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古びた尖塔
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サウスフェリア学園の歴史は古い。
教師陣曰く、『ぶっちゃけ、いつからあるか詳しいことはわからない』程度には古い。
はっきりと、歴史の中に名を残しているのは戦さを納めた聖女の出身校であったなどと記されていた、500年ほど前。
だからなのか、代々拡張していった学園の広さは驚くほど広い。大学から小学校までの校舎はもちろん。各寮、生徒らが使う店、果てには森やら海やら湖まである。
その中でも古く開校当初からあるとされるのが西の森。鬱蒼と茂った木々が暗い影を落とし、一年中薄暗いそこに立ち寄るものは少ない。
その奥にぽつりと立っているのが第一蔵書保管庫と呼ばれる尖塔だった。
「なあ、本当に今から入るのか?」
「入るしかないんじゃない?」
こてりと首をかしげる華奢な少年の平然とした様子に顔が引きつりそうになる。
森の中でもひらけた土地にあるその古びた尖塔が赤金色の夕日に照らされえもいえぬ雰囲気を醸し出していた。
近くにポツリと佇む低木の上で真っ黒な鴉が一羽、かぁかぁと退屈そうに鳴いている。
「出そうだぞ?」
サイラスが呆れたようにもう一度聞いても、ベンは古びた扉から目を離そうとしない。
「出るから行くんでしょ?じゃ、行こうぜ」
彼はスタスタと扉を開け、中へと入って行く。
相変わらず、肝が座りすぎてもはや肝が無くなっている気がしないでもない様子にサイラスは本日5度目のため息をついた。
ーーーーーーーーーーーーーー
書庫の中は当然薄暗い。電気設備の整っていない時代に建てられた建築物だ。突貫工事で仕上げたとしか思えない電線丸出しの電球がチカチカと黄色い光で書庫の中を照らしていた。
「普通だな」
「普通だね」
薄暗い以外は拍子抜けするほど普通の書庫だ。
内装はサイラスたちが通う校舎の図書館とほぼ同じ。
違うところといえば、書物が古くさそうに見えることぐらいか。
「でも見ろよ、これとか『猿でもわかる魔法の使い方』だってさ。死語になったラティア語で書かれてる。」
ベンが無造作に本棚から取り出したその本は古びてはいるが美しい装丁が施されていた。深緑に染められた皮表紙が電光をつるりと反射する。
「見た目詐欺だな..... 」
題名が題名だけに、誰が学園に入れたのか少しきになる。分厚い羊皮紙をペラペラとめくれば、大ぶりに書かれた文字と、色とりどりの魔方陣が淡々と描かれている。
「ふぅん、
『第一 魔力を感じましょう。魔力を感じるにはどうするって?ぶっちゃけ気合いしかありません、瞑想もどきをひたすらして体に流れるナニカを感じましょう。7日以上でも感じない人は残念、あなたは落ちこぼれです。というか魔法を使うのを諦めてくださいね。』
だってさ。現代人全員落ち溢れ決定だな。」
覗き込んできたベンが読んだ文は大味な説明に加えて、煽るような表現が多く使われている。 地味に心に刺さる書き方にサイラスは眉間に皺を寄せて本をじっとり見つめる。
というかそもそも。
「誰だよ、こんな本を図書館に入れようとしたのは 」
「というより、昔の生徒さん。苦労したんだろうなぁ」
「ん?」
憐れみが入ったベンの視線の先に目をやれば、その本の裏の隅に『初学年必修科目指定教科書』と刻印されていた。
教師陣曰く、『ぶっちゃけ、いつからあるか詳しいことはわからない』程度には古い。
はっきりと、歴史の中に名を残しているのは戦さを納めた聖女の出身校であったなどと記されていた、500年ほど前。
だからなのか、代々拡張していった学園の広さは驚くほど広い。大学から小学校までの校舎はもちろん。各寮、生徒らが使う店、果てには森やら海やら湖まである。
その中でも古く開校当初からあるとされるのが西の森。鬱蒼と茂った木々が暗い影を落とし、一年中薄暗いそこに立ち寄るものは少ない。
その奥にぽつりと立っているのが第一蔵書保管庫と呼ばれる尖塔だった。
「なあ、本当に今から入るのか?」
「入るしかないんじゃない?」
こてりと首をかしげる華奢な少年の平然とした様子に顔が引きつりそうになる。
森の中でもひらけた土地にあるその古びた尖塔が赤金色の夕日に照らされえもいえぬ雰囲気を醸し出していた。
近くにポツリと佇む低木の上で真っ黒な鴉が一羽、かぁかぁと退屈そうに鳴いている。
「出そうだぞ?」
サイラスが呆れたようにもう一度聞いても、ベンは古びた扉から目を離そうとしない。
「出るから行くんでしょ?じゃ、行こうぜ」
彼はスタスタと扉を開け、中へと入って行く。
相変わらず、肝が座りすぎてもはや肝が無くなっている気がしないでもない様子にサイラスは本日5度目のため息をついた。
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書庫の中は当然薄暗い。電気設備の整っていない時代に建てられた建築物だ。突貫工事で仕上げたとしか思えない電線丸出しの電球がチカチカと黄色い光で書庫の中を照らしていた。
「普通だな」
「普通だね」
薄暗い以外は拍子抜けするほど普通の書庫だ。
内装はサイラスたちが通う校舎の図書館とほぼ同じ。
違うところといえば、書物が古くさそうに見えることぐらいか。
「でも見ろよ、これとか『猿でもわかる魔法の使い方』だってさ。死語になったラティア語で書かれてる。」
ベンが無造作に本棚から取り出したその本は古びてはいるが美しい装丁が施されていた。深緑に染められた皮表紙が電光をつるりと反射する。
「見た目詐欺だな..... 」
題名が題名だけに、誰が学園に入れたのか少しきになる。分厚い羊皮紙をペラペラとめくれば、大ぶりに書かれた文字と、色とりどりの魔方陣が淡々と描かれている。
「ふぅん、
『第一 魔力を感じましょう。魔力を感じるにはどうするって?ぶっちゃけ気合いしかありません、瞑想もどきをひたすらして体に流れるナニカを感じましょう。7日以上でも感じない人は残念、あなたは落ちこぼれです。というか魔法を使うのを諦めてくださいね。』
だってさ。現代人全員落ち溢れ決定だな。」
覗き込んできたベンが読んだ文は大味な説明に加えて、煽るような表現が多く使われている。 地味に心に刺さる書き方にサイラスは眉間に皺を寄せて本をじっとり見つめる。
というかそもそも。
「誰だよ、こんな本を図書館に入れようとしたのは 」
「というより、昔の生徒さん。苦労したんだろうなぁ」
「ん?」
憐れみが入ったベンの視線の先に目をやれば、その本の裏の隅に『初学年必修科目指定教科書』と刻印されていた。
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