ガマンできない小鶴は今日も甘くとろける蜜を吸う

松ノ木るな

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夜が明けて

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 山鳥が梢のあいまから顔を覗く。その清々しい歌声は波打つように響き渡る。辺りはまだ少し暗いが。
「日が昇ったか……」

 そろそろしゃぶり尽くした頃だろう。次の仕事に取り掛からねば。
「里梨様、ご無礼を」
 夜半の仕事の後、小屋の壁を背に腰を据え仮眠をとった俺は、一度背筋を伸ばしたら禁じられていた戸を開けた。

「……おお、雪路。おぬしは眠れたか?」
「ええ」
 心地よい疲労感でぐったりと横たわる彼女。抱えるそれは獲物の脚の部分か。
 一晩かけてこの少女に愛でられた人間は各関節で断絶され、パーツとして見ても無残に変わり果て……薄べったい木偶でくとなる。水分をすべて吸い取られ朽葉色に変色し、頼りなく使い道のない枯れ木のように。

「では、片付けてきますね」
 用意しておいた毛布でひとまず彼女の全身をくるんだ。次にゴム手袋をはめ、ひょろっとしたこの残骸を、木材を運ぶように抱え込んだ。

「ちょいと待て」
 朝とはいえ小屋に窓がないのでそれほど明るさはない。
 俺が気付かないでいた、転がっていたふたつの球を彼女は大事そうに両手ですくい、見せつけてきた。

「やっぱりこれは、とっておけぬかのう?」

 彼女にとっては“虎の子”といってもいい、最高級の土産だ。
 小さな指先を、瞼と眼球の間にギュルリと差し込んで、くり抜いた獲物のまなこ……。

「いけませんね。時間がたてば腐るだけ。お父様に特別な薬品をねだれば無理ではないでしょうが、オイタはバレたくないでしょう?」
「分かっておる」
 ぷいっと頬を膨らませる彼女の手から、今は柔らかいそれを取り上げた。
 これも露見しないところへバラバラに埋めよう。
「まぁ、持ち主を離れたらただのボールとなるんじゃからの。やっぱりナマがいちばんじゃ。……ふわぁぁ」
 小さな口で大きなあくびだ。
「急いで片付けますから、こちらで待っていてください。ブルーシートを持ってきましょうか?」
「一晩中この地べたで戯れておったのでな。平気じゃ」

 はちきれんばかりの笑顔を見せるが、獲物に殴られた時の痣が白い肌に判然と浮かぶ……。このゴミをどう始末してやろうか。

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