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手掛かりは何処
しおりを挟む「修復するにしたって、見た目は全然問題ないだろ。多分問題があるのは魔方陣の方だと思うんだよね 」
「肝心の魔方陣は見えないぞ?いっそのことばらすか?」
「サイラス。これ、一応国宝指定されてたはずだよ。多分、ちゃんとした理由がない限り解体したら犯罪だよ」
「だろうな。そもそも、どこを解体すれば魔方陣が出るかもわからん」
手を出せる場所もなく、手掛かりも無い。
さて、どうすればこの依頼を解決できるのか三人は頭を抱えた。
「まったく、謎ばかりだ」
ぽつりと、サイラスが呟けば、カーシュナーは笑いながら、ベンは困ったようにうなづく。
「だね。学園長が何故に俺らに国宝級を任せたのかも謎だし。これのどこが不調なのかも謎」
「おまけに、どんな魔方陣が書かれているかも謎ですからね。まぁ....見たとして現代に残っている魔法知識で修復できればいいんですが......」
そんなカーシュナーの意見をベンが無理だと一蹴する。何故だと言いたげにベンを見つめる彼に答えるように話を続けた。
「学園長曰く、これを作った人は天才すぎて設計図とか諸々無しで作ったらしい、まったく、そいつが恨めしいぜ 」
「つまり、書類に残っていないと」
「そゆことだな」
なんて奴が作ったんだか、もう生きてはいないだろう作者に文句を言いたくなってくる。せめて修復方法でも伝えとけと。
「誰だよ作ったの」
「魔法狂い、レフィストリア-アルデヴァン。400」年くらい前にいた天才魔導師の一人ですね。確か作者は
」
「レフィストライク-なんたらかんたっっ!」
なんだその変な名前はと続けようとしたその瞬間だった
ーーーーー りん
と、あの塔で響いた涼やかな鈴の音がサイラスの耳元で響いた気がした。
どくり、心臓が強く鼓動する。視界が歪む。
『くすくす』
誰かが笑っている。
楽しそうに、悲しそうに。
眼前の景色がぼやけてあまり、はっきり見えない。
真っ赤な髪がさらりと揺れて何処かへ消えてゆく。
それが誰だか知らないはずなのに胸が締め付けられるように痛い。
『塔に.....』
涼やかな声が最後にそう残して幻影が消えてゆく。
「おーい、どうしたの?サイラス、ぼうっとして?」
「.............」
一瞬だったのだろう、いつのまにか目の前にベンのドアップ顔があって、サイラスは顰めっ面をした。
「近い。眠かっただけだ」
ぶっきらぼうにそう言って彼を押し退ければ、ベンは抗議するようにカーシュナーの肩ペシペシと叩いた。
「おい、酷く無い?心配して覗き込んだら顰めっ面されたんだけど?!」
「しょうがないですよ、ベンですから」
「おい、それ褒めてないよね?!ぜぇったい褒めてないよね?!」
「ベンズクォリティですよ」
二人の漫才を傍目に、サイラスぼうっと天球儀を見上げる。
今のはなんだったのだろうか。
一瞬だけだった。だれか、知っているようで知らない人がそこにはいた。紅蓮を纏ったその女は塔へと呟いて消えた。
「塔に........ 」
「ならカーシュ.....ん?サイラスどうした?また問題か?」
いつの間にか口に出していた言葉をベンが拾い上げ不思議そうにサイラスを見た。
ただ、思いのまま呟く。
「塔に.....塔に行って見ないか?もしかしたら手掛かりになるのかもしれない」
何処かで赤を纏った少女が微笑んだ気がした。
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