3 / 35
プロローグ
③ みんなみんな生きているんだ! 私は霊だけど~。
しおりを挟む
『私は山のふもとの村で暮らす娘、マリーヤ。普段は牛の乳しぼったり、ヤギの乳しぼったり、羊の乳しぼったりして生計を立てていまぁす』
うわぁマリーヤ可愛いなぁ。可憐だなぁ。
『実はね、そろそろボーイフレンドのピータンとね、結婚することになっているの』
「はい、ちょっと待って――!」
一時停止っと。
「何だピコ?」
「ピータンってなに?」
「ボーイフレンドだって言ってるピコ」
「いや、ペーターじゃなくて? 100歩譲ってピーターじゃなくて? ピータン??」
巻き戻し&スロー再生。
「ぼぉぉいふれぇんどぉのぉぴぃぃぃぃたぁんとぉ……」
「満足したかピコ?」
はい。
『でもね、彼とはまだキスもしてないの』
あら、それでもう結婚なの? そういう時代?
『女の恋はキス2回目がいちばん楽しい時だからね……。引き延ばせるだけ引き延ばした方がいいのよ……』
今マリーヤすっごいスレた顔した――!!
「ゲームのシナリオライターが中年だから、たまに年齢不詳な台詞吐く時あるピコ……」
『マリーヤ!』
『あら、ピータン!』
……ピータン!! うわぁぃ超イケメン~~!!! アッシュの艶髪に緑の瞳! 長身で細身、なのに逞しい! で、なんで名前がピータンなの?
『君に大事な話があって』
ピータン、私のドストライクだわ。こんな結婚相手、毎日見つめて過ごせたら、乳絞りもはかどるってもんでしょ。
『なぁに?』
『俺、やっぱり君とは結婚できない』
…………。
『え? どうして?』
『知ってしまったんだ。君は俺と近所のスチーブン、二股かけてるんだろう!?』
『そんな! 私は二股なんてしてないわ!』
【五股はしてるけど】
えっ……。
「それはマリーヤの心の声。ボクたちには聞こえるけど、ゲームの登場人物にはもちろん聞こえないピコよ」
『信じたいけれど、君はただでさえこんなに可愛いんだ。大都会フランポフルトに出ていた時期もあり読み書きできるし』
はいっ、一時停止――!! いやどこかは分かったけどもぉ。
「またピコ? でも今回はスルー推奨だピコ」
「……ピータン噛んだ?」
「シナリオライター、何度も確認して誤植ないピコ」
「はい、スルーします」
再生。
『所作も美しい。そんな君は男たちの肉よk……憧れの的だ。俺は不安になってしまって、夜しか眠れない』
昼寝、したいよね……。
【ちっ。二股とか、誰から聞いたんだろ。めんどくさいわね……】
「ちょっと! 舌打ちしたよ~~? マリーヤ、この顔で腹黒過ぎない?」
『俺は俺に一途な、ひたむきで損得勘定のない女性を探す≪心の旅≫に出たいと思う』
心の旅強調した……。
損得勘定のない女なんていやしないわ。まったく、永遠に心の旅してばいいんじゃない?
『君の幸せをそこそこ願っているよ』
そこそこ付けるな。
『ピィィィタ――ン!!』
「彼も去ってしまったピコね……」
なんだこの(ピーッ)ゲー!!
「これで選べって言うの!?」
「いや、だからね。このふたりをお試しプレイして、気に入った人生の方に転生させてあげるっていう、太っ腹シチュエーションだピコ」
「お試し?」
「ふたりのルートをほぼ同時に試させてあげるピコ。転生後にも、セーブデータが役立ったりするピコ」
そうは言っても……。金持ちでも頭ゆるふわなせいで前途多難なお嬢様、美少女だけど腹黒なせいで波乱起きそうな村娘、どっちもどっちだよ。
「いや、どうせ転生するならもっと安定した人生がいい。金髪に生まれてくるのは捨てがたいけど、また日本でいいよ。ゲーム手に入りやすいし」
「お嬢ちゃん、甘いよ……」
ピコピコの様相が変わった! シビアな感じに!
「地球上にこれだけの生物種があって、何で二度連続、人間に生まれてこれるって思うかなぁ……?」
「だ、だめなの?」
「あと何回死んだら人間に生まれてこられるかなぁキミは……。ちなみにここでこのふたりから選ばないのなら、キミの来世は“ミミズ”か“オケラ”か“アメンボ”だがよろしいか?」
「よりによってその3つ!?」
「それでも今生のキミより、彼らのが友達多いけどね……」
さりげなく失礼なこと言われているけど、その3匹が友達同士なら私より友達多いってことよね。
「まぁ一応プレイしてみる……。片方をエンディングまでやったら残りの方をってこと?」
「そうじゃなくてぇ。更なる効率化を目指して! 途中でお試し先をスイッチできるアイテムがあるピコ! じゃじゃ――ん!」
その手に取り出したのは、歯車?
「これは天道の歯車! これを使うともう片方のルートにワープできるピコ!」
「こっちのルート飽きた~~って時にログアウトしないでそっちに行く、みたいな?」
「まぁそんなとこピコ。6回使えるピコ。でも最後にいるルートに転生が決まるから、6回目は保険ピコよ。さて、どっちのルートから試すのかなぁ~~」
「じゃあ、まず令嬢の方に行こうか……」
こうして私の夏休みは始まった。人生は終わったが。
うわぁマリーヤ可愛いなぁ。可憐だなぁ。
『実はね、そろそろボーイフレンドのピータンとね、結婚することになっているの』
「はい、ちょっと待って――!」
一時停止っと。
「何だピコ?」
「ピータンってなに?」
「ボーイフレンドだって言ってるピコ」
「いや、ペーターじゃなくて? 100歩譲ってピーターじゃなくて? ピータン??」
巻き戻し&スロー再生。
「ぼぉぉいふれぇんどぉのぉぴぃぃぃぃたぁんとぉ……」
「満足したかピコ?」
はい。
『でもね、彼とはまだキスもしてないの』
あら、それでもう結婚なの? そういう時代?
『女の恋はキス2回目がいちばん楽しい時だからね……。引き延ばせるだけ引き延ばした方がいいのよ……』
今マリーヤすっごいスレた顔した――!!
「ゲームのシナリオライターが中年だから、たまに年齢不詳な台詞吐く時あるピコ……」
『マリーヤ!』
『あら、ピータン!』
……ピータン!! うわぁぃ超イケメン~~!!! アッシュの艶髪に緑の瞳! 長身で細身、なのに逞しい! で、なんで名前がピータンなの?
『君に大事な話があって』
ピータン、私のドストライクだわ。こんな結婚相手、毎日見つめて過ごせたら、乳絞りもはかどるってもんでしょ。
『なぁに?』
『俺、やっぱり君とは結婚できない』
…………。
『え? どうして?』
『知ってしまったんだ。君は俺と近所のスチーブン、二股かけてるんだろう!?』
『そんな! 私は二股なんてしてないわ!』
【五股はしてるけど】
えっ……。
「それはマリーヤの心の声。ボクたちには聞こえるけど、ゲームの登場人物にはもちろん聞こえないピコよ」
『信じたいけれど、君はただでさえこんなに可愛いんだ。大都会フランポフルトに出ていた時期もあり読み書きできるし』
はいっ、一時停止――!! いやどこかは分かったけどもぉ。
「またピコ? でも今回はスルー推奨だピコ」
「……ピータン噛んだ?」
「シナリオライター、何度も確認して誤植ないピコ」
「はい、スルーします」
再生。
『所作も美しい。そんな君は男たちの肉よk……憧れの的だ。俺は不安になってしまって、夜しか眠れない』
昼寝、したいよね……。
【ちっ。二股とか、誰から聞いたんだろ。めんどくさいわね……】
「ちょっと! 舌打ちしたよ~~? マリーヤ、この顔で腹黒過ぎない?」
『俺は俺に一途な、ひたむきで損得勘定のない女性を探す≪心の旅≫に出たいと思う』
心の旅強調した……。
損得勘定のない女なんていやしないわ。まったく、永遠に心の旅してばいいんじゃない?
『君の幸せをそこそこ願っているよ』
そこそこ付けるな。
『ピィィィタ――ン!!』
「彼も去ってしまったピコね……」
なんだこの(ピーッ)ゲー!!
「これで選べって言うの!?」
「いや、だからね。このふたりをお試しプレイして、気に入った人生の方に転生させてあげるっていう、太っ腹シチュエーションだピコ」
「お試し?」
「ふたりのルートをほぼ同時に試させてあげるピコ。転生後にも、セーブデータが役立ったりするピコ」
そうは言っても……。金持ちでも頭ゆるふわなせいで前途多難なお嬢様、美少女だけど腹黒なせいで波乱起きそうな村娘、どっちもどっちだよ。
「いや、どうせ転生するならもっと安定した人生がいい。金髪に生まれてくるのは捨てがたいけど、また日本でいいよ。ゲーム手に入りやすいし」
「お嬢ちゃん、甘いよ……」
ピコピコの様相が変わった! シビアな感じに!
「地球上にこれだけの生物種があって、何で二度連続、人間に生まれてこれるって思うかなぁ……?」
「だ、だめなの?」
「あと何回死んだら人間に生まれてこられるかなぁキミは……。ちなみにここでこのふたりから選ばないのなら、キミの来世は“ミミズ”か“オケラ”か“アメンボ”だがよろしいか?」
「よりによってその3つ!?」
「それでも今生のキミより、彼らのが友達多いけどね……」
さりげなく失礼なこと言われているけど、その3匹が友達同士なら私より友達多いってことよね。
「まぁ一応プレイしてみる……。片方をエンディングまでやったら残りの方をってこと?」
「そうじゃなくてぇ。更なる効率化を目指して! 途中でお試し先をスイッチできるアイテムがあるピコ! じゃじゃ――ん!」
その手に取り出したのは、歯車?
「これは天道の歯車! これを使うともう片方のルートにワープできるピコ!」
「こっちのルート飽きた~~って時にログアウトしないでそっちに行く、みたいな?」
「まぁそんなとこピコ。6回使えるピコ。でも最後にいるルートに転生が決まるから、6回目は保険ピコよ。さて、どっちのルートから試すのかなぁ~~」
「じゃあ、まず令嬢の方に行こうか……」
こうして私の夏休みは始まった。人生は終わったが。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる