チュートリアルと思ったらチートリアルだった件

へたまろ

文字の大きさ
上 下
20 / 99
第一章:チュートリアル

第20話:冒険者

しおりを挟む
「改めて礼を言わせてもらおう」

 ジェウォンが俺に向かって、深く頭を下げる。
 特徴的な赤毛が短く切りそろえられていて、少し日焼けした肌をした健康的な見た目の20代前半の男性だ。
 いや俺から見たら20代後半にしか見えないが、外人さんの年齢なんて良く分からん。
 装備は鉄のプレートメイルに、腰にはショートソード、背中にロングソードを背負っている。
 そしてラウンドシールドの皮ベルトに、左腕を通している。
 典型的な戦士だと思える。
 背は俺より少し高いから、180前半くらいかな?
 なかなかにイケメンさんで、そのうえ女性に囲まれててちょっとイラッとする。

「うう……オーウェン兄さん……」

 そして、見るだけで吐き気を催しそうになる顔が溶けた男性に縋りついて泣いている女性はジェシカというらしい。
 仏様になってしまったオーウェンが、その身と引き換えに救ったらしいが。
 その事が、彼女にとって大きな心の傷を与えたのは言うまでもないだろう。
 ウェーブの掛かった赤毛が特徴的で、皮のマントの下に黒のローブを羽織っている事と、手にした杖から魔法を使うのだろうという事が分かる。
 二十歳は越えていると思えるが、良く分からん。
 死んだ男性とは兄妹らしいけど。 

「ジェシカ……」

 そしてその様子を辛そうに眺めている筋肉質の女性は、ロンというらしい。
 黒い髪をした東洋風の顔付きをしている。
 装備はジェウォンと同じようなものを身に着けているが持っているのが細身のショートソードだけなので、剣士だと思う。
 俺にポーションを強請った女性だ。
 ジェシカよりは年上だと思う。
 たぶん20代後半だろう。

 そして意識を取り戻していないが、腕を溶かされていた女性はミランというらしい。
 服装は軽装で、皮のチュニックに申し訳程度の短剣と皮の盾を装備していた。
 金髪のショートカットで、冒険者としてはちょっと太っている。
 ぽっちゃりという程では無いが。
 どうやら、このダンジョンを調べに来た学者さんらしい。
 流石に白衣でダンジョンに挑むような奴は居ないとのこと。

「いや、たまたま通りがかっただけだし、あんたらが襲われていようがいまいがそいつらは始末してたさ」
「まあ、それはそうかもしれないが、とはいえポーションまで貰ったのだから礼は言わせてもらうし、なんらかの形で示したいんだけどな」

 まあ向こうの3人が話せる状況じゃないので、必然とジェウォンと話すことになるのだが。
 できれば、綺麗な女性とじっくり話したかった。
 っていう状況でも無いか。
 なんせここはダンジョンだからな。

「とはいえ、あの程度の魔物に危険にさらされるような腕前で、良くここまでこれたね」
「はは、手厳しいな。いや、この周りの魔力が低下している事が分かったから、そこに寝てる学者さんの調査の護衛依頼で来たんだけど、新たなダンジョンが発見されてね……取りあえず入り口だけ調べようと思って一歩踏み込んだ瞬間にここに飛ばされてしまってさ。ちなみにここがどこか分かるのか?」

 おいっ! またか!
 俺の時もそうだったけどさ……
 部屋から出た一歩目で罠を踏んだ俺が言うのもなんだけど、未知のダンジョンの探索ならもうちょっと慎重になろうぜ?
 そして、入り口から一歩目で罠を仕掛けるこのダンジョンの悪質さが際立ってしょうがない。
 まあ、侵入者からしたら俺の部屋の入り口の目の前が罠って事だから、これまた違う意味で凶悪でしかないけどさ。
 そこまで来るようなやつなら、罠には掛からないか。
 よしんば、掛かったとしてもなんとかなるだろう。
 
「ここは時止まりのダンジョンらしい……ちなみに24階層だ」
「時止まり? どこかに説明書きでもあるのか?」
「ん? 知り合いが教えてくれたんだが」
「ああ、まるっきり新しいダンジョンってわけじゃなかったんだな。知る人ぞ知るダンジョンか……発見されたダンジョンの秘匿は、かなりの重罪なんだが」 

 出来立てホヤホヤだけどな。

「まあ、忘れ去られたダンジョンの可能性もあるか……」
「そこまで詳しい話は知らないけど、階層の話は良かったのか?」
「24階層と言ったか……結構な深部みたいだけどあのレベルの魔物が居るって言う事は、ほぼほぼ最深部に近いのかな?」
「さあな……取りあえず俺は出口を目指してるけど、お前らはどうするんだ?」

 ダンジョンの事については、あまり詳しく話さない方が良い気がするな。
 全力で攻略に来られたところで、特に俺が不利益を被ることはないけどさ。
 いや、実際にはどうなんだろう?
 NPCがダンジョンを制覇するなんてゲームはあまり聞いた事無いから、なんともいえない。
 というか、普通に会話がスムーズに行わている事に吃驚。
 最近のゲームって凄いね。
 どれだけの会話パターンが組み込まれているんだろう。

「どうするというか、俺達は先にも後にも進めない状況なんだけどな。正直アシッドスライムが闊歩するような階層を歩くなんて無理だ……というか、そのアシッドスライムを素手で倒せるあんたが何者か聞きたい」
「うーん? 冒険者?」
「なんで疑問形なんだ?」
「ああ、気が付いたらここに居たと言った方が良いかな……」

 うん、えらい踏み込んでくるな。
 キャラメイキングとかしてないし、導入シーンとか見て無いから本当に何がなんだか分からないんだよね。
 あと死体がリアル過ぎるから。
 R18どころの騒ぎじゃないから。 
 できればモザイク掛けて欲しい。

「うーん……」
「ミラン!」

 その時、ロンの居る方で呻き声が聞こえる。
 どうやら、腕を溶かされていた女性が目を覚ましたようだ。
 うん、これでイベントが発生するのかな?
 取りあえず、こいつらを連れて出るとかってフラグが立つのかな?

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...