興味は無いのだろう、ドアが開く音がしたからこっちを見たといった様子だ。
だが、歓談スペースにはこっちをニヤニヤとした表情で見たままのグループも居る。
あれか?
これは、テンプレ的展開が起こるのか?
そうだもんな……ゲーム的にはそろそろイベントが必要なタイミングだ。
ただ最近は初冒険者ギルド来場といっても、オーソドックスに絡まれるパターンと、すでにもめ事が起こっているパターン、歓迎されるパターンと色々な派生があるからな。
ゲームなら、王道の1番が理想なんだけどな。
そう、絡まれるパターンだ。
だけど、今は火の誓いと一緒だからな。
これが若い女の子ばっかりに囲まれてたり、拾った幼女と一緒だったりしたら確実に絡まれるんだろうけど。
流石に自称とはいえ、中堅のパーティと一緒に居て絡まれるなんてことはないだろうな。
そんな事を思っていたら、ニヤニヤとしていたうちの一組がこちらにゆっくりと歩いてくる。
精神力の高さ故か、いかにも柄の悪い連中なのに全く恐怖心が湧いてこない。
現実だったら壁側に寄って、下を向いて黙ってやり過ごすところだがついつい訝し気な表情を浮かべてしまう。
「チッ……面倒臭い奴等が居やがったか」
「なあ、あいつら馬鹿なのか?」
ロンが舌打ちをして、こちらに寄って来る連中を睨み付ける。
その横でミランが首を軽く傾げている。
何が馬鹿なんだろう。
「これはこれは、今話題の火の誓いの皆さんじゃないですか?」
「えらく早いお戻りですが、ダンジョン探索はどうでしたか?」
髭面の上半身裸の男と、無駄に派手な金属鎧を着てる癖に髪がボサボサで寝ぐせが付いてるひょろい男が声を掛けてくる。
上半身裸男はシュワちゃん並みの筋肉を持っており、全身傷だらけで歴戦の戦士ですって印象を受ける。
背も2m近くあって、どこのレスラーだと思ったが取りあえず他のメンバーの出方を見よう。
「ああ、しっかりと探索してきたぞ」
「はんっ、どうせ入り口でビビッて戻って来たんじゃねーのか?」
おお……まさかの、名の知れた冒険者と一緒に居るから絡まれないパターンを期待したら、一緒に居る連中が絡まれた。
これ、一人で来た方が良かったんじゃないのか?
「私が証明する。ダンジョンの発見と一部調査は完了している。領主様にも報告済みだ」
「はあ? 博士までそんな事を。ダンジョン探索して戻って来られるような時間じゃないでしょう?」
ミランがロンと男たちの間に入って声を掛けると、ひょろっとした男がミランの方を向いて肩を竦める。
それから、マッチョの方がミランに凄むように答えている。
うん、たぶん火の誓いと仲が悪いパーティって設定だろうね。
「私はこのギルドのお客様だぞ? 分かってて絡んでるのか?」
「いやあ、でもこんな短時間で帰って来られるとか信じられないな。お前らグルなんじゃないのか?」
「ああ、俺達の申し出を断ってまで格下を雇ったうえに、新しいダンジョン捜索と探索で日帰りとかありえないだろう」
ああ、そう言う事か……
思ってたのと違った。
ミランの出した依頼に対して、こいつらのパーティは断られた組か。
だからやっかみも込めて火の誓いに絡んだのか。
火の誓いも被害者ってとこかな?
そして、少し離れたところにいる三人もこの二人の仲間か。
三人とも下卑た笑いを浮かべてこっちを見ている。
これは、来た……
チートを楽しむ場面だな。
少しはロールプレイに付き合ってやっても良いだろう。
「はあ……ダンジョンはあった、こいつらは探索した、お前らは邪魔だ。じゃあな」
取りあえず、ミランを引き寄せると思いっきり喧嘩を売って2人の横を通り抜けようとしてみる。
どうせ、たぶん流れ的に普通にこの二人は雑魚だ。
ちょっと周りがざわついているけど気にすることはないかな。
「おいおい兄ちゃん初めて見る面だが、随分とご挨拶じゃねーか」
「俺達がB級パーティの鉄の肉体と知っての事か?」
あらやだ、火の誓いより格上だったわ。
そりゃ格下に依頼を掻っ攫われたら気分悪いわな。
というか、鉄の肉体ってそこの鎧の兄ちゃんひょろひょろじゃねーか。
目の前の強面の二人が俺の肩を掴んで、臭い息をまき散らしてくる。
凄いよな……このゲームにおいまでするんだぜ?
まあ良いや、ここはめっちゃ強いアピールして気分良くなっとこう。
「お前らやめとけ!」
「悪い事は言わないから、早く謝った方が良いよ」
「師匠、やっちゃって!」
ジェウォンとロンがマッチョとヒョロ男に声を掛けるが、その言葉が余計に癪に障ったのだろう。
ヒョロい方が青筋を浮かべている。
あと、オーウェンは相変わらずおかしい。
「ミランさん、大丈夫ですか?」
「ああ、馬鹿だ馬鹿だと思っていたがここまでとはな。おい、お前ら! こい「邪魔だと言っている」」
ミランが何かこいつらの動きを封じる一言を言い出しそうだったので、それを遮って二人を押しのけてみる。
折角のチートを楽しむパートなのに、邪魔しないでね。
「お前、何しやが……」
ヒョロ男が俺に掴みかかろうとしたので、顎先に若干手加減したデコピンをかます。
「ひいっ!」
「弾ける!」
俺がデコピンをした瞬間に、ジェシカとミランが叫んで目を手で覆ってしゃがみこんでいたが失礼な話だ。
ちゃんとコボルトの尊い犠牲のお陰で、手加減を覚えたんだぞ俺は。
学習する男だからな。
バキャっという音がして、妙に柔らかい感触が返ってきた。
「あっ……」
『プッ』
思わず言葉が出てしまった。
そして、誰かが噴き出したような幻聴が。
「ぐぅっ」
ヒョロ男が変な声を出して、膝から崩れ落ちていったけど。
たぶん、顎がグシャグシャに砕けたんだと思う。
予定では、顎を弾いて脳震盪を起こさせるだけだった予定なのに。
こう少し顎がのけぞったあとで、白目を剥いて膝から崩れ落ちる感じで。
崩れ落ちる姿勢も膝がストンと地面に着いて、ゆっくりと横倒しになる感じのイメージ。
現実は流れるように膝を地面に強打して、顔面から前に倒れてった。
痛そう。
前言撤回。
手加減って難しいね。
「おい、マイク! おまえ、マイクに何しやがった!」
「何をしたかも分からないくらい弱いなら、端っこに立って道を譲れよ」
真っすぐ崩れ落ちたヒョロ男を見て、ビックリしたような表情を浮かべたマッチョがこっちを見てくる。
こっち見んなと言いそうになったが、思わず踏みとどまって再度挑発。
「なっ、おまえ調子に乗るなよ! この身体を見てよくそんな事がいえ……」
今度は手加減成功。
小指でこぴんを鳩尾に当てたら、そのままマッチョがくの次に崩れ落ちていった。
多分大丈夫……破裂音とか聞こえなかったら内臓にまではダメージいってないはず。
「弱いから、そんなに傷だらけなんだろ?」
そして、倒れた2人を跨いでカウンターへと向かう。
さっきまでざわついていたギルド内がシーンと静まり返る。
うん、満足だ。
言ってみたいセリフ集の1つも消化できたし。
ただ、後ろで火の誓いのメンバーが一生懸命、マッチョとヒョロ男の生存確認をしていたのは笑えない。
ジェウォンの案内で辿り着いた先には、3階建ての大きな建物がある。
入り口には剣と魔獣の看板が掲げられていて、こちらの文字で冒険者ギルドと書かれていた。
取りあえず中に入ってみる。
ムワッとした空気が広がっていて、いかにもな人達が中でたむろしている。
運動部の部室ほどではないけど。
思ったよりもロビーに人数が少ないのは、夕方だからだろうか?
もう少し依頼から戻ってきた人たちが、居てもいいかと思うが。
中は正面に総合受付っぽいカウンターがあって、入り口右側が歓談用のスペースだろうか?
カウンター横にある掲示板に、依頼書っぽいものが張ってある。
遠目には良く分からないはずだが、ここからでも良く見える。
視力もかなり良くなったようだ。
歓談用に椅子やテーブルが並べられている方に目を向けると、小綺麗な装備をしたパーティからいかにもチンピラっぽい柄の悪いパーティと同じ冒険者といっても色んなタイプが居る。
今居るのは6組ほどだろうか?
あとはカウンターの所で報告をしているのが一組と、依頼書の前に若い男性が一人立っているくらいか?
中に居た何人かがこっちを見て、すぐにまたパーティ同士の話に戻る。
特に興味は無いのだろう、ドアが開く音がしたからこっちを見たといった様子だ。
だが、歓談スペースにはこっちをニヤニヤとした表情で見たままのグループも居る。
あれか?
これは、テンプレ的展開が起こるのか?
そうだもんな……ゲーム的にはそろそろイベントが必要なタイミングだ。
ただ最近は初冒険者ギルド来場といっても、オーソドックスに絡まれるパターンと、すでにもめ事が起こっているパターン、歓迎されるパターンと色々な派生があるからな。
ゲームなら、王道の1番が理想なんだけどな。
そう、絡まれるパターンだ。
だけど、今は火の誓いと一緒だからな。
これが若い女の子ばっかりに囲まれてたり、拾った幼女と一緒だったりしたら確実に絡まれるんだろうけど。
流石に自称とはいえ、中堅のパーティと一緒に居て絡まれるなんてことはないだろうな。
そんな事を思っていたら、ニヤニヤとしていたうちの一組がこちらにゆっくりと歩いてくる。
精神力の高さ故か、いかにも柄の悪い連中なのに全く恐怖心が湧いてこない。
現実だったら壁側に寄って、下を向いて黙ってやり過ごすところだがついつい訝し気な表情を浮かべてしまう。
「チッ……面倒臭い奴等が居やがったか」
「なあ、あいつら馬鹿なのか?」
ロンが舌打ちをして、こちらに寄って来る連中を睨み付ける。
その横でミランが首を軽く傾げている。
何が馬鹿なんだろう。
「これはこれは、今話題の火の誓いの皆さんじゃないですか?」
「えらく早いお戻りですが、ダンジョン探索はどうでしたか?」
髭面の上半身裸の男と、無駄に派手な金属鎧を着てる癖に髪がボサボサで寝ぐせが付いてるひょろい男が声を掛けてくる。
上半身裸男はシュワちゃん並みの筋肉を持っており、全身傷だらけで歴戦の戦士ですって印象を受ける。
背も2m近くあって、どこのレスラーだと思ったが取りあえず他のメンバーの出方を見よう。
「ああ、しっかりと探索してきたぞ」
「はんっ、どうせ入り口でビビッて戻って来たんじゃねーのか?」
おお……まさかの、名の知れた冒険者と一緒に居るから絡まれないパターンを期待したら、一緒に居る連中が絡まれた。
これ、一人で来た方が良かったんじゃないのか?
「私が証明する。ダンジョンの発見と一部調査は完了している。領主様にも報告済みだ」
「はあ? 博士までそんな事を。ダンジョン探索して戻って来られるような時間じゃないでしょう?」
ミランがロンと男たちの間に入って声を掛けると、ひょろっとした男がミランの方を向いて肩を竦める。
それから、マッチョの方がミランに凄むように答えている。
うん、たぶん火の誓いと仲が悪いパーティって設定だろうね。
「私はこのギルドのお客様だぞ? 分かってて絡んでるのか?」
「いやあ、でもこんな短時間で帰って来られるとか信じられないな。お前らグルなんじゃないのか?」
「ああ、俺達の申し出を断ってまで格下を雇ったうえに、新しいダンジョン捜索と探索で日帰りとかありえないだろう」
ああ、そう言う事か……
思ってたのと違った。
ミランの出した依頼に対して、こいつらのパーティは断られた組か。
だからやっかみも込めて火の誓いに絡んだのか。
火の誓いも被害者ってとこかな?
そして、少し離れたところにいる三人もこの二人の仲間か。
三人とも下卑た笑いを浮かべてこっちを見ている。
これは、来た……
チートを楽しむ場面だな。
少しはロールプレイに付き合ってやっても良いだろう。
「はあ……ダンジョンはあった、こいつらは探索した、お前らは邪魔だ。じゃあな」
取りあえず、ミランを引き寄せると思いっきり喧嘩を売って2人の横を通り抜けようとしてみる。
どうせ、たぶん流れ的に普通にこの二人は雑魚だ。
ちょっと周りがざわついているけど気にすることはないかな。
「おいおい兄ちゃん初めて見る面だが、随分とご挨拶じゃねーか」
「俺達がB級パーティの鉄の肉体と知っての事か?」
あらやだ、火の誓いより格上だったわ。
そりゃ格下に依頼を掻っ攫われたら気分悪いわな。
というか、鉄の肉体ってそこの鎧の兄ちゃんひょろひょろじゃねーか。
目の前の強面の二人が俺の肩を掴んで、臭い息をまき散らしてくる。
凄いよな……このゲームにおいまでするんだぜ?
まあ良いや、ここはめっちゃ強いアピールして気分良くなっとこう。
「お前らやめとけ!」
「悪い事は言わないから、早く謝った方が良いよ」
「師匠、やっちゃって!」
ジェウォンとロンがマッチョとヒョロ男に声を掛けるが、その言葉が余計に癪に障ったのだろう。
ヒョロい方が青筋を浮かべている。
あと、オーウェンは相変わらずおかしい。
「ミランさん、大丈夫ですか?」
「ああ、馬鹿だ馬鹿だと思っていたがここまでとはな。おい、お前ら! こい「邪魔だと言っている」」
ミランが何かこいつらの動きを封じる一言を言い出しそうだったので、それを遮って二人を押しのけてみる。
折角のチートを楽しむパートなのに、邪魔しないでね。
「お前、何しやが……」
ヒョロ男が俺に掴みかかろうとしたので、顎先に若干手加減したデコピンをかます。
「ひいっ!」
「弾ける!」
俺がデコピンをした瞬間に、ジェシカとミランが叫んで目を手で覆ってしゃがみこんでいたが失礼な話だ。
ちゃんとコボルトの尊い犠牲のお陰で、手加減を覚えたんだぞ俺は。
学習する男だからな。
バキャっという音がして、妙に柔らかい感触が返ってきた。
「あっ……」
『プッ』
思わず言葉が出てしまった。
そして、誰かが噴き出したような幻聴が。
「ぐぅっ」
ヒョロ男が変な声を出して、膝から崩れ落ちていったけど。
たぶん、顎がグシャグシャに砕けたんだと思う。
予定では、顎を弾いて脳震盪を起こさせるだけだった予定なのに。
こう少し顎がのけぞったあとで、白目を剥いて膝から崩れ落ちる感じで。
崩れ落ちる姿勢も膝がストンと地面に着いて、ゆっくりと横倒しになる感じのイメージ。
現実は流れるように膝を地面に強打して、顔面から前に倒れてった。
痛そう。
前言撤回。
手加減って難しいね。
「おい、マイク! おまえ、マイクに何しやがった!」
「何をしたかも分からないくらい弱いなら、端っこに立って道を譲れよ」
真っすぐ崩れ落ちたヒョロ男を見て、ビックリしたような表情を浮かべたマッチョがこっちを見てくる。
こっち見んなと言いそうになったが、思わず踏みとどまって再度挑発。
「なっ、おまえ調子に乗るなよ! この身体を見てよくそんな事がいえ……」
今度は手加減成功。
小指でこぴんを鳩尾に当てたら、そのままマッチョがくの次に崩れ落ちていった。
多分大丈夫……破裂音とか聞こえなかったら内臓にまではダメージいってないはず。
「弱いから、そんなに傷だらけなんだろ?」
そして、倒れた2人を跨いでカウンターへと向かう。
さっきまでざわついていたギルド内がシーンと静まり返る。
うん、満足だ。
言ってみたいセリフ集の1つも消化できたし。
ただ、後ろで火の誓いのメンバーが一生懸命、マッチョとヒョロ男の生存確認をしていたのは笑えない。
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