1 / 20
序章
しおりを挟む
幼子の抵抗など、まるで無力な蟻の斧。
「い、いやぁ……きゃあぁぁあっ!!」
闇から伸びるおぞましい手に搦め取られ、そのいたいけな姫は、
「あ……あぁぁ……」
欲望と背徳への興奮が混濁した、暗澹たる閉所にスルリ、スルリと引きずり込まれた。
──怖ィ……次郎、ドコ、助ケテ──…………
此処ハ、ドコ……?
気付けばジトリ湿った空気の満ちる、薄暗い納屋の奥にて、彼女は両の手首を固く縛られていた。
「か、母さまぁ……」
彼女はここら一帯に根差す小国の姫。まだ九つの、清らで可憐な小鶴姫。
「良い子にせよ……」
「い、いやぁっ」
目の前の男は、未だ世間知らずの姫すら理解するほどに、常軌を逸した表情を見せていた。
向こうの壁に大きな影を背負い、獣のごとき姿態の人間が、己を捻り潰す勢いで迫りくる。
コナイデ……!!
底知れぬ恐怖が胸を絞め、後ろ首を伝い脳天を貫いた。
「っジロー!! ジロっ、助けっ…キャァッ!」
「おとなしくしておれ……」
人の形はしていても、人の心を持たぬ化け物に手繰り寄せられてしまった、姫の命運はもう────
ジロー…怖ィョ……タス、ケテ…
従者らが血眼になって姫を探している時分だが、ここは誰も見当のつかぬ密室だ。救いの手が差し込まれることはない。
ヨベバイツモ
キテ、クレタノニ……
時を経て、滴り落ちる涙の枯れた頃、彼女の本能は絶望を和らげんと違う景色を見せ出した。聴覚、嗅覚、知覚、痛覚……いずれも手放し、大事な人らの待つあたたかな庭に帰ろうと。
だのに姫のその瞳は、下劣な熱を帯びた男の眼を、じぃと眺めて止まなかった。
か弱きものを嬲っては雄々しく高ぶり、愉悦にまみれた男の眼。それだけを、脳裏に激しく焼き付けて──
ナゼ、コノ人ガ……?
最後の瞬間、ふと湧いた疑問を抱いて、小鶴姫はついに意識を失った。
「い、いやぁ……きゃあぁぁあっ!!」
闇から伸びるおぞましい手に搦め取られ、そのいたいけな姫は、
「あ……あぁぁ……」
欲望と背徳への興奮が混濁した、暗澹たる閉所にスルリ、スルリと引きずり込まれた。
──怖ィ……次郎、ドコ、助ケテ──…………
此処ハ、ドコ……?
気付けばジトリ湿った空気の満ちる、薄暗い納屋の奥にて、彼女は両の手首を固く縛られていた。
「か、母さまぁ……」
彼女はここら一帯に根差す小国の姫。まだ九つの、清らで可憐な小鶴姫。
「良い子にせよ……」
「い、いやぁっ」
目の前の男は、未だ世間知らずの姫すら理解するほどに、常軌を逸した表情を見せていた。
向こうの壁に大きな影を背負い、獣のごとき姿態の人間が、己を捻り潰す勢いで迫りくる。
コナイデ……!!
底知れぬ恐怖が胸を絞め、後ろ首を伝い脳天を貫いた。
「っジロー!! ジロっ、助けっ…キャァッ!」
「おとなしくしておれ……」
人の形はしていても、人の心を持たぬ化け物に手繰り寄せられてしまった、姫の命運はもう────
ジロー…怖ィョ……タス、ケテ…
従者らが血眼になって姫を探している時分だが、ここは誰も見当のつかぬ密室だ。救いの手が差し込まれることはない。
ヨベバイツモ
キテ、クレタノニ……
時を経て、滴り落ちる涙の枯れた頃、彼女の本能は絶望を和らげんと違う景色を見せ出した。聴覚、嗅覚、知覚、痛覚……いずれも手放し、大事な人らの待つあたたかな庭に帰ろうと。
だのに姫のその瞳は、下劣な熱を帯びた男の眼を、じぃと眺めて止まなかった。
か弱きものを嬲っては雄々しく高ぶり、愉悦にまみれた男の眼。それだけを、脳裏に激しく焼き付けて──
ナゼ、コノ人ガ……?
最後の瞬間、ふと湧いた疑問を抱いて、小鶴姫はついに意識を失った。
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる