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√エリザベース act.1
① 日本人仕様の耳ってものがありますの!
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「わぁエリザベースの外見はやっぱり素敵! ドレスもアクセもすごーく豪華! さすがお嬢様!」
ゲームに入って最初の部屋はエリザベースの自室だ。
「ちなみに選んでない方のルートは、オートプレイでキャラが普通に生活してるピコ」
「ふぅん。さて、婚約破棄されたわけだし、これからどうすればいいんだろ」
あれ、私手に羽根ペン持ってる。何か書いてたのかな?
あ、机の上に手紙みたいなのある。読んでもいいよね。
「もう婚約破棄くらって生きてく希望がありません。先立つ不孝をお許しください……ってエリザベース、遺書書いてる――!!!」
「こっちにも何か色々書いてあるピコ」
日記かな?
【こうなったら世界一周旅行にでも出かけようかしらん? 目指せ第2のマルコ・ボウロ☆なーんちゃって! ふんふ~ん私はビアンカ~~♪ 海賊っぽい名前~~】
無理にテンション上げてる、これガチで心配なやつ……。
「遺書のがきっと後だピコ……」
とりあえず私が今プレイしてるから、首の皮一枚で繋がってるわね。
「この時代の令嬢は安定した結婚しか、まともに生きる道ないピコよ」
「それが現実か。じゃあ新しく婚約者を見繕わなきゃ、できたらグレードアップした奴を! まず何をすれば……」
「まず、言葉を習うピコ」
「えっゲームの世界ってご都合主義にも同時通訳されてるんじゃないの?」
「ぴゅ~~♪」
目ぇ逸らして口笛吹いた──。
「でも私、帰国子女だから、こっちの方の言葉話せるよ、ぜんぜん大丈夫」
「甘いピコ! 上流階級ピコよ? 洗練されたポエム朗読調の言葉遣いと発音が必要だピコ!」
「じゃあどうすれば」
「執事のセバスサンに頼むピコ」
セバスサンとやらを呼んでみた。
「おっ呼びぃでェすかぁ? おッ嬢さまぁあ~。おやぁおやぁおッ嬢さまぁ~ずぅいぶんとォ、訛っとりマァスねェ!!」
あなたがだいぶ訛ってるけど、あなたからしたら私の喋りはこのように聞こえているのだと分かったわ。
「セバスサン、私の言語矯正の相手になる人を見繕ってきてくれないかしら?」
「わァっかりまっシタァ!」
一時間後に彼は戻ってきた。
「そぉの辺でぇ、ひっっとらァーえてェキましたァ!」
セバスサン仕事早ァい。
「初めまして、エルマーと申します!」
いやあぁぁ栗色サラ髪のイケメェン!! これまた好みぃ!
「あなた、ひっとらえられてきたみたいだけど、いいのかしら?」
「あ、実家の工場が潰れそうなので、時間には余裕あります……」
ちょっと重い。いや潰れそうなら頑張ろうよ! 諦めないで!
ん? ピコピコが突っついてくる。
「のりえ、好みなのはいいけど、拾ってきた男じゃグレードはアップしないピコよ」
「乙女ゲーならちょっと寄り道してイケメンつまみ食いしたって、バチは当たらないでしょ」
「爵位持ちに出会えず終わっても知らないピコ~~」
さて、私は訛り矯正できればいいんだから、とにかくイケメンと会話を楽しめばいいのよ。
「エリザベース様、日本語を自在に操れるって聞いたんですが!」
「ええ、まぁ。学院の中等科で30時間学んだだけで、ネイティブレベルまで習得いたしましたの」
「実は僕、日本に行ったことあるんですよ! ノリで亡命してみまして!」
ええ~~ちょっとこの人、見た目に寄らずアグレッシブじゃない?
「3ヶ月で強制送還されたんですけどね!」
船内で過ごした時間のがよっぽど長かったでしょうね……。
「だから今でも日本語勉強していて。もし良かったら教えてもらえませんか?」
「相互レッスンってことですわね。構いませんわ。じゃあここの言語で話しながら、日本語のライティングを学びましょう」
「じゃあ平仮名で、“でーとしたい”って教えてください!」
へ? 質問第一弾が「デート」? 「こんにちは」とか「ありがとう」はもう知ってるってことかな?
私は紙に書いてみせた。
「あれあれ~~? 変だなぁ」
ん? ネイティブの日本語にケチつけるのです?
「この僕の秘蔵教科書『みんなでにほんご』の“で”を見てください。この“て”の中に点々があるでしょう? でもエリザベース様の“で”の点々は、“て”の横線の右上にありますよ!?」
……細かっ!! こっっっまか!!
「……どっちでもいい、です」
「どっちでもいいんだ~~」
あっ、“どっちでもいい”ってすらすら平仮名書いてる!
それから私たちは学習を続けましたの。彼はちょっとふしぎクンな感じもあるのですが、とても可愛らしいキャラで和むのですわ。あら、私もだいぶ、言葉がきれいになってきたと感じます、おほほ。
「……エリザベース様は、伯爵様とご婚約なされてるんですよね?」
おや? それを聞くってことは、私のこと気になってるのかしら? よくってよ、よくってよ。
「それが最近、破談になってしまって……あ、いえ私が振られたのではなくってよ! こちらからポーイですわ、ポーイ!」
ちなみに今は日本語で話してますの、やはり私は日本語の方がネイティブですので。つまり、楽なのよね……。
「ポーイって何ですか? どういう意味ですか?」
「捨てる、という意味ですわ」
「なんでポーイが捨てる?」
えっ。そんなこと考えたことない……!!
思い出してのりえ! 今まで見てきたコミック、物を投げ捨てるシーンには大体「ポーイっ」って音、書いてあったでしょう!? そうよ、そうなのよ。
「物を投げ捨てる時に、ポーイって音が出るのですわ」
彼はすかざず、紙を丸めて投げ捨てたわ。
「……出ませんよ」
確かに私も聞こえなかったけど。
「10回投げたら3回くらい、出ると思いますわ」
彼は拾っては投げ捨て、拾っては投げ捨て、10回試行しましたの。
「一度も出ませんでしたね……」
「そうですわね……」
知らなかった、ポーイって日本人にしか聞こえない音だったんだ……。
ゲームに入って最初の部屋はエリザベースの自室だ。
「ちなみに選んでない方のルートは、オートプレイでキャラが普通に生活してるピコ」
「ふぅん。さて、婚約破棄されたわけだし、これからどうすればいいんだろ」
あれ、私手に羽根ペン持ってる。何か書いてたのかな?
あ、机の上に手紙みたいなのある。読んでもいいよね。
「もう婚約破棄くらって生きてく希望がありません。先立つ不孝をお許しください……ってエリザベース、遺書書いてる――!!!」
「こっちにも何か色々書いてあるピコ」
日記かな?
【こうなったら世界一周旅行にでも出かけようかしらん? 目指せ第2のマルコ・ボウロ☆なーんちゃって! ふんふ~ん私はビアンカ~~♪ 海賊っぽい名前~~】
無理にテンション上げてる、これガチで心配なやつ……。
「遺書のがきっと後だピコ……」
とりあえず私が今プレイしてるから、首の皮一枚で繋がってるわね。
「この時代の令嬢は安定した結婚しか、まともに生きる道ないピコよ」
「それが現実か。じゃあ新しく婚約者を見繕わなきゃ、できたらグレードアップした奴を! まず何をすれば……」
「まず、言葉を習うピコ」
「えっゲームの世界ってご都合主義にも同時通訳されてるんじゃないの?」
「ぴゅ~~♪」
目ぇ逸らして口笛吹いた──。
「でも私、帰国子女だから、こっちの方の言葉話せるよ、ぜんぜん大丈夫」
「甘いピコ! 上流階級ピコよ? 洗練されたポエム朗読調の言葉遣いと発音が必要だピコ!」
「じゃあどうすれば」
「執事のセバスサンに頼むピコ」
セバスサンとやらを呼んでみた。
「おっ呼びぃでェすかぁ? おッ嬢さまぁあ~。おやぁおやぁおッ嬢さまぁ~ずぅいぶんとォ、訛っとりマァスねェ!!」
あなたがだいぶ訛ってるけど、あなたからしたら私の喋りはこのように聞こえているのだと分かったわ。
「セバスサン、私の言語矯正の相手になる人を見繕ってきてくれないかしら?」
「わァっかりまっシタァ!」
一時間後に彼は戻ってきた。
「そぉの辺でぇ、ひっっとらァーえてェキましたァ!」
セバスサン仕事早ァい。
「初めまして、エルマーと申します!」
いやあぁぁ栗色サラ髪のイケメェン!! これまた好みぃ!
「あなた、ひっとらえられてきたみたいだけど、いいのかしら?」
「あ、実家の工場が潰れそうなので、時間には余裕あります……」
ちょっと重い。いや潰れそうなら頑張ろうよ! 諦めないで!
ん? ピコピコが突っついてくる。
「のりえ、好みなのはいいけど、拾ってきた男じゃグレードはアップしないピコよ」
「乙女ゲーならちょっと寄り道してイケメンつまみ食いしたって、バチは当たらないでしょ」
「爵位持ちに出会えず終わっても知らないピコ~~」
さて、私は訛り矯正できればいいんだから、とにかくイケメンと会話を楽しめばいいのよ。
「エリザベース様、日本語を自在に操れるって聞いたんですが!」
「ええ、まぁ。学院の中等科で30時間学んだだけで、ネイティブレベルまで習得いたしましたの」
「実は僕、日本に行ったことあるんですよ! ノリで亡命してみまして!」
ええ~~ちょっとこの人、見た目に寄らずアグレッシブじゃない?
「3ヶ月で強制送還されたんですけどね!」
船内で過ごした時間のがよっぽど長かったでしょうね……。
「だから今でも日本語勉強していて。もし良かったら教えてもらえませんか?」
「相互レッスンってことですわね。構いませんわ。じゃあここの言語で話しながら、日本語のライティングを学びましょう」
「じゃあ平仮名で、“でーとしたい”って教えてください!」
へ? 質問第一弾が「デート」? 「こんにちは」とか「ありがとう」はもう知ってるってことかな?
私は紙に書いてみせた。
「あれあれ~~? 変だなぁ」
ん? ネイティブの日本語にケチつけるのです?
「この僕の秘蔵教科書『みんなでにほんご』の“で”を見てください。この“て”の中に点々があるでしょう? でもエリザベース様の“で”の点々は、“て”の横線の右上にありますよ!?」
……細かっ!! こっっっまか!!
「……どっちでもいい、です」
「どっちでもいいんだ~~」
あっ、“どっちでもいい”ってすらすら平仮名書いてる!
それから私たちは学習を続けましたの。彼はちょっとふしぎクンな感じもあるのですが、とても可愛らしいキャラで和むのですわ。あら、私もだいぶ、言葉がきれいになってきたと感じます、おほほ。
「……エリザベース様は、伯爵様とご婚約なされてるんですよね?」
おや? それを聞くってことは、私のこと気になってるのかしら? よくってよ、よくってよ。
「それが最近、破談になってしまって……あ、いえ私が振られたのではなくってよ! こちらからポーイですわ、ポーイ!」
ちなみに今は日本語で話してますの、やはり私は日本語の方がネイティブですので。つまり、楽なのよね……。
「ポーイって何ですか? どういう意味ですか?」
「捨てる、という意味ですわ」
「なんでポーイが捨てる?」
えっ。そんなこと考えたことない……!!
思い出してのりえ! 今まで見てきたコミック、物を投げ捨てるシーンには大体「ポーイっ」って音、書いてあったでしょう!? そうよ、そうなのよ。
「物を投げ捨てる時に、ポーイって音が出るのですわ」
彼はすかざず、紙を丸めて投げ捨てたわ。
「……出ませんよ」
確かに私も聞こえなかったけど。
「10回投げたら3回くらい、出ると思いますわ」
彼は拾っては投げ捨て、拾っては投げ捨て、10回試行しましたの。
「一度も出ませんでしたね……」
「そうですわね……」
知らなかった、ポーイって日本人にしか聞こえない音だったんだ……。
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