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第一章:チュートリアル
閑話:セーブさんの憂鬱1
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「フハハハ、クロノ! 見ろこの器を! どんどん魔力を吸収していくぞ!」
「素晴らしいですね。とても、ダーツでたまたま当たった人間とは思えませんね」
これは私がダンジョンコアになる少し前、ダンジョーン様と新たなダンジョンを作っている時のお話。
「ダンジョンの構築も滞りなく終わったからな。ベースを元に、あとはこやつがどれほどのものになるかだな! 全力で作り上げてくれる」
「素質はあるのですか?」
私の言葉に対して、ダンジョーン様がキョトンと首を傾げる。
見た目いかつい中年の悪魔がやる仕草ではない。
ダンジョーン様は外見を自由に弄る事が出来るが、この姿を何故か気に入っておられて他の姿になりたがらない。
私としてはもっと効率の良い身体があるのにと思う。
腕が2本より1000本くらいあった方が、絶対便利だと思う。
地上を司る神、チジョーン様の所のセンジュちゃんとか、めっちゃ仕事出来る系女子だからね。
そう言えば、チジョーン様も腕は2本だったわ。
ダンジョーン様の今のお姿は、かなり顔を美形に作った中年男性。
40代くらいを目安にしているらしい。
なんでも渋みが出て、良い感じにセクシーだとか。
スライム並に不定形な存在が言うセリフではない。
黒髪とちょっと浅黒い肌。
魔族だから黒いのではなく、健康的に日焼けした肌がセクシーと言ってらした。
そんなにセクシーを追い求めてどうするつもりなのだろう?
さらに筋肉も痩せマッチョ以上ガチムキ以下という、これまたセクシーさを追求した配分と言っていたが、もう突っ込むのも面倒くさい。
「素質など、性格から変えてしまえば問題無いだろう!」
「まあ、そうですけど……」
結局、ある程度の人格を残しつつ本能の部分に、ダンジョンを発展させ魔力を集める事を目的に生きるように弄る程度だ。
なので素質が無いと、目的意識はあっても全然ダンジョンが育たなかったりする。
だが、そういうダンマス(ダンジョンマスター)に対してもダンジョーン様は……
「ハッハッハ! できの悪い子供こそ可愛いもんだろう! 手のかからない連中に限って、性格もとっつきにくい奴等が多いからな」
「そうですか……」
無理矢理攫って来て、勝手にダンジョンマスターという地上の存在の敵に育て上げておいて、もうあいつらには家族が居ないから、わしが親代わりだ!
なんていう、斜め上の思考の持ち主だったりする。
ただ……案外憎めない。
ちなみに、私はチジョーン様の部下だったが無理矢理攫われてきた。
新しいダンジョンの構想に必要だからっていう無茶苦茶な理由で。
まあ、チジョーン様も似たような事をやってるし、お互い本気で喧嘩したのも見た事ないからそういう事なんだろう。
世界では、2人が壮絶な争いを繰り広げていると思われているけど。
その辺の詳しい話は、後に語らせてもらうとして……
「まだ終わらないのですか?」
「ああ……あれ? もう、我の魔力の半分くらい入って行ってるけど、まだまだ入りそうだな。うん、楽しくなってきたぞ!」
進捗状況を確認した後、器が思った以上に大きかったことに気を良くしたダンジョーン様が、さらに魔力の放出を始める。
これ大丈夫なのかな?
魔力切れとか起こしたりしないよね?
――――――
「そろそろ休憩にしませんか?」
「……」
30分くらいして、声を掛けたところダンジョーン様が焦った表情でこっちを見てくる。
「ああ、あれだ。手が離れない……」
「はっ?」
「あと、勝手に魔力吸われ続けてる。我……非常にマズい状況だと思うんだけど?」
「はあああ?」
ダンジョーン様の言葉に思わず、大声を上げてしまった。
「ちょっと、全力で手を引っこ抜いてください!」
「うん……さっきからやってる。我……これダメだと思う」
手を引き離そうと結構頑張ったんだろう。
その表情には諦めに似た色が見える。
「えっと、ダンジョンコアは出来てるから、クロノ任せても良いか?」
「いや、駄目ですよ! ダンジョーン様はどうされるんですか?」
「うーん、たぶん魔力を吸い尽くされて抜け殻になる気がしてきた」
「ちょっ! そんなの駄目ですって! もう、その器壊し「駄目だ!」」
ダンジョーン様の手から魔力を吸い続ける人間に向かって、掌を向けると鬼の形相のようなダンジョーン様に睨まれる。
「この子は我の最後の子になる。いわば末っ子だ……可愛いなあ……でも、成長を見守る事は出来そうにないからさ。任せても良いか?」
「また、造れば良いじゃないですか! ダンジョーン様さえ居れば!」
「ふふ、もう我の子なんだよ……子供を殺してまで生きたい親なんておらんだろう」
そう言って、ダンジョーン様は本当に温かい笑みを浮かべた。
その慈愛に満ちた笑みを見た時、私にも覚悟が決まった。
「分かりました。ダンジョンコアに私が入り込みます」
「はっ? いや、もうダンジョンコアに入れる人格決めてるし……君にはダンジョンの運営に「はあ? 私とダンジョーン様が作り上げた至高のダンジョンです。そこのマスターなら私の息子のようなものでしょう」」
「うーん……どっちかって言うと、チジョーンの方が我にとって嫁っぽいからクロノは娘だと思う」
「ちょっ! 例えですよ! 例え!」
例え話なのに、フラれたみたいになった。
居た堪れない。
まあ良いや。
「だったら、弟ですから! 一番近くで見守りたいじゃないですか!」
「そっか……でも、コアも全力で強化してあるから、たぶん誰も壊せない。ダンジョンの性質上永遠に出てこれないかもよ?」
うう、めっちゃ覚悟を揺さぶって来る。
でも、最後の最後にダンジョーン様に安心してもらいたい。
「弟と一緒なら寂しくならないと思いますよ」
「そうか……じゃあ、先にそっちを」
「えっ?」
「ほらっ、情けない姿見られたく無いしさ」
そう言って、ダンジョーン様が手を翳した瞬間に時止まりのダンジョンのマスタールームに転移させられた。
「じゃあ、この子の事頼んだね……運が良ければ、数百年くらいで彼の中から脱出できるかも……この際だから、全力で我の魔力をアストラルボディごと彼の中に突っ込むから! よし、いくぞー! グヌヌヌヌヌヌっ! あっ、頭の血管が……これ、切れ……」
転移する直前に最後に聞いた、ダンジョーン様の言葉だった。
そして、しばらくして目の前にダンジョーン様の力の結晶が現れる。
一応、最後に頑張ってこの子を送り届けるくらいの魔力はあったようだ。
彼の胸にはダンジョンコアの一部が輝いている。
そう、私の一部だ……
この繋がりが、無機質な存在になってしまった私に温もりを与えてくれる。
――――――
『HP/MP/状態異常が全回復しました。セーブしますか?』
「取りあえず、このはいってのを押せば良いのかな?」
『セーブされました』
まずは、この子がどういった行動を取るか様子を見よう。
『HP/MP/状態異常が全回復しました。セーブしますか?』
と思ったら、また触れてきた。
うん、コミュニケーション大事だよね。
と思ったら、すぐに部屋に出ていった。
まあいっか……あっ、死んだ。
魔力を使って、マスターの身体を再構築する。
常にマスターの情報は私に入ってきている。
そして、死因に対して少しだけ強化をすることが出来る。
これはダンジョーン様が最後に、私に預けてくれた力だ。
マスターを弄れるのはダンジョーン様だけだからね。
その後何回か死んだ後、何かを閃いた様子で喜んで死にまくりだした。
危ない……凄く心配になってくる。
『あの……』
「よしっ、今度は毒の耐性を上げまくろう!」
生き返ると凄い勢いで部屋から飛び出して行く。
たまに……
「ああ、お腹空いた……」
『ああ、食料なら……』
「そうだ、死んで来よう!」
『ちょっ! ちょっと! ちょっと、待てやゴルァ!』
わざとじゃないのかというくらい、定型文の後に出てくる私の言葉を無視して一人で突っ走るマスター。
確かに可愛く思えなくも無いが、非常に不安だ……
ダンジョーン様に会いたい。
いまのままじゃ、入り口で時間を止めてる侵入者と合わせるのは無理だな。
まずは、自身の立場に気付いて貰わないと。
私はクロノ、時間を操る存在。
外と中を繋ぐ、このダンジョンの時の番人。
今は、ダンジョンコアで守られてる側だけど。
――――――
ダンジョンコア(クロノ)
称号:至高のダンジョンコア
スキル
セーブレベル:1
再構築レベル:1
時間操作レベル:∞
その他色々……
「素晴らしいですね。とても、ダーツでたまたま当たった人間とは思えませんね」
これは私がダンジョンコアになる少し前、ダンジョーン様と新たなダンジョンを作っている時のお話。
「ダンジョンの構築も滞りなく終わったからな。ベースを元に、あとはこやつがどれほどのものになるかだな! 全力で作り上げてくれる」
「素質はあるのですか?」
私の言葉に対して、ダンジョーン様がキョトンと首を傾げる。
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そう言えば、チジョーン様も腕は2本だったわ。
ダンジョーン様の今のお姿は、かなり顔を美形に作った中年男性。
40代くらいを目安にしているらしい。
なんでも渋みが出て、良い感じにセクシーだとか。
スライム並に不定形な存在が言うセリフではない。
黒髪とちょっと浅黒い肌。
魔族だから黒いのではなく、健康的に日焼けした肌がセクシーと言ってらした。
そんなにセクシーを追い求めてどうするつもりなのだろう?
さらに筋肉も痩せマッチョ以上ガチムキ以下という、これまたセクシーさを追求した配分と言っていたが、もう突っ込むのも面倒くさい。
「素質など、性格から変えてしまえば問題無いだろう!」
「まあ、そうですけど……」
結局、ある程度の人格を残しつつ本能の部分に、ダンジョンを発展させ魔力を集める事を目的に生きるように弄る程度だ。
なので素質が無いと、目的意識はあっても全然ダンジョンが育たなかったりする。
だが、そういうダンマス(ダンジョンマスター)に対してもダンジョーン様は……
「ハッハッハ! できの悪い子供こそ可愛いもんだろう! 手のかからない連中に限って、性格もとっつきにくい奴等が多いからな」
「そうですか……」
無理矢理攫って来て、勝手にダンジョンマスターという地上の存在の敵に育て上げておいて、もうあいつらには家族が居ないから、わしが親代わりだ!
なんていう、斜め上の思考の持ち主だったりする。
ただ……案外憎めない。
ちなみに、私はチジョーン様の部下だったが無理矢理攫われてきた。
新しいダンジョンの構想に必要だからっていう無茶苦茶な理由で。
まあ、チジョーン様も似たような事をやってるし、お互い本気で喧嘩したのも見た事ないからそういう事なんだろう。
世界では、2人が壮絶な争いを繰り広げていると思われているけど。
その辺の詳しい話は、後に語らせてもらうとして……
「まだ終わらないのですか?」
「ああ……あれ? もう、我の魔力の半分くらい入って行ってるけど、まだまだ入りそうだな。うん、楽しくなってきたぞ!」
進捗状況を確認した後、器が思った以上に大きかったことに気を良くしたダンジョーン様が、さらに魔力の放出を始める。
これ大丈夫なのかな?
魔力切れとか起こしたりしないよね?
――――――
「そろそろ休憩にしませんか?」
「……」
30分くらいして、声を掛けたところダンジョーン様が焦った表情でこっちを見てくる。
「ああ、あれだ。手が離れない……」
「はっ?」
「あと、勝手に魔力吸われ続けてる。我……非常にマズい状況だと思うんだけど?」
「はあああ?」
ダンジョーン様の言葉に思わず、大声を上げてしまった。
「ちょっと、全力で手を引っこ抜いてください!」
「うん……さっきからやってる。我……これダメだと思う」
手を引き離そうと結構頑張ったんだろう。
その表情には諦めに似た色が見える。
「えっと、ダンジョンコアは出来てるから、クロノ任せても良いか?」
「いや、駄目ですよ! ダンジョーン様はどうされるんですか?」
「うーん、たぶん魔力を吸い尽くされて抜け殻になる気がしてきた」
「ちょっ! そんなの駄目ですって! もう、その器壊し「駄目だ!」」
ダンジョーン様の手から魔力を吸い続ける人間に向かって、掌を向けると鬼の形相のようなダンジョーン様に睨まれる。
「この子は我の最後の子になる。いわば末っ子だ……可愛いなあ……でも、成長を見守る事は出来そうにないからさ。任せても良いか?」
「また、造れば良いじゃないですか! ダンジョーン様さえ居れば!」
「ふふ、もう我の子なんだよ……子供を殺してまで生きたい親なんておらんだろう」
そう言って、ダンジョーン様は本当に温かい笑みを浮かべた。
その慈愛に満ちた笑みを見た時、私にも覚悟が決まった。
「分かりました。ダンジョンコアに私が入り込みます」
「はっ? いや、もうダンジョンコアに入れる人格決めてるし……君にはダンジョンの運営に「はあ? 私とダンジョーン様が作り上げた至高のダンジョンです。そこのマスターなら私の息子のようなものでしょう」」
「うーん……どっちかって言うと、チジョーンの方が我にとって嫁っぽいからクロノは娘だと思う」
「ちょっ! 例えですよ! 例え!」
例え話なのに、フラれたみたいになった。
居た堪れない。
まあ良いや。
「だったら、弟ですから! 一番近くで見守りたいじゃないですか!」
「そっか……でも、コアも全力で強化してあるから、たぶん誰も壊せない。ダンジョンの性質上永遠に出てこれないかもよ?」
うう、めっちゃ覚悟を揺さぶって来る。
でも、最後の最後にダンジョーン様に安心してもらいたい。
「弟と一緒なら寂しくならないと思いますよ」
「そうか……じゃあ、先にそっちを」
「えっ?」
「ほらっ、情けない姿見られたく無いしさ」
そう言って、ダンジョーン様が手を翳した瞬間に時止まりのダンジョンのマスタールームに転移させられた。
「じゃあ、この子の事頼んだね……運が良ければ、数百年くらいで彼の中から脱出できるかも……この際だから、全力で我の魔力をアストラルボディごと彼の中に突っ込むから! よし、いくぞー! グヌヌヌヌヌヌっ! あっ、頭の血管が……これ、切れ……」
転移する直前に最後に聞いた、ダンジョーン様の言葉だった。
そして、しばらくして目の前にダンジョーン様の力の結晶が現れる。
一応、最後に頑張ってこの子を送り届けるくらいの魔力はあったようだ。
彼の胸にはダンジョンコアの一部が輝いている。
そう、私の一部だ……
この繋がりが、無機質な存在になってしまった私に温もりを与えてくれる。
――――――
『HP/MP/状態異常が全回復しました。セーブしますか?』
「取りあえず、このはいってのを押せば良いのかな?」
『セーブされました』
まずは、この子がどういった行動を取るか様子を見よう。
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と思ったら、また触れてきた。
うん、コミュニケーション大事だよね。
と思ったら、すぐに部屋に出ていった。
まあいっか……あっ、死んだ。
魔力を使って、マスターの身体を再構築する。
常にマスターの情報は私に入ってきている。
そして、死因に対して少しだけ強化をすることが出来る。
これはダンジョーン様が最後に、私に預けてくれた力だ。
マスターを弄れるのはダンジョーン様だけだからね。
その後何回か死んだ後、何かを閃いた様子で喜んで死にまくりだした。
危ない……凄く心配になってくる。
『あの……』
「よしっ、今度は毒の耐性を上げまくろう!」
生き返ると凄い勢いで部屋から飛び出して行く。
たまに……
「ああ、お腹空いた……」
『ああ、食料なら……』
「そうだ、死んで来よう!」
『ちょっ! ちょっと! ちょっと、待てやゴルァ!』
わざとじゃないのかというくらい、定型文の後に出てくる私の言葉を無視して一人で突っ走るマスター。
確かに可愛く思えなくも無いが、非常に不安だ……
ダンジョーン様に会いたい。
いまのままじゃ、入り口で時間を止めてる侵入者と合わせるのは無理だな。
まずは、自身の立場に気付いて貰わないと。
私はクロノ、時間を操る存在。
外と中を繋ぐ、このダンジョンの時の番人。
今は、ダンジョンコアで守られてる側だけど。
――――――
ダンジョンコア(クロノ)
称号:至高のダンジョンコア
スキル
セーブレベル:1
再構築レベル:1
時間操作レベル:∞
その他色々……
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