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√マリーヤ act.3
③ 小さな世界であなたと私、ふたりきり
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ふぅ。空白の49日の謎が解けたわね。
「マリーヤ、今日は話を聞いてくれてありがとう」
「どういたしまして!」
「君は当初の目的通り、仕事に精を出してるんだな」
だってローンが……。
「普段は住み込み先でご老人のお世話をする仕事で、たまに社交会場での給仕をするんだけど、あまりああいう場はね……」
「日雇い仕事と言えばフランポフルト郊外の農園で、果実収穫の手伝いを臨時募集していたよ。割りもいいし屋外の仕事は気分転換になるだろう。果実分けてもらえたりもするらしい、行ってみたら?」
「へぇ、果実かぁ」
ココナッツ以外なら何でもいい。
そんなわけで日雇いの収穫バイトにやってきたの。確かにこれは気分転換になる。このりんご、形の悪いのもらえないかしらふんふ~~ん。
「のりえ、どこ行くピコ?」
「ちょっとお花摘みに~~」
森に入ったところで花摘んで~~さて、戻ろう。としたところで、犬現る!!
「ゥ~~バウッバウッ!!」
「犬くらいさっさと撃退するピコ~~」
「踏まれたトラウマが……」
「ビンゴのことはもう忘れるピコ……ていうか今マリーヤだピコ」
こうなったら、逃げるが勝ちよ!
「そっちは森の奥ピコ~~!」
あ~~森の中で迷子になっちゃったぁ――!
「バイト代減らされるぅ~~」
「そんなこと言ってる場合じゃないピコ! 雨降ってきたピコ!」
そこの崖の岩がえぐれてるところで雨宿りするか……。
「もう恋愛どころか働いてばっかで、エンディングに辿り着かない!」
こっちのルート来なきゃよかった……?
「でもこっちに来てなかったら、ピータンはオートマリーヤに相談していたピコ。すると向こうが違う未来になっていたかもしれないピコ」
私がこっちをプレイするって選んだことにより、あっちでハッピーエンディング迎えられたってことね?
「それなら良かったけど、マリーヤとラインホルト様はどうにも交わらない運命だったりするのかなぁ……。パーティーでもすれ違っちゃうし。あっ雷鳴った、怖い!」
「大丈夫ピコよ、のりえ雷怖いピコ?」
「この音にびくつかない人なんて鋼メンタルだよ」
もう帰りたいよぅ……私、なにやってるんだろ……。
「マリーヤ!!」
えっ……。
「ラインホルト様!?」
どうして、彼が……ここに……?
「無事かい、マリーヤ」
「え、ええ。あの、あなたは……」
「ああ、心配した、良かった見つけられて……」
ラインホルト様、傘は持ってるけど、衣服がかなり濡れてしまってる。風邪ひいちゃったらどうしよう。
「ああ、申し遅れた。私は、ラインホルト・フォン・フリージ。君が本日働いている農場の所有者だ」
えええ~~? そうなの??
「たまたま別荘にしている屋敷に出向いたら、労働者の面々が雨宿りをしていて……」
そこでは、ひとり足りないとみんなが気付いて、森に入って行ったのを見たという者がいたから探しに行くかってなって、私の情報をシェアしていたと。
「たまたま聞こえてしまったんだ、それはマリーヤという名の女性で、その、ものすごい美少女だと」
《特徴:美少女》ですもんねこの子。
「まさか君なのでは、と、飛び出して来てしまった」
そんなのもう、たまたまの運命に後押しされたカップルじゃない!
「こんなに濡れてしまって、寒くないですか?」
「いや、大丈夫だ」
「……でしたら、あの、雷が止むまで、ここで……」
「あ、ああ、そうだな……」
こんな降りしきる雨に閉ざされた、小さな世界でふたりっきり。このシチュエーション、これもう絶対プロポーズされる! どうしよう、なんて返事しよう!?
あっピータン、これマリーヤだから浮気じゃないの! まぁ、とってもドキドキはするけれど……。
「あ、あの、マリーヤ」
「は、はいっ」
プロポーズ、くる!?
「……君の好きな食べ物は、何だろうか?」
え? 好きな食べ物?
「えーっと、今はココナッツ以外ならなんでもいけます……」
「そ、そうか。……では、好きな動物は?」
ん?
「今は、牛とヤギと羊以外ならなんでもいけます」
「そ、そうか。それは意外だった」
何が?
なんというか世間話?みたいな話をされて早5分経過。
「時にマリーヤ、君の好きな数字は何だろうか?」
「えっ、えー……、素数ならなんでもいけます……」
「そ、そうか! 私もだ! 奇遇だな!」
それから数字のマジックについて語られ更に5分。
ちょっと……スペシャルイベントが始まらないのだけど……。どういうこと?
彼をチラ見。
あ、目が合った。……って、ラインホルト様、顔真っ赤。……まさかマリーヤを前に緊張で、告白始められないの??
「悲報。ラインホルト様ヘタレだった!……ピコ」
ヘタレとか言ったら悪いわよ!
まぁ実際そうね。言われてみれば、ラインホルト様ってあんなに令嬢方に囲まれていても、全然恋の噂は聞こえてこない人で、エリザベースとの婚約で社交界の若年層に激震が走ったんだっけ。結局ずっと初恋の少女を追い求めていて、これでやっと出会えた。しかも、その子は身分や財産をちらつかせればなびいてくるような女性ではないと分かっているのだし、失敗できないとなると慎重にもなるか……。
「のりえ~~、雷止んだみたいだし、ボクの予報ではあと10分で雨も上がるピコ~~」
あと10分でイイ雰囲気になれる気がまったくしない!
「マリーヤ、今日は話を聞いてくれてありがとう」
「どういたしまして!」
「君は当初の目的通り、仕事に精を出してるんだな」
だってローンが……。
「普段は住み込み先でご老人のお世話をする仕事で、たまに社交会場での給仕をするんだけど、あまりああいう場はね……」
「日雇い仕事と言えばフランポフルト郊外の農園で、果実収穫の手伝いを臨時募集していたよ。割りもいいし屋外の仕事は気分転換になるだろう。果実分けてもらえたりもするらしい、行ってみたら?」
「へぇ、果実かぁ」
ココナッツ以外なら何でもいい。
そんなわけで日雇いの収穫バイトにやってきたの。確かにこれは気分転換になる。このりんご、形の悪いのもらえないかしらふんふ~~ん。
「のりえ、どこ行くピコ?」
「ちょっとお花摘みに~~」
森に入ったところで花摘んで~~さて、戻ろう。としたところで、犬現る!!
「ゥ~~バウッバウッ!!」
「犬くらいさっさと撃退するピコ~~」
「踏まれたトラウマが……」
「ビンゴのことはもう忘れるピコ……ていうか今マリーヤだピコ」
こうなったら、逃げるが勝ちよ!
「そっちは森の奥ピコ~~!」
あ~~森の中で迷子になっちゃったぁ――!
「バイト代減らされるぅ~~」
「そんなこと言ってる場合じゃないピコ! 雨降ってきたピコ!」
そこの崖の岩がえぐれてるところで雨宿りするか……。
「もう恋愛どころか働いてばっかで、エンディングに辿り着かない!」
こっちのルート来なきゃよかった……?
「でもこっちに来てなかったら、ピータンはオートマリーヤに相談していたピコ。すると向こうが違う未来になっていたかもしれないピコ」
私がこっちをプレイするって選んだことにより、あっちでハッピーエンディング迎えられたってことね?
「それなら良かったけど、マリーヤとラインホルト様はどうにも交わらない運命だったりするのかなぁ……。パーティーでもすれ違っちゃうし。あっ雷鳴った、怖い!」
「大丈夫ピコよ、のりえ雷怖いピコ?」
「この音にびくつかない人なんて鋼メンタルだよ」
もう帰りたいよぅ……私、なにやってるんだろ……。
「マリーヤ!!」
えっ……。
「ラインホルト様!?」
どうして、彼が……ここに……?
「無事かい、マリーヤ」
「え、ええ。あの、あなたは……」
「ああ、心配した、良かった見つけられて……」
ラインホルト様、傘は持ってるけど、衣服がかなり濡れてしまってる。風邪ひいちゃったらどうしよう。
「ああ、申し遅れた。私は、ラインホルト・フォン・フリージ。君が本日働いている農場の所有者だ」
えええ~~? そうなの??
「たまたま別荘にしている屋敷に出向いたら、労働者の面々が雨宿りをしていて……」
そこでは、ひとり足りないとみんなが気付いて、森に入って行ったのを見たという者がいたから探しに行くかってなって、私の情報をシェアしていたと。
「たまたま聞こえてしまったんだ、それはマリーヤという名の女性で、その、ものすごい美少女だと」
《特徴:美少女》ですもんねこの子。
「まさか君なのでは、と、飛び出して来てしまった」
そんなのもう、たまたまの運命に後押しされたカップルじゃない!
「こんなに濡れてしまって、寒くないですか?」
「いや、大丈夫だ」
「……でしたら、あの、雷が止むまで、ここで……」
「あ、ああ、そうだな……」
こんな降りしきる雨に閉ざされた、小さな世界でふたりっきり。このシチュエーション、これもう絶対プロポーズされる! どうしよう、なんて返事しよう!?
あっピータン、これマリーヤだから浮気じゃないの! まぁ、とってもドキドキはするけれど……。
「あ、あの、マリーヤ」
「は、はいっ」
プロポーズ、くる!?
「……君の好きな食べ物は、何だろうか?」
え? 好きな食べ物?
「えーっと、今はココナッツ以外ならなんでもいけます……」
「そ、そうか。……では、好きな動物は?」
ん?
「今は、牛とヤギと羊以外ならなんでもいけます」
「そ、そうか。それは意外だった」
何が?
なんというか世間話?みたいな話をされて早5分経過。
「時にマリーヤ、君の好きな数字は何だろうか?」
「えっ、えー……、素数ならなんでもいけます……」
「そ、そうか! 私もだ! 奇遇だな!」
それから数字のマジックについて語られ更に5分。
ちょっと……スペシャルイベントが始まらないのだけど……。どういうこと?
彼をチラ見。
あ、目が合った。……って、ラインホルト様、顔真っ赤。……まさかマリーヤを前に緊張で、告白始められないの??
「悲報。ラインホルト様ヘタレだった!……ピコ」
ヘタレとか言ったら悪いわよ!
まぁ実際そうね。言われてみれば、ラインホルト様ってあんなに令嬢方に囲まれていても、全然恋の噂は聞こえてこない人で、エリザベースとの婚約で社交界の若年層に激震が走ったんだっけ。結局ずっと初恋の少女を追い求めていて、これでやっと出会えた。しかも、その子は身分や財産をちらつかせればなびいてくるような女性ではないと分かっているのだし、失敗できないとなると慎重にもなるか……。
「のりえ~~、雷止んだみたいだし、ボクの予報ではあと10分で雨も上がるピコ~~」
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