チュートリアルと思ったらチートリアルだった件

へたまろ

文字の大きさ
上 下
19 / 99
第一章:チュートリアル

第19話:侵入者

しおりを挟む
『その先を右に曲がって下さい。そこでアシッドスライムと交戦中です』
「なんで先に俺のマスター登録を完了させなかったんだろうねダンジョーンさんは」
『さあ? マスターを改造するのが楽しくてしょうがなかったみたいですよ』

 楽しみは後にとっとけよ。
 まあ良いや。
 取りあえず急がないと、体が溶かされてグログロの初対面とか勘弁だからな。

「うわっ!」
「くそっ、なんでこんな強力な魔物が」
「おい、ジェシカ! 下がれ!」
「熱い! ああ、腕が! 腕が溶けてる」

 やめて!
 腕が溶けてるとか言わないで!
 というか、4人組かよ!
 最初は1人が良かったんだけど。
 野郎1人と女性3人か。
 ハーレムパーティか!
 クソが!
 俺なんて、狼と牛男くらいしか知らないってのに!

「あっちからも足音が!」
「挟まれたか!」
「畜生!」

 ああ、これ完全に俺も魔物だと思われてるっぽいな。
 まあ、良いや取りあえずこの階層の敵にてこずるようじゃそんなに強くも無いだろう。

「下がれ!」
 
 声から、角を曲がったすぐそこに件のパーティが居ることが分かったので、角を曲がった瞬間に叫ぶと4人を飛び越えて視界に入ったアシッドスライムに蹴りを叩き込む。
 先頭に居たアシッドスライムが爆散するが、すぐに後ろのスライム達が酸液を飛ばしてくる。

 いや、マジお前らさぁ…… 
 本当なら、というか俺お前らの上司なんだぞ?
 全員が漏らさず、酸飛ばしてくるとかどうなの?
 社長相手に、唾を吐きかける行為……
 辞令前に就任しちゃった感じだけど。

 とりあえず、大量の酸液にげんなりしつつ正面に構える。
 

 残念、その攻撃はすでに無効対策済みだ。
 向かってくる酸液を拳で弾き飛ばしながら、目に付いたスライムを片っ端から蹴り飛ばしていく。
 大よそ30体程居たアシッドスライムを殲滅し、後ろを振り返る。

「Oh……」

 見ると顔が半分溶けた男が目の前で絶命していた。
 その後ろで骨の見える腕を垂れ下げた軽装の女性と、それを庇うように立つ戦士風の男性。
 さらにその横で剣を構える剣士風の女性と、杖を持ったローブを来た女性がガタガタ震えていた。
 腕に傷を負った女性は、痛みからか気絶しているようだった。

「その……大丈夫か?」
「あっ……貴方は?」

 唯一の戦士風の男性が、他の3人を庇うように前に出ると話しかけてくる。
 歳は20代前半くらいか?
 鉄で出来た装備を身に着けている。
 手に持っている武器は斧か。
 盾は酸液で溶かされたのか、表面がドロドロになっている。

「ああ、クラタと言う。まあ……テストプレイヤーかな?」
「テストプレイヤー?」
「えっと、冒険者みたいなもんだ」

 どうやら、NPCみたいだな。 
 ガチのロールプレイを楽しむような奴が居るとは思えないし。
 かなり焦っている様子から、死に直面して恐怖しているようだ。
 プレイヤーなら、復活があるからここまで怯えることは無いだろうし。

「俺は「それより、そっちの女性はヤバいんじゃないか?」」

 戦士風の男が自己紹介をしようとしたのを、手で留める。
 そんなゆっくりしている暇があるように見えないんだけどね。
 その女性、顔真っ青だし痙攣もしてるし死ぬんじゃね?

「あっ、ああ……この傷じゃどのみち」
「ジェウォン! めったなことは言わないで!」
「あの……かなりお強いみたいですが、もしかしてポーションとかお持ちじゃないですか? あれば譲ってもらいたいのですが。お金はお支払いします」
「おいっ! こんなところに居るような人だぞ? そんな貴重なものを売ってもらう訳には「ちょっと、待って」」
 
 というか、このジェウォンとかいう奴は、そこの女性に恨みでもあるのか?
 助けたいとか思わないのかな?
 まあ、まずは上級ポーションか……
 上級ポーション?
 回復薬で治るのかな?
 流石ゲーム。
 でも、あるかどうかは分からないな。
 途中のドロップは片っ端から、セーブポイントに送って来たし。

「なあ、上級ポーションある?」
『……まあ240本ほどならありますけど』

 かなり嫌そうに答えが返ってきた。
 普通にあったし。 
 それも、そんなにいるのかってレベルだし。
 まあ、良いや。
 
「1本送ってくれ」
『……はい』

 いちいち……を表示するのは止めて欲しい。
 腕のクリスタルが光を放つと、俺の手に瓶に入った液体が現れる。
 これが上級ポーションか。
 他のポーションを見た事ないから分からん。
 いや、たぶん見てるだろうけどそれが何かを確認せずにセーブポイントに突っ込んで来たからね。

「ああ、あったあった。これで良いのか?」
「こ……これって、確かに上級ポーションですけど特上じゃないですか? 不純物が無いですし、色も均一で透明度もかなり高い」
「流石に、そんな高価なものを買い取れるだけの手持ちは……」
「別に余りもんだし……ただで良いよ?」
「ブフッ!」
「ええっ? 特上ポーションが余りもんて……」

 なんか70階層あたりで、ポンポン白金色のスライムが落としてた気がするけど。
 良い物だったんだな。
 俺の言葉に3人が噴き出しているが、取りあえず無視して使うか。

「なあ、これって飲ませるの? 掛けるの?」
『どちらでも効果はありますが、このレベルのポーションは飲めば全身の傷が完治しますので、基本は飲んで使います』
「ありがと」

 取りあえず見た目が気持ち悪いことになってる女性の腕に、瓶の蓋を取って液体をぶっかける。
 おお……肉が盛り上がって傷が治っていってる。
 筋肉の筋とかも見えて気持ち悪い。
 見るんじゃなかった。

「掛けた……」
「マジで? なんで?」
「ああ……それ1本で1年は宿に泊まれるレベルなのに……」
 
 そんなに高級なのか。
 じゃあ、俺は239年も宿に泊まり続けられるのか。
 この世界の価値観が分からんけどゲームプレイヤーの所持金って、たぶんゲームに登場するNPCの一般人からしたら天文学的な金額だろうから普通か。
 最初の村だったら一泊10Gとか、10ルピとかで泊まれるからね。
 高級なところで100~とかだしね。
 でもって、ラスボス前とかになったら所持金が1000万とか、下手した1兆とかってゲームもあるし。
 仮に1000万でも、10万日泊まれるってことだし。
 それだと約270年泊まれると考えたら、大した値段じゃないか。

「あのさっきから、誰と話してるんですか?」
「もしかして、通信宝玉?」
「ああ、そんなようなもんかな? ついでにそいつに、そのポーション送ってもらっただけ。あっ、物自体は俺のだから気にしないで」
「はっ? 転送魔法? その方は賢者様か何かですか?」

 ああ、良いねこの持ち上げっぷり。
 ようやくイベントに向かって進んでいく感じがする。
 いかにも、序盤で会う困ってるNPCっぽい感じで、ようやくまともなゲームになるのかと思うと少しウキウキしてきた。

 そして非常に気になるのだが、俺の部屋に近づくにつれて部下が良い物を相手に落とすのは仕様上どうかと思うぞ?
 特級ポーション、バカスカ落とすとか。
 部屋の前で全回復して挑まれて、戦闘中にもガンガンそれ使って回復されるとか。
 ある意味、接待ダンジョンだなおいっ!
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...